播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

シートベルトに常備できる緊急脱出工具:ExiTool

車で事故に遭うと、ドアが歪んで開けられなくなったり、シートベルトが外せなくなって車内に閉じ込められる場合があります。

あるいは、車に乗っている時に豪雨や洪水で車が水に浸かると水圧でドアが開かなくなりますし、電装部品が壊れてしまい、窓の開閉もできなくなって車内に閉じ込められる可能性もあります。

実際、そうした車内閉じ込めによる死亡事故は発生しています(参考:2019年10月28日 9:29付 日経電子版「大雨、死者半数が車中で被害『災害発生前に移動を』」)。

そんな状況になるのは一生に一度あるかないかだと思いますが、念のため自分の車には脱出用の道具を装備しています。

今回紹介するのは、そんな脱出用の道具の一つ。CRKT社製の「ExiTool(イグジツール)」です。

ブログ仲間の「こばしま」さんのインスタ(https://www.instagram.com/kobasima/)で紹介されているのを見て存在を知りました。

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▲車のシートベルトに取り付けたExiTool

概要

この記事で紹介する「ExiTool」は、車のシートベルトに取り付けて常備できる脱出用の道具で、シートベルトカッターウィンドウブレイカー(window breaker。窓ガラスを割るための道具。)*1LEDライトが一体になったもの。

製品名の「ExiTool」は、出口を意味する「exit」と、道具を意味する「tool」を合わせた造語です。


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▲メーカー公式動画

仕様

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▲ExiToolのパッケージ

製品名(英語): EXITOOL(イグジツール)
製品名(日本語): イクジット セーフティツール ベルトカッター*2
メーカー: Columbia River Knife and Tool*3(アメリカ)
シートベルトカッターの刃渡り: 12.7mm(カタログ値)
シートベルトカッターの刃の材質: ステンレス
ウィンドウブレイカーの材質: タングステンカーバイド
LEDライトの電池: CR2032×1枚
本体の材質: ナイロン樹脂(ガラス繊維配合)
重量: 45.36g(カタログ値)
色: 黒と橙の2色展開
現地定価: $26.99 USD
国内定価: 不明
購入価格: ¥3,037(購入当時の税込価格)
購入先: amazon.co.jp

パッケージ内容

ExiTool本体の他に、本体に貼付するステッカー(使い方が印刷されている)と、車内に常備しておくマニュアル(厚紙)が同梱されています。

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▲ExiToolのパッケージ内容

外観

ExiToolは表裏がありますが、どちらが表でどちらが裏か分からないので、この記事ではメーカーロゴがある面を表、ない面を裏と呼ぶことにします。

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▲ExiToolの表面

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▲ExiToolの裏面

上の画像の通り、各種機能を実現する部品のほとんどがExiTool本体の周囲に取り付けられており、本体はシートベルトを挟み込むための大きなクリップという形状です。

その「クリップ」の開口部を留めているのは、「がま口」の「玉」と似たような構造の留め具。

留め具を開いてExiToolでシートベルトを挟み込み、留め具をパチンと閉じればシートベルトに装着できます。

留め具を閉じてもExiToolはシートベルト上に固定されず、自由に動かせます。

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▲ExiToolの開口部(閉じた状態)

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▲ExiToolの開口部(開いた状態)

ExiToolを完全に開くと、下の画像の状態になります。

「パッケージ内容」で紹介したステッカーは、ここに貼るのかな(ステッカーを貼れる平らな面はここしかありません)。

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▲ExiToolを完全に開いた状態

ウィンドウブレイカーは、本体の角から三角錐のような鋭い形状で飛び出しているので、ExiToolを取り扱うときはケガをしないようにしてください。

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▲ウィンドウブレイカー(緊急時に窓を割るための硬い金属の針)

シートベルトへの取り付け

ExiToolの取り付け方は、留め具の前後と裏表の向きで、合計4通りがあります。

適当に取り付けるのではなく、それぞれの装着方法を実際に試し、一番使いやすい向きを見つけると良いでしょう。

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▲運転席のシートベルトにExiToolを取り付けた様子(タングプレートの上に装着する)

私の場合は、取り外しやすさを考慮して開閉部の留め具を前方に向け、また、夜間の駐車時などに車内を照らす必要が生じたとき、いちいちExiToolをシートベルトから取り外さずにLEDライトを点灯できるよう、ライトのスイッチがある裏面を外側に向けています。

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▲私の場合は留め具を前方に向け、LEDライトのスイッチを外側に向けてExiToolを運転席のシートベルトに取り付けている(留め具が前にある方が、私の個人的な感覚では開閉しやすい)

ExiToolの留め具を前方に向けると、ウィンドウブレイカーの針が手前側になります。そのため、シートベルトを外した後、シートベルトが引き込まれている途中で手を離すと、服にウィンドウブレイカーが引っかかったり、ExiToolが自分の身体や車の内装を傷つけるおそれがあるので、注意が必要です。

また、シートベルトのタングプレートを持ったつもりがExiToolを握っていたということも起こります。

ExiToolを握ってもシートベルトの着脱はできますが、ものすごい違和感があるので我慢も必要。

逆に、完全に慣れてしまえばExiToolとタングプレートを自然に扱えるようになり、まったく邪魔に感じなくなります(私の個人的な感覚です)。

緊急時の使い方

緊急時には、シートベルトから取り外したExiToolで窓を割り、(バックルが操作できない状況では)シートベルトを切断して車外に脱出します。

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▲マニュアルに印刷されているExiToolの使い方

なお、窓を割る際には真ん中を叩くより四隅を叩いた方が良いそうです。

脱出用ハンマーで窓を割る際には、窓の四隅のどこかを割ると効率良く割ることができます。
(出典:水没時、何を使えば窓が割れるのか?(JAFユーザーテスト) https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/submerge/window

命がかかっている緊急時なら、実際にシートベルトを切ったり窓を割ったりすることはできますが、愛車を実験台にしてExiToolの性能を試すほど経済的、精神的な余裕がないので、Youtubeの動画を転載します。

この動画では、「ExiTool」の他に「Houdini Pro(フーディーニ・プロ)*4」、「ResQMe(レスキューミー)」という同種の2つの他社製品も紹介しています。


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▲3種類の脱出用工具の紹介

最後に

私の場合、ExiToolを買うまでは、下の画像の道具を運転席の収納部分に入れていました。

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▲今まで装備していた脱出用の道具

左端の棒状の道具はバネ式のウィンドウブレイカーで、銀色の細い部分を窓に押しつけると、太い持ち手部分に入っているバネが圧縮されていき、さらに押し続けるとバネが開放され、銀色の部分に大きな力がかかって窓ガラスが割れるというものです。

腕が動かせない状況でも、窓ガラスにウィンドウブレイカーを押しつけられるだけの空間と腕力があれば、窓ガラスを破壊できます。

右端は、アメリカのOntario Knife Company(オンタリオ・ナイフ・カンパニー)製の「Model 4」で、アメリカ海兵隊で使用されているシートベルトカッターです*5。中央に写っているのは、このModel 4専用のケース。

ExiToolの場合、窓を割るためには腕を振るための空間が必要ですが、事故で車体が歪んだりして運転席が狭くなっている可能性もありますから、腕を大きく動かさず、窓に押し当てるだけで窓を割れるバネ式のウィンドウブレイカーの方が優秀かも知れません。

シートベルトの切断についても、オンタリオのシートベルトカッターの方が握りやすくて使いやすいと思われます。

しかし、これらの道具は運転席の収納部分に入れていましたから、事故の衝撃で収納部分から飛び出して行方不明になったり、収納部分が潰れて取り出せなくなる可能性もあります。

ExiToolはシートベルトに取り付けてあるため、事故の衝撃でどこかへ飛んでいくこともなく、腕を少し動かせば手に取ることができ、いざという時に使える可能性が高そうです。

こういった道具を使うような状況になる可能性は低いですが、わずか数千円の出費で、万一の状況で命が助かる可能性が上がるわけですから、信頼できそうな脱出用の道具を車に常備しておくことをお勧めします。

長所

  • 緊急時に取り出しやすい位置に常備できる。
  • 軽量でコンパクト。
  • 明るくはないが、LEDライトも付いている。

短所

  • 慣れるまでは、シートベルトの着脱時にExiToolが邪魔になる(慣れると、ExiToolを掴んでシートベルトを外すことに違和感を感じなくなる。シートベルトを取り付ける時は、タングプレートとExiToolが一体化したように動くので、さほど気にならない。)。
  • シートベルトにExiToolが付いていることを意識しておかないと、車内や身体を傷つけるおそれがある。
  • ウィンドウブレイカーはバネ式ではないので、ExiToolを叩きつけないと窓ガラスを壊せない。

*1:似た言葉に服の種類である「ウィンドブレイカー/ウィンドブレーカー」がありますが、それは「windbreaker」です。脱出用工具は窓を割るので、窓を意味する英単語「window(ウィンド)」が名前に入っており、服の方は「風を通さない服」なので、風を意味する「wind(ウィンド)」という単語が使われています。適した日本語訳が思いつかなかったので、この記事では「window breaker」をそのままカタカナ表記した「ウィンドウブレイカー」というややこしい表現を使っています。

*2:「exit」の読み方は、英語でも2通りあります。一つはお笑いコンビ「EXIT」の読み方と同じ「イグジット」。もう一つは「イクシット」。国内の通販サイトでは、これら2通りの読み方が入り交じった「イクジット」になっています。一部の刃物専門店やミリタリー系の通販サイトでは、英語名をカタカナ表記した「イグジツール」という表記も見られます。この記事では、個人的な好みの問題で「ExiTool」と表記します。

*3:略称のCRKTは、Columbia River Knife and Toolの頭文字を並べたもの。

*4:ちなみに、「Houdini Pro」という製品名の「Houdini」はアメリカの有名な脱出マジシャンの名前で、日本で言うところの引田天功(ひきたてんこう)にあたるかな。車に閉じ込められても脱出できるという意味で製品名になったのかも知れませんが、「Houdini Pro」はもう売られていないようです。

*5:軍用品には必ず割り当てられているNSN(National Stock Number:物品識別番号)は、4240-01-570-0319。刃の反対端付近の楕円形の穴は、アメリカで使用されているタイプの酸素ボンベ調整弁の開閉に使うもので、これはシャックル用レンチにもなっています。私の車の中にはアメリカの酸素ボンベもシャックルもないので、この穴を使うことはありません。