播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

ガレージブランドのアルコールストーブ:SoLite Stove

私の山での楽しみは、景色を見ながら食事を摂ることです。
その食事も、必ず何かひと品は温かい物がないと物足りないため、山歩きには必ずガスストーブかアルコールストーブ、あるいは固形燃料ストーブを持っていきます。
 
アルコールストーブはすでに「ALストーブスタンドDXセット EBY255」と「Clikstand と トランギアのアルコールストーブの組み合わせ」を持っていますが、近所の山道具屋さんでたまたま見つけた製品を衝動買いしてしまいました。
 
 
▲SoLite Stove(緑(Forest Green)の製品)
 
 
▲SoLite Stove底面
 
製品名: SoLite Stove(ソウライト・ストーブ)
メーカー: SoLite Stove Corporation(アメリカ)
サイズ: 直径約7.5cm × 高さ約4.1cm(カタログ値)
カラーバリエーション: 青(Deep Sea Blue)、赤(Screaming Red)、黒(Midnight Black)、緑(Forest Green)
重量: 約41g(カタログ値)
耐荷重: 100kg(カタログ値)
材質: アルミニウム(一部のみ真鍮)
定価: ¥3,672(税込)
メーカー直販価格: $24.99 USD
購入先: アドスポーツ(兵庫県姫路市)
備考: 輸入代理店はA&F

特徴

本体はSIGGやLAKENのアルミボトルのような厚みのある素材なので、かなりしっかりしています。
耐荷重が100kgとなっていて、実際このストーブを踏んづけてもびくともしません。
 
アルコールストーブに限りませんが、私の場合は食事の準備や片付け中に道具類を蹴飛ばしたり踏んづけることもあるので、耐久性は重要な購入動機になります。
 
表面の塗装は、使用するとすぐに剥げるか焦げるかすると思ったのですが、側面にある穴(ジェット)の周囲が変質する程度で、他の部分には変化がありません。
耐熱性の高い塗装方法を使っているようです。
 
ただ、外から見えない内側の塗膜は、使用している内に剥がれて底に沈みます。
また、最初の内だけですが、使用後は微量のオイル状の物質も底にたまります。

使用後、内部に塗膜が落ちていたら爪楊枝やピンセットで取り除き、オイル状の物質があれば、ティッシュなどで拭き取って下さい。
 
便利なのは、ゴトクが必要ないという点。このストーブの上にクッカーを直接載せて使います。

炎がストーブの周囲から広がるため、直径の小さな縦長のクッカーやマグカップと合わせて使うのは不可能。
使えるクッカーが制限されますが、ゴトクいらずで重量が約41gというのは魅力です。
 
軽いストーブはいくらでもありますが、安定したゴトクと組み合わせればそれなりの重さになってしまうので、ゴトク不要の頑丈なアルコールストーブであることを考えれば、驚異的な軽さです。

構造・仕組み

内部に真鍮製の部品がありますが、メーカーがYoutubeで公開している動画によると、これは内側の漏斗のような形状をした部品の形状を維持するための部品(Brass Compression Ring)だそうです。
 
 
▲SoLite Stoveの内側
 
SoLite Stoveの構造を模式図で描いてみました。
 
 
▲SoLite Stoveの断面(模式図)
 
アルコールを入れてから中央の大きな開口部に点火するとアルコールが燃え上がり、ストーブ本体が加熱されます。
そして、熱せられたアルコールの蒸気が側面のジェット(穴)から噴き出し、中央部の炎から引火して燃えるという仕組みです。
 
側面から噴き出す炎がお湯を沸かすために使われ、中央の大きな穴は、側面から炎が出るまでの間だけ、ストーブ本体を温める(プレヒート)のに使われます。
 
側面のジェットから炎が噴き出す本燃焼状態になってから、上図のようにクッカーを載せます。すると中央の穴は塞がれ、炎は側面から出るものだけになります。
 
アルコールの蒸気が安定的にジェットから噴き出すようになるまで、かなり時間がかかります。
 
このプレヒートの段階は特に風に弱く、本燃焼に入るまでは火が消えていないか絶えず注意しておく必要があります(日中は炎が見えませんが、地面に映る陽炎を見たり、手をかざすなどして、火が付いていることをチェックできます)。

使用方法・性能

では、実際にどのように燃えるのかを見ていきましょう。
 
SoLite Stoveの使い方は非常に簡単。
中に適量のアルコール(1分当たり約5~6ccのアルコールを消費するので、逆算して必要な量を求めます)を入れ、点火具(チャッカマンタイプのライター、マッチ、メタルマッチ等)で着火するだけです。
 
点火直後は、下の写真のような状態。
 
 
▲点火直後の様子
 
1分45秒ほど(※)待つ(プレヒートする)と周囲のジェットから炎が出ますが、その炎が花びらのように見え、真上から見るとひまわりの花のような形になります。
 
※説明書では1分ほどでプレヒートが完了すると書かれていますが、使用する燃料用アルコールの配合比率や気温等、様々な要因で変わる可能性があります。SoLite Stoveと同様に側面から炎を出すAntiGravityGearのKatahdin Stoveには、プレヒート時間を短縮するためのプライマー・パンなる小さな皿があります。ストーブの下にそれを敷き、その中に入れた少量のアルコールに点火してプレヒートするというものです。それをまねれば、プレヒート時間を短縮できるかも。
 
日中はその炎もほとんど見えません。
プレヒートが完了したかどうか分からないので、私の場合は点火後2分待ち、それからクッカーを上に載せることにしています。
 
日中は地面にゆらゆらと揺れる陽炎が映るので、慣れてくれば陽炎の大きさで側面のジェットから炎が出始めたかどうかが分かるかも知れません。
 
 
▲点火から2分弱経過後の様子
 
本燃焼が始まると、時折盛大に炎が上がります。
 
 
▲最も炎が大きい状態
 
この本燃焼状態まで待ってからクッカーを載せます。
 
 
▲クッカーを載せた様子
 
上の写真は、夜に我が家のベランダで撮影したので炎が比較的よく見えていますが、日中に使う場合は炎が見えないため、火傷には要注意です。
 
 
▲日中の屋外で燃焼させている様子(炎は全く見えない)
 
消火方法はシンプル。

クッカーを載せたまま、横から強く息を吹きかけるだけです(風防を取り除いてからでないと消火しづらい)。
あるいは、始めに入れたアルコールの分量が適切なら、ちょうど良い頃にアルコールが尽きて炎が消えます。
 
火を吹き消した後は、ストーブが冷めてからストーブを傾け、側面の穴から出てくるアルコールを容器で受け止めてやれば、燃料を無駄にしなくて済むというわけ。
 
実害は特にありませんが、上にも書いたとおり内部の塗膜が剥がれることがあるので、回収されるアルコールに塗膜片が混じることもあります。
 
続いて火力です。
このストーブでお湯を沸かすのにかかる時間を測定してみました。
 
6月のある日、我が家のベランダ(風速1m程度のそよ風が時折吹く)で、室温の水(セ氏23度)500ccをモンベルの「アルパインケトル16」(やかん)に入れ、風防で囲ったSoLite Stoveで沸かしてみました。
 
SoLite Stoveに入れたアルコール(『燃料用』として市販されているもの)は、約60cc。
点火した瞬間を基点とした経過時間(mm:ss)を左端に表記しました。
00:00 点火
01:50 プレヒート完了(火が花のように広がる)、ケトルをセット
08:00 沸騰
11:25 アルコールが尽きて自然に消火

風防について

上の実験では、EPIgasのウインドシールド(S)を使用しましたが、風防の長さ(高さではなく全長)が十分にあるため、ケトルと風防の間の空間が広めになるように(風防の直径が大きくなるように)設置しました。
 
こうすることで、余分な熱はクッカーの側面の空間から上へ逃げ、風防内に熱が籠もってアルコールストーブが過熱される恐れが少なくなります。
 
ケトルやクッカーと風防の距離が短くなるように(直径を小さめに)風防を設置すると、アルコールストーブ周辺の温度が高くなりすぎ、アルコールの気化が促進されて火力が増します。
 
すると風防内に炎が充満し、アルコールストーブ周辺にある枯れ草や落ち葉が燃えて危険ですし、燃焼時間も短くなってしまいます。

特に、冬場に雪の中へのストーブの沈み込みを防ぐために木の板等を敷いて使用している方は、要注意です。
 
 
▲草の多い場所でのセットアップ(安定した平面を確保するのと周囲の草を燃やさないためにバルサ材のような軽量の木の板を敷き、安全のため風防とストーブの間隔を広めにセットしている。軽量な木の板は燃えやすいので要注意。私のも焦げ目がついている。)
 
背の高い風防をきつめに巻いて設置すると、空気の流入量が不足して火が消えることもあります。
 
アルコールストーブを使用する際には必須となる風防ですが、どのようなものが良いのか、各自で研究してみて下さい。

収納について

SoLite Stoveは小型なので、クッカーやケトルの中に簡単に収納できます。
(注)下の写真では、分かりやすくするためむき出しで収納していますが、実際は傷や騒音防止のためペーパータオル等で包みます。
 
 
▲モンベルのアルパインケトル16に風防(Vargo Windscreen)と一緒に収納した様子
 
 
▲モンベルのアルパインクッカー14にスタッキングボウル14を重ね、その中に風防(Vargo Windscreen)と一緒に収納した様子

まとめ

とにかく単純な構造で、軽いのに頑丈。火力も必要十分。
 
プレヒートに2分近くかかるのと、ストーブ本体の側面から炎が上がる(炎の直径が大きい)ため、直径の小さなクッカーや、金属製のマグカップ等と組み合わせて使うには不向きという弱点もありますが、「時間は気にしない。荷物は軽い方が良い。お湯さえ沸かせれば良い。」という方にとっては、十分に実用的な製品だと思います。
 
参考動画
YouTubeには、メーカーの関係者がこのストーブを使ってスクランブルエッグとポップコーンを作る動画が公開されています。