本日は、私が住む姫路にある陸上自衛隊姫路駐屯地の創立68周年記念行事に出かけてきました。
生まれも育ちも姫路の私にとっては、子どもの頃から両親に連れられて見に来ていた馴染みのある行事。
私が子どもだった(頭の中は今でも子どもですが)数十年前は、りゅう弾砲の空砲に紙吹雪が入れてあって、焦げ目の付いた紙吹雪を拾って持って帰ったり、火炎放射器でテントを焼き払う訓練展示に感動したり、装備品試乗では装甲車に乗れたり(窓はないですが、乗り心地が悪く、独特の雰囲気がある狭い車内が楽しかった)、そもそも駐屯地内のあちこちに見学者が車を止めているという、緩い時代ならではの楽しさがありました。
最近では不特定多数の見学者の車を駐屯地内に止めさせるなんてとんでもないことですし、戦闘用車両の中を公開してくれることも滅多にありません。
昔は自由に触ったり、実際に構えたりできた銃器の展示も、今は離れて見るだけ。
見学者の数も桁違いに多くなり、楽しみづらくなってしまいましたが、それでもワクワクするイベントであることに変わりはありません。
▲陸上自衛隊姫路駐屯地の正門
イベント名称: 姫路駐屯地創立68周年記念行事
日時: 2019年11月17日(日)9:00~15:00
場所: 陸上自衛隊姫路駐屯地(姫路市峰南町1-70)
入場料: 無料
駐車場: なし
https://goo.gl/maps/B1cG3CFoRkgW54bS6
▲陸上自衛隊姫路駐屯地の正門の位置
▲案内図(正門を入ってすぐの場所に立っていた看板)
▲行事予定表(正門を入ってすぐの場所に立っていた看板)
09:30頃
姫路市街の自宅を自転車で出発。
10:00頃
姫路駐屯地に到着。
(注:姫路駐屯地への交通アクセスについては、この記事の末尾に記載しています。)
正門をくぐったら、まずは手荷物検査。
その後、手荷物検査場を通過してすぐ右側にある駐輪場に自転車を置きました。
▲駐屯地内の駐輪場の様子
大半の見学者が目当てにしている訓練展示にはまだ時間が早いため、駐屯地内は人が少なくて快適。
▲10時頃の駐屯地内の様子
人が少ない内にやっておくべき事は、以下の3つ。
- 資料館の見学
- 売店での買い物
- 屋台での買い物(昼食)
本日は、まず資料館を見に行きました(位置は、この記事冒頭にある「案内図」の画像内「5 試着コーナー」付近)。
史料館内には銃器が展示されており、手を触れることはできませんが、人が少ない時間帯だったのでじっくり眺められました。
▲史料館の外観
▲史料館内の様子(写真撮影可)
▲史料館内の銃器の展示(手前から84mm無反動砲、110mm個人携帯対戦車弾、対人狙撃銃、89式5.56mm小銃)
資料館の横には、用途廃止装備品もいくつか展示されています。
ここには記念撮影用の顔出しパネルや試着コーナーもあって、お子さん連れなら楽しめそうな場所です。
▲史料館脇に展示されている用途廃止装備品(手前から35mm二連装高射機関砲(L-90)、75式130mm自走多連装ロケット弾発射機、75式自走地上風測定装置、75式自走155mmりゅう弾砲、74式自走105mmりゅう弾砲)
続いて向かったのは厚生センター(位置は、この記事冒頭にある「案内図」の画像を参照)。
▲売店のある厚生センターの外観
姫路駐屯地の厚生センターには2件のお店(ヤマザキショップと訓練用品店「ホウショウ」)がありますが、ヤマザキショップだけ見て帰ってしまう人もいるので、もう1件のお店「ホウショウ」もお忘れなく。
▲厚生センター内のヤマザキショップ
▲厚生センター内のホウショウ
本日は、ヤマザキショップで官給品ではない「戦闘糧食2型」を3種類購入しました(1つ税込¥900)。
▲本日購入した自分用のお土産
人が少ない内に買い物を済ませた後は、訓練展示会場であるグラウンドへ向かいました。
本当なら屋台で「たこ飯」(個人的にはお勧め)を買ってそれを昼ご飯にするべきだと思うのですが、行列に並ぶのは嫌い(食べ物を買うのに行列に並ぶのは特に嫌)なので、今日はカロリーメイトを持ってきました。
というわけで、屋台が並ぶ「売店エリア」は素通り。
訓練展示後の売店エリアは想像を絶する混み具合になるので、ここで昼食を調達しようと思う方は、早めに買っておく方が良いです。
▲飲食物の屋台が並ぶ売店エリア
観閲式がすでに始まって来賓の挨拶が聞こえる中、「どこから見学しようかな」とグラウンド周辺をウロウロ。
グラウンドは東西に細長い長方形で、北側に来賓席と招待者席があります。
スピーカーが設置されているのも北なので、北側はアナウンスが聞き取りやすい。
その代わり、逆光になるので写真撮影には不向き。
南はアナウンスなどがほとんど聞き取れない代わりに、順光なので訓練展示の撮影にはぴったり。
東はアナウンスが南側よりは聞き取りやすく、逆光ではないので撮影にも便利ですが、空包射撃が全て西向きのため迫力には欠けます。
結局、私はグラウンドの南側に陣取ることにしました。
来賓の挨拶は予想以上に長い。しかも、今日は陽差しが強い。
「季節外れの暑さの中、長時間にわたって立たされている隊員さんは大変だなぁ」と思っていたら、案の定1名の隊員さんが意識を失ったようで、観閲行進を控えて整列していた車両の裏へ引きずり出される様子も見られました。
▲グラウンドの南側に整列した車両(中砲けん引車と155mm榴弾砲(FH70))
11:10頃
来賓の挨拶が想定より長かったようで、予定より遅れて観閲行進が始まりました。
▲第3音楽隊が「祝典ギャロップ」を演奏する中、来賓席前を観閲部隊が通過する
11:30
国旗が退場しました。
この間は、当たり前ですが見学者も来賓も全員起立。
▲国旗が退場する様子
続いて、第3音楽隊による演奏(行進曲×2曲)が行われました。
子供たちにも馴染みのある曲が演奏されるイメージがあったのですが、今年は時間の都合か行進曲だけの演奏。
音楽隊が退場した後は、放水が始まりました。
訓練展示ではヘリコプター(UH-1J)が低空を飛行しますし、戦闘用の車両が比較的速い速度でグラウンド内を走るため、砂埃を防ぐ目的で水が撒かれるのです。
それでも毎年砂埃はすごいんですが…
▲訓練展示前の放水(奥にあるのは散水車)
11:45頃
予定より20分遅れて、ようやく訓練展示が始まりました。
訓練展示の内容は毎年同じで、ヘリコプターから降下した隊員が敵情を調べ、その後対空ミサイルで敵の航空機を撃破。155mm榴弾砲(FH70)で敵陣地に攻撃を加えて弱体化させてから、戦車と装甲車(および装甲車から下車した隊員)で敵陣地を制圧するというもの。
まずはUH-1Jが低空でちょっとした機動飛行を見せた後、ロープでレンジャー隊員を降下させます。
UH-1Jがグラウンド上空でホバリングをした瞬間、ものすごい砂埃が巻き起こりましたが、放水の効果なのか、砂塵が舞ったのは短時間だけでした。
▲UH-1Jからロープで降下するレンジャー隊員
その後は、2種類の対空ミサイル(81式短距離地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾)がグラウンド内に展開します。
▲砂埃を巻き上げながら疾走する81式短距離地対空誘導弾
▲高速でグラウンドに進入してきた93式近距離地対空誘導弾
93式近距離地対空誘導弾はそれほど準備に時間がかかりませんが、81式短距離地対空誘導弾は箱に入ったミサイルを発射機に装填しないといけないため、準備に時間が必要。
▲あっという間に準備を終えた93式近距離地対空誘導弾
▲発射機を上に向け、後端のフックをミサイルに引っ掛けようとしている81式短距離地対空誘導弾
▲発射機を水平に戻しながら、ミサイルを箱から吊り上げる
▲発射機を180度回転させ、ミサイルを上側に回して準備完了
対空ミサイルが準備を終えたら、中砲けん引車に引かれて155mm榴弾砲(FH70)が4門登場し、グラウンドの中央付近で南北方向に整列。
すでに待機していた82式指揮通信車は、12.7mm重機関銃M2に空砲を装填。
▲中砲けん引車から切り離されて射撃準備を行う155mm榴弾砲(FH70)
▲82式指揮通信車の12.7mm重機関銃M2に空砲を装填する様子
上の画像から分かっていただけると思いますが、82式指揮通信車も155mm榴弾砲(FH70)も私のいる場所の目の前。
接近してきた敵のヘリコプターを迎撃するという想定で82式指揮通信車が12.7mm重機関銃M2(空砲)を撃ちましたが、目の前で見るととんでもない迫力。
▲目の前で見る12.7mm重機関銃M2の空包射撃は大迫力
いよいよ本日のメインイベント、155mm榴弾砲(FH70)による空包射撃が始まります。
▲155mm榴弾砲(FH70)の空砲射撃の轟音に備えるよう促す隊員さん
155mm榴弾砲(FH70)の空包射撃は、しょっぱなから4門による斉射でした。
ものすごい轟音に加えて、今回の距離だと砲口炎の熱まで感じます。
▲斉射を行う155mm榴弾砲(FH70)
斉射の際は5秒前から秒読みがあるのですが、4門が順に発砲するときは秒読みがないので心臓に悪い。
何度聞いてもものすごい音で、訓練展示前に「早く撃て~」とふざけて言っていた子供は遠くに逃げるし、小さい子供達は泣き叫んでいました。
耳を保護せずにこの音を聞いて、過去に耳の痛みが数日続いたことがあったので、今日は耳栓を持ってきました。
ただ、耳栓をしていても「すごい」の一言。
最後は、74式戦車と96式装輪装甲車、そして96式装輪装甲車から下車した隊員により敵陣地を制圧して訓練展示は終了。
▲敵陣地の制圧に向かう74式戦車と96式装輪装甲車
12:20頃
予定より25分遅れて、訓練展示が終了しました。
こんな街中でこれだけの迫力がある訓練展示を毎年見せてくれる姫路駐屯地の隊員さんと、理解を示してくれている周辺住民の方々には感謝しかありません。
ふと振り返ると、戦車試乗の整理券を求める長蛇の列がすでに出来上がっていました。
▲戦車試乗の整理券を求める行列
戦車試乗は例年、くじ引きに当たった人だけが体験できます。
私は「どうせくじ運が悪いからやめとこう」と思って列に並ばなかったのですが、掲示を後で見返すと「先着約250名」となっていました。ちゃんと掲示を読んでおくべきでした。
装備品展示のためにグラウンドに着陸するUH-1Jを眺めながら、カロリーメイトで昼食。
13:00頃
定刻にグラウンドで装備品展示が始まりました。
展示されていた装備品は、以下の通りです。
▲81式短距離地対空誘導弾
▲81式短距離地対空誘導弾(訓練弾)
81式短距離地対空誘導弾
略称 短SAM
愛称 ショートアロー
諸元
全長 約2,700mm
直径 約160mm
重量 約100kg
製作 東芝
備考
我が国土、国情を考慮して独自の運用構想の下に師団防空用として開発された。
(出典:現地のパネル)
▲03式中距離地対空誘導弾
03式中距離地対空誘導弾(中SAM:ちゅーさむ)
発射装置(LAU)
Launcher Unit
ミサイルを搭載し、機動・展開、射撃統制装置からの指令により、垂直発射方式でミサイルを発射し、敵の航空機等を撃墜する。
(出典:現地のパネル)
▲93式近距離地対空誘導弾
説明パネルがなかったので、2016年度の記念行事の際にあったパネルの内容を記載します。
93式近距離地対空誘導弾
略称 近SAM
愛称 クローズアロー
諸元
全長 約1,430mm
直径 約80mm
重量 約11.5kg
製作 東芝
備考
低空域目標の追撃を目的とした地対空誘導弾である。
(出典:2016年のパネル 原文まま)
▲155mm榴弾砲(FH70)
りゅう弾砲(略称FH-70)
諸元
全長 9,800mm(走行時)12,400mm(射撃時)
全重量 9,600kg
操作 9人
製作
日本製鋼所
備考
中砲けん引車(FH-70用)でけん引。補助動力装置(APU)を有す。
(出典:現地のパネル)
▲120mm迫撃砲RT
120mm迫撃砲RT
性能・諸元
口径 120mm
砲身長 2.080mm
重量 約600kg
制作 豊和工業
(出典:現地のパネル 原文まま)
▲軽装甲機動車
軽装甲機動車
全長 約4,400mm
全幅 約2,040mm
車両重量 約4,500kg
最高速度 100km/h以上
乗車定員 4名
制作 小松製作所
(出典:現地のパネル 原文まま)
▲96式装輪装甲車
96式装輪装甲車
(WAPC)
性能・諸元
乗員 10名
最高速度 100km/h
全長 6.84m
全幅 2.48m
重量 約14.5t
最高出力 360PS
装備
12.7mm重機関銃
96式40mm自動てき弾銃
(出典:現地のパネル)
▲87式偵察警戒車
第3偵察隊
87式偵察警戒車
略称 RCV
全長 6.4m
全幅 2.5m
車両重量 15t
最高速度 100km
武装 25mm機関砲、74式車載機関銃
乗員 5名
87式偵察警戒車は偵察隊等に装備されており、空地火力の脅威の中で、主として路上機動により、偵察警戒任務に使用する。
(出典:現地のパネル 原文まま)
▲UH-1J
諸元表
名称 UH-1J
搭載人員 13名
搭載燃料 1160リットル
最大速度 約240km/h
上昇限界 約5334m
航続距離 460km
全備重量 4763kg
最大出力 1134SHP
(出典:現地のパネル)
ここでUH-1Jについて小ネタを一つ。
UH-1Jの機体には、角のようなものが2本ついています。
▲UH-1Jについている角のようなもの(矢印が示している2箇所)
これはアンテナだと思っていましたが、隊員さんに聞くと「電線に引っかかりそうになったときに、電線を切断するカッター」とのことでした。
確かに、よく見るとワイヤーカッターのようになっています。
▲角の付け根を見ると、ワイヤーカッターになっているのが分かる
低空飛行をするヘリコプターが電線に引っかかって墜落する事故は、実際に発生しています。
電線がヘリのメインローターやスキッド(着陸用の脚)に引っかかりそうな時に、ヘリコプターが一定以上のスピードで飛んでいれば、電線は丸みを帯びた機体の形状に沿ってワイヤーカッターの方へ誘導され、切断されます。これにより、ヘリコプターは墜落を免れるわけです。
英語版Wikipediaによると、これはWSPS(Wire Strike Protection System)と呼ばれるもので、直径9.5mmまでのワイヤーに対応できるそうです。
The system is effective when the helicopter strikes the wires at angle of less than 90 degrees and at speeds more than 30 knots (35 mph; 56 km/h). The system is designed to cut a 3⁄8-inch (9.5 mm) steel cable with a breaking strength of 12,000 pounds (5,400 kg).(出典:英語版Wikipedia「Wire strike protection system」)
装備品展示を一通り見た後は、戦車試乗の様子を眺めてから帰路に就きました。
▲戦車試乗の様子(顔にぼかしを入れていますが、皆さん楽しそうな笑顔です。)
姫路駐屯地の記念行事では、バカスカぶっ放す155mm榴弾砲(FH70)の空砲の他に、レンジャー展示も有名です。
私はあのノリがあまり得意ではないので今年も見ませんでしたが、見たことの無い方はぜひ一度ご覧になってください。Youtubeにたくさんの動画があります。
最後に、姫路駐屯地への交通アクセスを記載します。
駐屯地内に一般見学者用の駐車場は用意されていないため、自動車でのアクセスについては載せていません。
自動車の場合は、周辺で駐車可能な場所を事前に探しておく必要があります。
自衛隊の記念行事を目的に近隣店舗の駐車場に車を駐めるのは禁止されており(常識で考えれば分かりますが)、店舗によっては「通報する」旨の掲示があります。
<電車の場合>
JR播但線の野里駅が最寄り駅です。
野里駅を出たら南に進み、すぐに出会う「野里駅前」交差点を右折。
そのまま道なりに西へ進めば、およそ1km(徒歩約15分)で姫路駐屯地の正門に到達します。
<路線バスの場合>
JR姫路駅と山陽電車の姫路駅の間には、神姫バスターミナルがあります。
その8番のりばを出発する「大寿台(だいじゅだい)」行き、または「獨協大学」行きの路線バスに乗り、「自衛隊前」バス停で下車すれば、徒歩数十メートルで駐屯地の正門に到達します。
バスが時刻表通りに運行すれば、姫路駅前から「自衛隊前」バス停までおよそ15分、運賃は¥220です。
<レンタサイクルの場合>
JR姫路駅の北口を出て西へ進むと、「レンタサイクル駅リンくん姫路店」があります。
ここで1回¥350で自転車を借り、姫路駐屯地へ行くこともできます。
自転車は、駐屯地の正門を入ってすぐの駐輪場所に止められるので、たいへん便利。
姫路駅から姫路駐屯地まではおよそ4.5kmです。