このブログには山歩きの記事が多くありますが、その中には、上下左右全方向を見られる全天球パノラマを掲載している記事があります。
例えば、下の画像のような感じのもの。
左上のリストから、地上で撮影したものとドローンで空撮したものを切り換えられます。
▲兵庫県姫路市の蛤山(振袖山)山頂で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2020年1月13日)
こういったパノラマについて、「どうやって撮影しているの?」と聞かれることがあるので、今回の記事ではその答えを紹介します。
私の場合は、以下の3種類の方法で全天球パノラマを撮影しています。
(1)一眼レフカメラで撮影する
全天球パノラマ撮影専用の雲台(うんだい)に一眼レフカメラを取り付け、カメラを様々な方向に向けて全方位の写真を撮影し、パノラマ作成専用ソフトを使ってそれらの画像を結合する方法です。
撮影する枚数が少なくて済むように、カメラには魚眼レンズを付けています。
それでも、1ヶ所につき周囲6枚、空1枚、地面2枚、三脚消し用*1の地面2枚の合計11枚を撮影しています。
▲私が使用しているパノラマ雲台
▲私が一眼レフカメラを使用して全天球パノラマを撮影するときの機材
私が使用しているパノラマ雲台Bushman GOBIを使って全天球パノラマを撮影する様子を、メーカーが公式動画で紹介してくれています。
興味のある方は、ぜひご覧ください。
長所
- 冒頭に載せた「山頂からの展望」のパノラマがこの方法で撮影したもので、一眼レフカメラを使用するため画質は良好。
短所
- 専用の機材と画像の結合用ソフトウェア、さらにそれらを使いこなすノウハウが必要なので、一朝一夕にこのような全天球パノラマを作成できるようにはなりません。
- パノラマを公開するためには、Googleマップなど全天球パノラマに対応したサービスに投稿するか、自分でオーサリングソフトを使用して出力し、Webサーバに載せて公開する必要があります(私は後者の方法で公開し、ブログに埋め込んでいます)。
一眼レフカメラと魚眼レンズ、専用雲台、画像結合用ソフトなどを購入する初期投資と技術を習得する意欲が必要で、なかなか手が出せない方法です。
(2)全天球パノラマカメラで撮影する
RICOHが販売している全天球パノラマカメラ「THETA Z1」を使って撮影することもあります。
この場合は一脚にTHETA Z1をセットし、自分は映り込まないように物陰に隠れて、スマホを使ってシャッターを切ります。
▲一脚にTHETA Z1を取り付けた様子
THETA Z1で撮影した全天球パノラマは、以下のような感じ。
▲兵庫県姫路市の書写山円教寺の摩尼殿周辺で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2020年3月7日)
長所
- 手軽に撮影できます。
- 全天球パノラマの投稿用サイトに画像をアップロードし、それをブログやWebサイトに埋め込むことで、簡単に全天球パノラマを共有できます。
短所
- 一眼レフカメラで撮影した全天球パノラマに比べて、画質が低いです。
画質にこだわらず、とりあえず全天球パノラマを撮影、公開したいという方は、THETAやその他の全天球パノラマカメラを使うことをお勧めします。
(3)ドローンの全天球パノラマ撮影モードで撮影する
私はDJIのMavic 2 Proというドローンを所有していますが、このMavic Proシリーズの機体には、全天球パノラマを撮影する機能が備わっています。
冒頭に掲載した全天球パノラマは、左上のリストから2種類のパノラマを切り換えられますが、「空撮パノラマ」となっているものがドローンで撮影したパノラマです。
▲DJI Mavic 2 Pro
ドローンに搭載されているカメラの撮影モードに全天球モードがあり、それを選んで送信機のシャッターボタンを押すだけで、ドローンが空中に静止し、カメラの上下の角度を変えたり、機体の向きを変えて、真上以外の全方位の写真を撮ってくれるのです。
しかも、撮影された数十枚の画像を自動的に連結し、ドローンの機体の構造上、撮影することができない真上に関しては、何となく「空」っぽい画像を自動的に生成して1枚の全天球パノラマ画像に仕上げてくれます。
至れり尽くせりの素晴らしい機能のように思えますが、この機能で作成された全天球パノラマは、ぱっと見はきれいなものの、細部では粗が目立ちます。
Mavic 2 Proのカメラは非常に性能が良く、一眼レフカメラで撮影したかのような写真を撮影できるのですが、自動でパノラマを合成する機能が貧弱で、せっかくの高画質な写真を活かせません。
そのため私の場合、空撮パノラマは撮影こそMavic 2 Proで行いますが、画像の結合などの処理はすべて「一眼レフカメラで撮影する」方法と同じく、パノラマ作成専用ソフトで行っています。
自動合成と手動合成*2で画質にどのくらいの差が出るのか、比較してみましょう。
▲自動合成と手動合成の比較(上が自動合成、下は手動合成)
上の画像には太陽光発電所が写っていますが、太陽光パネルの見え方を比べてください。
手動合成の方が、明らかにきれいに見えています。
両方とも解像度は同じにしてあるので、解像度の問題ではありません。
自動合成では画像をシャープにする処理も行われているようで、拡大すると余計に汚く見えます。
遠景で輪郭がはっきりしないものに関しては、下のようなとんでもない間違い(結合エラー)も見られます。
下の画像(全天球パノラマの一部を切り出したもの)では、中央奥で台形の山が2つ前後にならんでいますが、現実には台形の山は一つしかありません。その山が写った複数の写真を合成する際に、ドローンの自動合成機能ではきれいに山を重ねることができなかったようです。
▲自動合成によって生成されたパノラマで見つけたおかしな部分
拡大をせずに見る分には、自動合成のパノラマでも粗は目立たないと思います。
画像をシャープに見せる処理や色合いを鮮やかにする処理がかかっているためか、むしろぱっと見は自動合成のパノラマの方が綺麗かも。
このブログの読者の中には、私がTHETA Z1をドローンに積んで撮影していると思っている方もおられますが、そうではないのです。
長所
- 普通では撮影できない、空中の視点からの全天球パノラマを撮影できる。
短所
- ドローンを購入したり、撮影場所によってはドローンの飛行に関して国土交通省の許可・承認を受ける必要があり、この撮影手法に手を出すには手間とお金と時間がかかります。
- 手動で画像を結合してパノラマを作る場合、Mavic 2 Proでは26枚の画像を結合する必要があり、一眼レフで撮影した画像(私の場合は1ヶ所につき11枚)の結合よりさらに手間がかかります。
- パノラマを公開するためには、Googleマップなど全天球パノラマに対応したサービスに投稿するか、自分でオーサリングソフトを使用して出力し、Webサーバに載せて公開する必要があります(私は後者の方法で公開し、ブログに埋め込んでいます)。
画質には目をつぶって画像の結合をドローン任せにすれば、まだ手を出しやすいかも知れません。
最後に
「THETA Z1やドローンを買えば、きれいな全天球パノラマを撮影できる」と思われている皆さん、それは誤解です。
THETA Z1の画質はそれほど高くありませんし、ドローンの場合は一部の機種にしか全天球パノラマの撮影機能は備わっておらず、画像の結合機能もさほど精度は高くありません。
画像の結合用ソフトは使いこなすのに熟練が必要ですし*3、最終的にHTML5形式の全天球パノラマとして出力するオーサリングソフトはメーカーがなくなってしまったので、この記事では私が使用しているソフトの具体的な名称やその使い方は紹介していません。あしからずご了承ください。