播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

陸上自衛隊 姫路駐屯地創立65周年記念行事

本日は「陸上自衛隊 姫路駐屯地 創立65周年記念行事」に行ってきました。

姫路駐屯地には特科部隊(いわゆる歩兵を表す普通科に対し、火砲やミサイルを装備する部隊は特科と呼ばれる)が駐屯しているため、記念行事の訓練展示では大砲(155mmりゅう弾砲FH70(えふえいちななまる))が主役として大活躍するのが特徴です。

他にも姫路駐屯地の記念行事ならではの名物として、レンジャー展示もあります。

レンジャーは陸上自衛隊の中でも選りすぐりの隊員なのですが、姫路駐屯地の記念行事では何故か彼らが吉本新喜劇のような寸劇を披露しています(レンジャー展示ですから、もちろん様々な派手なアクション要素を盛り込んでいます)。

レンジャー展示では何年かに一回は公開プロポーズがあり、今年もプロポーズをした隊員さんがいたそうです。

最近は流行りのギャグを取り入れたりしているようですが、私はそういった流行りに疎いので、見ても楽しめない可能性があり、最近はレンジャー展示を見ていません。
この記事でも全く触れていませんので、興味のある方はYoutubeで検索してみて下さい。

装備品展示の準備にかり出されたレンジャー隊員は、背中にリンゴとパイナップルの絵が描かれた大きなボードを背負っていたので、PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン。来年この記事を見たら、何のことか分からないだろうな)をやる気満々というのが、レンジャー展示前から思いっきりばれてました。(PPAPは世界的に流行っているようなので、私でも知っていました)

ところで、セキュリティ上の理由からか、近年は自家用車(バイクも含む)の駐屯地内への乗り入れが禁止されています(昔は駐屯地内の道ばたや隊舎の裏に止めさせてもらえた)。

遠方からの場合は公共交通機関(電車とバスの組み合わせ)で来るか、あるいは周辺の有料駐車場に車を止める必要があります。

自転車は駐屯地内に止められるので、近場にお住いの健康な方なら自転車で行くのが最も手軽です。

遠方の方は、車に自転車を積み、ちょっと離れた駐車場(近場の駐車場はいっぱいになる)に車を置いて自転車で行くのも便利ですし、簡単にばらせるスポーツ用の自転車をお持ちの方なら、輪行(電車に自転車を積んで来る)も良いと思います。いずれも家族連れには不可能ですが。

何も考えずに車で行くと、駐車場探しをしている間にメインイベントの訓練展示が終わってしまうという悲しい結果になります(私の身内が経験済み)。


以下のURLをクリックすると、Googleマップで姫路駐屯地の出入り口の位置が表示されます。


本日の目的は、11:30に始まる訓練展示で「大砲」の轟音を全身で味わうことと、山歩きで使えそうな道具を駐屯地内の売店で購入すること。

10:40
姫路市街の自宅を自転車で出発。

11:00
姫路駐屯地に到着。
ゲートをくぐって右側に広い駐輪場が用意されていました。

さて、どこから訓練展示を眺めようかと記念式典が行われている真っ最中のグラウンドの周囲をウロウロ。
昨年は北から見たし、それまでは南から見ることが多かったので、今年は東側から見ることにしました(グラウンド西側は立入不可)。

どうやら挨拶をされた来賓の中に、「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参議院議員がおられたようです。

来賓の挨拶は大体決まりきった内容ばかりで退屈(まれに熱いスピーチをされる方もおられます)なので、訓練展示が始まる直前を狙ってきましたが、もっと早くにきて挨拶を聞くべきでした。

それはともかく、グラウンドの東側で訓練展示が始まるまで待機。


▲グラウンドに整列している155mmりゅう弾砲FH70のお尻

11:00過ぎ
観閲行進のために隊員が車両に乗り込みました。


▲観閲行進に向かう中砲けん引車と、それに牽かれるFH70

今年はスピーカーから出る音が例年より小さかったような気がします。
車両のエンジンがかかっていない記念式典の段階で、すでに放送担当の方の声がほとんど聞き取れませんでしたから、どの車両がどの部隊のものかといった内容は全く聞き取れず。

11:17
観閲行進が終了し、国旗が退場。


▲国旗を車両に乗せて退場する様子

続いて訓練展示の準備が始まるわけですが、その間に第3音楽隊による演奏が行われます。


▲第3音楽隊

訓練展示ではヘリコプターが低空で長時間停止するため、砂埃を抑える目的でグラウンドに水が撒かれます。
こういった作業は、傍から見ていると退屈なものなので、音楽隊の演奏中に済ませてしまうというわけです。


▲訓練展示の準備のため、グラウンドに水を撒く様子

他にも、81式短距離地対空誘導弾(通称「短SAM(たんさむ)」。SAMはSurface-to-Air Missile(地対空ミサイル)の略。)の目視照準具の設置作業も行われていました。


▲81式短距離地対空誘導弾の目視照準具を設置する様子

11:30前
若干早いですが、訓練展示が始まりました。

まずは観測ヘリコプター(OH-6D)が東からグラウンドの上空に進入し、グラウンド上を旋回してから西へ飛び去りました。

アナウンスが聞こえないのでシナリオが全く分かりませんが、例年の内容からすると、「偵察ヘリが敵陣地を発見した」という想定でしょう。


▲小さな半径でグラウンド上を旋回するOH-6D

今度はベトナム戦争の映画でおなじみのヘリコプター「UH-1J」が、やはり東の空から登場。
独特の飛行音なので、周囲の人たちも「音が全然違う」と驚いていました。

グラウンド上、準備の段階で水を撒いていた辺りの空中でUH-1Jは停止し、ロープを下ろしました。
そして、そのロープを伝って隊員が降下。


▲UH-1Jから降下する隊員

発見した敵陣地を威力偵察するというシナリオでしょうか。
仮にアナウンスの音量が大きくても、ヘリコプターの音で何も聞こえないかも知れませんが。

毎年のことですが、水を撒いているにもかかわらず、ヘリコプターの巻き起こす風ですさまじい砂埃がグラウンド周囲に広がります。

この様子をじっくり見たい方は、ゴーグルとマスクを持っていくことをお勧めします(そんな人はいませんが)。
私は途中で見ていられなくなり、手で目を覆って耐えしのぎました。
カメラのレンズや服も砂まみれになります。

降下した隊員は敵陣地に向かって移動し、やがてグラウンドの外へ。
敵陣地の情報を十分に得たので、撤収したという想定かな。

やがて82式指揮通信車が登場し、隊員が後部ドアから何名か下車しました。


▲82式指揮通信車から下車する隊員

続いて、81式短距離地対空誘導弾(短SAM)と93式近距離地対空誘導弾(近SAM)が登場。

先ほど82式指揮通信車から下車した隊員が合流し、それぞれのミサイルの発射準備が進められます。
敵陣地を攻撃する際、敵航空兵力が反撃に出た場合の備えという想定だと思います。


▲グラウンド東に展開する81式短距離地対空誘導弾(短SAM)


▲グラウンドに進入してきた93式近距離地対空誘導弾(近SAM)

近SAMは予めミサイルが箱形のランチャーに入った状態で、いつでも発射が可能です。
それに対し、短SAMはミサイルがケースに入れられた状態で、展開後にランチャーに装填するという運用方法。

81式短距離地対空誘導弾(短SAM)がどうやってケース内のミサイルをランチャーに装填するのか、写真で紹介します。

通常時の81式短距離地対空誘導弾(短SAM)は、車体後部のランチャー両脇にミサイルが入ったケース(下の写真で矢印が示している箱)が置かれています。


▲通常時の81式短距離地対空誘導弾(短SAM)装備品展示の準備時に撮影

ミサイルが入っているケースは可動式のアームに乗っていて、アームを動かして地面近くまで下ろすことが出来ます。

ケースを下ろし、蓋を外すとミサイル本体が姿を見せます。


▲ケースの蓋を開けた様子(ミサイルの安定翼の一部が見えている)

蓋を開けたらアームを上げてケースを元の位置にセットし、ランチャーを上に向けます。
すると、ランチャー後部の部品がミサイル上部のフックに引っかかります。


▲ランチャーを上に向け、後部の部品(赤矢印)をミサイル上部に当てて連結する

ランチャー後部の部品とミサイルが連結出来たら、ランチャーを水平に戻し、ミサイルを正しい位置まで前進させれば装填完了。


▲ランチャーを水平に戻している様子(ミサイルが吊り上げられる)

地対空ミサイルが射撃準備をしている間に、155mmりゅう弾砲FH70が4門、中砲けん引車に引っ張られてグラウンド内に入ってきました。

敵陣地を制圧する前に、このりゅう弾砲で陣地を叩いて弱体化させるというシナリオです。


▲155mmりゅう弾砲FH70の射撃準備の様子

155mmりゅう弾砲FH70が展開する様子を撮影した動画(2011年の記念行事で私が撮影したもの)があるので、掲載しておきます。


グラウンド内は、西端に仮想敵陣地、中央付近にFH70が4門、砲口を西に向けて南北方向に並んで整列し、その東側に対空ミサイルが展開しているという状態。

「さあ、いつぶっ放すのかな」とワクワクしていると、突然FH70が火を噴きました。
アナウンスが聞こえないし、「大きな音に注意」という札を持った隊員さんの姿も見えないので気が緩んでいましたが、その状態(心の準備が出来ていない状態)であの音を聞かされると、思わずピョンと跳びはねるくらい驚いてしまいます。

タイミングが突然だった上に、初めて聞く人にとってはとんでもない音なので、私の周りにいた人たちも心底驚いていた様子。
小さな子供は爆発音が怖いらしく、親にしがみついていました。

その後は、スピーカーからかすかに聞こえてくる秒読みの声を頼りに心の準備をしつつ、カメラの連写で例年通り砲口炎を撮影。

何十発もぶっ放すので、砲口炎が1枚も撮れなかったということには絶対になりません。


▲155mmりゅう弾砲FH70空砲発射時の砲口炎

轟音が鳴り響くと同時に、全身に風を感じます。

4門が同時に発射したり、1門ずつ時間差をつけて4連射したり、相変わらずドッカンドッカンと轟音を鳴り響かせてくれました。

これには、自衛隊の記念行事で訓練展示を見慣れている人たちも驚くようです(姫路以外の訓練展示だと、そもそもFH70が1門しかなかったり、せいぜい数発しか発射しない)。

訓練展示後、青野ヶ原駐屯地から応援に来ていた隊員さんが、「あんなに撃つとは思っていませんでした」と話しているのを聞いたので、自衛隊員から見てもすごい行事なのかも知れません。

FH70の射撃が中断すると、74式戦車と96式装輪装甲車が登場しました。

戦車の走行音はやっぱりすごい。
キュルキュルと独特の甲高い音を響かせ、グラウンド北端の来賓席前を通過してからグラウンド東端を南に進み、西へ向きを変えて仮想敵陣地へ向かって行きました。


▲東向きに走行し、グラウンド北東隅で進路を南へ変えるため右へ曲がる74式戦車

74式戦車も主砲から空砲を発射し、FH70も射撃を続けます。

周りの人たちから「すごい音やけど、慣れた」という言葉が聞こえてくるほど。

途中で敵陣地の上にOH-6が来ましたが、あれは敵のヘリコプターが現れ、地対空誘導弾で撃墜したという想定だったのかな。

最後は、96式装輪装甲車から下車した隊員と74式戦車が敵陣地に突撃し、訓練展示は終了。


▲74式戦車と共に敵陣地へ突撃する隊員

2016/10/31追記
今回の訓練展示を撮影した動画をYoutubeで見ると、小銃を除く空包射撃は以下の通りでした。
・155mmりゅう弾砲FH70の空砲(斉射と単発の合計。4門の斉射は4発とカウント)
 攻撃準備射撃 16発 (内訳:斉射×4)
 前進支援射撃 16発 (内訳:斉射×2、単射×8)
 突撃支援射撃 16発 (内訳:斉射×2、単射×8)
       合計 48発
・74式戦車主砲 5発
・96式装輪装甲車 M2重機関銃フルオート射撃 5秒間
追記ここまで

12:00
訓練展示が終わったので、売店を目指して駐屯地内のメインストリート(グラウンド東側を南北に走る道路)を北へ進みました。


▲訓練展示終了直後の駐屯地内のメインストリートは大混雑

メインストリートを北へ進むと、食べ物の屋台が並ぶ広場が左手にあり、右側には史料館がある場所に出ます。

屋台周辺は混雑していますし、資料館もゆっくり見物出来る状態ではなさそうなので、それらは無視してさらに北へ。

すると、すぐに隊舎の間にロープが張られている場所に出会いますが、そこが姫路駐屯地名物、レンジャー展示が行われる会場。

レンジャー展示会場を通り抜けて左へ曲がると厚生センターがあり、その中に訓練用品の売店と、ヤマザキのデイリーストアが入っています。


▲厚生センターの入口

訓練展示が終わったのが12時で、皆さんお腹が空いているのか屋台は混雑していましたが、厚生センターは思ったほど人がおらず、比較的楽に買い物ができました。

買い物を楽しんだ後は、混雑した屋台を尻目にグラウンドへ戻り、13時に始まる装備品展示まで待機。


▲屋台が並んでいる区画の様子

装備品展示は、訓練展示を行ったグラウンド内に各種車両が並べられ、間近に見学出来るというもの。
装備品によっては、実際に乗り込む事も出来ます。

グラウンドにヘリが着陸し、車両も続々と進入しているのをぼーっと眺めていたら、グラウンド南端の人混みが目に入りました。

どうやら戦車体験搭乗の抽選待ちの集団のようです。

戦車の試乗は一度は経験したいと思うのですが、あの行列に並んで抽選に当たらないといけないのがしんどい。というわけで、戦車の試乗は諦めてさらにグラウンド脇で待機を続けました。


▲戦車試乗の抽選を待つ人の列

13:00前
時間がちょっと早いですが、装備品展示が始まりました。
展示内容は毎年おなじみですが、間近に装備品を眺められる貴重な機会なので、じっくりと見物。

装備品展示会場に並んでいたのは、以下の車両と航空機です。


▲03式中距離地対空誘導弾(中SAM)発射装置


▲03式中距離地対空誘導弾が収納されたコンテナ中央部の、重心位置を示すマーク


▲コンテナ底部の圧力調整バルブ

03式中距離地対空誘導弾(中SAM:ちゅーさむ)
発射装置(LAU)
Launcher Unit
ミサイルを搭載しまま機動・展開し、射撃統制装置からの指令により、垂直発射方式でミサイルを発射する。
(出典:現地のパネル 原文まま)


▲93式近距離地対空誘導弾(近SAM)


▲93式近距離地対空誘導弾(近SAM)発射装置内にはファンがついている。冷却用?排煙用?

93式近距離地対空誘導弾
略称 近SAM
愛称 クローズアロー
諸元
 全長 約1,430mm
 直径 約80mm
 重量 約11.5kg
製作 東芝
備考
 低空域目標の追撃を目的とした地対空誘導弾である。
(出典:現地のパネル 原文まま)


▲81式短距離地対空誘導弾


▲81式短距離地対空誘導弾が収納されているケース

81式短距離地対空誘導弾
略称 短SAM
愛称 ショートアロー
諸元
 全長 約2,700mm
 直径 約160mm
 重量 約100kg
製作 東芝
備考
 わが国土、国情を考慮して独自の運用構想の下に師団防空用として開発された。
(出典:現地のパネル)


▲87式偵察警戒車

87式偵察警戒車
略称 RCV
全長 5.99m
全幅 2.48m
全備重量 約15t
最高速度 約100km/h
乗員 5名
エンジン 水冷ディーゼル4サイクル10気筒
 305PS/2700rpm
武装 25mm機関砲×1
 7.62mm車載機関砲×1
(出典:現地のパネル)


▲96式装輪装甲車


▲96式装輪装甲車の後部ハッチ。戦闘時は手前に倒れるように大きく開く。

96式装輪装甲車
(WAPC)
性能・諸元
 全長 6.84m
 全幅 2.48m
 全高 1.85m
 装備重量 約15t
 最高速度 100km/h
 乗員 10名
 武装
  12.7mm重機関銃 又は
  96式70mm自動てき弾銃
(出典:現地のパネル)


▲軽装甲機動車

軽装甲機動車
全長 約4,400mm
全幅 約2,040mm
車両重量 約4,500kg
最高速度 100km/h以上
乗車定員 4名
制作 小松製作所
(出典:現地のパネル 原文まま)


▲対砲レーダ装置(JTPS-P16)装備品展示の準備中に撮影

対砲レーダ装置(JTPS-P16)
使用目的
 対砲レーダ装置JTPS-P16は、観測中隊及び情報中隊に装備し、主として敵野戦砲及び野戦ロケットの位置を標定するために使用する陸上移動用レーダである。
 射撃する敵野戦砲等をその一発の発射弾、あるいは同時多数の発射弾を探知捕捉し、短時間にその座標・標高を標定できる。
装置の構成
 対砲レーダ装置は、空中線装置及び標定処理装置からなり、両装置の間を光伝送ケーブルで接続する。
操作人員 6人
製作 東芝
(出典:2015年の記念行事で展示されていたパネル。今年は撮影し忘れました。)


▲りゅう弾砲(略称FH-70)

りゅう弾砲(略称FH-70)
諸元
 全長 9,800mm(走行時)12,400mm(射撃時)
 全重量 9,600kg
 操作 9人
製作
 日本製鋼所
備考
 中砲けん引車(FH-70用)でけん引。補助動力装置(APU)を有す。
(出典:現地のパネル)


▲OH-6D

諸元表
名称 OH-6D
形式 ヒューズ500
使用目的 偵察・連絡
搭載人員 4人
搭載燃料 323リットル
最大速度 281km/h
上昇限度 約3200メートル
航続距離 約644km
全備重量 1361kg
最大出力 420Hp
(出典:現地のパネル)


▲UH-1J

諸元表
名称 UH-1J
形式 ベル205改良
使用目的 多用途ヘリコプター
搭載人員 2+11人
搭載燃料 850リットル
最大速度 234km/h
上昇限度 6000メートル
航続距離 約650km
全備重量 4772kg
最大出力 1485Hp
(出典:現地のパネル)

13:25
一通り装備品展示を見終えたので、戦車の試乗体験の様子を眺めてから家路に就きました。


▲戦車試乗の様子

13:45
自宅に到着。