播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

固形燃料より便利なパック燃料

私の場合、山遊びを満喫するためにパノラマ撮影機材や双眼鏡、折りたたみテーブルや椅子など、普通のハイカーなら持っていかないような道具類をわんさか持っていくので、何とか荷物をコンパクトにしないとバックパックに収まらなくなってしまいます。
 
大きなバックパックを使えば良いのですが、夏場は背中が暑いし、低山では植物が元気で藪っぽい場所が多くなり、そういった場所では動きづらくなるため、あまり大きなバックパックは持っていきたくありません。
 
そのような場合は、収納サイズが小さくて軽いアルコールストーブや固形燃料ストーブを使っています。
 
その固形燃料ですが、私がよく使うのは飲食店で釜飯や一人鍋に使われるタイプの水色やピンクの固形燃料。
ただ、これは保管している内にどんどんアルコールが揮発して「しぼんで」しまい、時間が経つと購入直後と比べて火力がかなり低下します。
 
購入直後の状態でも、さほど火力が強くないのも不満でした。
この弱い火力はご飯を炊くにはちょうどいいのですが、単純にお湯を沸かすには時間がかかります。
(ナイフで2分割、4分割すると火力は上がりますが、燃焼時間が短縮されます)
 
軽量装備で山歩きを楽しんでいる方々のブログを見ると、固形燃料の代わりに「パック燃料」なるものがあり、固形燃料より保存性、携行性に優れ、火力も強いとのこと。
 
というわけで100円ショップへ出かけ、パック燃料を買ってきました。
 
 
▲パック燃料(パッケージ表面)
 
 
▲パック燃料(パッケージ裏面)
 
製品名: パック燃料[四角タイプ]
メーカー: ニチネン(日本)
販売元: 大創産業(100円ショップ「ダイソー」)
内容量: 4個入り(27g/個)
危険等級: 危険等級3
化学名: メタノールを主成分とする混合物
購入価格: ¥108(税込み)
購入先: ダイソーひめじ岡田店(姫路市)

概要

このパック燃料、本来は1箱360個入りで7,000円前後で売られており、飲食店等で一人鍋等に使用されるものです。
 
360個入りの段ボール箱を購入しても置き場所に困りますが、100円ショップでは4個ずつ買えるので、保管場所に困りません。
 
箱単位で買うとき(360個7,000円として1個あたり約19円)に比べると高価になりますが、それでも1個あたり25円(税別)ですから十分に経済的。
 
ここで紹介した[四角タイプ]の他に、[テトラタイプ](昔の給食の牛乳パックの形)もあります。
山では、携帯性に優れた[四角タイプ]がお勧めです。

外観

四角タイプのパック燃料の袋は、横約90mm、縦約77mm。
 
 
▲パック燃料のサイズ(右はサイズ比較用のiPhone5S)
 
短辺は両側とも溶着されていますが、長辺は片方だけが溶着されていて、もう一方は折り目になっています。
つまり、154mm×90mmのナイロンフィルムを二つ折りにして中に燃料を入れ、周囲3辺を溶着しているわけです。
 
溶着された長辺に炎の図柄が印刷されていて、その部分が上になるように火皿に入れて点火するのが本来の使い方。
 
固形燃料と異なり、しっかりした厚手の樹脂の袋に密封されているため、保管している間にアルコールが蒸発してしぼんでしまう心配がありません。
(メーカーサイトによると「固形燃料の2倍以上の長期保存ができる!」とされています)

山での使い方・性能

このパック燃料は、エスビットポケットストーブにうまく収まるサイズになっています。
 
 
▲パック燃料をエスビットポケットストーブに入れた様子
 
また、米軍のキャンティーンカップスタンドにも収まってくれます。
 
 
▲パック燃料を米軍のキャンティーンカップスタンドにセットした様子
 
これらの固形燃料用ストーブと組み合わせて使うのがよさそう。
 
ライターやマッチがあれば、前述の通り火のアイコンが印刷された部分に点火すれば良いのですが、ファイアースターターのような火花だけでも点火出来ます。
 
その方法は、パック燃料中央にナイフで数センチの切れ込みを入れるというもの。

切れ込みの周囲を軽く押さえると燃料がにじみ出すので、そこへ火花を浴びせると一発で着火できます。
 
燃え残りはパサパサの灰で、灰の重量は1グラム未満(1g単位で測れる我が家の台所用デジタル秤が0gのままだった)。
 
 
▲パック燃料の燃え残り
 
ストーブの汚れ防止と、燃焼後の灰を包んで容易に廃棄できるようにするため、私はパック燃料使用時、下にアルミホイルを敷いています。
性能
山でラーメンを食べるには、カップ麺で最大400cc程度、袋麺だと500ccのお湯が必要になります。
というわけで、500ccのお湯をパック燃料で沸かせるのか、実験してみました。
 
使用したのは、容量1.3リットルのチタンクッカー(MSRのQuick1ポット)とエスビットポケットストーブ。

測定環境は我が家のベランダ(標高約13m。ストーブ周囲は風防で囲った)。
 
暖かい時期と寒い時期、かなり寒い時期(※)の計3回、実験を実施しました。
※「暖かい」と「寒い」は、私が住む兵庫県姫路市中心部の気候を基準にしています。
 
 
▲エスビットポケットストーブにパック燃料を入れ、お湯を沸かしている様子
 
 
▲パック燃料で沸騰したお湯(大きな泡は出ない)
 
暖かい時期(気温25度・初期水温セ氏25度)の結果
 沸騰までの時間: 約5分
 鎮火までの時間: 点火後約10分
 
寒い時期(気温7度・初期水温セ氏13度)の結果
 沸騰までの時間: 約9分
 鎮火までの時間: 点火後約12分
 
かなり寒い時期(気温マイナス1度・初期水温セ氏0.5度)の結果
 沸騰までの時間: 沸騰せず(約9分で95度程度に達し、その後水温は低下)
 鎮火までの時間: 点火後約11分
 
これなら、エスビットポケットストーブとパック燃料で、暖かい季節には山でも簡単にラーメンを食べられそうです。

寒い時期では沸騰している時間が短い(9分後に水温が100度に達し、11分頃から水温が低下し始めた)ので、カップ麺用のお湯を沸かすには使えますが、袋麺の調理(煮込み)は厳しそうです。
 
かなり寒い時期(冬場の山上など)では、そもそも沸騰に至りません。
気温セ氏マイナス1度の環境で実験したところ、点火から9分後に95度を瞬間的に超えることもありましたが、その後パック燃料の火力低下と共に水温も下がっていきました。
 
マニアしか所有しておらず、一般のハイカーさんには役に立たない情報ですが、米軍のキャンティーンカップと専用のスタンドの組み合わせではどうなるか、暖かい時期に我が家のベランダで実験してみました。

水は上の実験と同様、セ氏25度のものを500cc使っています。
 
キャンティーンカップスタンドにカップを載せる方法は、2つあります。
1つは、スタンドの穴とカップの形状を合わせてすっぽりはめ込む方法。便宜上、「正置き」と呼ぶことにします。
 
 
▲キャンティーンカップをスタンドにはめ込んだ様子
 
もう一つは、スタンドの穴にはまり込まないよう、カップを逆向きに載せる方法。こちらは「逆置き」と呼ぶことにします。
 
 
▲逆向きにカップを載せた様子
 
それぞれの置き方で水温の上がり方がどう変わるのか、測定した結果がこちらです。
 
 
▲正置き、逆置きそれぞれの水温の上がり方
 
正置きをした場合は、15分間パック燃料は燃え続けましたが、沸騰には至りませんでした。
逆置きをした場合は、12分しかパック燃料は燃えず、10分後の95度をピークに、水温は低下していきました。
 
キャンティーンカップは、底面積が小さすぎて効率的に熱を受けられないようです。
しかし、500ccは無理でも、暖かい季節であればコーヒー1~2杯程度のお湯なら問題なく沸かせそう。

注意点

パック燃料を燃やすと、かなり刺激的なガスが発生します。
 
上に書いた実験はベランダで行い、ベランダ近くの室内で時間と水温の測定をしていたのですが、風が室内に吹き込むと眼と喉に不快感を感じました。
 
テントや避難小屋の中などの閉鎖空間で燃やすと、大変なことになると考えられます。

最後に

寒い時期以外なら、エスビットポケットストーブとパック燃料、風防、クッカーで500ccのお湯が簡単に沸かせるので、私のように日帰りの山歩きしかしない方にとっては、荷物の小型化・軽量化が可能になりそうです。
 
パック燃料はエスビットポケットストーブに収納できるので、非常用としても便利そう。
 
本来は二つ折りにして、激しく燃えないように火皿に入れて使用するものです。
この記事で紹介したような、広げた状態で一気に燃やす使い方の場合は、決して室内で使用しないで下さい