播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

山歩きで出会う送電線の鉄塔一本一本に名前がある?

山歩きをしていると、送電線の鉄塔(以下「送電塔」)によく出会います。

送電塔は三角点と並ぶ山歩きの際の目印だと個人的には思っているのですが、他の方の山行記録を読んでも、送電塔の名前まで記載して目印代わりに紹介してあるものは少ないように思います。

f:id:dfm92431:20210205220519j:plain▲山歩きの際に出会う送電塔

山歩きのルートを説明する際、三角点は標高を相手に伝えることで点名(三角点の名前)が分からなくても「この三角点のことか」とすぐ分かってもらえます。

しかし、(送電線は地形図に描かれていますが)送電塔は正確な位置や名前が地形図には記載されていないため、山歩きをする人たちの間で共通認識として使えないのが理由でしょうか。

山歩きをする人たちがWebで公開している山行記録に送電塔の位置と名前を記載してくれれば、後からそれを読んで同じルートを歩くときに大変参考になりますし、送電塔の位置と名前が分かっている人同士でコミュニケーションを取る際は、ルートの説明が簡単になります。

山行記録に送電塔の名前が書かれていない記事が大半ということは、多くの方は「送電塔に名前があることなんて知らなかった」とか「送電塔の名前はどこに書いてあるの?」と思われているはず。

そこで、今回は送電塔の名前の調べ方を説明する記事を書くことにしました。

注:えらそうなことを書いていますが、私は電力会社や関連企業に勤めたことも、勤めている知り合いもいません。
ネットで拾った知識しか持ち合わせていませんので、間違ったことを書いている可能性もあります。あらかじめご了承ください。

送電塔の名前とは?

送電塔は送電線を張るためのものですが、その送電線の路線には名前が付いています。
送電塔の名前は、その路線名と通し番号の組み合わせ

送電線の路線名というのは、例えば「姫路火力線」、「高砂火力線」など発電所の名前が付けられたものや、「飾磨港加古川線」、「ユニチカプロテック坂越線」のように、電線路の始点や終点の名前が使われるものもあります。

ちなみに、送電線は「発電所と変電所」、「発電所と発電所」、「変電所と変電所」をつなぐ電線で、家庭に直接つながっている電線は配電線と言います。

通し番号というのは電源(始点となる発電所または変電所)側から逆側に向かって1ずつ増えていく数字で、始点となる発電所や変電所から出た送電線がつながる最初の送電塔の番号が「1」になります。

つまり、同じ送電線がつながっている送電塔が複数ある場合、通し番号が小さい送電塔が電線路の始点に近いということになります*1

ということで、送電塔の名前は「○○線××番鉄塔」とか「○○線××号鉄塔」、「○○線No.××鉄塔」というものになります*2
注:私は電力関連で働いていないので、「番」が正しいのか「号」が正しいのか、はたまた「No.」が正しいのかは分かりません。Webではどれも見かけます。

なお、通し番号の大小については、番号が大きい方が「老番(おいばん)」、小さい方が「若番(わかばん)」と呼ばれます。

送電塔の名前が書かれている場所

送電塔の名前は、脚の根元付近に取り付けられた番号札に書かれていて、その番号札が取り付けられている脚は決まっています

それを説明するために、まずは送電塔の形をイメージする必要があるので写真を載せます。

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▲送電塔の一例(架空地線は避雷針の役割を果たす線で、送電には使われていません)

上の画像の送電塔を真上から見た様子を模式図で描いてみました。
送電線は上下方向に伸びており、下が若番側だと思ってください。

f:id:dfm92431:20210205220833p:plain▲送電塔を真上から見た模式図

送電塔には4本の脚がありますが、A~Dのアルファベットがそれぞれに振られており、若番側に立って送電塔を見た時、右手前がA脚、左手前がB脚、左奥がC脚、右奥がD脚と呼ばれます。

右手前の脚を基準に、時計回りにアルファベットが振られているわけです。

送電塔の名前が書かれた前述の番号札は、原則としてB脚根元付近に、若番側に向けて取り付けられています。

どちらが若番か分からない場合がほとんどなので、番号札を探す時はとりあえず頭上を見上げて送電線が伸びている方向を確認した上で送電線の真下に立ち、左側の脚の根元を見ます。

そこに番号札が無ければその脚はD脚ということになり、B脚はその対角線上の脚だと分かるので、反対側に回って番号札を確認すれば良いのです。

f:id:dfm92431:20210205220919j:plain▲送電塔のB脚に取り付けられている番号札の例

番号札には電線路の路線名と送電塔の通し番号のほか、送電塔が建てられた年月も記載されています。

通し番号や年月が漢数字なのは、縦書きだからです。

送電塔の配置が変更されて通し番号が変わったというような場合は、古い番号札の上に新しい番号札が重ねて取り付けられていることがあります。

f:id:dfm92431:20210205220952j:plain▲番号札が重なっている例(内容に変更が生じたものと考えられる)

今回の記事とは直接関係ありませんが、ヘリコプターで送電線を巡視する時のために、先端にアラビア数字が書かれた番号札が取り付けられている送電塔もあります。

f:id:dfm92431:20210205221014j:plain▲ヘリコプター向けの番号札の例(電線路の名前はなく、送電塔の番号である「12」だけがアラビア数字で表記されている。)

どうしても送電塔の名前が見えない場合は?

送電塔が立っている場所によっては、B脚にたどりつくのが困難な場合があります。
例えば下の画像の様な場所に立っている送電塔。

A脚とD脚が登山道沿いに立っていて、B脚とC脚は斜面の下にあり、B脚の番号札を見に行くのが困難な送電塔です。

f:id:dfm92431:20210205221055j:plain▲登山道沿いがA脚とD脚で、B脚が斜面の下にあり見に行くのが困難な送電塔の例(右端の矢印は登山道。番号札のあるB脚は斜面の下、赤枠で囲まれた中に取り付けてある。)

こういった場合の対処法はいくつかあります。

カメラのズーム機能を使う

ファインダー越しに直接見るほか、いったん写真を撮影し、デジカメの液晶画面で拡大して確認するという方法です。

双眼鏡を使う

上の画像のように番号札が登山道から見える面にある場合は、少し離れた場所から双眼鏡を使って確認できます。

諦める

自分が歩く尾根を横切る形で送電線が通っていて、送電塔のB脚がザレザレの急斜面の下にあり、危なくて番号札を見に行けないというような状況も考えられます。そんな時は、潔く諦めましょう。

そんな送電塔の名前を調べたところで、そこを歩く他の登山者は送電塔の名前をその場で確認できないので、役に立つ情報になりづらいのです(「B脚が斜面の下にあって名前が分からない送電塔」という具合に書いた方が、むしろ分かりやすい。)。

送電塔の名前が分かって良いことはある?

送電線の路線名や送電塔の名前が分かれば「○○山の東で××線が通っている尾根」とか「○○線××番鉄塔が立っている尾根」といった表現で尾根を特定できます。

送電塔が多い山域の場合は、「○○番鉄塔の手前にあった分岐」といった具合に、さらに細かい位置を表現できます。

グループで山を歩く際に送電塔の名前を書き込んだ地図を共有しておけば、山を歩いている最中でも「あれが○○番鉄塔。あそこまで歩くよ」とか、「○○番鉄塔のある尾根で下る予定だったけど、時間が足りないから○○番鉄塔の尾根で下るルートに変更しよう」といった単純な会話で正確に位置を説明できます。

例えば兵庫県南部でハイカーに人気のある高御位山(たかみくらやま)は、登山道のある主な尾根の1本1本に送電塔が立っているので、その名前を使えばルートを説明しやすいと思います*3

f:id:dfm92431:20210207194416j:plain▲高御位山周辺の送電塔の名前(カシミール3Dで表示した国土地理院発行の2万5千分の1地形図「加古川」の一部を加工したものです)

そもそも送電線が全く、あるいはほとんど通っていない山も多くあり、送電塔の名前が分かったからと言って役に立つことは少ないかも知れません。

でも、路線名を意識しながら山を歩いて送電塔に出会ったときに「おっ○○線か。そういえば、このずっと西の××山にも同じ路線の送電塔が立っていたな。あんなに遠くから続いているのか!」とよくわからない感動を味わえたり、何人かで山を歩くときに「この送電線は○○線といって、××山や△△山も通っているんだよ。」と話のネタにできたり、「歩く山を思いつかないな。そうだ、○○線沿いの山を歩くチャレンジをやってみよう!」など、山歩きルートを自分なりに考えたりできます。←大半の人に「は?だから何?」と思われるでしょうが…

他に、私達の生活を守る現実的な理由で送電塔の名前が必要になる場合もあります。
それは、送電塔の損傷を発見した場合。

万が一、送電塔の下で送電塔の部品のようなものが落ちているのを見つけたら、電力会社に通報する必要があります。

その際、電力会社の窓口に「○○山の鉄塔」といっても通じませんが、正しい送電塔の名前を伝えられれば、その後の電力会社側の対応がスムーズになります。

「そんなことあるわけないやろ~」と思われるかも知れませんが、私はそういった事例を1件耳にしたことがあります(その後電力会社が巡視を行い、送電塔は損傷していなかったことが確認されたそうです)。

最後に

Webで山行記録を公開されている方は、山歩きの際に送電塔に出会ったら、名前を確認する習慣をつけてみてください。

その情報を山行記録に加えていただけると、きっと誰かの役に立つと思います。

*1:基幹となる送電線から分岐して始まる電線路もあるので、発電所や変電所から遠いのに通し番号が小さい送電塔もあります。

*2:送電塔に関する事故の報告書などを見ると、送電塔の名前は「○○番(号、またはNo.)送電塔」ではなく「○○番(号、またはNo.)鉄塔」とされているようです。

*3:高御位山塊のことを知っている方にしか通じませんが、仮に「鹿嶋神社から百間岩を登って主稜線に乗り、高御位山山頂に行った後「長尾コース」で下山する」という場合、「姫路火力東線32番鉄塔の尾根で登り、山頂からは36番鉄塔の尾根で下る」と言えば通じるわけです。