アウトドア系の活動には、常に事故の危険がつきまといます。
私の趣味である山歩きだと遭難の危険がありますから、山に入るときは万一の場合に自分の居場所を周囲に知らせるための道具類を装備しています。
今年(2021年)、「これが居場所を伝達するための最強の手段だろう」と思えるサービスを契約したので、紹介します。
▲「ココヘリ」のステッカー
- 概要
- 申し込み方法
- 会員証(LIFE BEACON)の仕様
- 会員証(LIFE BEACON)の外観
- 会員証(LIFE BEACON)の使い方
- 山へ行く前に
- 下山後
- LIFE BEACONの日常生活での活用方法
- 最後に
- 重要
概要
今回紹介するのは、事前に提出された登山届の内容を元に、遭難者をヘリコプターで捜索する「ココヘリ」というサービス。
「ココヘリ」の契約者には、会員証として発信器(LIFE BEACON:ライフ・ビーコン)が貸与されます*1。
ヘリコプターは、遭難者のLIFE BEACONから出る電波*2を受信したら、電波が強くなる方向に向けて飛行し、電波の強度が最も強くなる場所(LIFE BEACONの位置=遭難者の位置)を探し出してくれます。
1つの案件につき、ヘリコプターの飛行は3回まで無料(加入者の年会費でまかなわれる)という太っ腹なサービス。
LIFE BEACONが発射する電波の内、捜索活動用のものは920MHz帯の電波で最大16km先に到達しますから、事前に正しく登山届けを作成し、その通りに行動していれば、まず間違いなく見つけてもらえます。
ただし、「ココヘリ」は救助活動までは行いません。「ココヘリ」の対応範囲は発信器からの電波を受信し、位置を特定するところまで。
実際の救助活動は、「ココヘリ」から情報を引き継いだ消防や警察、民間の救助隊などが行い、救助活動に対しては場合によって費用が請求されます。
申し込み方法
Webサイトから入会申し込みをすると、会員証となる「LIFE BEACON」が送られてきます。
契約できるプランは3通り。
- シンプルプラン(年会費¥4,015、入会金¥3,300)
スマホで位置を探すことができない捜索専用発信器が貸与されます。 - スタンダードプラン(初年度年会費¥4,015。2年目以降の年会費¥5,500、入会金¥3,300)
捜索専用受信機向けの920MHz帯の電波の他、スマホで受信できるBluetoothの電波も発射する発信器が貸与されます。 - プラスLプラン(年会費¥9,350、入会金¥3,300)
スタンダードプランで貸与される発信器に加えて、落とし物タグが追加で1つ貸与されます。
いずれのプランも、会員証の送料として¥330が別途必要になります。
一部のアウトドア用品店では、ココヘリの「入会金割引パック」が売られています。
▲ココヘリ 入会金割引パック
これを購入して申し込めば入会金が¥2,200になり*3、ココヘリのステッカー(冒頭の画像参照)がオマケとして手に入ります。
詳細は、ココヘリのWebサイトをご覧ください。
▲会員証はヤマト運輸のネコポスで届いた
会員証(LIFE BEACON)の仕様
▲LIFE BEACON一式(左から取扱説明書、充電用USBケーブル、LIFE BEACON本体、カラビナ型ホルダー*4)
製品名: LIFE BEACON(ライフ・ビーコン)
サイズ: W39mm × H58mm × D12mm
重量: 約20g(LIFE BEACON本体)、約10g(専用ホルダー)
色: 白(サハラベージュ)、黒(マットブラック)またはTHE NORTH FACEモデルのいずれかを契約時に選択(シンプルプランを除く)
電源: 内蔵充電池(交換不可)
動作時間: 約2ヶ月
電波の種類: Bluetooth Low Energy(シンプルプランの会員証を除く)、920MHz帯特定省電力無線
電波到達距離: スマホでLIFE BEACONを探す場合(Bluetooth利用の場合)は、見通しで最大200m。捜索活動用の専用受信機(920MHz帯)を利用した場合、最大16km。
耐候性: 生活防水
生産国: 日本
価格: 契約者に対して貸与される物で、買い取りは不可能。
会員証(LIFE BEACON)の外観
表面には、捜索要請時に必要な「会員証ID」が印刷されているので、自分で救助要請をする際には会員証IDを簡単に確認できます。
(自分で救助要請ができない状況で、自分以外の人から捜索依頼を出したもらうときのために、いざというときに頼る相手にこの会員証IDを伝えておく必要があります。)
充電はmicro USB端子を使って行います*5。
▲LIFE BEACONの表面(会員証IDが記載されている部分はぼかしてあります)
▲LIFE BEACONの裏面(MADE IN JAPANの刻印がある)
会員証(LIFE BEACON)の使い方
LIFE BEACONには、電源スイッチがありません。
常に電波を発信する状態になっているため、万一の時に捜索ができるのです。
本人が意識を失っていたら電源を入れることができませんから、合理的な仕組みといえます。
当たり前のことですが、内蔵充電池が空になると電波を発射できなくなります。
3秒おきに点滅する動作LEDの色が充電池の残量を表すので、緑色以外の色になっていたら充電すると良いでしょう*6。
充電中は充電LEDが赤色に点灯し、満充電になると消灯します。
山へ行く際は、充電池の残量が十分なLIFE BEACONをバックパックの外側に取り付けるわけですが、そのための専用ホルダーも用意されています(別売の場合や、キャンペーンで付属する場合もあります)。
▲会員証ホルダーと、脱落防止用の紐
脱落防止用の紐の両端を結んで輪っかを作り、その輪っかを使ってLIFE BEACONとホルダーを接続します。
▲LIFE BEACONとホルダーに紐を通す
▲紐で接続した上でホルダーにLIFE BEACONを取り付けた様子
この状態で紐をバックパックのコンプレッションストラップなどに通し、ホルダーのスリットにバックパックのストラップを通します。
※専用ホルダーは、25mm幅のストラップに取り付けられるよう設計されています。
LIFE BEACONが体の下敷きになると周囲に出る電波が弱まってしまうため、万一の際に体の下敷きにならない場所に取り付けないといけません。
▲バックパックにLIFE BEACONを取り付けた様子
LIFE BEACONを落としてしまうと万一の捜索時に全く役に立たなくなるので、とにかく脱落を防止することを考えて、しっかり取り付ける必要があります。
▲ホルダーの爪が割れるなどしてストラップから外れても、紐があればその場にぶら下がるだけで紛失はしない
▲強い衝撃が加わってホルダーからLIFE BEACONが外れても、正しく紐を通してあれば大丈夫
▲帯(PALSウェビング)が多いミリタリー系バックパックなら、取り付け位置の自由度が高い*7(雨蓋の上に取り付けた例)
山へ行く前に
ココヘリを契約すると、会員専用のページにアクセスするためのIDとパスワードが発行されます。
▲会員専用ページのログイン画面(スマホ向け画面)
初回のログイン後、「マイページ」でLIFE BEACONの画像などを登録し、個人情報や契約内容を確認します。
必要な情報が全て登録され、登録内容に誤りがないことを確認してからココヘリを利用しないといけません。
▲会員専用の「マイページ」(スマホ向け画面)
万一捜索してもらう状況になった場合に備え、山へ行く前には必ず登山届けをオンラインで提出します。
捜索ヘリコプターは、登山届けに記載されているルート付近の上空を飛行するからです。
登山届けを提出しなかった場合、捜索ヘリコプターは飛ばしてもらえません。(どこを飛べば良いか分からないので、当たり前です。)
ココヘリの場合、会員専用ページに文字だけで行き先やルートを入力する画面があるので、そこに自分が歩くルートを入力します。
▲ココヘリの登山届け入力画面(スマホ向け画面)
ココヘリとは別の会社のサービスですが、「Compass」というオンラインの登山計画作成サービスを利用すれば、ルートを地図に描いた登山届けを作成できます。
Compassはココヘリと提携しているため、登山届けの作成時に、ココヘリの会員証ID入力欄が表示されるのです。
そこへ「ココヘリ」の会員証IDを入力しておけば、万一の場合はCompassとココヘリが連携して登録内容を確認し、捜索ヘリコプターを飛ばしてもらえます。
▲Compassの登山届け作成画面でココヘリの会員証IDを入力出来る(パソコン版の画面)
登山届けをオンラインで提出したら、家族などにココヘリの緊急連絡窓口の電話番号と会員証ID、登山届けの提出先(ココヘリ、Compassなど)を伝え、どのタイミングで捜索を要請するのか(○月○日○時を過ぎても何の連絡もない場合など)指示を出しておきます。
以下のようなメモをパソコンで作ってその都度印刷するか、山行の度に変わる部分だけを空欄にした様式をまとめて印刷しておき、山行の際は空欄に手書きして自宅の居間に置いておく、あるいはメモを撮影した画像をスマホなどで友人に送るなどしておくと良いでしょう。
同居家族ではない友人などに頼んだ場合は、無事に下山したことを必ず伝えないといけません。
また、ココヘリの捜索要請窓口の電話番号は、絶対に外部に漏らさないようくれぐれも注意しておく必要もあります。
電話番号が無関係な人に伝わり、SNS等で拡散された場合は、イタズラ電話などで捜索要請ができなくなる危険があります。
▲家族や友人など、万一の際に頼る相手にこのようなメモを残しておく
下山後
ココヘリに関しては、下山しても特に何もする必要はありません。
LIFE BEACONの充電池の残量が低下していたら、充電するくらいです。
Compassを利用した場合は、下山後に必ず下山通知を行う必要があります。
下山通知を行わなかった場合、緊急連絡先として登録している親族などのメールアドレス宛てに、Compassから「まだ○○さんが下山してないよ。何かあったのかも。」的なメールが送られてしまいます。
LIFE BEACONの日常生活での活用方法
LIFE BEACONは、捜索ヘリコプターが受信する920MHzの電波の他、スマホで受信できるBluetoothの電波も発射します(シンプルプランで貸与される発信器を除く)。
スマホに専用アプリをインストールしてLIFE BEACONの設定を行うと、スマホでLIFE BEACONの位置を探せるようになります。
最近よく見かけるようになった「Tile」や「Air Tag」のような、落とし物発見用タグと同じような使い方ができるわけです。
そのためには、まずLIFE BEACONを家の鍵など重要な小物類と一緒にキーホルダ等に取り付けておきます。
▲カラビナ型ホルダーにLIFE BEACONを取り付けた様子
専用アプリは、アプリストア(iPhoneならApp Store、AndroidならGoogle Play)で「LIFE BEACON」という名前で公開されています。
▲LIFE BEACONアプリのアイコン(iPhoneの場合)
アプリにLIFE BEACONを登録すれば、LIFE BEACONを取り付けたキーホルダー等を紛失した場合に、スマホで探し出すことができます。
下の画面をご覧ください。
左の画面は中央付近に円が、その下に四角形が描かれていますが、円はスマホを持った自分を、四角形はLIFE BEACONを表しています。
▲アプリでLIFE BEACONの位置を探す画面(左はLIFE BEACONから少し離れた状態、右はLIFE BEACONのある場所にいる状態)
ウロウロと歩き回り、自分がLIFE BEACONに近づくと円が下がっていきます。
LIFE BEACONの在処(ありか)に到達すると、円と四角形がピッタリ重なります(上の右側の図参照)。
その位置にソファーがあればクッションの隙間やソファーの下を、鞄や服があれば鞄の中や服のポケットを調べれば、LIFE BEACON(およびキーホルダーに取り付けた鍵など)を見つけられます。
上に書いた捜索方法は、例えば家の中で鍵が行方不明になった場合など、「おおよその位置が分かっている場合」にだけ使えます。
出かけた先に置き忘れてきた(あるいは外出先で落とした)場合は、スマホとLIFE BEACONの通信が途切れたおおよその位置が地図で表示されます。
地図に表示された場所を頼りに探せば、(LIFE BEACONが誰かに拾われていない限り)電波の強度をもとにLIFE BEACONを探し出せるのです。
▲Bluetoothの電波が届く範囲にLIFE BEACONが無い場合は、信号強度を示すバーの下に「ピン」が表示される
▲「ピン」をタップすると、LIFE BEACONとスマホの接続が途切れた日時と場所が、地図と住所で表示される(都合により、地図などを隠す加工をしています)
最後に
ココヘリは、この記事掲載時点で32件の捜索を実際に行っており、28件で遭難者を発見しています(およそ半数は遺体での発見)*8。
正しくLIFE BEACONを使っていれば、ほぼ確実に見つけてもらえると言えます。
最近では、専用受信機のレンタルも始まりました。
グループ登山のリーダーのような方なら、メンバーが持つLIFE BEACONの会員証IDを受信機に登録すれば、自分たちで仲間を探すことも可能です*9。
捜索ヘリコプターの出動は1案件につき3回までは無料ですが、LIFE BEACONの不携帯や登山届けの内容に誤りがあった場合、捜索の要請後、自力で下山した後にその旨を連絡しなかった場合など、利用者の過失でヘリコプターを無駄に飛行させると、当たり前のことですが費用を請求されます。
また、既に書いた通り「ココヘリ」はLIFE BEACONからの電波を拾って位置を特定し、それを救助機関に伝えるまでのサービスで、年会費でまかなわれるのはそこまでです。
その後の救助隊の活動に対しては、救助隊から費用の請求を受ける場合もあります。
「遊びで山に入って勝手に遭難した見ず知らずの人」を助けないといけない救助隊の方々の負担を考えれば、それも当たり前のことです。
警察や消防による救助活動の場合は費用を請求されないかも知れませんが、その活動経費は税金でまかなわれていますから、「費用を請求されなくてラッキー」などと考えてはいけません。
税金の無駄遣い(遊んでいて遭難した人を助けるのに税金を使うことに対しては、そう思われてもしかたないでしょう)をさせたことになります。
事前にオンラインで登山届けを出すのが面倒という方もおられるかも知れません。
しかし、万一遭難したら登山届けを出す程度の手間では済まないほど大変な状況になりますし、下手をすれば命を失います。遺体が見つからなければ、残された家族は失踪宣告を受けるまで保険金ももらえません。
極端な言い方かも知れませんが、「ココヘリ」は、山歩きをする方なら全員が加入すべきサービスではないかと思います。
重要
「ココヘリ」を契約したからといって、無茶な山行をして良くなるわけではありません。
捜索、救助にあたってくださる方々の立場に立って考え、「ココヘリ」は最後の手段として利用するサービスであると理解しておくことが大切です。
*1:解約時に返却しなくてはいけません。ココヘリのWebサイトによると、レンタルのみで販売はされていません。
*2:電波には会員番号の情報が含まれるため、ココヘリの利用者が複数いる山域でも、対象となる会員証の電波を識別できます。
*3:入会金割引パックには、「手続きコード」と呼ばれる英数字が記載されており、それを「ココヘリ」の割引パック専用申し込みページに入力することで、割引が適用されます。
*4:スタンダードプラン優遇キャンペーンで付属していたもので、このブログ記事掲載時点ではもう付属しないようです。
*5:USBケーブルは付属していますが、AC100VをUSBに変換するアダプタは付属しません。お手持ちのスマホの充電に利用しているアダプタや、パソコンのUSBポートから充電してください。
*6:充電池の残量が十分なら緑色、少なければ赤色、その間の残量なら橙色になります。
*7:PALSウェビングの縫い目の間隔は3.8cmですが、ホルダーのスリットの間隔は5cmあるため、縫い目を跨ぐようにホルダーを取り付けないといけません。
*8:発見できなかった4件は、発信器不携帯1件、発信器の電源が入っていなかったのが2件、原因不明が1件。
*9:1台の受信機には、最大で20個の会員証IDを登録可能です。