新型コロナ感染症(COVID-19)対策のため、仕事で取引先と打ち合わせを行う時は、Web会議システムを使うことが基本になってきました。
一人一台のノートパソコンを使ってWeb会議に参加する方法が一般的ですが、私の感覚ではどうもやりづらい。
感染対策のためだと思うのですが、ヘッドセットやマイク付きイヤホンは各自の私物と思われるものを利用しているので、それらの性能によって音質や音量の差が激しく、声が小さな人に合わせて音量を上げると、次に声の大きな人が話したときにうるさくなります。
また、画面の向こうにいる取引先の方々は同じ部屋にいてアイコンタクトを取っているのか、顔や視線の動きが気になります。相手側の部屋の様子が分からないことで、電車やバスの中で携帯電話でしゃべっているアホな人たちの会話を聞かされている時と似たようなストレスを感じるのです*1。
こういった問題を解決するには、広範囲が撮影できるカメラと集音マイク、スピーカーが必要です。
広範囲を撮影できるカメラと集音マイクという意味では、このブログで以前に紹介したパノラマカメラ「Insta360 ONE X2」が使えます。
ノートパソコンにInsta360 ONE X2をUSBケーブルで接続し、ノートパソコンのスピーカーが貧弱なら適当なBluetoothスピーカーを設置してそこから音声を流せば、会議室全体の様子を映して相手に送信することができる、便利なWeb会議システムの出来上がり。
これで満足していたら、2020年12月15日に中国のメーカーから発表された面白い製品を発見。
Web会議に特化したパノラマカメラ「Kandao Meeting Pro(カンダオ・ミーティング・プロ)」です。
「未来の自分よ、クレジットカードで借金を背負わせてしまうが、ゴメン」と謝罪しながら、メーカーのサイトから直販で購入してしまいました。
重要
発売間もない製品のため、この商品のレビューはほとんど見当たりません。購入を考えられている方は、これから増えるであろう他所のレビュー記事も参考にしてください。
ファームウェアが更新される度に機能が追加・修正されています。それに伴い、この記事の内容も逐次修正を加えています。
概要
周囲360度を撮影できるパノラマカメラに、集音マイクと5Wのスピーカーを搭載した製品です。
Android OSで動作しており、Kandao Meeting Pro専用のストアからWeb会議用アプリのインストールが可能になっています。つまり、Kandao Meeting Pro単体でWeb会議を行えるのですが、その場合はPowerPointの資料といったパソコン画面の共有ができないので、単体で使うことはなさそう。
仕様
▲Kandao Meeting Proと付属品(敷いてあるのは収納バッグ。左からMeeting Pro本体、リモコン、60WのACアダプタ。これらの他にUSBケーブルや取扱説明書が入っています。)
製品名: Kandao Meeting Pro
メーカー: KanDao Technology Co.,Ltd(中国)
生産国: 中国
寸法: 直径約75mm×高さ約300mm
重量: 約750g
解像度: 1920×1080px@30fps、1280×720px@30fps
マイク: 8個のマイクを内蔵。半径5.5m以内の音声を集音。
スピーカー: 5W
電源: ACアダプタから供給(バッテリー駆動ではありません)
インターフェイス: LANポート(100Mbps)×1、電源供給用USB Type-Cポート×1、Webカメラとして動作するための映像出力用USB Type-Cポート×1、出力用HDMIポート×1、キーボード・マウスの接続用USB Aポート×1、microSDカードスロット×1、無線LAN、Bluetooth 4.1
システムメモリ: 64GB
定価: ¥105,600(税込)
購入価格: ¥105,600(税込)
購入先: メーカーの直販サイトから送料無料で購入
備考: Meeting Pro本体の収納袋や専用リモコン、USBケーブルが付属します。
外観
シルエットは、まるで“水筒”です。
▲Kandao Meeting Proの外観(レンズカバー装着状態)
上部のレンズカバーを外すと魚眼レンズが現れるので、カメラらしさが出てきます。
レンズは魚眼で、本体の前後に1つずつ付いています。
レンズ部分がクルクル回転するのではなく、180度以上の撮影範囲をもつ魚眼レンズで撮影された2つの映像を合体させ、周囲全体を写す仕組みなので、カメラに可動部はありません*2。
▲レンズカバーを取り外したKandao Meeting Pro(右下は取り外したレンズカバー)
▲魚眼レンズは両面にある(右下は取り外したレンズカバー)
レンズの周囲には、電源スイッチや音量の増減ボタンなどが配置されています。
▲電源スイッチと音量の増減ボタン
▲ミュートボタンとモード切替ボタン
本体下部のメッシュ部分にマイクとスピーカーが内蔵されていますが、外からマイクやスピーカーは見えません。
パンチ穴がきれいに揃っていないのが、中国製らしいところ。
このメッシュ部分上部には8方向に向けたマイクが、その下にスピーカーが入っているようです。
▲マイクとスピーカーが内蔵されている部分
端子類は、本体下端に集中しています。
これらの端子の配置もなんだか不思議。
Kandao Meeting Pro単体でWeb会議をするときは、HDMI出力端子がある側にだけケーブルを接続すれば良く、反対側はパソコンをつなぐときに使うという分け方かな。
▲LANポート、USB Type-Cポート(電源供給用)、HDMIポート(出力用)
▲USB Type-Cポート(出力用)、USB Aポート(キーボード、マウス用)
底面はゴムのような素材になっているため、使用時の安定性は高いです。
また、三脚穴があるので、小型の三脚を使って本体が倒れないように支えることも可能。
▲本体底面には1/4インチサイズの三脚穴がある
電源供給には付属のACアダプタを使用します。
ACアダプタとKandao Meeting Proをつなぐのは、付属するUSBケーブル。
付属のUSBケーブルの長さはおよそ3mで、両端がUSB Type-Cになっています。
▲専用ACアダプタとUSB Type-Cケーブル
バッテリー内蔵の機器は、バッテリーが交換できない場合に数年で使い物にならなくなってしまうので、バッテリーを搭載せず、コンセントにつないで使う形にしてくれているのは有り難いと思います。
Bluetooth接続のリモコンが付属しており、音量の上げ下げやカメラの表示モード切り替え、画面ロック時の画角の操作が可能です。
▲付属する専用リモコン
▲リモコンの電源は単4形アルカリ電池×2本
Kandao Meeting Proが搭載するAndroid OSの画面を操作する際には、このリモコンがマウスになります。
リモコン右上のボタンを押すとリモコンの赤いランプが点灯し、もう一度押すと消灯します。赤いランプが点いている間にリモコンを動かすと、画面上のマウスカーソルが動くのです。
リモコンに加速度センサーが入っており、リモコンの動きを検出する仕組みのようです。
▲マウスモードの切り替えボタン
使い方
Kandao Meeting ProにはAndroid OSが搭載されており、一般的なWeb会議アプリをインストールすることで、パソコンを使わずKandao Meeting ProだけでWeb会議を行えるようになっています。
その場合は、Kandao Meeting ProのHDMI端子とテレビのHDMI入力端子を一般的なHDMIケーブルで接続して使用します*3。
ただ、テレビに接続してKandao Meeting Pro単体で使用すると、Web会議でありがちなパソコン画面の共有ができません。
というわけで、Kandao Meeting Proは単体で使用できる性能を持っていますが、パソコンにつないで集音マイク、スピーカー搭載Webカメラとして使うのが最適です。
Web会議に必要な機材
Kandao Meeting Proの機能を最大限に活かしたWeb会議を行うには、以下の機材が必要です。
- Kandao Meeting Pro×1台
- ノートパソコン×1台
- 液晶ディスプレイ×1台
- 接続用ケーブル一式
Web会議のためのセットアップ
機材は、真上から見て以下のようにセットしてください。
A~Cの参加者は液晶画面を、D~Fの参加者はノートパソコンの画面を見る形になります*4。
▲機材の設置方法(真上から見た模式図。中央の赤いものがKandao Meeting Pro。)
▲機材の設置方法(真横から見た模式図)
使用方法
まずはKandao Meeting Proを専用ACアダプタとUSB Type-Cケーブルでコンセントに接続します。
USB Type-Cポートは2つあるので、間違えないようにしてください。
HDMIポートの下にあるのが、電源供給用のUSB Type-Cポートです。
▲電源供給用のUSBケーブルを本体に接続する
では、Kandao Meeting Pro本体の電源を入れましょう。
魚眼レンズの脇にある電源スイッチを数秒間長押しすると、電源が入ります。
電源を最初に入れることは重要で、私の環境では、Kandao Meeting Proを起動する前にパソコンと接続すると、Kandao Meeting Proが正常に起動しません。
▲電源スイッチを押す様子(反対側にも指を当てないと、安定してボタンを押せない)
起動中は本体下部のインジケーター(LEDライト)が緑色に点滅し、起動が完了すると緑色で点灯します。
▲本体下部のLEDライト(起動中は緑色点滅、起動完了後は緑色点灯)
Kandao Meeting Proの起動が完了したら、片方がUSB-A、もう一方がUSB Type-Cのケーブル(付属しています)でKandao Meeting Proとパソコンを接続します。
初めて接続したときだけ、ドライバのインストールが行われます。
▲USBケーブルでノートPCと接続する
ノートパソコンでWeb会議用アプリを起動し、使用するカメラとしてKandao Meeting Proを選択してください。
Webカメラとして動作しているときは、本体下部のLEDライトが青色になります。
ちなみに、本体側面のミュートボタン、またはリモコンのミュートボタンを押してミュートにすると、LEDライトは赤色になります。
Web会議アプリで、マイクとスピーカーもKandao Meeting Proを選択してください。
Kandao Meeting Proで撮影された周囲全体の画像がWeb会議アプリに表示されますが、いくつかのパターンを選べるので、適切な画面パターンになるまで、Kandao Meeting Pro本体またはリモコンのモード切替ボタンを押してください。
▲Kandao Meeting Proの画面パターン
Discussion Modeを使う場合は、参加者が4人の場合はそれぞれの方が挨拶をすれば、メーカーWebサイトの画面のように、4人の姿が画面下部に並びます。
音声が聞こえたら、その方向に人がいるかどうかをKandao Meeting Proが映像で判断し、人の姿があればその人を適切な画角で表示してくれるようです。
5人以上の参加者がいる場合は、直近の発言者4名が表示されます。
Patrol Modeは何に使うかよく分からないモードです。
机の上に防犯カメラをセットし、それがグルグル回っている場合に撮影される動画をイメージしてください。
画面の大半にはそれが映り、画面の端には直近の発言者が一人だけアップで写ります。
基本的にはGlobal Modeで使えば良いと思います。
あるいは、参加者が2~3人ならPresentation Modeも便利。
片方だけのレンズで超広角の映像が撮影されるので、1台のノートPCの前に2~3人が並んで座れば、全員がきれいに写ります*5。
ただし、Presentation Modeでもカメラの自動認識機能が働き、勝手に話者を中央に表示しようとするので、Presentation Modeで利用するときは、モード切り替えボタンを長押しして画角をロック(必要に応じてリモコンで画角を修正)することをお勧めします。
Presentation Modeに限らず、Global Mode以外では音や動きがあると画面に表示される内容がコロコロと切り替わるので、それが鬱陶しい場合はカメラの自動認識機能を止めて画角をロックしてください(モード切替ボタンを長押しすると、その時点の表示内容で固定される)。
画角をロックしている間は、リモコンで各枠内の画角を手動で調整できます*6。
Kandao Meeting Proの電源を切るときは、パソコンと接続しているUSBケーブルを抜いてから電源スイッチを長押しします。
Web会議実施時のヒント
メーカーサイトのように、大型のディスプレイを会議室の端に置いて使う場合、会議室にいる参加者はみんなディスプレイを見ますから、Kandao Meeting Proに写るのは皆の横顔。
それでは余りにもおかしいので、上に載せた模式図のように、机の真ん中にパソコンとディスプレイ、Kandao Meeting Proを設置するのが良いと思います。
ディスプレイとKandao Meeting Proが近い位置にあるので、相手側に表示される映像では、参加者の視線が自然に見えます。
Kandao Meeting Proで撮影された画面は、Web会議の参加者一覧画面に表示すると個人の姿が非常に小さく映ってしまいます(下の画像では、左上がKandao Meeting Proを使っている拠点のカメラ映像)。
▲Web会議画面では、Kandao Meeting Proを使っている拠点の映像で個人の姿が小さくなってしまう。
Kandao Meeting Proは、会議室同士を接続するような会議に使うのが良いと思います。
▲Kandao Meeting Proは、接続拠点が少ないWeb会議に向いている
使ってみた感想
マイクの性能は優秀で、ボソボソと話しても相手にしっかり声が届きます。
画質は高く、初めてKandao Meeting Proを使って接続した相手は、「どんなカメラを使っているんですか?!」と例外なく驚いてくれます。
スピーカーの音量は充分ですが、パソコン側でボリュームを大きくしていると、Kandao Meeting Proのスピーカーから出る音が割れます。
パソコン側は音量を控えめにして、Kandao Meeting Proのボリュームを上げることをお勧めします。
自動的に人を認識してアップで表示する機能(Discussion ModeやPatrol Mode、Presentation Modeで作動する)は、まだまだ精度が甘いようです。
例えば、4人がKandao Meeting Proを囲んだ状態でDiscussion Modeにした際、同じ人が2つの枠に表示されたり、誰もいない場所がアップになったりして、4人全員がきれいに写る状況にはなりません。
まだ発売されたばかりでソフトウェアが未完成なようですから、今後ファームウェアがどんどん更新されるとは思います。
収納や持ち運びに関しては、Kandao Meeting Pro本体だけを収納するケース(巾着袋)は付属しますが、それ以外の部材を収納する袋やケース類は付属しないため、各自で適当なケースを用意する必要があります。
私の場合、収納ケースとしてかなり厚みのあるガンケース(銃器の保管・運搬用ケース)を使っています*7。
▲私がKandao Meeting Pro一式を収納するのに使っているケース
▲ケース内部の様子
最後に
少人数の会議室で利用するUSB接続のWeb会議用カメラとしては、私が知る限り最高です。
4時間ほど連続で使ったこともありますが、温度が上昇して動作がおかしくなることもありませんでした(使用後に本体を触っても、底部がほんのりと温かいだけ)。
PolycomやSONYのビデオ会議システムの他、リモコンで首振りやズームイン/ズームアウトができるロジテックのWeb会議システムも職場にあるのですが、ああいった機器よりずっと安価で手軽、使いやすいと感じます。
誰がどこに座っているのか相手側に分かるので、「あの人は誰の方を向いているんだろう?」「他の人の様子はどうだ?」といったことを容易に知ることができ、会話の内容以外の“雰囲気”がWeb会議でも伝わるわけです。
Web会議の参加者がみんな360度対応のWebカメラを使ってくれれば、Web会議特有のストレスはかなり軽減されそう。
まだ発売から間もないためソフトウェアの完成度は今ひとつですが、WebカメラとしてパソコンとUSB接続した場合の動作は極めて安定しており、個人的には非常に気に入っています。
私の職場では上層部の決済が必要な金額の製品なので、自腹で買いました。
決済を取るのは面倒ですし、会社のお金で買った物は他で使えませんからね。
(このブログに載せるために自宅でKandao Meeting Proの写真を撮りましたが、会社の備品となれば、そんな理由で社外に持ち出す許可は下りません。)
あまりにも気に入ったので、色んな部署にこれを持っていって“紹介”しています。
「紹介じゃなくて自慢だろう?」と言われそうですが…「メーカーの営業さんみたい」と感想を言われるので、自慢には聞こえていないはず。
長所
- Kandao Meeting Proを使用するにあたり、ユーザー登録は不要。Android OSで動くのにGoogleアカウントが必要ない。
- パノラマカメラ、集音マイク、スピーカーが一体になっているため、利用時の準備や片付けが簡単(パソコンへの接続はUSBケーブル1本だけ)。
- 魚眼レンズが2つあるので、レンズが1つしかないWeb会議用カメラ(Meeting Owl等)より高画質。
- 劣化して数年で使えなくなるバッテリーを使わず、本体はAC電源、リモコンは乾電池で動作するため、長く使える。
- 性能を考えると、価格はお手頃。
短所
- 大人数の会議では参加者の姿が小さくなりすぎて使えない。10名程度が限界。
- パソコンにつないでいると、Kandao Meeting Proは正常に起動・シャットダウンしない。
- 本体を収納する袋は付属しているが、リモコンやACアダプタなどを収納する袋やケースは付属しない。
*1:飲食店などで他人の会話が聞こえてくるのは気にならないのに、電車やバスの中で聞こえてくる携帯電話の通話が気になるのは、一方の声しか聞こえず、会話の全体像が把握できないからです。Web会議でも、相手側の参加者だけが周囲の状況を把握しており、こちらはその状況が分からないというのがイライラを生み出すように感じます。あくまでも個人的な意見です。
*2:リコーのTHETAシリーズや、Insta360シリーズのパノラマカメラと同様の仕組みです。
*3:音量の増減ボタン2つ(+と-)を同時に長押しすると、Kandao Meeting Proから出力される映像の解像度が切り替わります。テレビやディスプレイに接続して画面が表示されない場合は、この操作で解像度を変更してみてください。
*4:この図の場合、CとDの人は画面を見づらいので、座る位置を調整したり、分配器でディスプレイを増やすなど、環境に応じて適宜工夫をしてください。
*5:その場合はノートパソコンだけでできるだろうと思われるかも知れませんが、ノートPCのWebカメラの画角は狭く、内蔵マイクの集音性能も低いため、使い物になりません。
*6:リモコンのカーソルキーと決定ボタンで枠を選択し(対象の枠が白線で囲まれる)、カーソルキーで画角、「+」ボタンと「-」ボタンでズームを調整。画角が決まったら再度決定ボタンを押す。
*7:ここに写っているのは、ピストル4丁用のケース「PLANO SE SERIES FOUR PISTOL CASE」型番:PL1010164。このケースは収納部分が2段になっており、下段にノートパソコン、上段にKandao Meeting Pro一式を収納できるので、持ち運び可能なWeb会議システムになります。ただし、Kandao Meeting Proの直径はピストルの厚みより大きいので、これらの機材を詰め込んだガンケースは樹脂製の外装が若干変形しますし、フタを閉めるときもしっかり押さえつけないといけません。