待ちに待ったMSR製ガスストーブの日本国内での正規販売が始まり、発売直後、お金もないのにクレジットカードに頼って購入したのが、今回紹介する「ウィンドバーナーパーソナルストーブシステム」。
日本国内で正規に発売されて時間がたっていないのと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として不要不急の外出自粛が要請されているため、私自身も山ではまだ使っていません。
休日に自宅のバルコニーで無駄にお湯を沸かしているだけ…。
山での使い心地は書けませんが、分かる範囲でウィンドバーナーパーソナルストーブシステム(以下ウィンドバーナー)を紹介します。
ちなみに、ウィンドバーナーと一緒に「ポケットロケット2」というガスストーブも購入しました。興味のある方は、以下のリンクからどうぞ。
概要
ウィンドバーナーパーソナルストーブシステムがどのような製品かは、メーカー公式の動画を見ると分かりやすいです。
MSR Stoves: WindBurner™ Stove System Overview
仕様
▲ウィンドバーナーのパッケージ
製品名: ウィンドバーナーパーソナルストーブシステム*1
メーカー: Cascade Designs, Inc.(アメリカ)
サイズ: 11.5cm×10.7cm×18.1cm(カタログ値)
重量: 465g(ガスカートリッジを除くカタログ値)
最高出力: 1,765kcal/h
沸騰時間: 0.5リットルを湧かすのに2.5分。1リットルを湧かすのにかかる時間は3.5分(カタログ値)
燃料: 専用イソプロ
生産国: アメリカ合衆国
アメリカでの価格: $149.95 USD
購入価格: ¥26,000(税抜)
購入先: 好日山荘 姫路駅前店
外観
収納状態のウィンドバーナーはジェットボイルと同様、引っかかりが少ない円筒形にまとまっています。この状態の高さは、およそ18cm。
▲ウィンドバーナー(収納状態)
この状態で、ガス缶や燃焼部、ガス缶用のスタンド(脚)まで全てが収納できます。
ウィンドバーナーを購入して手に入るのは、以下の一式。
▲ウィンドバーナーの構成部品
これに、別途購入した専用イソプロ缶を加えて組み立てると、以下の状態になります。
収納状態も使用時の状態も、ジェットボイルに非常によく似ています。
▲ウィンドバーナー(使用時の状態)
では、各構成部品を見ていきましょう。
まずはポット。
ポットの底部には、ジェットエンジンのタービンのような集熱フィンが付いています。
▲ポット底部の集熱フィン
ポット下部の周囲には平行四辺形をした排気用の穴が開いていますが、ポットの取っ手部分の下だけは、排気口が開いていません。
▲ポット下部の周囲に開いている排気口
▲取っ手の真下だけ排気口がない
ウィンドバーナーの燃焼部からの排気は、この穴を通って外へ出て行くことになります。
取っ手の下にまで排気口を開けると、高温の排気が取っ手の下端付近に当たって取っ手が溶けたり、温度が上がった取っ手を持った使用者が火傷をする危険があるので、排気口が無いのは当然。
▲お湯を沸かしている時の排気口周辺の熱画像。取っ手の下は、排気口がある部分に比べて温度が低いことが分かる。(白っぽい部分の温度が最も高い。取っ手の基部は厚い樹脂製部品なので、中でお湯が沸いて高温になったポットからの熱の影響は受けにくい。)
ポットの内部には目盛りが刻まれており、0.5lと0.7lの目盛りの間に「Max Fill」の線が入っています。
安全に利用できるのは、沸かすお湯の量が600ml以下ということでしょう(それ以上だと、吹きこぼれやすくなるのかも)。
ウィンドバーナーと同種の商品であるジェットボイルでは、ポットの取っ手の貧弱さが不評でした。ポットの表面に被せるネオプレン生地のカバーに、薄い取っ手型の生地が縫い付けられているだけだからです。
そもそもジェットボイルの取っ手は、断熱カバー越しにポットを掴んだ時に、指を通して安定させるためのもの。
それに対してウィンドバーナーのポットは、しっかりした取っ手が付いた断熱カバーが被さっています。
▲ポット本体と断熱カバー
断熱カバーは、厚みのある耐熱樹脂のフレーム表面に、ナイロン生地を貼り付けたもの。
▲ポットに被せる断熱カバーの構造(樹脂の骨組みの上にナイロン生地が貼り付けられている)
ネオプレン生地でできたジェットボイル用の断熱カバーと比べると、断熱性には劣ります。
断熱カバーはポットにしっかり固定されており、取り外すときは取っ手の内側にあるレバーを外側に引っ張りながら下へずらします。
▲取っ手の下にロック解除レバーがある(四角いレバーの上端を矢印の方向に引く)
▲ロック解除レバーを引きながら下へずらすと、断熱カバーは外れる
断熱カバーに付いている取っ手は一見すると柔らかそうですが、実際は樹脂の芯が入っているらしく、固くてしっかりしており、ポットを扱いやすい。
また、取っ手を持ったときに指の甲が接する部分は分厚い樹脂の板になっているため、熱さは感じません。
続いては燃焼部。
一般的なガスストーブと違い、昔の石油ストーブのような放射型の燃焼部になっています。
ここから炎は出ず、金属メッシュ部分が赤熱するのです。
使用時はこの燃焼部がポットの底部にすっぽりと覆われる形になり、燃焼に必要な空気は燃焼部の下部から吸い込まれ、排気はポット底部の排気口やその周辺のすき間から外へ出て行きます。
MSRの放射型ストーブの仕組みについては、英文ですがMSRの公式サイトに詳細が書かれています。
▲ウィンドバーナーの燃焼部
この燃焼部は、明るい状態だと火が着いているのかどうか分かりづらいという問題があるのですが、MSRはそのための対策もしっかり考えています。
下の画像をご覧ください。奥の方に針金が見えると思います。
これはインジケーターワイヤーと呼ばれるもので、通常は金網部分と同じ色ですが、火が着いている時は鮮やかに赤熱するようになっているのです。
▲インジケーターワイヤーが赤熱した状態(火が着いているように見えないが、実際は燃焼中)
ジェットボイルと同様、ウィンドバーナーも燃焼部とポットを連結してロックできるのですが、ウィンドバーナーの方が連結は簡単。
下の画像を見てください。
▲燃焼部とポットの連結部
燃焼部の内側に突起が3個だけありますが、それがハマる穴は、ポットの底部にたくさん開いているのです。
適当にポットを載せると、どれかの穴が突起にハマり、ポットを少し右へ回せばロックされます。
ジェットボイルは穴の数が少なく、燃焼部の突起とポットの穴の位置を慎重に合わせる必要がありましたが、ウィンドバーナーはよく考えられています。
火力調節用の操作部は、私が好きなワイヤーハンドル。しかも、長さがあります。
▲ウィンドバーナーの火力調節用ハンドル(収納状態)
▲ウィンドバーナーの火力調節用ハンドル(展開時)
これだけ長いと、水を入れすぎて盛大に吹きこぼれているときでも、比較的安全に火を消せます。
ハンドルが短いと、お湯がバシャバシャ降りかかってくる中に手を突っ込まないと火を消せないので、危なくてしょうがないのです。そもそも、そんな状態にするのが悪いんですが…。
この火力調節用ハンドル周囲の黒い部分は樹脂製で、使用中でも熱くなりません。
燃焼部が高温の時でも、ここを持てば安全にウィンドバーナーを分解したり、移動させることができます。
次は、ガスカートリッジスタンド。
これも、他のメーカー製のスタンドとは一線を画す構造になっています。
収納状態も展開時の状態も、見た目では他のメーカーのスタンドと変わりはありません。
▲ガスカートリッジスタンド(収納状態)
▲ガスカートリッジスタンド(展開状態)
ウィンドバーナーのスタンドがすごいのは、脚の開き方。
下の画像のような方向に展開するのですが、これの何がすごいかは、実際にガス缶にセットしてみるとすぐに分かります。
▲展開途中のスタンド
普通のガス缶スタンドは、展開した後にガス缶をスタンドに「ガチャッ」とはめ込みます。
このとき、手が滑ってうまくガス缶がはまらなかったり、ガス缶やスタンドを落としてしまうことがあるのですが、ウィンドバーナーのスタンドの開き方であれば、ガス缶にはめ込む時に力がいりません。
下の画像のように、下から優しくガス缶底部のリムをくわえ込む形になるのです。
▲脚を上に広げればガス缶底部を自然にくわえ込むことになる
収納時も簡単で、スタンドの脚を折りたためばガス缶から外れます。
次はベースカップ。
ポット底部を保護するための透明樹脂でできたカップで、耐熱温度は105度C。
容量は500mlあり、120ml単位で目盛りが刻まれています。
食器や計量カップとして使用できます。
▲ベースカップ
最後は、ポットの蓋。
名前の通りポットに被せる蓋で、水切り用の細いスリットと、お湯を注ぐための穴が縁に開いています。
中央の穴は、オプションのフレンチプレスを使うためのもの。
▲ポットの蓋
この手の蓋は透明で中が見やすいと思いきや、実際は湯気で曇って中が見えなくなるので、透明である意味はほとんどありません。
縁に開いている穴を通して中を見た方が、お湯の状態が分かりやすい。
穴を通して水面が見えるのは、蓋が透明で光がポット内部に入ってくるからで、透明であることの意味が全くないわけではないですね。
この蓋は、説明書では「ポットの蓋」となっていますが、ベースカップにもぴったりはまります。
ポットのフタでもあり、カップのフタでもあるのです。
▲ベースカップにポットの蓋を被せた様子
私には使い道が思いつきませんが、アイディア次第で便利に使えそうです。
後編へ続く
▲後編はこちら
*1:英語表記は「WindBurner Personal Stove System」。