播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

Jetboil初の直結型汎用ストーブ:MightyMo(マイティーモ)

購入の経緯

アウトドア関連メーカーが新製品を発表するアメリカ最大規模の見本市「Outdoor Retailer 2016 Summer」が2016年の8月にユタ州で開催されました。
 
いくら山道具が好きだからと言ってアメリカにまで行けませんから、Youtubeで各メーカーの新製品を紹介する動画を眺めていたら、Jetboil(ジェットボイル)の新製品「MightyMo」(マイティーモ)を見つけてしまいました。
 
その動画はこちら。
 
 
Jetboilといえば、ガスストーブと専用クッカーの組み合わせから成るシステム製品を思い浮かべますが、MightyMoはクッカーを選ばず使える、ガス缶直結型の汎用ガスストーブです。
 
専用クッカーが付属しないので、まったくもってJetboilらしさがありませんが、ゴトクに乗るサイズ・重量のクッカーなら何でも使えて、火力調節の幅が非常に広く(超弱火でも安定)、小型で軽量、なおかつ寒冷期でも使用できるようレギュレーターを備えていながら安価(定価50ドル未満)。
 
かなり優秀な製品ではなかろうかと思い、その動画の中で言われていた「2017年1月発売予定」という文言を信じて1月まで待つことに。
 
ところが、いつものようにあちこちのオンラインショップのサイトをさまよっていると、アメリカのアウトドア用品オンラインショップ「REI.com」で、発売日を待たずMightyMoが「独占販売(COOP EXCLUSIVEと表記)」されているのを発見してしまいました。
(注:2017年1月まではREIが独占販売権を持ち、その後他の販売店でも取り扱いが始まるそうです。)
 
アメリカ国外への発送不可という制限がかかっていたので、アメリカ国内の住所へ発送してもらってから日本の我が家へ送り直してもらいました(REI.comがそんなサービスを提供しているわけではありません。アメリカ国内に親類や知人がいる人はその人に頼んだり、転送サービスを利用してください)。

外観・機能

パッケージは、MSR製品のような三角柱に似た形状です。
 
 
▲MightyMoの外箱
 
製品名: MightyMo(マイティーモ)
メーカー: Jetboil(Johnson Outdoors Gear, Inc)(アメリカ)
性能: 1リットルの水を2分40秒で沸騰させる(カタログ値)
燃費: 230g缶のガスを使い切るまでの時間は75分(カタログ値)
重量: ストーブ本体のみ 97g(実測値)
    133g(本体、スタビライザー、ポーチ含む。実測値)
定価: $49.95 USD
購入価格: $49.95 USD
購入先: REI.com(アメリカ)2016年11月時点ではREIが独占販売。
(注意)REI.comからJetboil製品をアメリカ国外へ直接発送することは出来ません。

 

2018年3月追記
 2018年3月16日付けで、Jetboilの日本向けサイトで予約受付開始の情報が出ています。
追記ここまで
 
2018年4月追記
 2018年4月現在、モンベルの店頭で販売されています。
追記ここまで
 
写真内の左上が専用の収納ポーチに載せたMightyMo本体、その右は取扱説明書。
右下はガス缶用のスタビライザー(ガス缶を不整地でも安定させるための脚)で、左下はオマケと思われるステッカーです。
 
 
▲内容物(私が購入した時点の製品では、これらの物品が入っていました。今後変更される可能性もあります。)
 
 
▲ガス缶用のスタビライザーは、展開するとこうなる
 
付属する収納ポーチは布で出来た巾着袋で、表面にはうっすらと「JETBOIL」の文字が模様として入れられています。
この模様や色合い、巾着という形状から和風な雰囲気。
 
MightyMo本体とガス缶用のスタビライザーを一緒に収納できます。
 
 
▲専用ポーチに本体とスタビライザーを収納した様子
 
では、肝心のストーブ本体を見ていきましょう。
MightyMo本体の収納時の大きさは、下の写真の通りです。
 
 
▲収納状態のMightyMo本体
 
収納時はゴトクと火力調節用のワイヤーハンドルが折りたたまれており、それらを広げてガス缶にセットすると下の写真のようになります。
 
 
▲使用状態のMightyMo本体
 
ゴトクは折りたたみ式ですが、一般的なものに比べると折りたたみ/展開のために動かす方向が特殊です。
 
下の写真を見てください。
ゴトクの回転軸となるリベット周辺を撮影したものですが、リベットが燃焼部の外側から中心に向かってまっすぐはまっています。
 
 
▲ゴトクの回転軸
 
この軸を中心にゴトクは回転し、収納状態から展開状態に変わるわけです。
 
ゴトクの動きがイメージしづらい方は、以下の動画を御覧下さい。


MightyMo Product Tour - Quick Look 

このゴトクですが、よく見ると外側に向かって下がるように角度が付いており、ゴトクのもっとも内側に近い部分だけがクッカーの底面に接する状態になります。
 
安定性がいまいちな気がしますが、何か理由があるのかな。あるいは単なる個体差かも。
 
 
▲ゴトクとクッカーの接触面の様子
 
ゴトクのサイズは、Jetboil純正のフライパンと、同じくJetboil純正の1.5リットルサイズのクッカー底面にある集熱フィンにぴったり合うようになっています。
 
 
▲Jetboilの純正フライパンをMightyMoに載せた様子
 
 
▲純正フライパン裏面の様子(ゴトクが集熱フィンの内側にぴったり合うサイズ)
 
MightyMoで利用できるクッカーのサイズを知るための目安として、ゴトクのサイズを示す以下の図を作成しました。
赤色の破線で描かれた円は直径約70mm、青色の破線で描かれた円は直径約120mmです。
 
 
▲MightyMoを真上から見た模式図
 
続いて、操作部を見てみましょう。
 
 
▲MightyMoの操作部
 
火力調節用のダイヤルはワイヤーハンドルになっているため操作しやすく、圧電式の点火装置も付いています。
 
この火力調節機能は絶品。
恐ろしいほどの弱火状態にしても、安定して燃えてくれます。
ご飯を炊くときも、焦げを全く作らずに綺麗に炊けました。
 
完全に閉じた状態から完全に開いた状態にするために、火力調節用のダイヤルを4.25回転もさせる必要があります。
これだけ火力調節の幅があるストーブは珍しい。
 
MSRのPocketRocketだと1.25回転しかしませんし、Jetboil Sol Tiは1.75回転、PrimusのETA Liteでも2回転です。
逆に言うと、実際の利用時は火力調節用のダイヤルを何回も回さないと十分な火力を出せませんし、消火するときも同じだけ逆方向に回さないといけません。
 
火力調節の操作は、慣れるまでかなり違和感を感じることになると思います。
 
ところで、(上の画像ではよく見えていませんが)この操作部を見てまず目に付くのは、おそらく正体不明の円盤状の部品でしょう。
 
この部品は、ガスの圧力を抑制するためのレギュレーターと呼ばれるもので、これが付いていることにより、気温が低い状況でもガスを燃焼部に送り続けることができるそうです。(パッケージには、セ氏氷点下6.7度でも安定した火力を出せると書かれています。氷点下6.7度という中途半端な温度は、華氏20度をセ氏に換算した値だからです。)
 
Jetboilの製品名で末尾に「Mo」が付いているものには、同型のレギュレーターが装備されています。
(Jetboil Solにもレギュレーターがありましたが、あれは細長い形状をしているので、Moシリーズに付いているダイヤフラム式レギュレーターではなくピストン式と思われます)
 
 
▲MightyMoのレギュレーター
 
ダイヤフラム式のレギュレーターについては、Wikipediaの「圧力レギュレータ」のページで詳しく説明されているので、興味のある方は読んでみてください。
ただ、これが低温時のガスストーブの性能向上にどのように寄与するのかは、よく分かりません。
 
MightyMoと従来のJetboilの燃焼部、MSRの同種のガスストーブのサイズを比較してみました。
 
 
▲3種類のストーブのサイズ比較(左端はJetboil Sol、中央はMightyMo、右端はMSR PocketRocket)
 
MightyMoは従来のJetboil製品に比べて「首」がずいぶん長くなっていることが分かります。
 
汎用ストーブになったことで上にどんなクッカーが載せられるか分からない、つまり大きなものを置かれ、輻射熱でガス缶が過熱される可能性があるため、クッカー底面とガス缶の距離を離すことを目的にこのような設計になったと考えられます。
 
収納時のサイズは、ゴトクの折りたたみ方の差でMightyMoの方がMSRのPocketRocketより小さくなっています。
 
 
▲収納時のサイズ比較(左がMightyMo、右はMSR PocketRocket)

注意点

燃焼部には耐風性を高める工夫が何もないので、屋外で使用する際は風防が必須です。
 
 
▲実際に山で使用している様子(ガス缶はJetboil純正ではありません。安全のため、このような使い方は推奨できませんので、真似をしないで下さい。)
 
レギュレーターや点火装置などがゴテゴテと付いているため、ガス缶に取り付ける際も取り外す際も、MightyMoは握りづらいですし、(私のものだけかも知れませんし、ガス缶のメーカーによって程度が異なるのですが)MightyMoをガス缶から取り外す際に、盛大にガスが漏れるのも気になります。

最後に

外観と機能はSOTOのSOD-300S「マイクロレギュレーターストーブ」やSOD-310「ウインドマスター」に似ており、火力も大差ないと思われます(出力はSOTO製品が3.3kW、MightyMoの出力は10,000 BTU≒3kW)。
 
SOTOの製品は使ったことがありませんが、火力調節の幅の広さはMightyMoがおそらく最も優秀でしょう。
吹きこぼれやすいラーメン等の調理時や、火力調節が重要な炊飯時には、MightyMoのとろ火性能が有効です。
 
定価はMightyMoが最も安いですが、日本から購入すると送料で高く付きます。
軽さと入手の容易さは、SOTO製品の方が優秀。
 
前述のSOTOのストーブ2種もMightyMoと同様にレギュレーターを搭載しているので、冬期でも安心して使える直結型ガスストーブが欲しい方は、MightyMoと比べた場合、SOTOの製品を選ぶ方が良いと思います。
 
では、なぜ私がSOTOではなくJetboilの製品を買ったかというと、耐久性が高そうだったからです。
(SOTOの製品はゴトクが頼りなく見えてしまいます。)
 
山の上では誤って踏んづけたり蹴飛ばしたり、家では何年も手入れをせずに汚れたまま放置していたりというのが当たり前の、山道具に対して優しくない(山道具に限らず、車や自転車、電子機器の扱いも荒い)私にとっては、シンプルで頑丈な製品が合っています。
 
後は、単純に今までJetboilブランド製品を愛用してきた私の道具遍歴による「ひいき」かな。