播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

フランク・ロイド・ライト氏が設計したヨドコウ迎賓館(兵庫県芦屋市)

今日は有名な建築家、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright, 1867~1959)氏が設計した重要文化財「ヨドコウ迎賓館」(兵庫県芦屋市)を見学してきました。

ヨドコウ迎賓館の来歴
 ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)は、大正年間フランク・ロイド・ライトによって設計されたもので、灘の酒造家山邑太左衛門の別邸として、大正13年(1924年)2月に完成しました。我が国でライトが設計し、建築された6件の建築物の中で、住宅として唯一創建当時の姿を留めている建物です。昭和49年(1974年)に大正期に建てられた鉄筋コンクリート造の建物としては、初の重要文化財に指定されました。
(出典:ヨドコウ迎賓館入館券の裏面)

施設名称: ヨドコウ迎賓館
所在地: 兵庫県芦屋市山手町3-10 (住所をクリックすると、Googleマップが開きます)
所有者: 株式会社淀川製鋼所
設計者: フランク・ロイド・ライト
構造: 鉄筋コンクリート造
規模: 敷地面積 4,700平米、建築面積 359.1平米
竣工年: 大正13年(1924)
開館日: 毎 土・日・水曜日と祝日
開館時間: 10:00~16:00(入館は15:30まで)
入館料: 大人¥500、小中高校生¥200
駐車場: 乗用車7台・中型バス2台
備考:
・写真撮影は、商用利用を目的としなければ可能。ただし、一脚や三脚、自撮り棒の使用は禁止。
・館内には段差や階段が多いですが、エレベーターはありません。

最寄り駅は阪急電鉄の芦屋川駅ですが、私は通勤にJRを利用していて自宅のある姫路から芦屋への運賃の内、半分以上を通勤定期でまかなえるので、JR姫路駅からJR芦屋駅へ新快速電車で移動し、JR芦屋駅からヨドコウ迎賓館までは徒歩で移動しました(距離は約1.3km。徒歩で15分程度)。

JR芦屋駅を出たら西へ向かい、芦屋川にぶつかったら左岸の車道を北上します。
途中にある阪急芦屋川駅は東側から回り込む必要がありますが、それ以外は芦屋川の左岸を通る道沿いに進めば良いだけです。

開森橋(かいもりばし)交差点からライト坂と呼ばれる坂道を登れば、すぐにヨドコウ迎賓館に到達します。
車で行く場合は、ヨドコウ迎賓館の少し南にある駐車場(未舗装)に車を止めて下さい。


▲ヨドコウ迎賓館の駐車場入口


▲駐車場の様子

駐車場入口を通過し、少し上った所にヨドコウ迎賓館の門があります。


▲ヨドコウ迎賓館の門

開森橋交差点で信号待ちをしている間、沢山の車を見ましたが、通り過ぎる車のメーカーを順に読み上げると「フェラーリ、ベンツ、アウディ、ベンツ、ジープ、トヨタ...」といった具合に大半が外車でベンツが多い。
たまたま高級車のドライバーが集まってツーリングに出かけていただけかも知れませんが。。。

この付近の住宅の駐車場を見ても、軽四なんてありません。
コインパーキングに止まっている車も外車と高級国産車。
さすがは芦屋です。

門からヨドコウ迎賓館の玄関までの間に飲み物の自販機とトイレがあります。
迎賓館内には一般見学者が利用できるトイレがないので、建物の中をゆっくり見学したい場合はここでトイレに行っておくことをお勧めします。

館内は飲食禁止なので、自販機で買った飲み物はここで飲んで下さい。


▲門と玄関の間にあるトイレと自販機

トイレの先に進むと、今まで生い茂る木々に隠されていた迎賓館の建物が姿を現します。
見えるのは建物の南側だけですが、この一部だけを見ても、建物のデザインの特異さがよく分かります。

建物自体は鉄筋コンクリートで、複雑な幾何学模様が彫り込まれている箇所は、加工が容易な栃木県産大谷石(おおやいし)。


▲ヨドコウ迎賓館の車寄せ

上の画像で中央右寄り、塀の上に台座のようなものが乗っていますが、これは花壇。
塀の上に花壇があるという発想が面白い。


▲上の画像に写っている花壇を4階バルコニーから見下ろして撮影した写真

車寄せ近くから建物北側を見上げると、下の写真のように見えます。


▲車寄せから建物の北側を見る

車寄せから玄関を見ると、下の写真のような感じ。
中央の不思議な出っ張りは水盤で、その左側のドアが玄関。

実業家の別邸のわりに、玄関ドアは小さめ。
実は館内のドアは全てこのような小さなもので、それは入口が小さいことで、部屋に入ったときに広がりが感じられるという効果を狙うため。


▲車寄せから玄関を見る

14:40
玄関のドアを開けて受付の方に入館料を支払い、入館券の半券と三つ折りのリーフレットを受け取ったら、靴を脱いでスリッパに履き替え、館内へ。

玄関の先はすぐ階段になっていて、2階へ上がります。

階段を上がった先の突き当たりには、ヨドコウ迎賓館の見所や設計者であるフランク・ロイド・ライト氏についてのパネルが設置されています。

パネルに向かって右を向き、小さなドアをくぐると、思わず声を上げてしまうほど見事な応接室(パノラマ参照)。


▲2階の応接室(車寄せの真上にあたる場所)

ヨドコウ迎賓館内各所で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2016年4月23日)

今回の記事の中で「パノラマ参照」と書かれている場所は、パノラマ画面左上にあるリストから名前を選択することで、その場所のパノラマを見られます。

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/yodoko_guesthouse20160423/virtualtour.html

三脚利用が禁止のため、RicohのTheta Sを机や床に置いたり、手持ちで撮影しました。

北側は中央に暖炉があり、その左に出入口、右には水屋へ通じるドアがあります。
西と東は、それぞれ北半分が大きな窓になっていて、南側半分は飾り棚になっています。
南側はバルコニーに通じるドアがありますが、バルコニーに出ることは出来ません。

応接室の西の窓からは、西側の山並みが大きく見えます。

部屋の上部には小さな小窓がたくさん並んでいますが、これは元々通風孔だったそうです。
しかし、ここから雨水が入ってくるため後にガラスが入れられました。


▲応接室上部に並ぶ小窓(通風孔)

応接室の東西にある長いすは建設当時からある実物で、文化財になっているため座ることが出来ません。
部屋の中央に並んでいるテーブルと椅子は、この部屋のイメージに合わせて作られた新しいものなので、こちらには座れます。

2階で見学出来るのはこの応接室と、それにつながっている給湯室のみ。

順路に従い、階段で3階へ上がります。

階段を登ると突き当たりで階段が左右に分かれます。
左へ進めば家族室と名付けられた空間を通って和室(パノラマ参照)へ、右へ進めば、大きな窓が気持ちよい廊下(パノラマ参照)に出ます(廊下からも和室へ入れます)。

当然ですが、和室に入るときはスリッパを脱がないといけません。


▲3階南端の家族室から和室を見る


▲3階廊下の窓(四角い飾り銅板は木の葉をイメージしたもので、日が差すと木洩れ日のような光を演出できるそうです)


▲和室の欄間(らんま)にも飾り銅板が使われている

外国人が和室を設計するのか?と思いますが、現地の案内板によると、施主の強い要望でライト氏の弟子である日本人設計者が作ったそうです。

もともとライト氏はヤード・ポンド法の寸法で設計しているため、畳敷きの和室の寸法に合わせた部屋を作るのは難しそうですが、壁の厚さを調整することで、尺貫法にぴったり当てはまる部屋の大きさを実現したとのこと。

3階の和室を見て北へ進むと、廊下の天井が不思議な形になった場所に出会います。

三角形になった天井の頂点に照明があるように見えますが、実際に照明があるのはもっと奥。
照明の見え方まで計算され尽くしています。


▲3階廊下北側の様子(照明の見え方に注目)

上の写真の場所の左側には洗面室と浴室があります。


▲洗面室の洗面台


▲浴槽(浴槽の内側が木製なのが面白い)

浴室などを見たら廊下に戻りますが、北へ進むとすぐまた左側に見学出来る部屋があります。
それは四畳半の広さを持つ使用人室。


▲使用人室(小間使の間)

使用人室の次に見学するのは、家族寝室と名付けられた部屋(パノラマ参照)。
家族寝室と呼ばれてはいますが、実際の見た目は書斎です。


▲家族寝室

この家族寝室の南の窓から外を見ると3階の和室上部の外壁が見えるのですが、そこには沢山の飾り石が並んでいます。

実はこれ、売店の方のお話によると、各部屋の天井近くの小窓(通風孔。応接室の写真参照。)の外側にあたる場所とのこと。


▲壁面に並ぶ飾り石は通風孔

この飾り石の中央に四角い出っ張りが4つありますが、窓のちょうつがいの形もそれを模しているのだとか。


▲窓のちょうつがい

さらに興味深いお話を聞かせて頂きました。
それは、ドアや窓の枠に使われている木の形状。

普通はそういった枠木の断面は角が直角ですが、ヨドコウ迎賓館の枠木は断面が斜めになっています。
これは、狭い部屋に少しでも奥行きを持たせるための工夫だそうです。


▲枠木が斜めになっているのが分かる画像(枠木の中にあるカーテンレールは建設当初のもの)

3階は家族寝室の北側に売店があり、その北側、子供の寝室だった場所ではヨドコウ迎賓館を紹介する映像が上映されていました。

これで3階は見終わったので、家族寝室と和室の間にある階段まで戻り、その階段で4階へ。

階段で4階へ上がると、食堂(パノラマ参照)に出ます。
ここは天井が印象的な素敵な空間。


▲4階の食堂

食堂の奥には厨房(パノラマ参照)があり、そちらも見学出来ます。


▲厨房

食堂の南側のドアからは、サンダルに履き替えてバルコニー(パノラマ参照)へ出られます。
このバルコニーからの眺めが素晴らしい。


▲4階のバルコニー(周囲の塀が低いので開放感たっぷり)


▲バルコニーから食堂を見る

4階のバルコニー南端には階段があり、狭い通路を通って3階のバルコニー(パノラマ参照)へ下りられます。
通路が狭くなっているのは、バルコニーに出たときの開放感をより強く感じられるようにするための、ライト氏の工夫だそうです。


▲3階のバルコニーから4階のバルコニーを振り返る

これで見学出来るところは全て回ったはず。

ここで腕時計を見ると15:55。
開館時間は16:00までなので、急いで玄関へ戻りました。

車寄せの南端にも小さなバルコニー状のスペース(パノラマ参照)があったので、そこで少しだけ景色を楽しんでから帰路に就きました。

見学にこんなに時間がかかるとは思っていませんでした。
1時間程度では時間が足りません。

見学に行かれる方は、時間に余裕を持って行かれることをお勧めします。