播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

掃海艦あわじ(MSO-304)一般公開@阪神基地隊

本日は、2017年3月16日に就役したばかりの最新鋭の掃海艦「あわじ(MSO-304)」(あわじ型掃海艦の1番艦)が、阪神基地隊で一般公開されるとのことで見学に行ってきました。
 
あわじは最新鋭の掃海用具を備えているだけでなく、船体がFRP製になったことで軽量化され、従来の木造船体よりも寿命が長くなっています(木造だと20年ももたないものが、FRP製だと30年もつ)。
 
MSOはMine Sweeper Oceanの頭文字を取ったもので、掃海艇はMine Sweeper Coastalの頭文字を取ったMSCの略称が使われます。
 
掃海艦の方が掃海艇より掃海能力が高い(機雷の探知能力が高かったり、より深いところにある機雷を処分できる)という違いがあります。
 
私が住む姫路市から阪神基地隊への行き方ですが、私はいつも以下のルートを使っています。
 
08:25
近江塩津行の新快速でJR姫路駅を出発。
 
09:01
神戸駅で下車し、向かい側のホームで快速電車を待ちます。
 
09:04
野洲行きの快速電車で神戸駅を出発。
 
09:06
元町駅で下車し、西口にある阪神電車との連絡口(地下へ降りる階段)から阪神電車の改札へ向かいます。
 
09:08
梅田行の直通特急で阪神電車の元町駅を出発。
元町駅は地下駅ですが、間もなく線路は上り勾配になり、やがて列車は高架の上を走るようになります。
 
09:16
目的地の御影駅(阪神線)で下車。
 
阪神御影駅を出たら、線路の高架の北側を高架沿いに東へ向かいます。
すると、「ふらっとりん」という無人のレンタサイクルステーションがあるので、そこで自転車を借りました。
注:ふらっとりんは、事前に手続きを済ませて郵送で届く会員証がないと利用できません。
 
阪神御影駅からは阪神電鉄の高架の南側を、高架に沿って東進。住吉駅を過ぎてからは高架の北側を東進し、スーパーマーケットの万代がある場所で右折。
後は道なりに南下していくと、阪神基地隊のある人口島に行けます。

阪神御影駅から阪神基地隊までは、4km弱。
 
私はふらっとりんの会員証があるのでこの方法を使っていますが、一般的にはJR摂津本山駅から34系統の路線バスで「魚崎車庫前」バス停へ行き、そこから徒歩で、またはJR住吉駅から35系統の路線バスで「魚崎車庫前」バス停へ行ってから徒歩で、という方法がよく使われています。
 
あるいは、自家用車で近くまで来て、近隣の有料駐車場を使用する人もいますし、駅からタクシーで来る人もいます。
 
以下のURLをクリックすると、阪神基地隊の位置がGoogleマップで表示されます。
 
 
09:45
レンタサイクルで阪神基地隊に到着。
正門を入ってすぐ右のスペースが駐輪場になっていたので、そこに止めさせて頂きました。
 
東側の岸壁を見ると、掃海艇が2隻停泊していました。
北側に停泊していたのは掃海艇つのしま、その後ろが今回の目玉である掃海艦あわじです。
 
 
▲東側の岸壁に停泊中の掃海艇つのしま(左)と掃海艦あわじ(右)
 
 
▲掃海艦あわじ(MSO-304)
 
排水量: 690トン
全長: 66.8m
全幅: 11.0m
深さ: 5.2m
吃水: 2.7m
機関: ディーゼルエンジン×2
出力: 2,200ps
速力: 最大14ノット(26km/h)
乗員: 約60名
兵装: JM61-RFS×1
(出典: Wikipedia)
 
掃海艇や掃海艦が何をする船なのかご存じない方も多いと思いますので、簡単に説明します。
 
陸上では、敵の進攻を妨害するために地雷を設置した地雷原が作られることがあります。
それと同様のことが海でも行われるのですが、その際に陸上の地雷の代わりに使われるのが機雷(きらい。機械水雷の略。)で、機雷が設置された海域を機雷原と呼びます。
 
機雷は海底に転がっていたり、海底のおもりにワイヤーでつながれた状態で海中に漂っていたりします(下図参照)。

そして、船が接触したり、スクリュー音を探知したり、磁気を検知(船は鉄で出来ているため)したら爆発し、船に損害を与えます。
注:冒頭で船体がFRP製や木製と書かれているのを見て驚いた方もおられるかも知れませんが、磁気に反応する機雷に反応されないようにするため、掃海艇や掃海艦は鉄以外の素材で船体が作られているのです。
 
このような恐ろしい機雷を取り除き、海を安全な状態に戻すのが掃海艇や掃海艦の役割です。
 
機雷を取り除く方法はいくつかありますが、その内の一つである係維掃海を簡単に図示します。
 
 
▲係維掃海と海中を漂う係維式機雷の模式図
 
機雷原で掃海艇の後部から先端に展開器と掃海浮標を付けたワイヤーを2本伸ばします。
 
展開器は水流を受けると左右に広がるように動き、カッターのついたワイヤーを横へ広げる役目を果たし、掃海浮標はワイヤーの先端が沈みすぎないように保ちます。
 
ワイヤーはある程度の深さに沈める必要があるので、沈降器と呼ばれる部品も取り付けられています。
 
この状態で係維式機雷のワイヤーにカッターが当たるように機雷原で船を進めると、機雷とおもりをつなぐワイヤーが切れて機雷は海面に浮かんできます。
その浮かんできた機雷を機関砲で破壊するというわけ。
 
他に感応掃海という方法もあります。

こちらは発音体と呼ばれる装置をワイヤーで引っ張り、磁気を発する掃海電線も海中に垂らし、発音体から出る船のスクリュー音を模した音や、掃海電線からの磁気に機雷のセンサーを反応させ、海中で機雷を爆発させるというものです。
 
どこに機雷があるか分からない機雷原で行う掃海の他に、機雷掃討という作業もあります。

これはソナーを使って機雷を捜索し、見つけたら処分用の装置を使用して機雷を爆発させるというもので、機雷の位置が明確に分かっている場合に行う作業をいいます。
 
では、実際に掃海艦あわじの中を見ていきましょう。
 
まずは岸壁に設置されていたテントで入門証(首からかける札)とパンフレットを受け取り、あわじの左舷中央やや前よりの位置に設置された舷梯から乗艦します。
 
 
▲左舷中央付近に設置された舷梯で乗艦
 
案内の隊員さんの指示で最初は艦首から見学です。
艦首に出てまず目に入るのは、20mm機関砲が搭載された砲塔(JM61R-MS)。
 
 
▲艦首の20mm機関砲(JM61R-MS)
 
20mm機関砲(JM61R-MS)
 主として海面上にある機雷を射撃により処分するために使用される、本艦唯一の砲熕武器です。
 レーザー測距儀と赤外線カメラを組合わせた電子光学式照準装置と連動しており、従来の目視照準、人力操作より精確な射撃が可能です。
 いわゆる「バルカン砲」で、同系の砲は護衛艦、巡視船、戦闘機などに幅広く使われています。
 
性能要目
発射速度: 約600発/分
給弾方式: 艦内給弾型
(出典:現地のパネル)
 
従来の掃海艇では、20mm機関砲は人力で操作していましたが、あわじ型では艦橋からの遠隔操作で発砲できるようになっています。
 
近くにおられた隊員さんに聞くと、ロックを解除すれば、従来通り人力で動かすことも可能とのこと。
 
 
▲20mm機関砲(JM61R-MS)の後部(取っ手を持って人力で操作することも可能だそうです)
 
艦首を見終えたら、右舷側の通路を通って艦尾側へ向かいます。
小型のボートが置かれた空間の横を通り、ラッタルを降りたところが後部の甲板。
 
しかし、後部甲板はまだ見学出来ず、順路に従うと後部甲板の前部右舷側から艦内へ入ることになります。
 
そこには見慣れない大きなタンクのようなものがありました。
張られているパネルを見ると二人用の「再圧タンク」とのこと。
 
 
▲再圧タンク
 
 
▲再圧タンク内部の様子
 
再圧タンク、二人用
収容人数: テンダールーム(衛生員)1名、ペイシェントルーム(潜水病患者)1名
最高治療圧力: 0.21Mpa
最高加圧、減圧速度: 毎分20フィート(6.6m)
重量: テンダールーム 255kg、ペイシェントルーム 126kg
 
再圧タンクの目的
 減圧症(潜水病)患者をタンク内に収容し圧縮空気で加圧し再度、潜った時と同じ状態にして体内(血中)に溶け込んだ不活性ガス(窒素)の気泡を小さくする。
(出典:現地のパネル)
 
再圧タンクの奥には、潜水用の装備品が一式展示されていました。
機雷に爆薬を取り付けるといった作業に使用するため、機雷のセンサーが反応しないような工夫が随所に施されているようです。
 
▲潜水用の装備品
 
再圧タンクは右舷側にあり、中央付近には自走式機雷処分用弾薬(EMD)が2つ展示されていました。
 
 
▲自走式機雷処分用弾薬(EMD)
 
 
▲自走式機雷処分用弾薬(EMD)後部
 
自走式機雷処分用弾薬(EMD)
 水中の機雷を捜索、処分する「機雷掃討」の際に使用される装備です。カメラ、ソーナー等が搭載されており、光ファイバーケーブルを用いた有線遠隔操作で航走体を機雷に近づけ、成形炸薬弾頭を起爆させることで機雷を処分します。
 弾薬という名前の通り、実弾はワンショット型(使い捨て)の航走体であり、識別のため訓練型は黄色、実弾は黒色に塗装されています。
(出典:現地のパネル)
 
自走式機雷処分用弾薬(EMD)は、機雷を破壊するための弾薬であるため、実際に使用する場合は回収することはありませんが、訓練弾は回収する必要があります。
 
その回収方法はシンプル。
大きな網を使用し、金魚すくいのように拾い上げるそうです。
 
▲自走式機雷処分用弾薬(EMD)の訓練弾を回収するための網
 
上の大きな網の横には防火服が展示されていましたが、実はこれには面白い仕掛けが。
 
 
▲展示されていた防火服
 
この防火服、中に人が入っていて、防火服の質感を見ようと思って近づくと突然動き出すのです。
これには、いい年をしたおっちゃんが声を上げて驚いていて、それを見て思わず噴き出してしまいました。
 
再圧タンクのちょうど反対側の位置(この空間の左舷側)には、小型のソナーが展示されていました。
 
▲小型のソナー
 
重さは約2kgで、釣り竿のようなものにぶら下がっています。

隊員さんによると、この釣り竿のようなものは本当に普通の釣り竿で、使い勝手が良いそうです。
 
後部甲板の前方にある小さな空間を右舷側から左舷側へ順に見て回った後は、後部甲板の見学です。
左舷側から後部甲板に出たところに展示されていたのは、水中無人機 OZZ-2。
 
▲水中無人機 OZZ-2についての説明が書かれたパネル
 
 
▲専用のケースに収納されている水中無人機 OZZ-2
 
 
▲水中無人機 OZZ-2のスクリュー
 
水中無人機 OZZ-2
 本艦搭載の水中無人機(UUV)は、HYDROID社製のREMUS600をOZZ-2として装備したものです。
 事前に設定したプログラムに則って航行し、艦上に回収した後、搭載されたサイドスキャンソーナーの記録データを解析して水中(海底)の状況を調査します。
 航走中は基本的にオペレータによる操作を必要とせず、無人機に搭載されたコンピュータの判断で自律的に行動します。
(出典:現地のパネル)
 
隊員さんの話では、水中無人機 OZZ-2のお値段はマンション1棟分くらいとのこと。
 
見た目から魚雷だと勘違いされそうなためか、万一漂流して海岸に流れ着いた場合のための連絡先が本体に書かれていました。
 
 
▲水中無人機 OZZ-2が漂着したときのためのマーキング
 
後部甲板の中央には、黄色いケーブルが巻かれた巨大なリールが鎮座しています。

この黄色いケーブルは掃海電線と呼ばれるもので、船と似た磁気を発生させるために使用されます。
掃海電線を海中に垂らして引っ張り、磁気に反応する機雷を爆発させるわけです。
 
 
▲後部甲板を艦尾から見る
 
後部甲板の右舷側には、音響センサーを搭載した機雷を爆発させるために、船のスクリュー音そっくりの音を出す「発音体」が置かれていました。
 
 
▲発音体
 
発音体や掃海電線で機雷を爆発させた時、発音体や掃海電線自体が壊れないのか疑問に思ったので、近くの隊員さんに尋ねてみました。
 
回答は「やばいときもありますね」とのことだったので、これらの機材は機雷の爆発で壊れることはあまりないようです。
 
後部甲板を見学し終えたら、左舷側のラッタルを登ってボートのある空間の横を通り、さらにラッタルを上がって艦橋へ。
 
 
▲艦橋内の様子
 
艦橋内には多くの見学者が留まるため、見学するのが大変。
 
艦橋内には双眼鏡がいくつかあったのでメーカーを確認してみたところ、使われていたのはKenkoの製品でした。
 
 
▲艦橋内の双眼鏡はKenko製
 
艦橋内右舷側、艦長席の後ろには光学式監視装置のコンソールがありました。
これは、浮いている機雷を遠距離からでも見つけられる装備で、今までの掃海艇には無かったもの(あわじ型掃海艦で初めて搭載)のようです。
 
肝心の光学式監視装置本体がどこにあるのか尋ねると、艦橋の上に設置されているとのこと。
 
 
▲光学式監視装置(退艦後に撮影)
 
光学式監視装置(レーザレーダ)
 不可視レーザー光を照射し、その反射を好感度のカメラで捉えることで、肉眼では発見の難しい水面上にある目標(浮遊機雷等)を捜索する装備です。
 自ら照射したレーザー光の反射を利用するため、夜間であっても鮮明に目標を捉えることが可能です。
(出典:現地のパネル)
 
艦橋内右舷側のラッタルを下ったところには艦長室があります。
さほど広くはありませんが、これでも他の隊員さんの居住空間に比べれば抜群に快適なんでしょうね。
 
 
▲艦長室内の様子
 
艦長室を見た後は左舷の通路に出て、乗艦用の舷梯の少し後ろにある舷梯から退艦しました。
 
 
▲退艦後に岸壁から後部甲板を見る
 
見学にかかった時間は、およそ35分でした。
 
掃海艇つのしまも見学可能でしたが、過去に一度見学しているので、今回はパス。
厚生棟に向かい、売店でお土産を購入して家路に就きました。
 
掃海艇つのしまを見学した時の記事がありますので、興味のある方は以下のURLからご覧下さい。
 
掃海艇一般公開@阪神基地隊(2014年6月8日)
 
本日はカレー食堂の営業がありましたが、11:30にオープンなので、何十分もぼーっと待っているのが嫌で諦めることに。
 
カレー食堂は以前に訪問したことがあり、当ブログで記事にしていますので、興味のある方は以下のURLからどうぞ。
 
KOBEカレー食堂@海上自衛隊阪神基地隊(2016年8月26日)
 
カレー食堂は店内が狭いため、厚生棟のアリーナがカレー食堂の第2会場として開放されていました。
 
 
▲カレー食堂は、店内が満席になった場合に備えて第2会場まで用意されていた
 
10:50
阪神基地隊を出発。
レンタサイクルで阪神御影駅に戻ります。
 
11:15
阪神御影駅を山陽姫路行の直通特急で出発。
 
11:24
元町駅に到着。
列車を降りてJR元町駅へ。
 
11:33
須磨行の普通列車でJR元町駅を出発。
 
11:35
神戸駅で普通列車から下車し、下り新快速列車が止まるホームで新快速を待ちます。
 
11:40
姫路行の新快速に乗車。
 
12:17
JR姫路駅に到着。
掃海艦あわじ艦内の全天球パノラマ(撮影日2017年04月01日)
 
以下のURLをクリックすると、全天球パノラマ画像が表示されます。
画面左上のリストから、見たい場所をクリックしてパノラマを切り換えて下さい。