2020年4月5日追記最近、この記事へのアクセスが増えています。おそらく、MSRのポケットロケット2の正規販売が始まったからだと思いますが、この記事で紹介しているポケットロケットは、「2」ではなく初代です。
お間違えのないようにお願い致します。ポケットロケット2のレビューは、以下からご覧いただけます。追記ここまで
山歩きの際は、原則として景色の良いところで食事を取ることにしています。
そして、メニューの中に温かい物がないと気が済まないので、必ずガスストーブかガソリンストーブ、アルコールストーブ、固形燃料ストーブのいずれかを持っていくのですが、どれを使うかはその日の気分(またはメニュー)次第。
選択肢が多い方が楽しいですが、似たようなものをいくつも持っていても仕方が無い(といいつつ、いくつも持っていたりしますが...)ので、私の手持ちのストーブの中にはほとんどないガス缶に直接ストーブをねじ込むタイプ、いわゆる一体型ガスストーブを購入することにしました。
このタイプの製品は種類が多く選ぶのに迷うのですが、「可動部が少なく、頑丈なもの。他人と同じのを使うのは面白くないので、他に使っている人があまりいない製品。」という条件で絞った結果、MSRの製品になりました。
仕様
製品名: PocketRocket(ポケット・ロケット)
メーカー: MSR(Cascade Designs, Inc.)(アメリカ)
性能: 1リットルの水が3分30秒で沸騰(カタログ値)
燃費: 227g缶で合計16リットルの水を沸かせる(カタログ値)
227g缶のガスを使い切るまでの時間は1時間(カタログ値)
重量: 119g(ケース含む。カタログ値)
ストーブ本体のみ 85g(実測値)、本体とケースの合計 110g(実測値)
定価: $39.95 USD
購入価格: $37.19 USD
購入先: Amazon.com(アメリカ)
(注意)Amazon.comからMSR製品をアメリカ国外へ直接発送することは出来ません。アメリカ国内に知人がいれば代理で買ってもらったり、転送サービスを利用したり、日本へ発送してくれるお店を探したりする必要があります。
メーカー: MSR(Cascade Designs, Inc.)(アメリカ)
性能: 1リットルの水が3分30秒で沸騰(カタログ値)
燃費: 227g缶で合計16リットルの水を沸かせる(カタログ値)
227g缶のガスを使い切るまでの時間は1時間(カタログ値)
重量: 119g(ケース含む。カタログ値)
ストーブ本体のみ 85g(実測値)、本体とケースの合計 110g(実測値)
定価: $39.95 USD
購入価格: $37.19 USD
購入先: Amazon.com(アメリカ)
(注意)Amazon.comからMSR製品をアメリカ国外へ直接発送することは出来ません。アメリカ国内に知人がいれば代理で買ってもらったり、転送サービスを利用したり、日本へ発送してくれるお店を探したりする必要があります。
概要
Pocket Rocketは2000年に初代モデルが発売され、現在に至るまで販売され続けているMSRのロングセラー商品。
MSRの製品の中では小型、軽量の一体型ガスストーブです。
外観・機能
PocketRocketは、赤い樹脂製の三角柱型の専用ハードケースに入った状態で外箱に収められていました。
一体型ストーブに付属するケースは、たいていの場合巾着型の袋ですが、PocketRocketは(薄くてベコベコしますが)樹脂製のハードケース付。
これは嬉しい付属品です。
このケースに入れておけば、バックパックからの出し入れがスムーズですし、ゴトクが変形することもなさそう。
ハードケースの蓋を開けると、下の写真のようにストーブ本体がぴったりとケースに収まっていました。
ちなみに、このケースはPocketRocket本体を収納出来る最小限のサイズになっているのですが、寸法を数字で書くよりも見て頂いた方が早いと思い、ガス缶と並べて撮影してみました。
このハードケースは口の部分がすぼまっているため、PocketRocket本体を収納するときには、指先でケースの口を広げてやる必要があります。
PocketRocket本体は、下の写真の姿でケースに入っています。
特に複雑な折りたたみ機構があったり、伸縮式の部品があるわけではありません。
特に複雑な折りたたみ機構があったり、伸縮式の部品があるわけではありません。
可動するのは、火力調整つまみのワイヤーハンドルと、ゴトクのみ。
壊れやすく、コストが増える圧電点火装置は付いていません。
一般的な小型一体型ガスストーブは、ゴトクをちまちまと折りたたんだり、ゴトクを回転させて定位置にセットする構造になっていたり、変わり種だとCRUXのようにストーブ本体が折りたたみ式になっていたりしますが、ああいった仕組みはストーブの耐久性を下げ、コストを上げるだけだと私は個人的に思っているので、点火装置も含め、余計な機構を一切持たないPocketRocketのシンプルなデザインに一目惚れしました。
使用する時は、ストーブ本体をガス缶にねじ込み、ワイヤーハンドルを起こしてゴトクを広げるだけ。
3本のゴトクは、上の写真の位置より外へ広がらないようになっているのですが、その仕組みも単純です。
下の写真の通り、ゴトクの付け根に突起があり、それが台座に当たることで、それ以上広がらないのです。
下の写真の通り、ゴトクの付け根に突起があり、それが台座に当たることで、それ以上広がらないのです。
収納時は、ゴトクがストーブのバーナーヘッドに当たり、それ以上閉じないようになっています。
PocketRocketはガス缶に直接ねじ込んで使いますが、ガス缶との接触部分にはゴム製のパッキンが付いています。
MSRのガス缶は手に入らないので私はPrimusの缶を使っていますが、このパッキンが役に立っているようには見えません。
やはりMSRのガス缶の寸法にぴったり合わせてあるようです。
やはりMSRのガス缶の寸法にぴったり合わせてあるようです。
バーナー部分に注目してください。
ベンツのマークのような部品がはめ込まれています。これは、風を受けても火が消えないようにするための簡易的な風防で、Windclip(ウィンドクリップ)と呼ばれるもの。
炎の出る空間を三等分するような壁になるので、風上側の炎が消えても、他の空間の炎は消えずに燃え続けるというわけです。
あくまでも、突然の強風で炎が吹き消されないようにするという程度の性能なので、風が強い中でこの簡易風防だけを頼りに湯沸かしをすると、お湯を沸かすのにかかる時間は飛躍的に長くなってしまいます(風速2mの風の中で500ccの湯沸かし実験をしたところ、5分経過後も水温は20度しか上がっていなかった)。
「何か良い風防はないかな」と検索をしていたら、Primusのクリップオン型(※)の風防をPocketRocketで使用している海外の人のブログ記事を見つけ、購入してみました。
※ガス缶の首の部分を挟むように取り付けるものです。
※ガス缶の首の部分を挟むように取り付けるものです。
が、これが失敗。
PocketRocketをねじ込んだガス缶にその風防を取り付けましたが、PocketRocketは背が高いため、風防の上端とバーナーヘッド上端の高さの差がほとんどありません(バーナーヘッドが風防の中に隠れない)。
上の写真で見て分かるとおり、このPrimusの風防はPocketRocketに合いません。
Primusの風防は使えるガスストーブがかなり限られます。風防をセットしたとき、風防上端とクッカー底面の間にある程度のすき間ができるほどゴトクに高さがあって(熱が籠もってガス缶が過熱されないようにするため)、なおかつバーナーヘッドが風防の上端より低い位置に来るストーブという条件に当てはまる物でないといけないのです。
何か良い風防はないかと検索していたら、クッカーの底面から何センチか飛び出すように、クッカー周囲に薄い金属板を巻き付け(クッカーがスカートをはいたような状態)、それを風防として使っている人が見つかりました。(下のリンク先参照)
ただ、この方法だとクッカー下の金属板に囲まれた空間に高温の空気がたまり、その熱がガス缶を暖めることになるため、推奨できません(ガス缶が破裂する恐れがある)。
参照:海外のハイカーのフォーラム(英語)
http://www.backpackinglight.com/cgi-bin/backpackinglight/forums/thread_display.html?forum_thread_id=77424
このフォーラムの最初のコメントの写真に、クッカー直づけの風防(危険なタイプ)があり、ページの中程には熱気を逃がす工夫をした直づけ風防の画像があります)。
クッカー直づけの風防は面白いかもと思いましたが、これを付けているとクッカーを地面に置くのが難しそう(ストーブの上にしか置けない)。
というわけで、私は普通の風防を使っています。
▲EPIウインドシールド(L) とのサイズ比較
さて、このPocketRocketのゴトクですが、奇妙な特徴があります。
それは、ゴトクの上端に傾斜が付いているという点。
それは、ゴトクの上端に傾斜が付いているという点。
下の写真を見てください。クッカーの底面に「点」でしかゴトクが接していません。
▲クッカーを載せた様子
ゴトクよりも直径が小さいマグ(750ccサイズ)を載せると、下のようになります。
▲マグを載せた様子
何故こんな形状をしているのか最初は分かりませんでしたが、クッカーをいじっていて気がつきました。
PocketRocketに載せたクッカーは、非常に滑りづらく安定しているのです。
PocketRocketに載せたクッカーは、非常に滑りづらく安定しているのです。
点でしか接していないことで、単位面積当たりの荷重が大きくなり、大きな摩擦が働いているのかも知れません。
これにより、PocketRocket上でクッカーをずらしたりすると、クッカー底面に傷が付きやすくなっています。
クッカーの位置を変える際は、ゴトクの上を滑らせるのでは無く、いったん持ち上げてから置き直してください。
注意点
人によって問題になるのは、バーナーヘッドの形状です。
バーナーヘッドの直径が小さく、炎が真上にしか上がらないデザインのため、水気が少ないメニューだと中心部分が焦げ付く心配があります。
実際にどのようにクッカーが加熱されるのかを調べるため、薄く水を張った直径約20cmのフライパンをPocketRocketに載せ、点火した直後の温度をサーモグラフィーで撮影してみました。
測定方法: MSRのQuick Skillet(フライパン)に薄く水を張り、点火したPocketRocketに載せた直後の温度を真上から測定。
測定機材: FLIR社製i3(サーモグラフィー)
測定機材: FLIR社製i3(サーモグラフィー)
比較のため、炎が大きく広がるストーブとしてMSR Whisperlite Universal(ウィスパーライト・ユニバーサル)を使用し、上と同様の手順で温度を測った画像は、次の通りです。
上のサーモグラフィーの画像からは、PocketRocketの火力が一点集中型になっていることがよく分かります。
フライパンの汚れを防止するために、一度クッキングシートをフライパンに敷いて即席焼きそばを作ったことがあるのですが、その際、クッキングシートの中心部分に焦げ目が付きました。
「熱の加わり方の実験にこれも利用できるかも」と考え、クッキングシートを敷いて水を入れたフライパンをWhisperliteに載せ、湯を沸かす実験をしてみました。すると、こちらのクッキングシートにも焦げ目が。
両者の焦げ目を比較してみましょう。
写真に写っている定規はセンチ/インチ両対応のもので、上がインチ、下がセンチの目盛りです。
写真に写っている定規はセンチ/インチ両対応のもので、上がインチ、下がセンチの目盛りです。
最後に
サイズや重量、耐風性能に関してはこれより優れた物はいろいろありますが、シンプルであるが故の耐久性の高さ、コンパクトなハードケースが付属している点が素晴らしいと思います。
そもそも、発売から15年経っても売られ続けているということ自体、優れた製品である証拠です。
ガスストーブはクッカー内に収納されることが一般的だと思いますが、ハードケースがあれば、バックパックのサイドポケットや雨蓋など、どこに入れていてもストーブが壊れる(ゴトクが変形する)心配はありません。
私は荷物の扱いが荒いので、ハードケースが付属しているのは助かります。
局所的に加熱するバーナーの特性を理解した上で、余計なものが何も付いていないシンプルさや、可動部が最小限しかない耐久性の高さを求める方なら、買って後悔することはないと思います。
逆に、低温下での性能や点火装置、軽さといった特徴を求める方は、他のメーカーの製品を考えた方が良いと思います。(個人的にはSOTO WindMasterに興味津々。でも、価格がPocketRocketの倍ですし、持っている人が多そう。)