SPring-8(スプリングエイト)といえば西播磨のテクノポリス(播磨科学公園都市)にある円形の建物が有名ですが、そもそもあの施設が何をするためのもので、中がどうなっているのかも全く知りませんでした。
そこで、本日2015年4月26日(日)、年に一回のSPring-8 施設公開の日に見学に出かけてきました。
文末に本日SPring-8内で撮影したパノラマを掲載しましたので、興味のある方はご覧下さい。パノラマは合計で8枚あり、画面左上のリストで切り替える構造になっています。
SPring-8(以下スプリング8)は、パンフレットによると「世界一の高エネルギーを実現する第3世代シンクロトロン放射光源」だそうです。
名前の由来は「Super Photon ring 8 GeV(8 GeVは電子の最大加速エネルギー)」の略称。
放射光を発生するアンジュレータと呼ばれる装置から出た電子は、あの有名な円形の建物内を通る1周1,500mの蓄積リング内をぐるぐる回り、電子ビームを曲げるときに出る放射光が、リングから合計50箇所ほど飛び出しているハッチ内で測定や検査に使われるというもの。
スプリング8で使われる放射光は、赤外線からX線までの波長の光とのこと。
赤外線なんて軍用のフラッシュライトでも出せますし、X線なら普通の病院でも診断に使われています。
スプリング8の何がすごいのかと言うと、その放射光の強さと質の高さです。
スプリング8の何がすごいのかと言うと、その放射光の強さと質の高さです。
スプリング8は、物質を分子や原子レベルで観察できるほどに強くて精度の高い光(我々がイメージする光ではなく、X線などの不可視光)を発生するための装置なのです。
スプリング8の蓄積リング棟横には、SACLA(サクラ)と呼ばれるX線自由電子レーザー施設があり、そちらはスプリング8に比べて高速で試料を測定できる(X線が当たって試料が壊れる前に測定できる)という特徴があります。
しかし、SACLAはX線しか使えません。
しかし、SACLAはX線しか使えません。
このような施設は全世界に3箇所ありますが、日本は電力が安定し、電源装置や各種装置を作る技術が世界トップクラスなので機材の性能が高く、世界中から研究者らが集まってくるそうです。
なんだか偉そうに書いていますが、以上の内容は、本日施設見学をして知ったものです。
質問されてもこれ以上のことは分かりませんし、間違ったことを書いているかも知れません。
質問されてもこれ以上のことは分かりませんし、間違ったことを書いているかも知れません。
では、施設見学の様子を紹介しましょう。
8:35
姫路市街の自宅を出発。
姫路市街の自宅を出発。
9:40
スプリング8の駐車場は利用できないので、西播磨総合庁舎の駐車場と、その隣にある広場が見学者用に開放されていました。
スプリング8の駐車場は利用できないので、西播磨総合庁舎の駐車場と、その隣にある広場が見学者用に開放されていました。
西播磨総合庁舎の駐車場に車を止め、光都プラザの南にある芝生広場のシャトルバス乗り場へ徒歩で移動。
マイナーなイベントかと思っていましたが、すでにシャトルバス乗り場には多くの人が並び、西播磨総合庁舎へ向かってくる車の列は途切れません。
シャトルバスは無料でした。
10:03
スプリング8の中央管理棟前にシャトルバスが到着。
スプリング8の中央管理棟前にシャトルバスが到着。
中央管理棟の前にテントがあり、そこで名簿に記帳すると、ノートとアンケート用紙が入った理研の手提げ鞄と、見学者であることを示すために首から提げる名札のようなもの(これが地図付きのパンフレットになっていた)がもらえます。
首から名札のようなものをかけ、北側の入口から中央管理棟の中へ。
階段を登って2階へ上がり、南側へ出ると円形の建物(蓄積リング棟)の入口があります。
階段を登って2階へ上がり、南側へ出ると円形の建物(蓄積リング棟)の入口があります。
▲中央管理棟の階段
蓄積リング棟の中は、何の飾りっ気もない実用性重視の空間。
こういう格好良さにあこがれます。
蓄積リング棟の一般の見学ルートは全長400mあり、ホール内はパネル展示や各種実演、実験コーナーで大賑わい。
一周ウォーキングツアーに参加すると、1.5kmすべて歩けますが、ホール内はどこも同じような雰囲気だったので、私は参加せず。
円形の建物を時計回りに少し進んだところからホールの外へ出るドアが開いていて、そこからは2階の中央制御室へ行けるようになっていました。
ここは、見た瞬間に「かっこえー」と口走ってしまいました。
中央制御室を見た後は、見学室経由で地下通路へ下り、リングの内側にある放射光発生装置のある空間へ行くよう順路が設定されていました。
放射光発生装置の手前に大きなホールがあり、そこにも各種実演・実験展示がありました。
面白かったのは、磁力でビームを曲げる実演。
面白かったのは、磁力でビームを曲げる実演。
説明担当者の方のおしゃべりが聞きやすくて分かりやすく、学校行事で見学に来ていたと思われる高校生に混じって聞き入ってしまいました。
ここでは、高周波で電子を加速する仕組みや、電磁石を使ってアルミ箔の飛行機を飛ばすカタパルトの実演・実験もありました。
そのホールを抜けた先が放射光発生装置。
先ほどのホールで説明を見た、ビームを調整するための電磁石がずらっと並んでいます。
先ほどのホールで説明を見た、ビームを調整するための電磁石がずらっと並んでいます。
放射光発生装置を見たら、再び地下通路を通ってもとの場所へ。
蓄積リング棟の大きな実験ホール内を見ていて気になったのが自転車。
移動が大変なので、自転車が使われているようです。
移動が大変なので、自転車が使われているようです。
円形の蓄積リング棟を時計回りに進んでいくと、「ビームライン1本まるごと見学」というコーナーがありました。
円形の蓄積リングからぴょこぴょこと飛び出しているコンテナのような空間を見られるようなので、見学することに。
公開されていたのは、BL43LXUと名付けられた空間。
「BL」は「Beam Line」、「43」は位置、「L」は長い直線状の空間、「X」はX線、「U」は挿入光源を持っていることを表しています。
最初に見るのは、1周1,500mの蓄積リングから放射光が飛び出てくるフロントエンドと呼ばれる場所。
ここには放射光を遮るシャッターや、測定などに使える放射光だけを選択するためのスリットがあります。
ここには放射光を遮るシャッターや、測定などに使える放射光だけを選択するためのスリットがあります。
隣(放射光の進行方向)の部屋は光学ハッチと呼ばれる空間でミラー等があり、さらにその隣には散乱用スペクトロメーターと呼ばれる装置が置かれています。
ここから先は、まとめて「実験ステーション」と呼ばれるようです。
この機械は、様々な方向から試料を分析するため、写真の中央部分にある支点を軸に左右に振ることが出来るようになっています(下に写っている灰色の台座上を滑って向きを変える)。
この台座は、磨き上げた御影石だそうです。
スペクトロメーターの脚から空気を噴き出し、エアホッケーのようにスムーズに動くとのこと。
さらに隣の部屋へ行くと、巨大なスペクトロメーター(高分解能)があります。
こちらも、台座は御影石。
こちらも、台座は御影石。
上の高分解能スペクトロメーターの右端付近に青っぽい輪が見えていますが、これが試料を置く場所だそうです。
▲試料位置を説明するパネル(右側は集光ミラー)
試料に当てられる放射光は、隣の背面散乱ハッチで反射され、0.05mm×0.05mmまでに集光されたもの。
背面散乱ハッチで反射した放射光が、スペクトロメーターにセットされた試料に照射され、さらに試料に当たって散乱した放射光が分光器で反射されて戻り、検出器で測定されるとのこと。
何がどうなって何を測定・分析するのかさっぱり分かりませんが、とにかくすごい設備だということはよく分かりました。
順路に従って蓄積リングから外へ出ると、右前方にSACLA(サクラ)というX線自由電子レーザー施設があるので、続いてSACLAの見学へ。
SACLAに入ると、パネル展示のある廊下の先で巨大な空間に出ます。
これは全長240mの光源棟。
ここに並んでいるのは、アンジュレータと呼ばれるX線レーザーの発生装置。
この写真の右側にあたる場所には、X線が取り出され、役目を終えたビームを処理するビームダンプと呼ばれる装置があります。
この巨大な空間から一旦廊下に戻り、ビームダンプの先にあたる場所へ向かいました。
そこにあったのは、実験研究棟。
スプリング8に比べるとすっきりした空間でした。
SACLAの見学を終えて外へ出たのが12:00。
SACLAから中央管理棟前へ徒歩で戻り、広場のテントでパンと飲み物(各¥100)を購入し、木陰でのんびり昼食。
12:40
シャトルバスでスプリング8を出発。
シャトルバスでスプリング8を出発。
12:50
西播磨総合庁舎の駐車場に戻ってきました。
西播磨総合庁舎の駐車場に戻ってきました。
スプリング8では、随時見学を受け付けてはいますが、見られる範囲はごく一部。
スプリング8を堪能したい方は、年に一度しかありませんが、施設公開の日に行ってみてください。
電子ビームの制御には、強力な電磁石だけでなく、永久磁石も使われています。
心臓ペースメーカーなど、強い磁力の影響を受ける医療器具を使っている方は、見学時に十分な注意が必要です。
スプリング8の施設内で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2015年4月26日)
https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/springeight20150426/virtualtour.html画面左上のリストでパノラマを切り替えてご覧ください。