播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

Leathermanのアウトドア用マルチツール:SIGNAL Coyote

山歩きの時には様々な工具が収納されたツールナイフ、昔ながらの呼び方だと「十徳ナイフ」を持ち歩くことにしています。過去にツールナイフに救われたことが何度かあり、使わない機能が満載なのに、それ以来手放せないのです。

高価で重いのに山へ持って行くのは、「これさえあれば、色んな状況に対処できる」という安心感のため。

ツールナイフのメーカーで有名なのはLeatherman(レザーマン)やGerber(ガーバー)、スイスアーミーナイフのVictorinox(ヴィクトリノックス)といった会社。

これら3社の製品を使ったことがありますが、耐久性や工作精度、使い心地、見た目の良さで選ぶと、私の感覚ではLeathermanがベスト。

直近で購入したツールナイフもLeatherman社の製品で、OHTと呼ばれるモデルです。

しかし、これがどうも気に入りません。

見た目がLeatherman製品らしくなく、むしろライバルのGerber社製ツールナイフのような雰囲気です。

また、内蔵されている工具類も使いやすくない(ツールナイフの工具は、単体工具に比べるとそもそも使いにくいですが、それを考慮した上でも使いにくい)ため、使いたいと思えません。

そこで、Leathermanらしい製品で、なおかつアウトドア向きのものということで、SIGNAL(シグナル)、それも数量限定のCoyoteモデルを購入しました。

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▲Leatherman SIGNAL Coyoteを展開し、ペンチとして使える状態にした様子

概要

SIGNALは、ツールナイフで有名なアメリカLeatherman社が販売している、アウトドア向けのツールナイフです。

アウトドア向けを謳うだけあって、火おこし用のファイヤースターターや、ペグなどを地面に打ち込めるハンマー、非常時に助けを呼ぶためのなどが装備されています。


www.youtube.com
▲メーカー公式動画

この記事では、Leatherman SIGNAL Coyoteを「SIGNAL」と省略して表記します。

仕様

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▲SIGNALのパッケージ

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▲パッケージ内部の様子

製品名: Leatherman SIGNAL Coyote*1
メーカー: Leatherman Tool Group, Inc.(アメリカ)
サイズ: 全長11.4cm(収納時のカタログ値) 刃渡り6.9cm(カタログ値)
重量: 212.6g(カタログ値)
材質: ステンレススチール(ツール類は黒被膜処理)
生産国: アメリカ
国内定価: ¥24,750(税込)
アメリカでの定価: $119.95 USD
購入価格: ¥17,515(税込)
購入先: Amazon.co.jp
備考: ナイロンケースが付属します。

外観

Leatherman SIGNAL Coyoteの見た目は、コヨーテタン(Coyote Tan)と呼ばれるカーキ色*2のような色と、黒被膜処理(DLCコーティング)された工具類の色の組み合わせが抜群に格好良いです(個人的な感想です)。

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▲収納状態のSIGNAL(表面)

正規輸入品を購入したので、裏面には日本向け正規輸入品であることを示すLTJマークが印刷されています*3

こちらの面にはポケットクリップがついており、これを使えばポケットやバックパックのストラップにSIGNALを留めて携帯することも可能。

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▲収納状態のSIGNAL(裏面。正規輸入品の証明であるLTJマークがある。)

Leatherman SIGNAL Coyote本体のコヨーテタンと呼ばれる色は、Leatherman社がOHT以降の一部製品に採用している表面処理「セラコート(Cerakote)」によるものです。

非常に硬いセラミックコーティング(硬度7H~9H)なので、使っている内に傷ついたり剥がれてくる心配はほとんどありません。

機能

SIGNALには、カタログ値で19種類の工具が備わっています。

それらをLeathermanのWebサイトに掲載されている順で紹介します*4

  1. ニードルノーズプライヤー
  2. レギュラープライヤー
  3. 154CM取替式ワイヤーカッター
  4. 154CM取替式ハードワイヤーカッター
  5. ワイヤーストリッパー
  6. 420HC直刃波刃コンボナイフ
  7. ノコギリ
  8. ハンマー
  9. 紐通し穴付きキリ
  10. 缶切り
  11. 栓抜き
  12. 1/4”六角ビットドライバー
  13. ラージビットドライバー
  14. 1/4”ボックスレンチ
  15. カラビナ
  16. 3/16”ボックスレンチ
  17. 救難ホイッスル
  18. ファイヤースターター (フェロセリウム棒)
  19. ダイヤモンドコーティングシャープナー

これらを順に紹介していきます。

まずは主力工具であるペンチから。
ペンチは、湯煎したレトルトパックを熱湯から安全に引き上げたり、使用して高温になったアルコールストーブの火力調整フタを操作する際に便利。

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▲展開したSIGNAL

上の写真のように展開すると「ペンチ」という一つの工具に見えますが、実際はペンチの先の部分が細かく分類されています。

ニードルノーズプライヤーは、日本語でラジオペンチと呼ばれている工具の英語名。
レギュラープライヤーは、ペンチの英語名です。

2種類のワイヤーカッターの名称に使われている「154CM」は、クロムを15%、モリブデンを4%含む鋼材の名称。

ワイヤーカッターの刃はネジ留めされているため脱着が可能になっており、傷んできたら別売の「154 CM 取替用ワイヤーカッター(ブラック)(税込定価¥2,090)」と交換できます。

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▲ペンチ先端部分の工具類

続いて刃物。

缶切りの根元にはワイヤーストリッパーが備わっています。
アウトドアでこれを使う状況が想像できません。

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▲ワイヤーストリッパー

ナイフは、直刃と波刃が組み合わさっているので、「コンボナイフ」となっています(420HCは素材の名称で、HCは炭素量が多いことを表す「High Carbon」の頭文字。)。

ナイフの刃はインスタント食品などの開封時に使えますし、ナイフの背は卵を割るときに便利。
ロープを使う方なら、波刃がロープの切断に便利かも。

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▲420HC直刃波刃コンボナイフ

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ノコギリ(山歩きでは滅多に使うことはありませんが、昔、強烈な台風で私が歩く地域の山で倒木が増えたときは、倒木の下側の枝を切り、くぐり抜けられるだけのスペースを作るのに小型のノコギリが活躍したことがあります。)

次は、Leatherman製品ではSIGNALとMUTにしか備わっていない珍しい工具、ハンマーです。

ペグを打ち込んだりするのに使えるのでしょうが、私の場合は山歩きで使う機会がありません。

以前、真冬に山の中でチョコレートバーを食べようとしたら石のようにカチコチに固まっていて、口の中で溶かそうにも、口に入るサイズに割ることができないということがありました。あの時にハンマーがあれば、苦労せずにチョコレートバーを食べられたかも。

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▲ハンマー

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▲ハンマーを使う時の握り方(対象を正確に叩かないと、手を負傷するので注意が必要。)

次は、「開ける」系の工具類。

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紐通し穴付きキリ(穴を「開ける」)(何に使うんだろう?)

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缶切り栓抜き*5(容器のフタを「開ける」)(以前は、プルトップでない缶詰を山に持って行ってしまったときに役立ちました。最近はそんな缶詰は少数派。私の場合、栓抜きを山歩きで使うことはありません。)

続いては、ドライバー系の工具です。

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1/4”六角ビットドライバー

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▲ソケットに差し込む部分が六角形の一般的なドライバービットと組み合わせれば、レンチのように使える(写っているビットはSIGNALに含まれません)(山では使いません。)

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ラージビットドライバー(山では使いません。)

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1/4”ボックスレンチ(ドライバービットを刺さなければボックスレンチ。サイズが限定され過ぎで、使い道がありません。)

アメリカのLeatherman社のWebサイトに表記されている順序に従うと、なぜかドライバー類の中に突然カラビナが混じります。

カラビナをズボンのベルトループ等に引っ掛ければ、専用ケースを使わなくてもSIGNALを携帯できます*6

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▲カラビナ

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3/16”ボックスレンチ(サイズが限定され過ぎで、使い道がありません。)

次は、アウトドアでの非常時に役立ちそうな工具類。

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救難ホイッスル

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ファイヤースターター (フェロセリウム棒)

最後は、ナイフの切れ味を復活させる砥石代わりのシャープナー。
直刃だけでなく、波刃も研げます。

これで刃を擦ると刃が傷みそうなので、私の場合は使うことがないと思います。

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▲ダイヤモンドコーティングシャープナーはグリップの外側に取り付けられている

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ダイヤモンドコーティングシャープナー

使う機会が無さそうなものや、数え方が無理矢理のものもありますが、以上がSIGNALに搭載されている19種類の工具です。

SIGNALの操作方法

SIGNALには、他のツールナイフには見られない「グリップが開かないようにするためのロック機構」がついています。

仕組みは単純で、スライド式の金属パーツを出してロック、引っ込めてロック解除というもの。

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▲グリップが開かないようにするためのロック機構(グリップを閉じた状態でロック状態にすると、ロック機構が邪魔になってグリップが開かなくなる)

ナイフとノコギリは開くと自動的にロックがかかるようになっており、収納するときはロック解除操作が必要になります。

これは、ナイフなどの使用時に不意に刃が閉じてケガをしないようにするための仕組み。

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▲ナイフは矢印の方向へ引き出して使う。画像内で示された部分を押さないと閉じない。

紐通し穴付きキリ、缶切り/栓抜き、ラージビットドライバーはグリップの内側から引き出して使用しますが、これらの工具類は、完全に引き出すと自動的にロックがかかり、力がかかっても勝手に閉じないようになります。

収納するときは、ロックボタンを押しながら回してグリップ内へ収めます。

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▲グリップ内側の工具類は矢印の方向へ引き出して使う(閉じるときは、ロックボタンを押しながら矢印と逆方向に動かす)

グリップ内の工具を使う時、一般的なツールナイフならグリップを閉じた状態で利用ができます。

しかし、SIGNALは缶切り/栓抜き、ラージビットドライバーを引き出した状態でグリップを閉じることができません*7

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▲工具とハンマーが干渉してグリップを閉じられない

そのため、ドライバーを使ったり缶詰を開けるときは、下の画像のようにSIGNALを伸ばした状態で使うことになります。

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▲ドライバー等の工具はグリップを開いた状態で使う

SIGNALの工具の中で、「他のツールナイフより便利かも」と思えるのが「1/4”六角ビットドライバー」。

一般的なドライバービットが差し込めることは既に書きましたが、SIGNALなどLeatherman製ツールナイフに使われている平らなドライバービットも使えるのです。

SIGNALに付属するドライバービットの断面を見てください。
ビットの形状が六角形の一部になっているのがお分かりでしょうか。

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▲付属のドライバービット

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▲付属のドライバービットの断面(正六角形の一つの内角は120°ですが、ビットの両側の角度も120°になっています)

平らなドライバービットも1/4インチサイズなので、「1/4”六角ビットドライバー」にセットできるのです。

付属のビットの先端(プラスドライバーとマイナスドライバー)のサイズが利用目的に合っているなら、別途ドライバービットを購入する必要がありません。

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▲付属の平らなビットを「1/4”六角ビットドライバー」に差し込んだ様子

これの何が便利かというと、ネジを締めるときの最後の一回しや、逆にきつく締まったネジを緩めるときの最初の一回しの際に「1/4”六角ビットドライバー」を使えば、大きな力をかけられること。

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▲緩むと困るネジを締める際、最初は通常のドライバーとしてSIGNALを使う

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▲最後だけ「1/4”六角ビットドライバー」にビットを差し替えてしっかり締める

ただし、「1/4”六角ビットドライバー」にはビットを固定する仕組みがなく、ビットを下に向けると簡単に脱落してしまうので要注意です。

ケースについて

SIGNALには純正のケースが付属します。
純正品だけあってサイズはSIGNALにピッタリ。

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▲付属する純正ケース

フラップの固定にはスナップボタンが使われています。

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▲フラップはスナップボタン留め

ケース自体をどこかに取り付けるための仕組みは開閉できないベルトループだけなので、使い勝手は良くありません。

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▲ケース裏面のベルトループ

そこで、別売の純正アクセサリ「MOLLEナイロンケースXL ブラウン(税込定価¥2,750)」を購入しました。

名前の通りMOLLE(モーリー*8。軍用装備に使われている連結システム。)に対応しているため、MOLLE対応のバックパックなどを使っていれば、取り付け位置の自由度が高まります。

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▲MOLLEナイロンケースXL ブラウンの表面

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▲MOLLEナイロンケースXL ブラウンの裏面(MOLLEに対応)

フラップはベルクロ留めで、しかもベルクロの面積が大きいため、開ける際に「ベリベリ」と大きな音が鳴るのが欠点です。

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▲MOLLEナイロンケースXL ブラウンのフタはベルクロ留め

MOLLEについては当ブログで過去に紹介していますので、興味のある方はこちらをご覧ください。

最後に

Leatherman SIGNAL Coyoteは、見た目の格好良さが抜群です。

笛や火おこし、ハンマー、大きなトルクでビットを回せるレンチの機能など、他のツールナイフには見られない面白い機能が備わっており、しかも比較的軽量。

前に買ったOHTは使う気が起こりませんでしたが、SIGNALは見た目も機能も優秀で、とにかく使いたく(触りたく)なる傑作ツールナイフだと思います(個人的な感想です)。

ただ、いくら便利だからといって常に車に置きっぱなし/鞄に入れっぱなしにしておくと、職務質問等でSIGNALが見つかった場合、銃刀法違反になる可能性があります*9

SIGNALを持ち歩くのは、キャンプや登山の時だけにしないといけません。

長所

  • 見た目がとにかく格好よく、質感も高くて所有欲が満たされる(個人の感想です)。
  • Leathermanの他のツールナイフに比べると、比較的軽量。
  • 本体に備わっているカラビナやクリップを使えば、ケースを使わず単体でも携帯できる。

短所

  • ペンチとワイヤーカッター以外の工具は、本格的な利用には使えない。「無いよりマシ」というのが正直なところ(どのメーカーのツールナイフにも共通する欠点)。
  • 黒っぽい工具は、暗い場所での視認性が低い。
  • 六角ビットドライバーにビットを固定する仕組みがないので、ビットを落としやすい。
  • ナイフの全体が直刃でなく、一部が波刃になっているのは好みが分かれるところ。
  • 付属のケースは、固定方法がベルトループしかない。

*1:レザーマン・シグナル・コヨーテ。コヨーテは色の名前。

*2:土色。濃緑色をカーキと呼ぶのは誤用。

*3:LTJマークがあれば、日本国内で25年保証を受けられます。

*4:レザーマンジャパンのサイトでは複数の工具が1行に書かれているため、17行しかありません(このブログ記事掲載時点)。本国のサイトでは19個の工具が全て列挙されているため、そちらの順序を使うことにしました。

*5:メーカーサイトではこの部分が「栓抜き」とされていますが、メーカー公式動画ではカラビナが栓抜きとして使われています。

*6:登山やキャンプなどの正当な理由がない状況で携帯(身につけたり鞄に入れたり、車に入れておく等)していると、罪に問われる場合があります。

*7:「紐通し穴付きキリ」だけは、展開した状態でグリップを閉じられます。

*8:よく見る「モール」は誤読。読み方が「モーリー」と決められた固有名詞なので、「モール」と読む合理的な理由はありません。

*9:SIGNALの刃渡りは6.9cm。銃刀法の第22条では、正当な理由がなく刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯することが禁止されています。罰則は2年以下の懲役か30万円以下の罰金。