播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

神戸市垂水区の高塚山(185.9m)

神戸市垂水区にあるコストコへ時々買い物に行くのですが、駐車場から北を見ると、第二神明の長坂インターから神戸高専にかけて東西に広がる低い山並みがすぐ近くに見えます。

その山並みを歩けるのかなと気になってGoogleの航空写真を見たら、小束台公園付近から東へ遊歩道らしきものが見えますし、展望が良さそうな「ヒロコバ丘」なる場所も載っています。

山並みの中ほどを断ち切っている車道(多聞小寺線)の東に関しては、「たかつか保育園」から延びる階段以外に山の上に続く道は見えませんが、山の中に古墳群があるため、他にも道はあると思われます。

この近くに同僚が住んでいるので聞いてみたら、「歩いたことはないけど、ハイキングコースはありますよ。」とのことだったので、展望が良さそうなヒロコバ丘でゆっくりご飯を食べて過ごし、腹ごなしに高塚山まで散歩しようと考えていました。

ちょうどそんな時、ハイカー向けのSNS「YAMAP」で「ぽぽみん」さんがその山並み(車道の東側)を歩いた記録に出会い、まったく展望に期待していなかった東側で景色が楽しめることが判明。

さらに検索してみると、YAMAPユーザの「かるま」さんがヒロコバ丘を含む辺りを歩かれた記録を見つけました。

それによると、この辺りの遊歩道はかつての「徳川道(西国往還付替道)*1の跡のようです。なんだかおもしろそう。

ところが「かるま」さんの記事によると、ヒロコバ丘は閉鎖されているとのこと。
Googleマップで「ヒロコバ丘」の口コミを見ても、やはり閉鎖されているという情報が載っています。

ヒロコバ丘が歩けないなら西側の山を歩く意味はないなと思い、東側だけを歩くことにして出かけてきました。

公共交通機関が整備された街中の山ですから、移動には電車とバスを利用することに。

私は学園都市の大学に通っていたので、周辺の鉄道や路線バスになじみがあるのです。


▲神戸学園都市 高塚山ハイキングコース案内板


▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「前開」


▲カシミール3Dで作成したルートの断面図

JRで舞子駅まで行き、そこからは山陽バス、または神戸市バスで登山口の最寄りバス停である「小束山(こづかやま)6丁目」バス停へ向かい*2、下山後は学園都市駅前から路線バスで舞子駅まで戻るという行程です。

09:48
加古川・東加古川間で踏切の安全確認があった影響で、9:41発の新快速が7分遅れで姫路駅を出発。

10:12
西明石駅に到着。
5番線に停車中だった四条畷行の普通電車に乗り換えました。

10:16
普通電車が西明石駅を出発。

10:25
舞子駅に到着。姫路から舞子までの運賃は¥680。

舞子駅の改札を出たら左へ進み、歩道橋からバス乗り場へ。学生時代に毎日通っていたせいか、体がルートを覚えています。

しかし、歩道橋の中ほどの階段からバス乗り場へ降りていたはずなのに、かつて私が利用していた階段とバス乗り場は撤去されており、歩道橋南端の階段を下りた先に乗り場の位置が変わっていました。

舞子駅前から学園都市駅前へ向かうバス路線はいくつかありますが、本数が多くて便利なのは53系統54系統

私は学生時代、なぜか54系統ばかり乗っていたので、今回は53系統に乗ることにしました。

10:33
53系統の路線バスが舞子駅前を発車。
乗る機会が少なかったバスだからか、車窓の風景を見ても懐かしさは皆無でした。

11:03
「小束山6丁目」バス停で下車(地図中「小束山6丁目バス停」)。
運賃は¥210です。

今回の登山口は、MEGAドン・キホーテ神戸学園都市店のすぐ北にあります。

小束山6丁目バス停から北へ進み、小束山6丁目交差点、またはドン・キホーテ前にある横断歩道で道路の東側へ渡ってください。

11:12
MEGAドン・キホーテのすぐ北にある登山口に到着しました(地図中「高塚山西入口」)。

「高塚山西入口」と名付けられたこの場所から入山します。


▲高塚山西入口

山側は金網、谷側は手すりという過剰に整備された安全第一の道は、マンションや民家のすぐ近くを通っているので落ち着きません(見知らぬ人に家のすぐ裏を歩かれてしまう住民の方がもっと嫌だと思いますが)。


▲西入口からの道の前半は緩やかな擬木階段が多い

民家のすぐ裏を通り過ぎると急角度の擬木階段があり、それを登りきったところから山道らしい雰囲気に変わります。


▲急角度の擬木階段を登りきったところにはベンチがあり、その後は山道らしくなる。このベンチからの眺めは良好。

ベンチのすぐ先には「40」と書かれたプレートが立つ分岐がありました。
左は平坦な道で、右は上り坂。

左は徳川道跡で、今回目指す展望の良い高塚山は右です。


▲「40」のプレートがある分岐は右へ進む

なだらかに上ったところで、「13号古墳(盗掘跡)」と書かれたプレートと、こんもりとした古墳らしき地形が現れました。

ここからは12号、11号、10号と立て続けに古墳跡に出合いますが、11号古墳(盗掘跡)に四等三角点標石(点名:尾僧谷)が埋設されています。

遊歩道は三角点標石から少し離れた所を通っており、遊歩道から三角点までの間は道というよりは踏み跡ですから、三角点にこだわる方は見落とさないようにしてください。

三角点は単なる測量の目印*3で、こだわったところで特に意味はないと思いますが、三角点愛好家の方は案外多いので念のため紹介しておきます。


▲「11号古墳(盗掘跡)」のプレートの背後に四等三角点への道標がある

11:25
四等三角点標石を見学(地図中「四等三角点」)。


▲四等三角点標石(点名:尾僧谷)

11:28
四等三角点から遊歩道に戻って東へ進むと、小さな陶器の狛犬が道の両脇に置かれた場所に来ました。

視線の先には、鳥居や社殿と思われる建物が見えます(地図中「高塚龍神」)。


▲高塚龍神の入口(?)には陶器の狛犬があった


▲高塚龍神(左奥から登ってきた)


▲高塚龍神の社殿

高塚龍神(金龍ケ姫・高塚姫大神)について
 今を去る約一千年の昔、近江の竹生島より勧請されて、この下のくつわが池の畔に鎮まっておられた神様ですが、高塚山の開発が進む中で不思議な運びと御告げにより、昭和六年一月に、地元中山や垂水・明石の人々の手によって、ここ高塚山々頂にお社が建立されて以来、縁結び、進学、就職、子宝等のあらたかな霊験に、神戸市内はもとより、名古屋・東京などからも多くの人々が参拝されるようになりました。
 昭和五十年十月、老朽化したお社が、市内や地元の崇敬する人々の真心の奉賛と奉仕で再建され、付近一帯の開発と共に、明石海峡を望む素晴らしい景色に、健康維持と参拝に数多くの人々が訪れるようになり、今や地域の人々の憩いと安らぎの神域となりつつあります。
(出典:現地の看板)

鳥居の前には南北に細長い広場のような場所があり、ベンチやテーブルが置かれています。


▲鳥居前の広場

11:34
広場の南端に来ました(地図中「高塚山展望台」)。

Googleマップによると、この場所は「高塚山展望台」とのこと。
西は明石の街並みから東は高取山まで広い範囲を眺められます。


▲高塚山展望台

本日は一眼レフカメラに加えて、パノラマ写真を撮影する機材も持ってきました。

どんな眺めが楽しめるのかは、一眼レフカメラを使って撮影した下の全天球パノラマでご覧ください。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/takatsukayama20230225/index.html
▲高塚山展望台で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2023年2月25日 カメラ:Nikon D7100、レンズ:AF DX Fisheye Nikkor ED 10.5mm F2.8G)

こういった場所は火気の使用が禁止されている可能性がありますし、電車とバスを利用するためなるべく普段着に近い服装で来ましたから、本日は荷物を多く持てませんでした。

そんなわけで、本日の昼食はメロンパン一個。

山歩きでは原則として何か一つは温かいものを食べるようにしている私ですが、「普段見慣れている場所を上から眺める」という気持ちよい体験をしながら食べれば、菓子パン一個の昼食でも(温かいものが一つもない食事でも)ある程度幸せを感じられました。


▲高塚山展望台から見たコストコホールセール神戸倉庫店


▲高塚山展望台から見た鉄拐山(左)と鉢伏山(右)


▲高塚山展望台から見た明石海峡大橋

12:07
景色を堪能したので、下山開始。

学園都市駅へ向かうには高塚山の北入口へ降りる必要があるのですが、その北入口への道は、鳥居の右側から始まっています。


▲鳥居の右から降りると北入口へ降りられる

北入口へ向かって下り始めるとすぐ、何やら厳重に守られた謎の施設が右側に見えてきました。

これは「小束山手特1高層配水池」で、敷地への侵入を防ぐため、金網には有刺鉄線まで張られています。


▲遊歩道から小束山手特1高層配水池の上部が見えた

北入口への道の一部は、完成直後に江戸幕府が倒れたためほとんど使われることなく廃道となってしまった「徳川道」跡です。

知らずに歩くとただのハイキングコースですが、そんな歴史を知るだけで気分が上がってくるのが不思議。


▲徳川道と思われる古い道

ところどころに分岐がありますが、基本的には太い方の道を進めば問題ありません。
細い道の方へ入ると、山の東側斜面に付けられた散策路に入るようです。


▲「25」のプレートが立つ分岐は左へ

北入口へ続く道には、「火気厳禁」の看板がいくつか立っていました。
食事をメロンパンだけにしておいて良かった。


▲火気厳禁の看板

12:18
尾根の肩にテーブルとベンチが設置されているのに出会いました(地図中「一級基準点」)。

テーブルの脇には、神戸市が設置した一級基準点が埋設されています。


▲テーブルとベンチが置かれた尾根の肩(左に見えているのは神戸淡路鳴門自動車道)


▲テーブル脇の一級基準点

今までは平坦な山道でしたが、画像の通りここからは階段です。
といっても、階段はすぐに終わって地形図に描かれた庭園路に入りました。


▲階段の先で広くてなだらかな下り坂になった

車が走れそうなほど広くてなだらかな道を下っていると、右へ急角度で曲がる道の頂点で二つのプレートに遭遇。

一つは「タコ足根っ子」で、もう一つは「コジイ大木」
タコ足根っ子は、プレートの立っている場所から見えています。


▲タコ足根っ子

「コジイ大木」は、プレートから30mほど登った先にあるようです。


▲「コジイ大木」への道標

12:25
道標に従って溝沿いの小道を進むと、すぐにコジイ大木がありました(地図中「コジイ大木」)。


▲コジイ大木(現地のプレートのよると、幹回り(実測):3.1m、樹高(目測):25m、樹種名:ツブラジイ(コジイ))

12:28
高塚山北入口に降りてきました(地図中「北入口」)。


▲高塚山北入口

ここから北に進み、県道65号線(神戸加古川姫路線)と地下鉄の線路を越えるための歩道橋(外大東歩道橋)の直前を左へ曲がります。

私の母校である外大のキャンパスを左に見ながら歩き、車道(多聞小寺線)を渡ると学園都市駅です。


▲外大のキャンパスを左に見ながら学園都市駅に向けて歩道を進む


▲神戸市営地下鉄の学園都市駅

12:41
外大の校門前まで来ると、体が自然に動いて看板を見なくても正しいバス乗り場に到着(地図中「学園都市駅前バス乗り場」)。

舞子駅前へ行く54系統の路線バス乗り場は5番。私が学生だった当時と同じでした。
53系統は4番乗り場から出ます。

12:45
54系統の路線バス(舞子駅前行)が発車。
通学でずっと乗っていた路線のため、車窓の風景が懐かしい。案外覚えているもんだなぁ。

13:22
舞子駅前に到着。運賃は¥210。

13:26
網干行の快速電車が舞子駅を発車。

13:33
西明石で下車し、下り新快速が止まる2番ホームへ。

13:42
姫路行新快速が西明石を発車。

14:03
姫路駅に到着。

月曜に病院で検査を受ける必要があったので、いつものようにドローンやら調理機材やら合計15kgの荷物を担ぐ山歩きは避けないといけませんでした。

私の場合、ちょっとキツイ山歩きをするだけで検査結果の数値がヤバいことになり、再検査だの精密検査だのを受ける羽目になってしまいます。

そんなわけで、普段着で気軽に歩ける今回のルートは「病院で検査を受ける直前の私」にはピッタリでしたし、好展望や懐かしさで思いのほか楽しいものになりました。

活動日記を参考にさせていただいた「ぽぽみん」さんや「かるま」さんに感謝いたします。

 


交通アクセス

鉄道の最寄り駅は、神戸市営地下鉄の「学園都市駅」で、学園都市駅から今回の登山口までは、およそ1kmです。

最寄りのバス停はこの記事で紹介した通り、山陽バスまたは神戸市バスの「小束山6丁目」バス停で、学園都市駅前を出発する舞子駅前行の路線バス、またはJR舞子駅前を出発する学園都市駅前行の路線バスで利用できます。「小束山6丁目」バス停から登山口までの距離は、およそ550m。

自家用車を使う場合は、学園都市駅前の神戸学園都市ビル駐車場、あるいは学園都市駅の一つ東にある総合運動公園駅近くの駐車場が利用できます。

周辺の商業施設に車を止めることは物理的に可能ですが、ただの悪質なマナー違反です。


関連情報

高塚山を歩くだけだとあっという間に終わってしまうので、周辺のスポットを紹介します。

まずはスポーツネタ。

高塚山北入口の東に神戸淡路鳴門自動車道の高架が通っていますが、そのすぐ東、今はマンション(プレミスト神戸学園東町)が建っている場所は、かつてオリックスの室内練習場があった場所。

私が外大の学生だった当時はイチロー選手もここで練習していて、同級生が「今日はイチローがおった!」と言ってはしゃいでいたのを覚えています。

今は当時の面影が全くありませんが、イチロー選手がかつてここで練習していたことを想像すると、野球好きの方なら少しは楽しめるかも。

続いては鉄道ネタ。

地下鉄が新幹線の上を走るという不思議な場所があります。それは学園都市の東にある総合運動公園。

この付近一帯は高台になっており、地下の浅いところを地下鉄が、深いところを新幹線が通っています。

総合運動公園の南には、地下鉄や新幹線のトンネルよりも深くえぐれた谷間があって、地下鉄も新幹線も高架になっています。

そのため、地下鉄の線路が新幹線の上を通るという珍しい場所になっているわけです。

新幹線と地下鉄が交差するタイミングで写真が撮れると面白いかも知れませんが、かなり難しそう。


https://goo.gl/maps/8gdfHhtfGDBAQnuM7
▲地下鉄と新幹線の線路が交差する地点

次は、渋いネタで申し訳ないですがお寺。

54系統のバス路線には「多聞寺前」というバス停がありますが、名前の通り多聞寺というお寺の最寄りバス停になっています。

私は行ったことがないためよく知らないのですが、季節によってはきれいな花を楽しめるようです。


https://goo.gl/maps/vmn4hWDGbdZAmRK37
▲多聞寺の位置

続いて紹介するのは、学園都市から少し離れますが西神中央の人気スポット。

学園都市駅から地下鉄で3駅、西神中央駅の北には見学が可能なグリコの工場があります(要予約。詳細はグリコピア神戸のWebサイトをご確認ください)。

公共交通機関利用の場合は、西神中央駅から路線バスまたはタクシーで行けます。


https://goo.gl/maps/UqgRQnoWM1iVc3Sd7
▲グリコピア神戸の位置

最後に紹介するのは、大型アウトドアショップ。
山歩きというよりも、キャンプ向けの品ぞろえが豊富です。

JR舞子駅から北へ出ると山陽電車の舞子公園駅があって、この駅から山陽電車の大蔵谷駅へ向かえば、大蔵谷駅から南へおそよ600mで「アルペンアウトドアーズ 明石大蔵海岸」に行けます。

有料*4ですが大型の駐車場があるので、自家用車で来ても大丈夫です。

「なんで有料なんだ?」と思われるかも知れませんが、この駐車場の料金に関して平日は最大料金(当日24時まで¥1,000)が設定されていますが、土日祝は最大料金が決まっていません。こういった商業施設の駐車場に車を止めて海で遊ぶ非常識な人がおり、買い物に来る人が車を置けなくなるのを防ぐため有料にしているのでしょう。


https://goo.gl/maps/coEPF7ycrGs6D5sS9
▲アルペンアウトドアーズ明石大蔵海岸の位置

*1:神戸の外国人居留区の近くを通る西国街道で、開国を嫌う武士たちが外国人に対してトラブルを起こさないようにすることを目的に、神戸港周辺を迂回する形で付けられた道。ほとんど使われることなく廃道となったようです。

*2:山陽バスと神戸市バスの共同運行路線になっています。

*3:三角点が山頂だと誤解している方が多いですが、ただの測量の基準点です。山の中腹や平地にも三角点があることからも、山頂を表す標石ではないことは明らかです。

*4:30分無料。以降は30分ごとに¥200。アルペンアウトドアーズかスポーツデポで¥1,000以上の買い物をすれば追加で60分が無料になるので、最大90分まで無料で駐車が可能。