播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

なぜ0.5合のご飯は美味しく炊けない?

山歩きでご飯を炊くとき、一人だと少量(お茶碗一杯分の0.5合)を炊きたいのですが、何度試しても0.5合では芯が残り、しかもお焦げだらけになって美味しく炊けたことがありません。

仕方なく山の上では1合、あるいは0.7合のご飯を炊いていました。

最近になって、0.5合だとご飯が美味しく炊けない理由が分かり、また0.5合のご飯を美味しく炊く方法も知ったので、ご存じの方も多いかも知れませんがそれらを紹介することにしました。

なぜ0.5合の米を炊く必要がある?

アウトドアでは、メスティンや飯盒を使って炊きたてのご飯を食べることがあります。
そのご飯の量は、ソロキャンプや単独の山歩きの場合、一度に炊くのは1合が一般的


▲山の上で1合の炊き込みご飯をメスティンを使って炊いた時の様子

しかし、育ち盛りの子供や運動部に所属する生徒や学生でないかぎり、日常生活で一合のご飯を一食で食べきることは少ないと思います。

一合のご飯はおよそ350gありますが、一般的なパックご飯は180gか200g。つまり、一合のご飯はパックご飯2つ分に近い量があるのです。

私の場合は、0.5合のご飯とおかず、あるいはレトルトのカレーや丼の具があれば充分。

それなら、一合も炊かずに0.5合や0.7合を炊けば良いという話になりますが、一合未満のご飯を美味しく炊くのは至難の業です。

私の場合、0.7合なら何とか食べられる程度には炊けますが、0.5合だと硬くて焦げだらけという炊き上がりになります。

少量の米を美味しく炊くのは難しいため、アウトドアでは最低でも一合の米を炊くのが一般的なのでしょう。

ということで、長らく0.5合の米を炊くことは諦めていたのですが、「なぜ0.5合だと美味しく炊けないんだ?」という疑問が膨らみ、理由を調べていると、2015年に広島文化短期大学紀要で公開された論文にたどり着きました。

その論文のタイトルは「炊飯米の形態学的研究 : 加熱過程の差,品種による差,炊飯量の差における炊飯米粒組織の観察」

この論文(以下「論文」)には、ご飯を美味しく炊くための条件が具体的に明記されているのです。

ご飯が美味しく炊ける炊飯の条件

論文には、ご飯を美味しく炊くための条件が「適正加熱過程」として説明されています。

簡単にまとめると、次の2つの条件を満たせばご飯は美味しく炊けるとのこと。

  • 加熱後8~15分で沸騰させる
  • 沸騰後、98℃以上を20分継続させる

「加熱後8~15分で沸騰させる」のは、沸騰までの時間が早いと米の芯が残り、時間をかけすぎると米がねばねばになって食味が悪くなるから。

「沸騰後98℃以上20分間」を保つのは、米のデンプンを充分に糊化させるため。

沸騰にかかった時間が10分の場合は、その後20分98℃以上を保ち続ければ、合計30分で炊飯が完了します。この20分間には蒸らしも含まれています。

炊飯終了後(この例では加熱開始から30分後)はすぐにご飯を混ぜ、余分な水蒸気を放出させれば美味しいご飯のできあがり。

アウトドアでご飯を炊く方にとって、「蒸らし」は火から下ろした後の工程だと思われるかも知れませんが、実は「98℃以上を保つ20分の後半」が「蒸らし」の工程なのです。

「蒸らし」は米に水分を吸収させる工程だと一般的に思われている印象がありますが、論文によると、実際はその逆の効果があるそうです。

一般に「蒸らし」とはスイッチが切れてから余熱が働く間のことをいい,この間温度がやや低下する釜では,過度の焦げが出来ない程度に「追い炊き」をする.余熱の効果は米が沸騰により吸収した水分を適度に放出して「焼きしめ」ることである.
(出典:「炊飯米の形態学的研究 : 加熱過程の差,品種による差,炊飯量の差における炊飯米粒組織の観察」)

0.5合のご飯が美味しく炊けない理由

論文によると、ご飯を美味しく炊くには「加熱後8~15分で沸騰させる」「沸騰後、98℃以上を20分継続させる」という2つの条件が必要ですが、0.5合のご飯だとそれを実現するのは非常に難しいのです。

まずは沸騰までの時間。
0.5合の米は75gで水は100mlほど。たったこれだけの水を最低でも8分かけて沸騰させるのは難しく、あっという間に沸騰してしまいます。

論文によると、沸騰にかかる時間が短すぎた場合でも、98℃以上の時間を20分間維持すればある程度食べられる(芯は残る)そうですが、米も水も少ない状態で20分も加熱していると、水分が飛んで間違いなくご飯が焦げます。

水分が飛ばないよう、ちょうど良い量の熱湯を途中で注ぎながら炊飯すれば98℃以上の温度を20分維持できるかも知れませんが、どれだけのお湯を足せば良いのか正確に知る方法は無く、現実的ではありません。

0.5合の米では、ご飯の仕上がりを美味しくするための沸騰時間や「98℃以上20分間」を実現するのが難しいのです。

炊きあがったご飯が固ければ水を追加して煮込み直せばいいのですが、山歩きで「さぁご飯だ!」と喜び勇んで食べたご飯が固かったときのショックは個人的には味わいたくないですし、固いご飯を煮込み直しながら、冷めない内にとおかずだけ先に食べて、変に柔らかくなったご飯だけを後で食べるとか最悪です。
私の山歩きの目的は展望と美味しいご飯なので、そんな食事はしたくありません。

0.5合の米を美味しく炊く方法

通常の「米を煮る」方法では0.5合の米を美味しく炊くのが困難なため、別の方法を使わないといけません。

一つは「水蒸気炊飯」
スチームオーブンの要領で、高温の蒸気を使って「米を蒸す」方法で炊き上げます。

水蒸気炊飯に必要なものは、次の4つ。

  • 戦闘飯盒2型・・・一式
  • 米・・・0.5合
  • 水・・・炊飯用に110ml、加熱用に適量(加熱中に蒸発しきらない程度の量が必要)
  • 熱源(ガスストーブ、アルコールストーブなど)


▲戦闘飯盒2型

手順は簡単。

準備として、0.5合の無洗米を110mlの水に漬けて吸水させておきます。

続いて、飯盒本体に水を入れます。

30分程度沸騰させても蒸発しきって空焚きにならないよう、余裕をもって入れないといけません。

重要!

火力が強いと、1分当たり15mlほどの水が蒸発します。
実際に水蒸気炊飯を行う前に、ご自分がお使いの熱源(ガスストーブなど)を使用した場合どのくらいの水が蒸発するのか実験し(沸騰前後で飯盒内の水の量を量り、沸騰させた時間(分)で割ることで1分当たりの蒸発量を調べる)、必要な水の量をあらかじめ知っておくことをお勧めします。

そうしたら、吸水させた米と水を入れた中子(なかご)を飯盒にセット。


▲米と水を入れた中子を飯盒にセットした様子

飯盒のフタを閉じ、適当な熱源を使って飯盒本体内の水を沸騰させたら、そのまま沸騰状態を20~30分ほど維持します。

直接米を火にかけないため、このときの火力は神経質にならなくて大丈夫


▲飯盒を火にかけている様子

飯盒のフタを取ると、中子の中で0.5合のご飯が美味しく炊きあがっています。


▲中子の中で炊きあがったご飯

戦闘飯盒の中子には細長い穴が開いており、飯盒本体内で沸騰したお湯から出た高温の水蒸気はこの穴から中子に入り、中子に入っている米と水を加熱します。

これが、戦闘飯盒2型を使った水蒸気炊飯の原理です。


▲中子に開いている「取手通し穴」を通じて蒸気が中子に入ってくる

水蒸気で加熱するためご飯が焦げる心配が無く、簡単に0.5合の炊きたてご飯を味わえます。

戦闘飯盒2型については、次のリンク先から詳しくご覧ください。

二つ目の方法は湯煎(ゆせん)。
例えばレギュラーサイズのメスティン(「メスティン(大)」)と小型のメスティン(「メスティン(小)」)を組み合わせる方法です。

重要!

ここで紹介したレギュラーメスティンとダイソーの1合用メスティンを組み合わせる方法の場合、湯煎に使えるお湯の量は少なくなります。

熱源の火力が強い場合、湯煎用のお湯が蒸発しきって空焚き状態になる可能性があるため、カップ入り固形燃料のような、火力が弱い熱源を使用してください。

具体的には、次のようにおこないます。

  1. メスティン(小)の中に0.5合の生米と水(無洗米の場合は110ml)を入れてフタをし、吸水させる。
  2. メスティン(小)をメスティン(大)の中に入れ、メスティン(小)の底から6~7分目くらいのところに水面が来るように、メスティン(大)の中に水を注ぐ。


    ▲トランギアのレギュラーメスティンの中にダイソーの1合用メスティン(0.5合の米と水が入っている)を入れ、ダイソーメスティンが7割ほど浸かるように水を入れた様子

  3. メスティン(大)のフタを閉じ、カップ入り固形燃料で30分ほど加熱すると、メスティン(小)の中でご飯が炊きあがる。空焚きには充分に注意してください


    ▲ダイソーメスティンの中で炊きあがった0.5合のご飯

「アイラップ」のような耐熱温度の高いポリ袋*1に米と水を入れて湯煎する方法(いわゆる「ポリ袋炊飯」)もよく知られています。


▲耐熱製が高いポリ袋「アイラップ」のパッケージ

しかし、その方法では(たとえ耐熱温度が120℃あっても)ポリ袋が鍋底に触れると熱で溶けて穴が開き、そこからお湯が入って美味しく炊けない場合もあるので要注意です*2

メスティンを入れ子にする方法なら、そんな心配は無用。

最後に

水蒸気炊飯や湯煎であれば、少量の米と水であっても、ご飯を焦がすことなく98℃以上の状態を20分維持できます。

私のように少量のご飯がうまく炊けずに困っていた方は、ぜひこれらの方法をお試しください。

*1:一般的なポリ袋の耐熱温度が高くても100℃程度なのに対して、アイラップの耐熱温度は120℃です。

*2:家庭では、鍋の底に耐熱皿を敷くことでポリ袋を高熱から守れます。