播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

兵庫県高砂市の竜山に表登山道で登る

昨晩に食べ過ぎ、飲み過ぎたため、お腹の調子が今ひとつ。
こんな体調でも登れる日当たりの良い暖かい山で、お腹に優しい雑炊を食べようと考えて適当な山を探していたら、竜山(たつやま)を思い出しました。

2021年5月8日付の神戸新聞「東播」のページに「わが町リポート」という欄があって、そこに竜山の新しい登山道が完成したという記事が掲載されていたのです。

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▲国道250号線から見た竜山(電波塔が立っている)

竜山は2018年4月に一度歩いたことがありますが、山頂は魚崎(いほざき)構居跡*1というだけあって平坦で展望が良く、標高が低いので簡単に登れる魅力的な山です。

というわけで、楽に登れて展望を楽しめる竜山に、新聞で紹介された新しい登山道で登ってみることにしました。

Googleマップの航空写真を見ると、竜山の山頂からは南東へ延びる登山道(新聞に紹介された登山道)の他に、北東へ延びる道(地形図の破線道?)も見えます。

新聞で取り上げられた登山口の位置は分かっていますが、北東へ延びる道の登山口は分からないため、それを確認することも今回の目的にしました。

山の北には採石場がありますから、地形図の破線道が正しければ、北東へ延びる道は採石場に通じていて通行禁止の可能性もあります。
その場合は西の加茂神社へ下山することにします。

竜山の西へ下山する可能性があったため、「竜山」交差点近くのコインパーキングを利用することにしました。

ここに車を駐めれば、加茂神社に下山した場合にすぐ駐車場へ帰れますし、山の東にある登山口までの距離も1km程度です。

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▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「加古川」

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▲カシミール3Dで作成したルートの断面図

09:55
姫路市街の自宅を車で出発。

姫路バイパスではない方の国道2号線を東進し、道路が高御位山塊の南西の尾根をかすめる辺りにある「豆崎東」交差点を右折します。

陸橋でJRの線路を越えて南下し、「高砂西ランプ」交差点を左折。
姫路バイパスの高架の下を東へ進みます。この道は国道250号線(明姫幹線)です。

「高砂西ランプ」交差点からおよそ2.3km東へ走ったところに「竜山」交差点がありますが、その交差点を左折してすぐ左にあるコインパーキング(三井のリパーク 高砂竜山2丁目駐車場)に車を止めました。

姫路バイパスを使わなかったのは、一般道を通れば万一お腹の調子が悪くなったときにコンビニなどに立ち寄れるからです。


https://goo.gl/maps/uYf3sWNss6fpE62V6
▲コインパーキングの位置

10:28
コインパーキングに到着(地図中「P」)。

前払いチケット制になっており、24時間以内の駐車の場合は¥300でチケットを購入し、ダッシュボードにチケットを置いて駐車するという仕組みです。ゲートやロック板はありません。

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▲三井のリパーク 高砂竜山2丁目駐車場(コインパーキング)の様子

靴を履き替えたり、GPS受信機の測位完了を待ちます。

普通のコインパーキングですからお手洗いはありませんが、飲み物の自販機がすぐ隣に設置されています。また、これから歩く国道250号線沿いの飲食店や中古車販売店前など、複数の場所に飲み物の自販機があるため飲み物の調達には困りません。

10:36
準備が整ったので出発。
国道250号線の北側の歩道を東へ進みます。

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▲国道250号線北側の歩道を東へ歩く

700mほど歩いたところにある「竜山大橋西詰」交差点を左へ曲がって県道391号線に入ると、すぐに法華山谷川(ほっけさんたにがわ)に架かる竜山橋に出会います。
橋は渡らず、手前の分岐を左へ。

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▲川を渡る手前の分岐を左に入る

そのまま法華山谷川の右岸*2を200m弱ほど北東へ歩いたところに登山口があります。

10:51
登山口に到着(地図中「登山口」)。
「竜山登山入口」と書かれた標柱が立っています。

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▲登山口

登山口の標柱が立つ場所から坂を上ると、すぐに祠が建つ広場に出ました。
ここには「竜山表登山道」と刻まれた新しい石のモニュメントが設置されています。

ここまで歩いただけで暑く感じるほどの気温のため、上着を脱ぎました。

それにしても、この広場は何の跡地なんだろう。
祠があるということは、昔は寺社が建っていたのかな。それとも、魚崎構居の付属施設があったのかな。

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▲広場の様子

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▲竜山表登山道のモニュメント(左のプレートは、魚崎構居跡の発掘調査について説明したもの)

モニュメントに向かって右側に石段の登山道があるので、そこから入山します。

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▲登山道は石段で始まる

登り始めてすぐに「タヌキの穴」とプレートが立つ石に出会いました。
石の下に狭い空間があり、小さな動物なら潜めそうな場所です。

その先も石段の道が続きますが、急斜面では石段が丸太や単管パイプなどで補強されており、安心して歩けました。

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▲崩れそうな場所はしっかり補強されている

登山道沿いには採石の跡や、明らかに人工的な石積が見られます。

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▲登山道沿いの石積

いつ頃のものか判断できるような知識もないので、魚崎構居があった当時の道かも知れないと妄想を楽しみながら歩いていると、縦に細長い巨岩に出会いました。

木製の看板が立っていて、それによると「ジャイアント馬場顔岩」だそうです。
確かに、面長の男性の顔に見えます。

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▲ジャイアント馬場顔岩

ジャイアント馬場顔岩を回り込み、巨岩のすぐ脇を通る細い道を過ぎると、道は小規模な採石跡を時計回りに回り込むように延びていきます。

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▲巨岩裏の細い道

採石跡を回り込んで登った先には、「竜山の木席」と書かれた看板が立つ丸太のベンチがありました。
ここに座ると南方面の景色が楽しめますが、山頂はもすうぐです。

山頂の直前には両脇が切れ落ちた土橋状の道がありますし、山頂の南側には空堀跡のような凹みがいくつもあります。
小規模とはいえ、城跡らしい雰囲気がたまりません。

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▲山頂南端付近の空堀跡(?)の様子(矢印の方向に地面が下がっている)

11:09
木々が生えていない、広々とした竜山の山頂に到着しました。

大きな電波塔と魚崎構居について説明する看板があり、最高部には二等三角点標石(点名:石宝殿)が埋設されています。

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▲竜山山頂の様子

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▲最高部から南東方面の展望(奥の島影は淡路島)

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▲二等三角点標石(点名:石宝殿)

魚崎(いほざき)構居跡
 魚崎構居があった竜山は古代からの採石場である。
 主郭は頂上部に削平地があるのみで削平地からは付近全域を一望することができる。
 室町時代の嘉吉元年(一四四一)には和木田兵庫介綱忠が築城したという。その後は天正六年(一五七八)に志方城主櫛橋氏の幕下として落城するまでは位田(依田)長兵衛が構主であった。
 標高九二m頂上部は「本丸」と呼ばれ竜山六号墳でもある。構居は平成五年(一九九八)の発掘調査で礎石建物(三間×四間以上)の遺構などが発見されている。

竜山塩の会

(出典:現地の看板)

魚崎(いほざき)構居(高砂市伊保町伊保崎)
【城史】嘉吉元年(1441)には和木田兵庫介綱忠が城主であったという(『日本城郭全集』)。その後天正6年(1578)志方城主櫛橋氏の幕下として落城するまでは、位(依)田長兵衛以下、6代が居住し、のち浮田氏家臣となったという(『播磨古城記』『赤松家播備作城記』)。
【現状】古代からの採石場として、また巨石「石の宝殿」で著名な「竜山石」を産出する山塊の最南峰に遺構はある。眼下東方には山麓沿いに法華川が北から南行し、伊保港へ注ぎ込んでいる。また、さらに東前方には加古川本流が、高砂浦へと南流している。本城志方城はともに気脈を通じる神吉城のさらに北方の位置にある。
 主郭は標高92mの地点にあって、ここを地元では「本丸」と称し、2段の削平部らしき構造を有している。

(出典:都道府県別 日本の中世城館調査報告書集成 第15巻 P126 
   兵庫県教育委員会・和歌山県教育委員会編 2003年4月30日発行 ISBN4-88721-446-4)

2018年にここで全天球パノラマ(地上と空撮の2種類)を撮影したので、ご覧ください。

2種類のパノラマ画像を切り換えて表示できます。
画面左上のリストの初期設定は「竜山山頂」で、三角点近くで撮影した全天球パノラマが表示されます。
「空撮」を選択すると、ドローンで少し高い位置から撮影した全天球パノラマが表示されます。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/tatsuyama20180422/virtualtour.html
▲竜山山頂で撮影した全天球パノラマ(撮影日2018年4月22日)

この展望の良い山頂で頂く本日の昼食は、暴飲暴食でお腹の調子が悪い今日の私にぴったりな「かにぞうすい」。

カニの身が入ったスープとパックご飯、フリーズドライの具材が使い捨てのアルミ鍋に入った便利な商品です。

卵と乾燥ワケギを追加し、より豪華にして頂きました。

気温は12℃もありますが3m/秒前後の風が吹いているので、体感温度は低め。
そんな中で食べる熱々の雑炊は最高です。

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▲本日の昼食は「かにぞうすい」

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▲卵1個と乾燥ワケギ1袋を追加して煮込んでいる様子

山頂からは姫路城が見えますし、姫路城の右奥、遥か先には雪をかぶった那岐山?まで見えました。(竜山から那岐山までは直線距離で70kmほどあります)

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▲山頂から見た姫路城と那岐山?

視線を右にやると、雪をかぶった後山山塊もくっきりと見えました。

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▲雪に覆われた後山山塊

北には高御位山塊が大きく見え、その右には志方城山、さらに視線を右に移すと平荘湖周辺の山並みが間近に見えます。

志方城山の左、加西方面を見ると、気球がぽつんと浮かんでいました。
気球といえば早朝のイメージがありますが、お昼でも飛ばすんですね。

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▲加西市の上空に浮かぶ気球

生石神社方面から続く道に気配を感じたのでそちらを見ると、大きなタヌキが1匹トコトコと山頂方面へやって来て、山頂近くの茂みの中に飛び込んで姿を消しました。

長閑で良い場所です。

12:26
素晴らしい展望と絶品のかにぞうすいを満喫したので、下山開始。

航空写真で気になった、北東へ延びる道へ向かいます。

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▲最高部から南を見て左へ大きく弧を描く道へ入る

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▲北東方面へ下る道の入口(三叉路を直進する)

路面には草や落ち葉が無くてきれいですし、しっかり踏み固められています。つまり、今でもよく歩かれている道ということ。

「採石場に通じていて通行禁止になっているのでは?」という心配は杞憂に終わりました。

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▲しっかりした道が続く

途中では切り通しのようになった場所もあり、そこは路面にステップまで刻まれています。

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▲切り通しと路面に刻まれたステップ

麓が近づくと、道沿いに石を積んだオブジェがいくつも現れ、その先で採石場跡(?)の中に下りてきました。

ロープで挟まれた通路になっており、通行禁止というわけではなさそう。

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▲採石場跡に下りてきた

12:35
最終的には、法華山谷川の右岸に付けられた道路沿い「(有)リテラ」の看板のある場所に下りてきました(地図中「下山地点」)。

ここには鎖が張られていますが、それは車両進入禁止という意味で、ハイカーは立ち入っても良いのかも知れません。実際、この坂を下る手前(こちらから登る人が山に入る直前の場所)にはハイカー向けの杖が用意されていましたから。

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▲ここに下りて来た

この道の西側(上の写真では道の右側)は現役の採石場ですが、東側は採石がされていないため、登山者が通っても良い状態になっているのかも知れません。

駐車場からは山を挟んで正反対の場所に下りてしまいましたが、竜山の新しい登山口を知ることができたので満足。

法華山谷川沿いに南へ歩き、国道250号線を西へ進んで駐車場へ。

駐車場へ戻る途中で、「金時井堰(きんときいせき)なるものに出会いました(地図中「金時井堰」)。

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▲金時井堰

江戸時代の文化年間(1804~1818)、旱ばつで困っていた村人たちのため、伊保崎村の『金時宗五郎』が竜山東麓から伊保地区の水田へ水をひく井堰(金時井堰)のある用水路を造りました。その後、天保2年(1831)に『金時宗五郎』のあとを継いだ『中村五郎右衛門』が、“米田町島(よねだちょうしま)”を流れる“間の川(あいのかわ)”から“法華山谷川(ほっけさんたにがわ)”の川底をくぐって“米田町塩市(しおいち)の山所(やまじょ)”へ水を通す用水路の工事を完成させました。
(出典:現地の看板から一部を抜粋)

12:57
駐車場に到着。

13:44
自宅に到着。


交通アクセス

今回は北へ下山できるかどうか不明だったため、西へ下山した時に備えて「竜山」交差点のコインパーキングに車を置きました。(北へ下山後、再度登り返して西へ下れば舗装路歩きを減らせたのですが、体調が優れなかったため登り返しませんでした。)

今回のルートで歩く場合は、高砂市総合運動公園の駐車場を利用した方が無駄な舗装路歩きを避けられて便利です。ただし、スポーツのイベント等で運動公園の利用者が多い状況でそちらの駐車場を使うと、運動公園の本来の利用者が車を駐められなくなりますから、マナーを守るというか常識的な判断で駐車場所をお選びください。

公共交通機関を利用される場合は、JR宝殿駅の南口にある「駅リンくん宝殿店」でレンタサイクルを借りて来ることも可能です。

その場合は、JR宝殿駅から県道393号線を西へ進み、法華山谷川を渡ってすぐに南へ折れるルートで、登山口までは約2.5kmです。

レンタサイクルの利用には身分証明書が必ず必要ですので、忘れないようにご注意ください。

竜山の北西には、謎に包まれた巨石「石の宝殿」が祀られた生石神社(おうしこじんじゃ)があります。

石の宝殿の全天球パノラマを掲載しますが、ぜひ本物をご自身の目でご覧ください。


https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/ishino_hoden/virtualtour.html
▲石の宝殿で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2013年1月12日)

*1:構居は「こうきょ」あるいは「かまい」と読み、小規模な城を意味する言葉です。

*2:川下を向いて川の中に立ったときの右側。この場合は川の西。