趣味で日帰りの山歩きをしていますが、万一、夜までに下山できない状況になった場合に備えて、ヘッドランプなどの灯りを装備しています。
しかし、そういった機器は本当に必要になった場合にスイッチを入れても点かないことがあります。
機器が故障していたり(日常的に使用しないため気づかない)、乾電池を使う製品の場合は電池が液漏れや過放電を起こしていたり、充電式の機器の場合は充電池が劣化するといった事態が発生するからです。
非常用の装備は日々点検をしていれば良いのですが、どうしてもそこまで気が回らず、本物の非常事態に非常用の灯りが使えないことは起こり得ます。
そこで、乾燥した未開封の状態なら製造から10年経過後も使えるという、定期的な点検が不要の非常用ライト「アクモキャンドル」を購入しました。
概要
燃料電池の一種である「マグネシウム空気電池*1」を使用したLEDライトで、電解液となる水を加えることで電力が発生し、その電力でLEDが点灯します。
内蔵されているマグネシウムが全て反応を終える(水酸化マグネシウムになる)まで電力が発生し、アクモキャンドルの場合は一週間程度の連続点灯が可能。
いったん化学反応が始まると基本的には止められないため、一度使うと途中で消灯はできず、使用後は廃棄することになります。
▲ビバーク用ライト「アクモキャンドル」を点灯させた様子
仕様
▲ビバーク用ライト「アクモキャンドル」2個セットのパッケージ
▲ビバーク用ライト「アクモキャンドル」2個セットの内容(取扱説明書とアクモキャンドル×2個)
製品名: ビバーク用ライト「アクモキャンドル」2個セット
メーカー: アクモホールディングス株式会社(東京都)
サイズ: 3.5cm × 6.6cm × 1.7cm(カタログ値)
照度: 約38ルクス
重量: 1個あたり21g(カタログ値)
材質: ポリプロピレン(本体)、マグネシウム板、炭素、紙、銅板(内部)
生産国: 日本
購入価格: ¥1,650(税込)
購入先: 日本山岳救助機構合同会社(jRO)(東京都)
備考: 2014年2月18日付で「消防防災製品等推奨証」の交付を受けています
外観
大きめの消しゴムほどの大きさで、表面には商品名、裏面には使用方法と注意事項が記載されています。
水分に反応してしまうため、丈夫な透明フィルムで密封されています。
▲アクモキャンドルの外観と寸法(左は表面、右は裏面)
透明フィルムを破り、オレンジ色のキャップを取ると剥き出しのLEDが姿を現します。
▲アクモキャンドル本体の上端にはLEDが取り付けられている
本体底面には、電解液となる水を入れるための穴が開いています。
使用時は、この部分を水に浸すことで内部に水を入れます。
▲本体の底は抜けており、両端に切り欠きがあるラベルで塞がれている
重さは、密封用のフィルム込みでおよそ22gと軽量です。
▲密封状態のアクモキャンドルの重量は1個あたり約22g
使い方
使用時には、アクモキャンドル本体に加えて適当な容器と少量の水が必要です。
▲アクモキャンドルを使う時に必要になるもの(開封したアクモキャンドル本体、容器、水)
本体底部の「ここまで水に浸してください」と書かれた水色の帯状の部分を水に漬けます。
多くの水を内部に入れてしまうと、マグネシウムの反応が速く進みすぎて連続点灯時間が短くなる可能性があります。
▲アクモキャンドルの底部を水に入れる(水の深さを5mmにすれば、ちょうど水色の部分だけが水に浸かる)
底部を水に浸して数秒経つと、LEDがじわっと点灯します。
LEDが点灯したら水から出し、底部にキャップをはめて適当な場所に立てると、非常時なら充分と思える明るさの「非常灯」のできあがり。
▲点灯したアクモキャンドル
上の画像で見るとLEDがさほど明るくないように思えますが、先端側からLEDを見るとそれなりに明るいです。
▲先端側からLEDを見るとかなり明るい
暗い中でこのLEDを直視すると、目にLEDの形状がしばらくの間焼き付いたようになります。
山の中でビバーク(非常時の野営)をする際は、白いスタッフサックをアクモキャンドルに被せるなどして、光を柔らかくした方が良いでしょう。
▲アクモキャンドルに白いスタッフサックを被せた様子
スタッフサックが無くても、付属のオレンジ色のキャップを被せても光は弱まります(常夜灯のように光の色がオレンジ色になってしまいますが)。
▲点灯中のアクモキャンドルにオレンジ色のキャップを被せた様子
説明書ではこのオレンジ色のキャップを底部に被せることになっていますが、その理由は長時間点灯させると分かります。
それは、アクモキャンドルの中から出てくるゴミ。
マグネシウムの反応が終わるまで放置したアクモキャンドルのキャップを見ると、微量ですが黒いゴミが入っていました。
▲キャップ内に溜まっていたゴミ
アクモキャンドルは、一度点灯させるとマグネシウム空気電池の化学反応が終わるまで消灯することができません。
光を消して眠りたいという場合に備えて、適当な大きさに切ったアルミ箔も持っていた方が良いでしょう。
アルミ箔は光を通さないため、アクモキャンドルを包めば光を遮ることができます。
▲アクモキャンドルのLED部分をアルミ箔で覆った様子
上半分だけをアルミ箔で包む形にすると、下向きに若干の光が漏れるためアクモキャンドルの位置が分からなくなる心配はありません。
▲アルミ箔で上半分だけを覆うと僅かな光が下に漏れるため、アクモキャンドルを見失う心配はない
最後に
非常時には、点検していない乾電池や充電池は信用できません。
定期的な点検をしなくても、(パッケージが破れて湿気が内部に入り込んでいない限り)非常時には確実に点灯してくれる灯りは、心強い存在です。
LEDの先端側から出る光はそれなりに強いため、アクモキャンドルを手に持つと懐中電灯のように足元を照らすことができますから、(状況によりますが)夜間でも行動が可能になります。
小型軽量で携帯性に優れているため、山歩きの際は救急用品入れに入れていても邪魔にならないでしょう。
災害時の停電に備えて家庭に常備しておくのも良いと思います。
今回の撮影に使用したアクモキャンドルは、兵庫県南部の平地にある我が家の居間(暖房は使用していない)で2月に点灯させましたが、暗くなる度に(数日間隔で)給水したところ、2週間も点灯しました。
消灯するまでの時間は、使用時の気温や給水した水の量で変化すると考えられます。
なお、使用前のアクモキャンドルはキャップを含む重量が約22gですが、複数回にわたって給水し、中のマグネシウムが完全に反応を終えた(LEDが消灯した)時の重量は約28gになっていました。(時間が経つほどアクモキャンドルの本体は膨らんできますが、異常ではありません。)
▲使用後のアクモキャンドルは中央部分が少し膨らむ(上は使用開始時、下は使用後のアクモキャンドル)
長所
- 小型軽量のため、携帯、保管には困らない。
- 少量の水(ジュースや唾液でも良い)があれば点灯させられる。
- 密封されて乾燥した状態であれば、製造から10年経っていても使える。
- 暗くなっても、水を追加すれば明るさが戻る(マグネシウムの反応が終わってしまうと、水を追加しても点灯しない)。
短所
- 一度点灯させると、マグネシウム空気電池の寿命が尽きるまで消灯できない。
- 保護用の透明フィルムが丈夫で、道具を使わずに開封するのが難しい。
- LEDの光は先端側に集中するため、周囲を均一に照らすには工夫が必要。
*1:アクモキャンドルの場合、負極はマグネシウム、正極は銅網と活性炭でできた集電体です。