播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

ボタン一発で周囲全てを撮影できるカメラ:RICOH THETA S

注意:当ブログ記事の内容は、2015年10月時点の情報をもとに書かれたものです。ソフトウェア等のバージョンアップにより、機能の追加・削除・向上がなされる場合があります。
この製品は動画の撮影機能も持っていますが、今回の記事では動画機能については一切触れていません。
私の場合、観光地や山歩きに出かけたときは、その場の様子や山頂からの景色を記録するために、Googleストリートビューのような全天球パノラマを撮影しています。
 
例えば、以下のようなものです(THETA Sで撮影したものではありません)。
 
 
クラシックカーが集まるイベントで撮影した全天球パノラマ(一眼レフカメラで撮影)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/CoppaDiHimeji/virtualtour.html
 
一眼レフカメラに魚眼レンズを取り付け、それをパノラマ撮影用の専用雲台に載せて撮影することが多いのですが、この方法ではカメラを水平方向に回しながら写真を撮り、最後に空と地面を撮影して、パソコンで写真を結合することになります。
 
動くものが多い場所では、カメラの動きに合わせて動くものはパノラマの中に何回も映り込みますし、写真の結合部分に動くものがあれば、うまく写真がつながらない事もあります。
 
その対策として、180度以上の画角のレンズを背中合わせに2枚もつパノラマ撮影専用カメラ「RICOH THETA(リコー・シータ)」の初代モデルを使うこともありました。
これを使えば、上下左右全ての方位を一発で撮影できるため、動くものがあっても何の問題もありません。
 
ただ、THETAで撮影したパノラマは、一眼レフカメラで撮影したものと比べると極端に画質が悪いという問題がありました。
 
初代や2代目のTHETAを使っているパノラマ好きの人からは、画質の改善を求める声が多かったらしく、初代が発売された2013年11月からおよそ2年経った今年10月23日、大きさはほぼそのままで、画質が大幅に改善されたTHETA Sが発売されました。
 
パノラマ好きとしては買わないわけにはいきません。
ニュースを見た瞬間にメーカーサイトで予約し、発売日に手元に届きました。
 
 
▲THETA Sのパッケージ内容(左から本体、専用ケースとUSBケーブル、クイックスタートガイド)
 
製品名: THETA S(シータ・エス)
メーカー: リコーイメージング株式会社(日本)
サイズ: 44mm×130mm×22.9mm
重量: 約125g
インターフェイス: Micro USB端子(USB 2.0)×1、HDMI-Micro端子(Type-D、HDMI 1.4)×1
センサー: 1/2.3型 12M CMOSセンサー×2
レンズ: F2.0
撮影距離: 約10cm~無限遠(レンズ先端より)
露出補正: マニュアル補正(-2.0~+2.0EV 1/3EVステップ)
ISO感度: ISO 100~1600
シャッタースピード: 1/6400~60秒(マニュアルモードの場合)
記録媒体: 内蔵メモリー(約8GB)
記録可能静止画枚数: 画像サイズが5376×2688pxのとき、約1600枚
動画の記録時間: 1回の記録が最大25分、または4GB以下(30fps)ただし、内部温度が上昇した場合は自動で停止。
記録形式: 静止画:JPEG、動画:MP4(映像:MPEG-4 AVC/H.264、音声:AAC)
電源: リチウムイオンバッテリー(内蔵)(交換不可。マイクロUSBポートから充電)
電池寿命: 静止画撮影で260枚
購入価格: ¥42,800(税込)
購入先: RICOH Imaging Online Store(メーカー直販サイト)

概要

メーカーの公式動画を見て頂くのが一番分かりやすいです。
 
https://www.youtube.com/watch?v=WzqaBUF3P0w
▲THETA Sのプロモーション動画

外観

何かにたとえるのが難しい形状なので、とりあえず下の写真をご覧下さい。
 
 
▲THETA Sの表(左。中央にシャッターボタンがある)と裏面
 
 
▲THETA Sの両側面(ボタンは上から電源、無線LAN有効/無効、静止画/動画モード切替)
 
 
▲THETA Sの天面(マイクがある)
 
 
▲THETA Sの底面(マイクロUSBポートとHDMIマイクロポート、三脚穴がある)ぼかしてあるのは、無線LAN接続用パスワード。
 
側面から見た画像だと分かりやすいですが、両面に魚眼レンズが飛び出していて、本体表面の中央付近にある丸いシャッターボタンを押すか、スマホの専用アプリからのリモコン操作により、2つの魚眼レンズで同時に周囲が撮影され、本体内で2枚の画像が結合されて全天球パノラマが出来上がるという仕組みです。
 
THETA Sのパッケージには、簡易な作りのキャリングケースが付属しています。
 
 
▲付属しているケース(本体がすっぽり入るサイズですが、開口部が分かりやすくなるよう、あえて本体を飛び出させています)
 
ベルトループやストラップホールは無く、THETA Sをポケットや鞄に入れて持ち運ぶ際の、最小限の保護を提供するものです。
 
少しきつめの作りで、スムーズに出し入れするのは難しい。

初代THETAとの比較

私の手元には初代のTHETAがあるので、両者を比較してみました。
 
まずはサイズ。
カタログスペックではごくわずかな違いがありますが、見た目ではほぼ同じ大きさに見えます。
 
ただ、手に持つとTHETA Sは初代よりずっしり重く、初代用のケースに突っ込んでもかなり窮屈。
 
電源が切れているためこの画像では分かりませんが、静止画モードと動画モードのどちらになっているのかが一目で分かるLEDランプが、THETA Sのシャッターボタンの下にあります。
 
 
▲THETA S(左)と初代THETA
 
初代THETAには出来なかった動画撮影機能が備わっているので、側面には静止画/動画の切り替えボタンが増えています。
 
 
▲THETA Sの操作ボタン(左)と初代THETAの操作ボタン
 
初代THETAはマイクロUSBポートにカバーが付いていましたが、THETA Sではカバーが廃止されています。
また、パノラマ動画のライブストリーミング用にHDMIマイクロポートが備わりました。
 
 
▲THETA Sの底面(左)と初代THETAの底面

初代THETAとの画質比較

THETA Sの画質がどのくらい良くなっているのか確認するため、近くの神社で両THETAを使用してパノラマを撮影しました。
 
初代THETAは、無線LANでスマホに画像を転送する際、解像度が強制的に低くされていました。
今回は、解像度が下がった後とオリジナル画像の両方をパノラマにしています。
※スマホ転送後の画質の初代THETAのパノラマとTHETA Sのパノラマは、ほぼ同じ日時に撮影しています。初代THETAのオリジナル画像によるパノラマは、別の日に撮影した物です。
 
両者の解像度の違いは、以下の通りです。
 初代THETAの解像度: 2048 × 1024 (スマホ転送後の解像度)
 初代THETAの解像度: 3584 × 1792 (撮影されたオリジナル画像の解像度)
 THETA Sの解像度: 5376 × 2688 px
 
大きな画面で表示すると、THETA Sと言えども画質に不満を感じますが、スマホの画面で見る分には十分な画質です。
 
両者とも、パノラマには西と東に画像のつなぎ目があります(方角はパノラマ右上のコンパスを参照して下さい。コンパスの針は、北ではなく見ている方向を示しています)。
 
THETA Sのパノラマは一見綺麗な画像に見えますが、画像のつなぎ目のある西と東の画質が他と比べて低いことが分かります。
 
初代THETAで撮影したパノラマ(スマホ転送後の画質=2048×1024px)
 
初代THETAで撮影した全天球パノラマ(ISO優先モード。ISO=100)
 
スマホに転送する際、解像度が2048×1024になります。

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/ricoh_theta_s-1/virtualtour.html
 
初代THETAで撮影したパノラマ(Theta本体に保存されるオリジナルの画質=3584×1792px)
初代THETAで撮影した全天球パノラマ(ISO優先モード。ISO=100)
 
Theta本体に保存される画像で、解像度は3584×1792pxです。

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/ricoh_theta_s-2/virtualtour.html
 
THETA Sで撮影したパノラマ(解像度=5376×2688px)
THETA Sで撮影した全天球パノラマ(ISO優先モード。ISO=100)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/ricoh_theta_s-3/virtualtour.html
 
より細かく画質を比べてみましょう。
前出の3種類のパノラマから、レンズ正面方向の画像の一部を切り出して並べてみました。
 
やはりTHETA Sの画質がずば抜けて高いことが分かります。
 
 
次は、レンズのつなぎ目のある方向の画質を比較してみましょう。
魚眼レンズの外周付近は解像度が低く、レンズ正面方向の比べると画質は劣ります。
 
特にTHETA Sはレンズ正面方向の画質が優れいているため、つなぎ目のある方向の画質の悪さが際立ってしまいます。
 

撮影方法

iOSとAndroid向けに、撮影用アプリが提供されています。

THETA Sを手に持って撮影すると、どうしても自分自身が大きく映り込んでしまいますが、それを防ぎたい場合は、三脚等にTHETA Sをセット(底面に三脚穴がある)し、スマホから遠隔操作(無線LANで接続。スマホからは、THETA Sが無線LANアクセスポイントのように見えます)でシャッターを切ることになります。
 
自分が写らずに済む他にも、スマホのアプリを使う利点があります。
それは、シャッタースピードやISO感度を変更出来るということ。
 
THETA S用のアプリの画面は次のようになっていて、画面上部にはTHETA Sが捉えている風景がリアルタイムで表示されます。(これを見ながらTHETA Sを設置する場所を調整したり、露出補正の値を決めることが出来ます。)
 
最も良く使うのが、この「オート」モードの画面でしょう。
 
 
▲iOS版THETA Sアプリの撮影用画面(中央がシャッターボタン)
 
「オート」の他には「シャッター優先」、「ISO優先」、「マニュアル」の各モードがあり、例えば明るい屋外で動き回る子供やペットを含めたパノラマを撮る場合は「シャッター優先」にして被写体ブレを抑えたり、暗い場所で動くものがない状況であれば「ISO優先」にしてノイズが少なくなるようにするといった具合に、必要に応じてモードを切り替えて使用します。
 
 
▲「オート」以外の各モードの撮影画面
 
実際に撮影するときは、
 (1)THETA Sの電源を入れてスマホと無線LANで接続(アプリで撮影モード、設定を選択)
 (2)THETA Sを撮影場所にセット
 (3)写り込まない場所へ避難
 (4)スマホの画面中央のシャッターボタンをタップ
という流れになります。

写真の利用

撮影したパノラマをスマホで見たり、他の人と共有するには、まずTHETA S本体から画像をスマホへ転送します。
 
スマホへ転送する場合は、アプリの画面内からTHETA S本体内の画像を一覧表示する画面を開き、必要な画像をタップするだけ。
 
USBケーブルでPCと接続すると、画像をPCへ取り込むことも出来ます。
 
転送された画像を共有することになるわけですが、THETA Sで撮影した写真は、そのまま表示すると全天球画像がメルカトル図法で展開された状態になります。
 
THETA Sアプリ内であればパノラマとして表示されるのですが、撮影した画像をメール等で誰かに送っても、メルカトル図法で妙にゆがんだ画像として表示されるだけなのです。
 
THETA Sアプリを持っていない人にもパノラマを見てもらうために、https://theta360.com/というサイトが用意されていて、ここにTHETA Sアプリから画像を投稿すれば、その画像がパノラマとして表示されるページが作成され、そのURLをSNSで共有して画像を見てもらうという仕組みになっています。
 
theta360.comを利用するには、FacebookかTwitterのアカウントが必要です。
 
 
▲THETA Sアプリからtheta360.comへ送信するには、まず画面下端、ゴミ箱左隣の共有ボタンをタップし、「共有」または「この向きで共有」を選ぶ。「パノラマにアクセスしたとき、この方向が最初に表示されるようにしたい」という向きがあれば、その方向を表示した状態で共有ボタンを押し、「この向きで共有」を選ぶ。
「Theta+」は、画像にフィルタをかけたり、トリミングを行うためのアプリ。
 
 
▲続いて投稿先のSNSを選択し、コメントを入力して「完了」をタップすると、theta360.comにパノラマが投稿され、SNSにそのリンクを含むコメントが投稿される
 
 
▲画像をアップロードしているときの画面(左側。進捗バーが表示される)アップロードが完了すると、ブラウザ(iPhoneの場合はSafari)でパノラマを表示するためのボタンが表示される(右)
 
▲theta360.comに投稿されたパノラマをSafariで表示した様子
 
実際にtheta360.comではパノラマがどのように表示されるのか、以下のURLからご覧頂けます。
 
 
プライバシー保護のために、THETA Sアプリには撮影した画像にぼかしを入れる機能もあります。必要に応じて、写っている人の顔などをぼかしてから公開して下さい。
 
カメラ本体内やアプリには縦横比1:2の画像が保存されるので、今まで自分でパノラマを公開してきたパノラマ好きの方々であれば、その画像を自分なりに好きなように加工し、自前やレンタルのサーバで公開することも簡単です。

アクセサリ

付属のキャリングケースがあまりにもチープなので、別売のソフトケース(TS-1)を購入しました(税込¥2,970)。
 
合皮で出来たケースで、白と黒の2色展開になっていますが、カメラ本体が黒なので、ケースも黒にしてみました。
 
 
▲ソフトケースの表面
 
 
▲ソフトケースの裏面(ベルトに付けられるようになっていませんが、裏面の上部に小さなループが付いているので、ここにカラビナを付けてズボンのベルトループ等に取り付けると便利。)
 
「おっさん臭い」デザインですが、なかなか落ち着いた雰囲気。
THETA S本体も全体がつや消しの黒で高級感があるため、ケースもこういった高級感のあるデザインの方が似合います。
 
ただ、ケースのサイズが小さいのか、THETA Sの出し入れの際には少し摩擦抵抗があります。
ケース内面はレンズ拭きのような素材なので傷が付くことはありませんが、出し入れのしづらさは気になります。
 
 
▲THETA S本体を収納した様子
 
私は使うことがないと思うのですが、THETA Sを首からかけるためのストラップを付けられるストラップ用アタッチメント(税込¥1,522)も購入してみました。
 
THETA S本体にねじ込んだ後でも、リング部分は自由に回転する構造になっています。
 
 
▲ストラップ用アタッチメント
 
 
▲ストラップ用アタッチメントをTHETA S本体に取り付けた様子
 
ソフトケースは初代THETA用のケースと異なり長さに余裕があるため、THETA Sにストラップ用アタッチメントを取り付けたままでも収納できます。
 
 
▲ストラップ用アタッチメントを付けたままでもソフトケースに入れられる

最後に

初代THETAやTHETA m15を使っている方であれば、買い換える価値は十二分にあると思います。
 
今までTHETAを使ったことがない方からすれば、THETA Sが出たことで初代THETAやm15が安く中古市場に出回るでしょうから、そちらの方が買いやすいかも知れませんが、どうせ買うなら是非THETA Sを買って下さい。