播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

神戸に残る戦争の痕跡

終戦の日なので、第二次世界大戦にまつわる内容を紹介します。

今回紹介するのは、神戸市の中心部に残る戦争の痕跡

まずは、JR三ノ宮駅と阪急の神戸三宮駅をつなぐ歩道橋から見える戦争の痕跡を紹介します。


▲JR三ノ宮駅と阪急の神戸三宮駅をつなぐ歩道橋(矢印が指しているところ)


▲JRと阪急の駅を結ぶ高架沿いの歩道橋上の様子

この歩道橋の中央付近で金網越しに鉄道の高架を見ると、いくつもの穴が目に付きます。

これは、米軍の空母艦載機が駅を機銃掃射したときに弾丸が貫通した弾痕


▲金網の向こうに弾痕が見える

弾痕のえぐれ方を見ると、北から南に向けて弾が鉄板を貫いたことが分かります。

かなり厚みのある鉄板ですが、米軍機が搭載していた50口径(弾丸の直径が0.50インチ≒12.7mm)の機関銃は、こんなものを簡単に撃ち抜く威力を持っていたのです。


▲弾丸は分厚い鉄板を撃ち抜いている

こんな恐ろしい弾丸は直接胴体に当たると絶対に助かりませんし*1、跳弾(固い場所に当たって跳ね返った弾丸のこと)や、弾丸が貫通した衝撃で発生した破片などに当たるだけでも大けがを負うことになります。

50口径の弾丸が人体に対してどれほど恐ろしい破壊力を持っているかは、当時の兵器のニックネームからも分かります。

そのニックネームが付けられたのは、50口径の機関銃を4つ1セットにした対空機関銃*2。これが地上の敵兵に対して使われると、「ミートチョッパー(挽肉製造器)」というニックネームが付けられました。

この弾痕が見られる場所は、下の地図でご確認ください。


https://goo.gl/maps/6JBB7dsJt7vEmu537
▲JR三ノ宮駅西に残る弾痕の位置

もう一つ、この近くに残る戦争の痕跡を紹介します。

JR三ノ宮駅の西にある元町駅から南へおよそ600mの「シップ神戸海岸ビル」の南側壁面にも、米軍機の機銃掃射の跡が残っているのです。


▲シップ神戸海岸ビルの南側の様子


▲まだら模様は弾痕を塞いだ跡と言われている

神戸市指定
景観形成重要建築物

海岸ビル
(旧三井物産神戸支店)
設計:河合浩蔵 竣工:大正7年(1918)

 かつてカーン式という特殊な工法で構築され、平板化されたペディメントや幾何学的装飾、キーストーンの形態などセセッションの影響を強く表現している外壁は、震災による再建に際して元の石材を再利用するかたちで復元保存されました。
 設計は河合浩蔵が手がけ、自らこれを「現代式」と名付けています。建物の全体としての構成は旧来の様式建築のものですが、東面、南面の中央最上部はパラペットを一段上げ、そこに唐破風曲線を用いるなど和風の要素も混入しているのが注目されます。
(出典:現地のプレート)

シップ神戸海岸ビルの場所は、下の地図でご確認ください。


https://goo.gl/maps/wGf17kDaEH1o2dEV9
▲シップ神戸海岸ビルの位置

最後に、戦争遺跡とは全く関係ありませんが神戸にある「日本一短い国道」を紹介します。

日本一短い国道があるのは、JR三ノ宮駅近くの「三宮」交差点から1kmほど南へ下った所にある「税関前」交差点から、その南にある「第3突堤」交差点の40m北までの200m弱の区間。

長さが187.1mしかない国道174号線です。


▲阪神高速3号神戸線の高架下に立つ「日本で一番短い国道です」の看板*3

国道174号線の南端は、上の画像で矢印が指している案内標識がある辺り。

大部分の区間は、阪神高速3号神戸線や浜手バイパスの高架下になっています。


▲税関前歩道橋から撮影した国道174号線の様子


https://goo.gl/maps/CUTNGkpVDGJahATP8
▲国道174号線の位置

今回の記事に載せる写真を撮るために私が歩いたルートは、次の通りです。

(1)JR三ノ宮駅から弾痕が見える歩道橋へ。
(2)歩道橋を下り、南へ歩いて国道174号線へ。
(3)国道174号線の北端(「税関前」交差点)から国道2号線沿いに西へ。
(4)シップ神戸海岸ビルや周辺のレトロな建物を見物。個人的には、「アークテリクス 神戸ブランドストア」があるチャータードビル(設計はJ.H.モーガン)やシップ神戸海岸ビルの東向かいにある商船三井ビルディング(ビルの上部にある装飾がいい雰囲気)、「TOOTH TOOTH maison 15th」(フランス料理店)がある旧神戸居留地十五番館がお勧め。建築好きの方なら、旧居留地38番館もどうぞ。(ヴォーリズ本人の設計ではありませんが)ヴォーリズ建築事務所が設計しています。
(5)メリケンロードを北上してJR元町駅へ。

上に書いた行程は、この記事を作るために私が歩いた必要最小限のルートです。

今回の記事で紹介した戦争の痕跡を見に行こうと思われた方は、戦争の遺構や国道174号線のような珍しいスポットだけでなく、JR元町駅の南に広がる中華街や、三宮駅の北にある異人館街もお楽しみください。

異人館街に行かれる際は、スターバックス コーヒー 神戸北野異人館店にも是非立ち寄ってください。普段スタバには行かない私ですが、ここだけは別です。


https://goo.gl/maps/gBWCuudHVMzoybXH6
▲スターバックス コーヒー 神戸北野異人館店の位置

なお、阪急の神戸三宮駅ホームの屋根には、焼夷弾が突き抜けた穴を塞いだ跡がいくつも残っており、鉄製の支柱の一本は、当時の火災の熱で曲がったままになっているそうです。

興味のある方は、そちらもご覧になってはいかがでしょうか。

※この記事内の写真の撮影日は、全て2022年8月14日です。

*1:海外のサイトでは50口径の弾丸を受けた人間を見たことのあるアメリカ兵の体験談をいくつか見つけられます。それらによると、お腹に当たると内蔵が全て飛び出し、腕に当たると腕が吹き飛ばされ、脚に当たると脚を失うそうです。

*2:M45 四連装機関銃架。

*3:この看板は、国道174号線の東側、浜手バイパスの高架下にあります。