播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

笠懸神事を見てきました@上賀茂神社(京都市)

2019年5月11日に明石城で流鏑馬(やぶさめ)を見学して以来、流鏑馬の格好良さにはまってしまい「また見てみたいな」と考えていました。

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調べると、京都の上賀茂神社で毎年10月の第3日曜、笠懸神事(かさがけしんじ)という名前で流鏑馬が行われるとのことだったので、今日はそれを見物しに行ってきました。

笠懸神事の名前の由来は、会場のアナウンスによると、当初は笠を的にしていたことだそうです。笠の他に、昔は大切な人の着物や沓(くつ)も的として使うことがあったとか。

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▲上賀茂神社の一の鳥居(この鳥居のすぐ先に馬場が設けられていた)

イベント名称: 上賀茂神社笠懸神事
日時: 2019年10月20日(日)午後1時~
場所: 上賀茂神社参道西側芝生広場
料金: 観覧席での観覧は有料(¥500)。外側での立ち見は無料。
主催: 賀茂別雷神社
協力: (財)賀茂県主同族会、賀茂別雷神社氏子崇敬会
奉納: 武田流

https://goo.gl/maps/Z3X2vPkwsw9eCEek7

[由来]
 上賀茂神社に対する尊崇の念は深く、古代より「相撲(すまい」「競馬(くらべうま)」「騎射(うまゆみ)」が神前に奉じられてきた。
 上賀茂神社における笠懸の由来としては、建保二年(1214)に後鳥羽上皇が行幸した際に催した「笠懸」が挙げられる。
(中略)
しかし、王政復権を志した「承久の変」に敗れ、上皇は隠岐に、息子の順徳天皇は佐渡に流されてしまう。以来、上賀茂神社では長きに渡って「笠懸」が行われることはなかった。
 このような折に、関係者の多大なご尽力により、平成十七年(2005)に上賀茂神社の笠懸は、後鳥羽上皇以来、実に八百年ぶりに復興され、神前に奉納されるに至った。以来、現在まで毎年10月の第三日曜日に行われている。
 今日、「流鏑馬」は多くの神社で行われているが、上賀茂神社は「笠懸」を神事として行っている唯一の神社である。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

10:49姫路発、11:34京都着の新幹線で京都駅へ。

JR京都駅から上賀茂神社までは、京都市バスを利用しました。

上賀茂神社行きの市バス(系統番号は4)は、JR京都駅の北側にある広いバスターミナルの「A2」乗り場から発車します。

「今日は笠懸神事があるから、バスを何本か見送らないといけないかな」と思っていましたが、バス停はさほど混雑しておらず、来たバスにすぐに乗れました。

ただ、そこからが長い。
終点の上賀茂神社に着いたのは、JR京都駅を出発してから約50分後。

京都市バスは後乗り前降りで、降車時に運賃を支払います。
この路線は運賃が均一なので、乗車時に整理券は出ませんし、ICカードをタッチする必要もありません。運賃は¥230。

12:50頃
上賀茂神社に到着。

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▲上賀茂神社の南端の様子

太鼓の音が鳴り響く中、流鏑馬の様子をじっくり見るために、とりあえずお手洗いを済ませました。

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▲上賀茂神社西側に駐車場があり、その北隣に真新しいお手洗いがある

お手洗いを済ませたら、市バスの降り場がある上賀茂神社南端に戻り、一の鳥居をくぐったところにある芝生広場に向かいました(参道の両側に芝生広場があるが、笠懸神事を行うのは西側)。

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▲一の鳥居をくぐったすぐ先の参道(馬場は左側。奥に見えているのは二の鳥居。)

馬場では、ちょうど天長地久之式(てんちょうちきゅうのしき)が始まったところでした。
なぜそれが分かるのかというと、聞き取りやすい大音量のアナウンスが流れるからです。

私は少しでも近くで見物しようと思い、¥500の有料観覧席に入りました。

【天長地久之式】天長地久之式(てんちょうしきゅうのしき)と読む。奉行より命を受けた射手が馬を中央に進め「五行の乗法」を行う。初め左に3回、次に右に2回、馬を乗り回し、中央で馬を止め神前に目礼した後、鏑矢を弓に番え、天と地に対し満月のように弓を引き絞り、「天下泰平、五穀豊穣、万民息災」を祈念する。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

この後も、随時女性の声で日本語のアナウンスが、男性の声で英語のアナウンスが流れ、初めて見に来た人でも状況がよく分かるようになっていました。

続いて、矢代振之式(やしろぶりのしき)が行われました。

【矢代振之式】矢代振(やしろぶり)と読む。奉行は射手の矢を全員分集めて後ろ手に回し、1本ずつ引き抜き、射手の出場順を決める。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

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▲矢代振之式の様子

この後は、射手が馬場本(ばばもと)へ移動します。

上賀茂神社にある芝生の広場は南北に長く、長さは218m。
南が馬場本、北が馬場末(ばばすえ)で、儀式を行うのは馬場の中央付近。

通常の流鏑馬では、馬場本がスタート地点、馬場末がゴール地点になります。

続いて行われるのは素馳(すばせ)。
馬場の状態確認や、馬を馬場に慣らす目的があります。

【素馳】馬場入り後、奉行は記録所(きろくどころ)に昇り、諸役は配置につく。扇方が扇の合図を行ったのち、奉行は「破之太鼓(はのたいこ)」を打ち鳴らし、射手は弓を射ずに全速力で馬場を走り抜ける素馳(すばせ)を行う。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

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▲素馳の様子(的を射ないので、弓を構えない)

颯爽と目の前を走り抜ける馬と射手の姿が美しくて、思わず見とれてしまいます。

全員が素馳を終えると、いよいよ奉射(ほうしゃ)です。

【奉射】射手は一之組と二之組などに分かれ奉射(ほうしゃ)を行う。射手は馬を全速力で走らせながら「一之的」から順に、弓に矢を番えては放ち馬場を駆け抜ける。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

長さが200m以上ある馬場を駆け抜ける間に、一之的から三之的まで3つの的に向けて矢を放ちます。
矢が的中すると、気持ちよい音を立てて的である木の板が割れ、拍手が起こります。

私がいた一之的近くでも、二之的、三之的が割れる音がよく聞こえました。

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▲一之的に矢が命中した直後の様子

有料の観覧席にはイスが並んでいるのですが、みんな立ち上がってスマホで撮影するため、前の人の頭やスマホが邪魔になります。

しかし、それでも馬が走るスピード感や射手の様子は分かりますし、馬が駆け抜ける音や的が割れる音を聞いているだけでも楽しい。

上賀茂神社の笠懸神事が流鏑馬と違うところは、馬場を往復するという点。

射手は二組に分かれているのですが、一組目の射手が全員、馬場本から馬場末に向かって奉射を終えた後は、一組目の射手が馬場末から馬場本へ馬を走らせながら、四之的と五之的を射るのです。

二組目でも同じことが行われるので、見物客から見ると、笠懸を2回楽しむことができます。

四之的と五之的は地面に近い所に設置されており、アナウンスによると、茂みに伏せた敵兵を射ることを想定しているそうです。

四之的は、なんと射手から見て右下に設置されています。

皆さんご存じだとは思いますが、弓は左手に持って使いますね。
馬に乗った状態で、左手に弓を持って右下の的を射るのがどれほど難しいか容易に想像できると思います。

弓を馬の体の右側に持っていってから右下にある四之的に向けて矢を放ち、また馬の背中を越えて弓を動かしてから左下にある五之的を射るというわけです。

私がいた場所から四之的はまったく見えなかったのですが、アナウンスではその難しさが力説されていました。

私の目の前には五之的があり、それを射貫く様子はじっくり楽しむことができました。

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▲五之的(射手から見て左下)に命中した瞬間の様子

往復で矢を放つ珍しい流鏑馬(笠懸)を見られて大満足。

「他の人が笠懸に夢中になっている間なら、上賀茂神社に簡単にお参りできるかも」と考え、二の鳥居をくぐって楼門を目指しました。

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▲二の鳥居手前にある神馬舎

二の鳥居をくぐったところには、3つの建物があります。
左から細殿、橋殿、土屋で、橋殿は屋根の葺き替え工事中。

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▲左から細殿、橋殿、土屋

細殿の前には円錐形に整えられた砂がありましたが、これは立砂(たてずな)と呼ばれるもの。

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▲細殿と立砂

立砂(たてずな)
盛砂(もりずな)とも云い、「たつ」とは神様のご出現に由来した言葉であり、神代の昔に御祭神・賀茂別雷神が最初に降臨された、本殿の北北西二km奥にある円錐形の美しい形の神山に因んだもので、一種の神籬(ひもろぎ)(神様が降りられる憑代(よりしろ))である。鬼門・裏鬼門にお砂を撒き清める風習は此の立砂の信仰が起源で、「清めのお砂」の始まりである。
(出典:現地の看板)

細殿に向かって左から奥に進むと朱色が鮮やかな楼門に出会います。

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▲楼門

楼門の先でお参りができるのですが、楼門の外までお参りの待機列ができていました。
私は行列に並ぶのが嫌いなので、せっかくここまで来ましたがお参りはせず。

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▲お参りをするための行列

14:00過ぎ
再び馬場に戻ると、バス停に向かう人たちを見ながら神社の関係者が「早めに帰らないと、バス停が大変なことになるからねぇ」などと話しているのが聞こえてきました。

笠懸神事が終わると、みんなが一斉にバス停に殺到するということでしょうか。

それは勘弁願いたいと思い、まだ競射(きょうしゃ)の途中ですがバス停へ向かうことにしました。

バス停(バス乗り場)はバス降り場の近く、「賀茂大社」と刻まれた大きな石碑に向かって右側(東側)にあります。

【競射】奉射の成績上位者が「競射(きょうしゃ)」を行う。的の位置は奉射と同じだが、左横の3つの的が小さな土器的に替わり、的中させるにはより高い技量が必要となる。競射により最多的中者が決められる。
(出典:現地で配られた三つ折りのパンフレット)

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▲競射の様子(一之的。矢印の先に土器的がある)

14:25頃
バスを待っていると、笠懸神事の締めくくりの挨拶が聞こえてきました。
後ろを振り返ると、バス待ちの行列はどんどん伸びていきます。

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▲バス停(バス乗り場)の様子

早めに来ておいて良かった。

14:30頃の京都駅行のバス(系統番号は4)に乗り込み、JR京都駅に到着したのは15:30頃
所要時間は1時間ほど。

16:10京都発、16:54姫路着ののぞみ113号で姫路へ戻りました。