私のお気に入りのガスストーブはMSRのウィンドバーナー。
強風をものともせずお湯を沸かしてくれる、高性能なストーブです。
ところが、ウィンドバーナーの炎は強風下でも消えないものの、重心の位置が高い細長い形状のため、「強風に煽られると倒れる」という欠点があります。
また、吹きこぼれた時に火力調整をしようと思うと、手や指に上から熱湯がかかるという問題もあります。
それらを解消するMSR純正のアクセサリー「ローダウンリモートストーブアダプター」が発売されたため、発売直後に購入しました。
▲MSRのウィンドバーナーとローダウンリモートストーブアダプター
概要
ガス缶直結型や、ウィンドバーナーのように背が高いストーブの安定性を高めるための製品です。
仕様
▲ローダウンリモートストーブアダプターのパッケージ
製品名(日本語): ローダウンリモートストーブアダプター
製品名(英語): LOWDOWN REMOTE STOVE ADAPTER
メーカー: Cascade Designs, Inc.(アメリカ)
重量: 約176g(カタログ値)
材質: ステンレス、真鍮、亜鉛、ニトリル
対応ストーブ: ポケットロケット2、ウィンドバーナーパーソナル
対応ガス缶: MSRイソプロ
生産国: 韓国
国内定価: ¥7,150(税込)
アメリカ国内定価: $49.95 USD
購入先: ハイキングサポート アドスポーツ(姫路市)
備考: パッケージには「■本製品はJIA認証されたMSRガスストーブ及び、日本正規品のMSR ISOPRO専用です。」と表記されています。他社製ストーブや他社製のガス缶と組み合わせて使うことは想定されていません。氷点下20度を下回る気温での保管や使用は禁止されています。
▲パッケージ内容(ローダウンリモートストーブアダプター、取扱説明書)
外観
ローダウンリモートストーブアダプターは、直径が大きな3本の脚とガス缶の頭にねじ込むためのアダプタ、そしてそれらをつなぐ30cmほどの柔らかいホースで構成されています。
▲展開したローダウンリモートストーブアダプター
各部を見ていきましょう。
まずはガス缶にねじ込むアダプターから。
アダプターは円盤形で、ワイヤーでできたフレームアジャスター(火力調整つまみ)が付いています。
▲アダプターにはワイヤーでできたアジャスターが付いている
▲アジャスターを展開した様子
次は脚部。
収納時は3本の脚が閉じて一本にまとまっています。
脚を閉じたまま固定する機構はなく、摩擦で定位置に留まった状態。
▲収納状態の脚部(表面)
▲収納状態の脚部(裏面)
脚の動きはスムーズで、簡単に開くことができます。
▲脚部を開いた状態(表面)
▲脚部を開いた状態(裏面)
脚を開いた時の直径は、MSRキャニスタースタンドとほとんど同じです。
使い方
- まずは脚部を展開し、アダプターのフレームアジャスターも展開してから、アジャスターを完全に閉めます。
- アダプターをガス缶にねじ込みます。
▲アダプターをガス缶にねじ込む - 次に、ガスストーブを脚部にねじ込みます。このとき、ストーブのフレームアジャスターは完全に閉めておかないといけません。
▲脚部にガスストーブをねじ込む - 接続が完了したガスストーブとローダウンリモートストーブアダプターを、安全で平らな場所に設置します。
- ストーブのフレームアジャスターが閉じていることを確認した後、アダプターのアジャスターを開いて耳を澄まし、ガスの匂いがしないことを確認します。
この操作は非常に大切で、ホースやバルブからガス漏れが発生していないかどうかを匂いや音で確認するためのものです。例えば経年劣化でホースにヒビが入っているような場合は、この時点でガスの匂いがするため、使用を中止するという判断ができます。ガス漏れでリモートストーブアダプターが使えなくても、ガスストーブとガス缶を直結すれば、お湯を沸かせないという状況にはなりません。
▲アダプターのアジャスターを開いてガス漏れが無いか確認する - ガス漏れが無いことを確認したら、アダプターのアジャスターを開いたまま、ガスストーブのアジャスターを開けてガスストーブに点火します。そうしたら、ストーブ側のアジャスターを全開位置まで回します。
▲ガスストーブのアジャスターを開いて点火し、全開にする。 - これ以降は、アダプターのアジャスターを回して火力を調整します。
▲調理中はアダプターのアジャスターで火力を調整する - 消火するときは、アダプターのアジャスターを全閉位置まで回し、ホース内のガスが燃え切って火が消えてからガスストーブのアジャスターも全閉にします。
- ガスストーブと脚部が冷めたら、まずはガス缶をアダプターから取り外し、次にストーブを脚部から取り外して収納します。
ローダウンリモートストーブアダプターの機能
そもそも、ローダウンリモートストーブアダプターのような製品がなぜ必要なのか、よく分からないという方も多いと思います。
パッケージに書かれているローダウンリモートストーブアダプターの機能は、以下の3つです。
・ストーブの高さを低くすることで、不整地や周りに子供、ペットがいる場合でも安定性が増します。
・本製品の使用により、シングルバーナーで大きなクッカーを使用することができます。
・熱源からガス缶や手を遠ざけて使用できます。
(出典:ローダウンリモートストーブアダプターのパッケージ)
パッケージに書かれている1番目の機能は、重心を低くすることで安定性を高めること。
実際にローダウンリモートストーブアダプターを使うとどのくらい高さが変わるのか、測ってみました。
注:ここに掲載している画像のガス缶は110サイズです。
まずはポケットロケット2。
山の上では平らな場所はなかなか見つかりませんから、3本脚のスタンドをガス缶に取り付けて安定性を高めて使います。
この時の高さは約17cm。
▲MSRキャニスタースタンドにセットしたポケットロケット2の高さは約17cm
これをローダウンリモートストーブアダプターにセットすると、高さは約12.8cmになります。
▲ローダウンリモートアダプターを接続したポケットロケット2の高さは約12.8cm
ローダウンリモートストーブアダプターとMSRキャニスタースタンドは広げたときの大きさがほとんど変わりませんが、前者の方が脚が太く頑丈なため、重いクッカーを載せた時の安定感に違いが出そうです。
背が高すぎて不安定なウィンドバーナーは、通常の使い方で高さが約32.5cm。
▲標準状態のウィンドバーナーの高さは約32.5cm
ローダウンリモートストーブアダプターにセットすると、高さは約29cmになります。
▲ローダウンリモートアダプターを接続したウィンドバーナーの高さは約29cm
わずか3.5cmの違いですが、低くなるだけではなくウィンドバーナー標準付属の脚よりローダウンリモートストーブアダプターの脚の直径が大きくなるため、安定性は間違いなく向上します。
パッケージに書かれた2つめと3つめの機能は、安全性の向上。
ガス缶直結のストーブに大きなクッカーを載せると、輻射熱でガス缶が過熱される可能性が生じますし、熱くなったクッカーの下に手を突っ込んで火力調節用のアジャスターを回すのはちょっと危ない。
ローダウンリモートストーブアダプターを使うと、ガス缶がガスストーブから離れた場所に設置されるためガス缶が過熱されるおそれがなくなり、ガス缶側の火力調節用アジャスターを回して火力を変えられるため火傷の心配もなくなり、安全性が高まるというわけです。
私の場合はラーメンを茹でたり、レトルトパックや真空パックして持ってきた食材を湯煎で温めている間、景色をぼーっと眺めているのですが、ふと気づくとクッカーから熱湯が吹きこぼれていることがあります。
▲レトルトパックを湯煎しているときに吹きこぼれている様子
ポケットロケット2であればクッカーを取り除いて火を消せば良いのですが、お湯が噴きこぼれているウィンドバーナーのクッカーは簡単に取り外せません。クッカーをひねってストーブ部分との固定を解除しないといけませんし、取っ手がクッカーにピッタリくっついているため、取っ手を持つと吹きこぼれるお湯がかかって火傷間違いなし。
タイミングを見計らい、意を決して火力調節用アジャスターを回すと、大抵の場合お湯がかかって「あっちい!」と一人で騒ぐことになります。吹きこぼれてからクッカーの下にある手にかかるまでの間に湯の温度が下がり、火傷まではしませんが、気持ちの良いものではありません。
ローダウンリモートストーブアダプターを使えば、熱湯が吹きこぼれまくっているクッカーから離れた場所で火力を調節できるため、悠々と火力を下げられるのです。
ところで、ガソリンストーブを使ったことのある方は、ローダウンリモートストーブアダプターを見ると「アジャスターを回してから火力が変わるまでに時間差が生じるのでは?」と気になるかも知れませんが、その心配はいりません。
ガス缶側でアジャスターを動かすと、即座にストーブの火力が変わります。
変なクセを感じること無く使えるため、誰にでも使いやすいと思います。
収納方法
ローダウンリモートストーブアダプターには、専用の収納袋が存在しません。
私の手持ちのポーチ類で試したところ、トランギアの「ストレージサック(¥990)」(TR-746007)がちょうど良い大きさでした。
▲トランギアのストレージサックとの大きさ比較
ローダウンリモートストーブアダプターは上述のように単体で収納する他に、お手持ちのクッカー内に収納する場合も多いと思います。
私はあまりクッカーを多く持っていないので参考になりにくいですが、クッカー内に収納した様子をいくつか紹介します。
注:日本国内では、ローダウンリモートストーブアダプターの動作が保証されているストーブは「ポケットロケット2」と「ウィンドバーナー」だけです。そのため、ここではローダウンリモートストーブアダプターと一緒に収納するストーブを「ポケットロケット2」に限定しています。
まずはSOTOの「ミニマルクッカー角(ST-3108)」。
ミニマルクッカーの容量は1リットルとさほど大きくないため、ローダウンリモートストーブアダプターとポケットロケット2、そしてリフターを収納するだけで精一杯。ガス缶は入れられません。
▲ミニマルクッカーでの収納例(赤いケースはポケットロケット2)
ラージメスティンでも試してみました。
ラージメスティンの容量は1,350ml。ミニマルクッカーより大きいため、ローダウンリモートストーブアダプターとポケットロケット2、そして110gサイズのガス缶も収納が可能です。
ただし、高さが低いためガス缶にキャップを付けているとフタが閉まりません。
▲ラージメスティンならガス缶も含めたストーブ一式が収納できる(ガス缶のキャップを取らないとラージメスティンのフタは閉まらない)
最後は、MSRのQUICK1ポット(容量1.3リットル)。
ラージメスティンとほぼ同じ容量ですが、収納できるのはローダウンリモートストーブアダプターとポケットロケット2の組み合わせ、またはローダウンリモートストーブアダプターとガス缶の組み合わせのいずれかです。
▲QUICK1ポットでの収納例(ローダウンリモートストーブアダプターと110g缶)
▲QUICK1ポットでの収納例(ローダウンリモートストーブアダプターとポケットロケット2)
ご覧頂いた通り、ローダウンリモートストーブアダプターは1リットルサイズのクッカーには収納が可能です。しかし、脚部が嵩張るため他の道具類も一緒に収納するのは難しそう。
最後に
風の無い安定した場所で小さなクッカーだけを使い、お湯が吹きこぼれるような不注意をしなければ、はっきりいってローダウンリモートストーブアダプターは必要ないでしょう。
私のように「景色を楽しむためなら、風が吹き荒れる中でもガスストーブを使う」とか、「景色に夢中になってお湯が吹きこぼれるまで気づかない」という方なら、ローダウンリモートストーブアダプターとウィンドバーナーの組み合わせで、安全性を高めた使い方ができると思います。
私はEPIガスの「ウインドシールド ショート」を持っていて、「ローダウンリモートストーブアダプターに載せたポケットロケット2には高さがぴったり」と思っていたのですが、ローダウンリモートストーブアダプターの説明書には風防を使ってはいけないと書かれています。
決してウィンドスクリーン(MSRブランド含む)を使用しないでください。
(出典:取扱説明書)
背が高くなりがちな一体型ガスストーブは、背が高い風防と組み合わせないと風を防げず、背が高い風防は風に簡単に煽られてストーブやクッカーを倒しやすい上に、内側に熱が籠もってガス缶が過熱されるおそれがあります。
ローダウンリモートストーブアダプターに取り付けたポケットロケット2なら低い風防で風を防げるし、ガス缶が温まることもあり得ないのですが、説明書で禁止されています。
風防を使いたい方は、自己責任でお使いください。
長所
- ガス缶直結型ガスストーブでも、分離式ガスストーブと同様の安全性と安定性を得られる。
- ガス缶が燃焼部から分離されるので、寒い時期にはガス缶を温めながら使える。
短所
- 説明書に従うと、風防が使えない。
- 収納ポーチは付属しない。