山歩きや仕事場で肉体労働をするときには手袋を使いますが、困るのは手袋を着けている間はスマホが使えないこと。
電話が鳴ると、手袋を脱いでスマホを操作しないといけません。
何とかならないかとタッチパネル対応を謳う手袋をいくつか買いましたが、タッチパネルに反応する部分が指先の一部だけとか、力を入れて押さないと反応しなかったり、買った直後は使えてもしばらくすると反応しなくなったり、酷い物は新品の状態でも全く反応しないなど期待外れの物ばかり。
手をしっかり守ってくれて、着用したままタッチパネルが操作できて、安っぽさがない手袋が欲しかったのですが、それらの希望を見事にかなえてくれる手袋をおしゃれなDIY用品店で見つけ、衝動買いしたのが今回紹介するIRONCLAD(アイアンクラッド)の製品です。
▲IRONCLAD タッチPROグローブ ブラウン(山歩きで急斜面の登り降りをする際、木を掴む状況での利用イメージ。側面のボタンに手袋のストラップが当たって腕時計が予期せぬ動作をするのが玉に瑕。)
概要
拳の部分はネオプレン生地、手のひら側は人工皮革で作られた作業用の手袋です。
手のひら側の人工皮革の素材にはカーボンの粒子が使われているため導電性があり、タッチパネルに対応しています。
重要
- この手袋には防水性や保温性はありません。雨天や冬期の利用には不適です。
- 導電性があるため、電気関連の作業には使えません。
仕様
▲IRONCLAD タッチPROグローブ ブラウンのパッケージ
製品名(日本語): IRONCLAD タッチPROグローブ ブラウン
製品名(英語): IRONCLAD COMMAND PRO (BROWN)
メーカー: IRONCLAD.COM(Brighton-Best International, Inc.)(アメリカ)
サイズ: S、M、L(アメリカではXLとXXLも提供されています)
重量: 約160g(実測値)
色: ブラック、ブラウン、HV(High Viz)の3色展開
安全認定(ANSI 105): CUT A2*1(635g)、ABR 3*2
安全認定(EN 388:2016): 2121*3
生産国: 中国
国内定価: ¥4,180(税込)
現地定価: $14.99 USD
購入価格: ¥4,180(税込)
購入先: WHATNOT HARDWEAR STORE(三木市)
外観
手のひらの黒っぽい部分は人工皮革で、この部分を使うとスマホの画面のような静電容量方式のタッチパネルの操作が可能。
親指の外側部分はタオル生地になっていて、汗を拭うときに使えるようになっています。
▲IRONCLAD タッチPROグローブ ブラウンの外観
「IRONCLAD」のロゴがある手の甲の一部だけはネオプレン生地が使われていて、拳を衝撃から守ってくれる構造。
▲拳の部分はネオプレン生地でできている
手首にはベルクロ留めのストラップが付いていて、手袋が脱げないようにしっかり手首を締められます。
ただ、このストラップは厚みがあるため、側面にボタンがついた腕時計を付けていると、知らない間にストラップがボタンに当たって腕時計が予期せぬ動作をする場合があります。
▲手首はベルクロ留めのストラップで締め付け具合を調整できる
使い心地
※個人的な感想です。
フィット感は人によって異なるでしょうからなんとも言えませんが、タッチパネルの操作のしやすさは、タッチパネル対応を謳う手袋の中ではダントツに優れていると思います。
拳の部分が伸縮性のあるネオプレン生地のため、手を握ったときも窮屈さが無く快適。
洗濯も簡単で、パッケージによると「洗濯機で洗い、吊り干し」とのことです。
タッチパネル対応のために人工皮革に織り込まれたカーボン粒子は、洗濯で流れ落ちることはありません。
タッチパネル対応について
IRONCLADの手袋に使われているタッチパネル対応技術には「Command Touchscreen Technology(コマンド・タッチスクリーン・テクノロジー)」という名前が付けられています。
YouTubeの公式チャンネルでタッチパネルの仕組みや同社の手袋がどうやってタッチパネルに対応しているのかを説明する動画が公開されています。
全編英語ですが、興味のある方はどうぞ。
▼Update Series: TOUCHSCREEN TECHNOLOGY: PART 1(タッチスクリーンの仕組みについて)
▼Update Series: TOUCHSCREEN TECHNOLOGY: PART 2 (CONDUCTIVITY)(他社のタッチスクリーン対応技術について)
▼Update Series: TOUCHSCREEN TECHNOLOGY: PART 3 (COMMAND)(IRONCLADのCommandテクノロジーについて)
警察用・軍用の手袋
上記の手袋は民間向けですが、差し色を排除して落ち着いた色合いの警察用・軍用の製品も販売されています。
▲IRONCLAD タクティカルPROグローブ コヨーテのパッケージ
製品名(日本語): IRONCLAD タクティカルPROグローブ コヨーテ
製品名(英語): IRONCLAD COMMAND TACTICAL PRO (COYOTE)
メーカー: IRONCLAD.COM(Brighton-Best International, Inc.)(アメリカ)
サイズ: S、M、L(アメリカではXLとXXLも提供されています)
重量: 約160g(実測値)
色: ブラック、コヨーテ、ODの3色展開
安全認定(ANSI 105): CUT A2(635g)
安全認定(EN 388:2016): 2121A*4
生産国: カンボジア(TAA準拠)
国内定価: ¥5,060(税込)
現地定価: $19.99 USD
購入価格: ¥5,060(税込)
購入先: WHATNOT HARDWEAR STORE(三木市)
タッチPROとタクティカルPROを並べて比較した写真を撮ってみました*5。
警察用・軍用といっても特殊な機能が備わっているわけではなく、単に色合いが地味になっているだけです。
▲タッチPRO(左)とタクティカルPRO(右)の比較(手の甲側)
▲タッチPRO(左)とタクティカルPRO(右)の比較(手の平側)
性能は民間向けと同じなのに、どうして警察用・軍用の製品が存在し、それの価格が民生品より高いのかというと、アメリカのTAA(United States Trade Agreements Act)という制度が理由です。
TAAによって、アメリカの政府機関は米国内または指定された国で製造(または最終組立)された製品の購入を求められており、警察用や軍用として調達してもらうには、メーカーはTAAで指定された国で製造(最終組立)を行う必要があるのです。
民間向けのタッチPROは中国製ですが、中国はTAAで認められていないため、アメリカで警察用や軍用として販売できません。
タクティカルPROを作っているカンボジアはTAAで指定された国の一つであり、そこで製造されていればアメリカの政府機関が調達できます。
最後に
ミリタリー系デザインの道具が好きな方なら、IRONCLADの手袋のデザインには惹かれると思います。
デザインだけでなく機能性もすぐれているので、店舗で見かけることがあればぜひ試着し、快適なフィット感とタッチパネルの操作性の高さを実感してみてください。
長所
- 装着感が良い(個人差があります)。
- 装着したままで、スマホ等のタッチパネルを快適に操作できる。
短所
- メーカーサイトの価格に比べると、日本国内での販売価格は非常に高い(3倍近い)。
- 防水性は無い(雨天時や雪山には不適)。
- 保温性は無い(寒冷な環境での使用には不適)。
- 手首を締めるストラップが分厚く、腕時計のボタンにストラップが当たって腕時計が予期せぬ動作をする場合がある。
- タッチパネル対応で導電性があるため、電気的な絶縁が求められる作業には使えない。
- アメリカンなデザインは、好みが分かれる。
*1:耐切創性は下から2番目。A1がもっとも刃物に対して弱く、A9がもっとも強い。
*2:ABRは耐摩耗性を表す数値。500gの重さを掛けたローラーを素材に当て、生地が摩耗して穴が開くまでのローラーの回転数が1,000を超えるのがレベル3。レベルは0から6まであり、数字が大きいほど優れていることを表しています。
*3:4桁の数字は、左から耐摩耗性、耐切創性、引き裂き強度、耐穿刺性の順に並んでおり、それぞれのレベルを示しています。耐切創性はレベル1~5、それ以外はレベル1~4まであり、数字が大きいほど優れています。
*4:末尾の「A」は、ISO13997 TDM試験による耐切創性でレベルは「A」から「F」まであり、「A」はもっとも低い。
*5:ここに写っているタッチPROはサイズがM、タクティカルPROはLサイズのため、微妙に大きさが異なっています。