播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

姫路城 春の特別公開「トの櫓・搦手周辺」

姫路城では、冬期に観光客が減少する対策として「通常は非公開」の場所を公開しています。

令和3年度の特別公開は3月の実施で、公開対象は姫路城 「トの櫓」と「搦手周辺」。
大天守の東側にある搦手道の一部です。

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▲姫路城 との一門(門の左はトの櫓。左上に見えているのは大天守。)

イベント名称: 世界遺産・国宝 姫路城 春の特別公開
期間: 2022年3月1日(火)~3月21日(月)
時間: 9:00~16:30(最終入城 16:00、閉城 17:00)
公開場所: トの櫓、搦手周辺
観覧料: 200円(姫路城の入城料¥1,000が別途必要)
注意事項: 天候により長壁神社遺趾周辺は公開中止になる場合があります。
三脚の使用やフラッシュ撮影、飲食、喫煙は禁止されています。


https://goo.gl/maps/SYcJQkEuQpyBhzcJ9
▲トの櫓の位置

特別公開の場所へ行くための通常のルートは、次の通りです。
(1)登城口で入城券(大人ひとり¥1,000)を購入して城内に入る。
(2)大天守を見終えて備前丸(大天守を見上げる広場)に出る。
(3)備前丸の東端にある備前門を出る。
(4)備前門を出てすぐ左に曲がる。
(5)ちの門の前で観覧料(大人ひとり¥200)を支払う。

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▲備前門を出てすぐ左に曲がり、井郭櫓と備前門の間の通路を進む

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▲井郭櫓前の通路の奥に受付がある

「大天守はいいから、特別公開の場所だけを見たい」という方は、菱の門をくぐってから右へ進み、埋門とぬの門を抜けてお菊井戸のある郭(上山里)に入り、その東端にあるりの門から北へ進んで備前門に向かってください。

観覧料を支払って「ちの門」をくぐると、大天守の東側の真下にある小さな郭に出ます。

北は「への門」と土塀、西は大天守の石垣、南は折廻り櫓、東は「ちの門」で守られた小さな空間です。

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▲「ちの門」を抜けた先の光景(正面は大天守の石垣、右前方には「への門」)

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▲振り返ると「トの櫓」(中央)と「との一門」

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▲郭の南を守る折廻り櫓

城外側からとの一門を入ると、正面に天守台石垣が立ち塞がり、折廻り櫓とへの門東方土塀で囲まれた小さな曲輪となっています。折廻り櫓の室内は書院造りになっているにもかかわらず、この小曲輪に面した室内壁面には狭間が設けられているという特殊さで、この小曲輪に対する防御意識の高さが窺われます。
(出典:現地の看板)

折廻り櫓の内部は、2017年度の特別公開の際に撮影した画像がありますので、紹介します。

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▲折廻り櫓2階西室内部の様子(書院造りの室内に、曲輪に向けて狭間が設けられている)撮影日:2018年2月3日

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▲折廻り櫓2階中室の北面にある窓から曲輪はこのように見える(撮影日:2018年2月3日)

折廻り櫓はこのくらいにして、まずは今回特別公開された「との一門」の外観を紹介します。

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▲「との一門」の内側(門扉の上半分が格子になっているのが特徴的)

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▲「との一門」の外側

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▲「との一門」の武者窓は突上げ窓になっている

との一門
 姫路城に残る櫓門で白漆喰(しろしっくい)の塗っていない唯一の門です。「昭和の大修理工事」までは白漆喰が塗ってありましたが、解体してみると当初は塗ってなかったことがわかったため、元のとおり素木造り(しらきづくり)に戻しました。
 1階の門部では、門扉の上半分を格子、下半分を板張りとした透かし門となっています。透かし門は門扉を閉めていても城の外と内が見えるもので、姫路城ではこれも唯一の事例です。また、饅頭金物には菊座や樽口がない古いタイプのものが使われています。
 2階の櫓部では、正面の武者窓が突上げ窓になっていて、ほかの櫓門が引戸であるのに比べて古式な造りになっています。そのため、置塩城から移築されたものとの説があります。
(出典:現地の看板)

「との一門」から外へ出ると石段の下り坂が右へ直角に曲がっていて、その先には「との二門」があります。

つまり、この場所は「との一門」と「との二門」に挟まれた枡形虎口*1になっています。

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▲「との一門」を出ると目の前は土塀で、右下に「との二門」の屋根が見えている

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▲との二門(内側)*2

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▲との二門(外側)

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▲「との一門」と「との二門」で構成された枡形(トの櫓から撮影)

搦手道には、との一門・との二門で構成された枡形が残っています。姫路城では枡形の2つの城門と土塀が残っている唯一の例です。
(出典:現地の看板)

「との二門」を抜けて搦手道を下ると、すぐ長壁(おさかべ)神社跡です。

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▲長壁神社跡の石碑(神社跡地への立ち入りはできません)

長壁神社跡
 長壁(刑部)神社は、姫路城の建つ姫山の地主神として古くから崇められてきました。神社は城の鬼門に建てられ、城を守護する物と信じられていました。
 池田輝政が姫路城築城を行っていた頃、子の刻(午前2時頃)太鼓を打つと悪鬼が現れて人を殺すとか、数々の怪異の話が広まり姫山から城下に移されていた刑部社の祟りに違いないと噂されました。同じころ、「城の艮に八天塔を建てないと、輝政夫妻が呪い殺される」という内容の書状が発見されました。はたして輝政は原因不明の病に侵されたので、円満寺の明覚を招いて護摩の修法を行い、この場所に刑部社を戻すとともに同じ境内に八天塔も建てました。やがて怪異は鎮まり、輝政の病状も回復したといいます。
(出典:現地の看板)

長壁神社跡を見上げる場所から下は通行止め。

ちなみに、そのまま搦手を下ると「との四門」に至ります。

この「との四門」の前には小屋がありますが、昔はここも受付になっていて、搦手から姫路城に入ることも可能でした(今は封鎖されています)。

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▲姫路城の東にある搦手の入口(右下が「との四門」)撮影日:2022年3月20日

Uターンして「との一門」と「ちの門」の間の郭に戻り、今度はトの櫓の内部を見学します。

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▲トの櫓の入口

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▲トの櫓内部

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▲トの櫓内部から見た「との一門」の2階内部(立入禁止)

トの櫓
 トの櫓は、との一門の続き櫓でとの一門の2階への入口になります。建物の平面は菱形で、室内は1室で床は土間になっています。床面は水平でなく東側に傾斜しています。
 城内側(西側)に窓はありませんが、東側と南側に格子窓が1ヵ所ずつ開いています。この櫓の下に搦手道が通っていますが、下を狙える石落しがないので、その方向を攻撃するには、この2つの格子窓を使わなくてはなりません。とくに窓の直下にはとの二門があるので、格子窓からは真下にむけてとの二門を射撃する必要があります。そのため、窓の下に床板を張って高くして、有効な射撃ができるようにしているとみられます。
(出典:現地の看板)

トの櫓の窓から搦手道を見下ろすと、「との二門」の外側と内側の両方が見えます。

つまり「との二門」を攻める敵を攻撃できますし、仮に門が破られても、「との一門」手前の枡形で進撃が止まる敵を引き続き攻撃できるのです。

小さな窓ですが、効率の良い場所に開けられていることがよく分かります。

大きな窓にすると攻撃力が増しますが、逆に敵から攻撃を受けやすくなるので、窓は小さな方が良いのでしょう。

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▲トの櫓東側の窓から搦手道を見た時の視界(中央は「との二門」の屋根)

トの櫓を見学される際は、城を守る兵士の気分で搦手道を眺めてみてください。

お城は軍事拠点ですから、そういった視点で見ることでいっそうお城の魅力を楽しめると思います。


特別公開の場所で6つの全天球パノラマを作成しましたので、興味のある方はご覧ください。

画面左上のリストで6箇所を切り替えられますし、画面内に矢印が表示されている場合は、それをクリック/タップしてその先で撮影した全天球パノラマに切り替えることもできます。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/himejijo20220319/index.html
▲姫路城 トの櫓・搦手周辺で撮影した全天球パノラマによるバーチャルツアー(撮影日:2022年3月19日)

*1:ますがたこぐち。「枡形」は四角い空間という意味で、進入する敵部隊を閉じ込めて周囲の窓や狭間から鉄砲や弓で撃破するための場所です。「虎口」は、城に出入りするための門のことを言います。

*2:手前に延びる2つの屋根は、開いた門扉を雨から守るためのものです。