播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

兵庫県姫路市の塚本山(285.1m)にバーズタウンから登る

以前、姫路市夢前町の住宅街「バーズタウン」にあるおしゃれなカフェに行った時、「そういえば、この周辺の山は歩いたことがないな。この辺りに面白そうな山はあるのかな。」とぼんやり考えたことがあります。

それをふと思い出して、面白そうな山がないかGoogleマップの航空写真で周辺の山を探索。

すると、バーズタウンの南側にある285.1m三角点ピークが開けていて、ベンチもあるように見えます。

ここに登るのはバーズタウンの住民の方々でしょうから、登山口があるとすればバーズタウンの近くのはず。

Googleのストリートビューで山の北麓を調べると「西登山口」「東登山口」という道標のある2つの登山口の他、「四等三角点の記」に記載されている登山道の入り口と思われる階段も見つけました。
道標によると、285.1m三角点ピークは「塚本山」という名前のようです。

「塚本山」の名前で検索しても、2023年1月現在、詳しい情報はほとんど出てきません。ということは、誰にも会わない静かな山歩きを楽しめそう。

誰もいないということは安全にドローンを飛ばせますし、人目を気にせずゆったり好きなことをして過ごせます。

人が多い山だと、双眼鏡で景色を見ているだけでも周囲の視線を集めてしまいますし、ましてや机やいすを出して食事をしているとさらに注目を集めてしまい、食べているものをのぞき込んでくる人まで現れる始末。ハイカーが多い山はくつろげないから苦手です。

というわけで、本日はこの塚本山を歩くことにしました。


▲護塚橋近くから見た塚本山


▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「前之庄」


▲カシミール3Dで作成したルートの断面図

バーズタウンは住宅街ですから、うかつな場所に駐車するとトラブルの原因になってしまいます。

Googleストリートビューを見ると登山口近くに車を置けそうな場所があるのですが、撮影日が2013年になっており、当時は空き地だった場所が今は空き地ではない可能性もあります。

そこで、安全のため路線バスで出かけることに。

塚本山の西登山口の最寄りバス停である「バーズタウン3丁目」バス停から西登山口を目指し、そこから山頂へ。
山頂から東登山口に下山するとバーズタウンの東端付近に降りられるので、その後はバスの本数が多い(といっても1時間に1本ですが)「護塚橋」バス停からバスに乗って帰るという行程です。

09:40
姫路駅18番のりば発の路線バス(42系統 バーズタウン行)で「バーズタウン3丁目」バス停へ向かいます。

10:32
定刻より9分遅れて「バーズタウン3丁目」バス停に到着。運賃は¥720。

バスを降りたらバスの進行方向(南西)に進み、最初の交差点を左折。
道なりに南東へ上り坂を進んでいくと、およそ200mで西登山口にたどり着きます。


▲バーズタウン公民館への案内が立つ交差点を左(南)へ入る

10:36
西登山口に到着(地図中「西登山口」)。
しっかりした道標があるので、見落とすことはないでしょう。


▲塚本山西登山口

https://goo.gl/maps/MZMUs2NcLUfxhRMv9
▲西登山口の位置

登山口からしばらくは、レンガでできた階段の道です。


▲レンガの階段

レンガの階段はそれほど長く続かず、すぐに普通の山道になります。

等高線間隔が狭い急斜面のため道はつづら折れになっており、しかも登りにくい急坂には石で階段が作られて歩きやすくなっています。


▲レンガの階段が終わると普通の山道になる

10:47
「第1展望台」というプレートがぶら下がった場所に来ました(地図中「第1展望台」)。
残念ながら、木々が生長していて展望は皆無。

※この場所が第1展望台なのではなく、第1展望台への道標かもしれません。

第1展望台から進路は南寄りになり、その後も歩きやすい道が続きます。


▲歩きづらいところにある石の階段

尾根の肩に出ると「ちょろっと休けい」と書かれたプレートが下がっていました。
先ほどから助かっている石段といい、この道を整備した方々の心遣いが感じられます。

10:53
「第2展望台」のプレートが下がった平坦地に出会いました(地図中「第2展望台」)。
コンクリートブロックが置かれているのは、椅子の代わりかな。

展望があればちょっと休憩したいですが、残念ながら展望はほとんどありません。


▲第2展望台

ここまでは野生動物の痕跡が見られなかったのですが、第2展望台を過ぎてから(イノシシか鹿かわかりませんが)蹄の跡がたくさん出てきました。

念のためバックパックに入れていた熊撃退スプレーを取り出して腰に装着。

第2展望台から第3展望台までの間は地形図では平坦に見えて、実際は地形図で表現できない程度の高低差があるため平らではありません。

第3展望台への上り斜面が始まる手前で、二股の分岐に出会いました。
直進すると第3展望台経由で山頂へ、右の分岐に入ると、第3展望台のあるピークを迂回して山頂北西の鞍部へ出るようです。

せっかくなので、展望に期待して第3展望台を目指すことにしました。


▲第3展望台への上り斜面手前にある分岐(今回は左の道で第3展望台へ。右は道標によると「山頂近道」。)

11:00
急な斜面を登りきったところが第3展望台です(地図中「第3展望台」)。
ここでは北西方面の展望を少し楽しめました。

第3展望台への上り斜面で息が上がってしまったので、少し休憩。


▲第3展望台

第3展望台から南東へ急斜面を下った鞍部には、第3展望台を迂回するルートが西から合流していました。

鞍部から山頂への上り返しもなかなかの急斜面です。


▲山頂への上り斜面(画像ではわかりづらいですがかなりの急斜面です)


▲山頂手前では階段状の地形がみられる

11:09
階段状になった不思議な地形の中を登りきると、南側が開けた広い平坦地に出ました。
塚本山の山頂です(地図中「山頂」)。


▲山頂に到着するとこの景色が目の前に広がる

階段状の地形といい、不自然に平らな山頂といい、いかにも山城跡という地形です。
スマホを取り出して調べてみると、やはり「塚本向山構居跡(つかもとむこやまこうきょあと)という城跡でした。


▲ドローンで撮影した塚本山山頂の様子

航空写真でベンチのように見えたものは、予想通りベンチ。
しかしその材料が特殊で、正体は組み立て式のポールです。

四等三角点の記には山頂にアンテナがあると書かれていましたが、今はそれらしきものは見当たりません。

ということは、このベンチはアンテナの残骸かな。


▲山頂には組み立て式のポールを分解して寝かせたベンチがある

山頂の真ん中には土地の境界線を表すコンクリートの杭が立っていて、三角点標石は山頂の中心から少し離れたところに埋設されていました。


▲四等三角点標石(点名:塚本)

山頂のベンチに南を向いて座ると、正面には大きく書写山がそびえ、遠くには播磨灘とそこに浮かぶ船が見えます。

南しか見えませんが、ほかの方角を見ても山ばかりですから、南が見えていれば十分かも。

こんなにいい場所だとは思いませんでした。来てよかった。


▲ドローンで北から撮影した塚本山山頂(矢印の位置に私が立っています。左奥が書写山。)


▲ベンチに座って得られる南向きの展望

金属製のポールでできたベンチに座ると冷たいですが、すぐに自分の体温で温まってくれます。

そのベンチに座っていただく本日の昼食は、アメリカ軍の戦闘糧食「MRE」のメニュー番号24「Southwest Style Beef and Black Beans」。


▲戦闘糧食「MRE」のパッケージ

トルティーヤにチーズスプレッドを塗り、その上に牛肉と豆を煮込んだものを乗せて包んで食べるもののようです。

MREは不味いといわれることが多いですが、私の感覚ではけっこう美味しいです。
今回のメニューも当たり。


▲トルティーヤで具材を包んで食べます

12:35
ドローン操縦と昼食、そして静かな時間を満喫したので、下山開始。

往路で第3展望台を通った時、下山に使う予定の東登山口へ続いていそうな道の存在を確認していたので、予定通り東登山口へ降りることにします。

山頂への上り斜面は急斜面だと書きましたが、それを下るのはなかなか怖いです。
時々木につかまりながら、足が滑らないよう慎重に下りました。

12:42
第3展望台に戻ってきました。
ここからは北東へ進みます。

北東への道も基本的には自然林の中の落ち着いた山道ですが、途中の一部区間だけ右側が植林になっている場所がありました。


▲一部の区間だけ右側に植林があった

標高180mくらいまで下ると等高線間隔が狭い急斜面になり、道はつづら折れになります。


▲急斜面になると道はつづら折れになる

朽ちたベンチの先で丁字路に突き当たりました。

東登山口に行きたいので、ここは右(東)へ。
左へ行ったらどこへ通じているのかは不明です。

何やら錆びた鉄の杭がたくさんあるなと思ってよく見ると、落石を防ぐためのもののようです。


▲落石を防ぐための杭とワイヤー

12:59
コンクリートブロックで作られた小屋の裏に出ました(地図中「小屋」)。
小屋の向こうにフェンスがあり、ゲートも閉じているためこの場所は立ち入り禁止かな。


▲謎の小屋

近づかない方が良さそうなので早く下ろうと思ったのですが、道の続きが見当たりません。

仕方がないので、Googleストリートビューで見つけた東登山口の道標がある場所を目指し、林の中を適当に北東へ下ることにしました。


▲道のない林の中を適当に下った(見えているテープは伐採用?で、道を示しているわけではない)

適当に下っていると、突然広い道に出ました。
道の方向を考えると、東登山口へつながっていそうです。


▲突然広い道に出てきた

調子よくこの広い道を歩いていると徐々に笹が増えてきて、その密度が上がっていきます。

ただ、道の形ははっきりしていますし、ヤブと呼べるほどの密度にもなっていないため、気楽に歩けました。


▲道に笹が茂ってきた

やがて道は一気に狭くなり、民家の裏を通るようになるとイバラが出てきます。
笹を気にせずスタスタと歩いていたせいで勢いよくイバラに体当たりしてしまい、手にトゲがささって負傷。

道(?)と民家の距離が近すぎて、イバラをよけるためにごそごそしている私は、民家に裏から侵入しようとする泥棒だと勘違いされそう。
住民の方に見つからないよう、急いで先へ進みました。

13:09
東登山口に降りてきました(地図中「東登山口」)。

ここには「登山口」と書かれたプレートがあるので、私が歩いたルートは間違っていなかったようです。


▲ヤブと化した東登山口に降りてきた

https://goo.gl/maps/XpiaLE6NPCdFRNp19
▲東登山口の位置

この山を歩こうと思われる方は、東登山口を使わないことをお勧めします

後は家に帰るだけですが、その前に見ておきたいものがあります。
それは有名な岡本太郎氏の作品。

バーズタウンの入り口には、「若い泉」と題された岡本太郎氏の作品が設置されているのです。荒れ果てていますが…

東登山口から100mほど北にある交差点を右折すると、すぐにその作品に出合います。


▲「若い泉」(岡本太郎作)

岡本太郎作『若い泉』
岡本太郎が昭和49年10月、新しい町作りのシンボルとして完成させたもので万博の『太陽の塔』とまるで兄弟のように似ている。
このモニュメントは住民に気軽に語りかけ、気安さとユーモラスな表情がなんともアッケラカンとしている。
菅野中学校区地域夢プラン実行委員会
(出典:「護塚橋北詰」交差点に立つ看板)


▲口の中にパイプが見えるので、本来は水を噴き出していたのかな

有名な芸術家の作品をじっくり眺めたら、県道80号線に出て南東へ。
そして、約170m先にある「護塚橋北詰」交差点を渡ってから左へ。この道路は県道411号線です。

交差点から県道411号線を60mほど北に進んだところに「護塚橋」バス停があります(地図中「護塚橋バス停」)。

「護塚橋」バス停は県道80号線沿いにも、県道411号線沿いにもあります。県道80号線沿いの「護塚橋」バス停を通るバスはほとんどありません。姫路駅へ帰るときは、県道411号線沿いの「護塚橋」バス停をお使いください。


▲県道411号線沿いの「護塚橋」バス停

13:35
定刻にやってきた姫路駅行の路線バスに乗車。
姫路駅への所要時間はおよそ41分、運賃は¥720です。

今回歩いたルートは、後半の藪っぽい場所は別として、非常に気持ちよく歩けました。
低山でよく見る案内用のテープが一切なかったのが理由かな。

私の場合、道が明確なのにテープだらけの山道は雰囲気が悪いと感じてしまいます。

この山を整備された方々は、山の雰囲気をなるべく壊さないように心がけておられたのかも知れません。

歩く人が少ないらしく東登山口方面の道は藪っぽくなっていますが、個人的には良い山だと思うので、歩く人が増えて欲しいものです。


交通アクセス

この記事で紹介した通り、路線バスが利用できます。

物理的に車を置けそうな場所はありますが、法律やマナーに反しない形で車を止められる場所は、周辺にありません。