播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

リニューアルオープンした姫路城

2015年3月27日(金)午前8時、国宝で世界遺産でもある姫路城が、平成の大修理を終えて5年ぶりに公開されました。

その前日の木曜には航空自衛隊のブルーインパルスも祝賀飛行を行うなど、日本一のお城のリニューアルオープンにふさわしい盛り上がり。

お城の上を飛ぶブルーインパルスを見たり、オープン初日に見学するといったことは仕事の関係で不可能でしたが、せめて再オープン後最初の休日はお城を見に行こうということで、本日出かけてきました。


▲本日私が歩いた見学ルート(赤が往路、青が復路。赤の×印は通行止め)拡大表示出来ます(Googleマップの画像を加工したもの)

お城に着いたのは本日の9時過ぎ。

堀にかかる桜門橋を渡り、大手門をくぐります。


▲姫路城大手門

この大手門は大きくて立派ですが、それもそのはず。
姫路城は軍事施設だったので、車両の通行がしやすいように、旧陸軍が大きくしたものです。

現地に行くと、観光客がこの大手門を見て「立派な門だ」と感心した様子の会話を聞きますが、残念ながら往時の姫路城の大手門はこんな形ではありません。

大手門をくぐると、まもなく三の丸広場の向こう側に立派な姫路城の姿を見ることが出来ます。
ここは、記念撮影には最適な場所です。


▲三の丸広場南端から見る姫路城

三の丸広場の左(西)側を北へ延びる道を進むと、入城口です。

大天守へ入れる観光客の人数を制限するため、当面は1日につき15,000枚の整理券が配布されます。
その整理券も、一人に1枚のみしか配布されませんし、子供にも必要です。

整理券は入城口の手前で配布されているので、整理券配布期間中は忘れずに受け取って下さい。


▲姫路城大天守登閣整理券

再オープン後の姫路城の入城料は、おとな一人¥1,000。

券売機で入城券を購入し、隣の入城口で受付の方に入城券を渡して半券をちぎってもらったら、菱の門をくぐります。

菱の門は、現存する姫路城の門の中では最大のもの。


▲菱の門

菱の門をくぐると、正面に「いの門」、右前方には三国堀と姫路城、右には公衆トイレがあります(今日は仮設トイレもあった)。

2015年3月現在、大天守方面へのルートにはこの後トイレがないので、ここで済ませておくことをお勧めします。

今までの姫路城をご存じの方であれば、西の丸を見てから大天守へ登ったり、最短ルートで「るの門」から大天守へ近づこうとされるかも知れませんが、多方向からの人の流れが出来るとその合流地点で過剰な混雑状態になるため、安全確保の観点からルートは1本に限定されています。

混雑が激しい期間中の登城ルートは、以下の通りです(基本的に一方通行)。

入城口→菱の門→いの門→ろの門→はの門→にの門→ほの門→水一門→水二門→水三門→水四門→水五門→大天守→備前丸→備前門→りの門→お菊井戸→ぬの門→いの門orるの門→菱の門→出口

西の丸にある百間廊下へは、菱の門をくぐったあと左折して西の丸へ入り、いったん西の丸を北上して化粧櫓へ向かってから、渡櫓沿いに南下し、ワの櫓から入ります。

西の丸から大天守方面の道は、バリケードで封鎖されているため、西の丸を見終わったら、再び菱の門へ戻らないと行けません。

西の丸を見ている間に大天守方面の行列はどんどん長くなるので、先に大天守を見ることをお勧めします。私は、大天守見学後に西の丸と百間廊下を見学しました。

話を戻しましょう。
菱の門をくぐったら、正面にある「いの門」をくぐります。


▲いの門

「ろの門」のある二の丸にはポールとチェーンが設置されており、それに沿ってジグザグに折れ曲がる行列の最後尾に並びます。ここから先は、大天守登閣整理券を持っていないと、さんざん並んだあげく、備前丸で行列からはじき出されることになります。


▲ろの門と行列

「ろの門」から次の「はの門」までの間は、時代劇でよく見かける有名な通路です。

本来であれば、西の丸からもこの「はの門」へ直接来られるのですが、再オープン後当面の期間は、その道が封鎖されています。


▲はの門手前の様子


▲にの門

「にの門」の次にある「ほの門」は、小さくて目立たないものです。
これは、敵軍の進攻速度を落とすための工夫。


▲ほの門(生け垣の右)

いろは順だと「ほの門」の次は「への門」になりますが、「への門」へ行くと天守閣を通り過ぎてしまうので、天守へ入るために「水一門」から「水五門」と名付けられた5つの門を数字の順にくぐっていきます。


▲水一門(右の土の壁は通称「油壁」。秀吉時代のもの)

水二門と水三門の間は小さな郭になっていて、二つの小天守に見下ろされた場所。つまり、有事の際には突入してきた敵兵が行き場を失い(引き返すにしても進むにしても門が小さく、時間がかかる)、戸惑っている間に上から撃たれる「処刑場」と化す場所です。

水五門は大天守と南西の小天守をつなぐ櫓の下にあり、防御力を高めるために扉は鉄板で覆われています。


▲水五門から天守の中へ入った

天守の中は今まで通り土足厳禁です。
かなり混雑するので、脱ぎ履きに時間がかかる靴は避けた方が良さそうです。
スリッパはありませんでしたが、自分で用意している方はいらっしゃいました。

大天守の低層階では「思ったほど人がいない」と感じたのですが、(何層目だったか失念しましたが)階段手前はどえらいことになっていました。


▲階段を登るために待つ行列というよりただの人混み

上層階に行くほど狭くなるため、上にいる人たちが下りてからでないと、次の人を上げることが出来ません。
階段が狭くて急なこともあり、過剰な混雑状態は事故の元になりますから、入場規制のため階段を封鎖してこのような状態になっていたのです。安全確保のためには、仕方ありません。

私も混雑は予想していたので(ここまでとは思っていませんでしたが)、スマホで遊びながらのんびりと人混みの中で待機。
私の場合は、上の写真の状態から20分ほどで階段にたどり着けました。

姫路城と言えば、屋根の破風が美しいですが、その内側は下の写真のように「破風の間」となっています。


▲破風の間

大天守の窓から外を監視したり、銃を下向きに撃つために、窓際には石打棚(キャットウォーク)がありました。


▲監視・攻撃用の石打棚(右は破風の間)


▲上層階へ続く階段の様子(中央は西大柱)

ようやく大天守最上層に到着。
9:25に入城口をくぐってから、1時間15分が経過していました。

通勤ラッシュかと思うような状態です。
私もそうですが、毎朝通勤ラッシュにもまれているサラリーマンや、コンサートなどの大人数が集まるイベントに行く方ならこの状態でも特に問題ないでしょうが、小さな子供さんを連れている場合などは大変そうです。

通勤ラッシュとは異なり、人の移動方向が定まっておらずバラバラというのが、混雑している印象を余計に強めています。


▲大天守最上層の様子(左側は神社)

御祭神 姫路長壁大神 播磨富姫神
姫路刑部(おさかべ)大神は延喜式に、富姫神は播磨大小明神社記に記され、古代より姫山に鎮座された由緒ある地主神である。城主池田輝政が、城内「との三門」の高台に祀り歴代城主は手篤く崇敬する。寛延元年(1748)城主松平明矩のとき長壁大神と改める。
明治12年(1879)総社に移されたが、のち勧請され天主楼上に祀る。
明治15年城内備前屋敷の火災、昭和20年7月3日(1945)大空襲には、奇蹟的に炎上を免れた。
姫路城の守護神であり、火災・災害等にご霊験あらたかで、人びとの信仰が篤い。
毎年6月22日、ゆかた祭りとしてご神徳をたたえる。
姫路城を守る会
(出典:現地の看板)

人混みの中のすき間を縫うように移動し、四方の景色を楽しみました。
この景色を見るのは、本当に久しぶりです(大修理期間中の見学施設「天空の白鷺」では、見える範囲が限定されていましたからね)。

屋根瓦の間に塗られた漆喰も真っ白で美しい。


▲大天守最上層からの眺め(北)


▲大天守最上層からの眺め(西)


▲大天守最上層からの眺め(南)


▲大天守最上層からの眺め(東)

景色をしばらく楽しんだら、今度は下りです。
ルートは一方通行のため、階段は上りと下りできちんと分けられています(ただ、混雑が激しいときは、上り階段でも封鎖して下りに使うといった臨機応変な対応がとられていました)。

下りは上りに比べてスムーズ。


▲下りルートの様子

大天守を出ると、天守閣へ登るために並んでいる行列を見ながら備前丸へ。
備前丸には、北西から入ります。

ここから見上げる姫路城からは、美しさと言うより迫力を感じます。


▲備前丸から姫路城を見上げる

備前丸北東の備前門をくぐり、南へ進んで「りの門」の先に、有名なお菊井戸があります。

大勢の観光客が中をのぞき込み、「あのお話の井戸ってこんなに大きかったのか」「これは落ちたら助からない」等々、色んな感想を言い合っていました。


▲お菊井戸

歴代の鯱が展示されている前を通り、「ぬの門」を抜けたすぐ先に「扇の勾配」と書かれた看板のある石垣があります。
「扇の勾配」は上に行くほど角度が急になるというもので、石垣を登る敵の侵入を防ぐための工夫です。


▲「扇の勾配」の看板がある石垣

扇の勾配を右手に見ながらまっすぐ進むと、行列に並んだ二の丸から「いの門」を通って菱の門前に戻ってきます。

あるいは、扇の勾配の先で左へ折れ曲がる道へ入ると、石段を下りて石垣をくぐり(るの門)、菱の門の東側、公衆トイレのある場所へ出られます。

菱の門まで戻ってきたら、せっかくなので西の丸も見学しましょう。
西の丸へは、「いの門」から出てきた場合は菱の門をくぐらず、門に向かって右へ曲がり、上り坂を進みます。
「るの門」から来た場合は、菱の門を左に見ながら直進し、道なりに左へ曲がって坂を上ります。


▲西の丸へ続く道の様子

西の丸には侍女達の部屋がある櫓があるのですが、それより、西の丸から見る姫路城が非常に美しいのです。
個人的には、この角度から見る姫路城が一番気に入っています。


▲西の丸から見た姫路城

西の丸の南西隅にある「ワの櫓」から靴を脱いで中へ入り、渡櫓を北へ進み、化粧櫓から外へ出るというルートになっているのですが、「ワの櫓」へ行くためには、前述したとおりいったん北の化粧櫓方面へ進み、そこからUターンして「ワの櫓」へ行かないといけません。
行列を安全に伸ばすための配慮だと思います。


▲ワの櫓から中へ入る


▲渡櫓内の様子


▲侍女達が住んだ部屋が並ぶ通路(百間廊下)

長い通路を北へ進んだ終点には、千姫が遊ぶ様子を再現した人形が置かれた化粧櫓があります。


▲化粧櫓内部の様子

以上で有料のエリアの見学は終了ですが、時間に余裕があれば、菱の門の東側、トイレの少し先へ行ってみて下さい。

姫路城が時代を経て拡張された城だと分かる「継ぎ目のある石垣」を見ることが出来ます。


▲継ぎ目のある石垣(写真中央に縦向きの継ぎ目がある)

この石垣はリの一渡櫓とリの二渡櫓を支える石垣で、リの二渡櫓の下に石垣の角部が線(継ぎ目)になってみえています。この線から南側(右手)が羽柴秀吉、北側(左手)が池田輝政の時に築かれたものです。
姫路城の建物は西の丸をのぞき、多くが池田輝政によって築かれました。しかし、縄張り(曲輪の配置など)や石垣は、羽柴時代のものを引き継いでいるので、この石垣のように池田時代になって増築された場所に、新旧の石垣の継ぎ目が生じたのです。石垣には築かれた時期によって積み方に違いのあることがわかる事例です。
(出典:現地の看板)

同様の石垣の継ぎ目は、三国堀の北にも見ることが出来ます。
こちらは、堀をせき止めて池にしたために出来た継ぎ目だそうです。


▲三国堀にある石垣の継ぎ目

ここから再び菱の門へ戻り、出口を出たら、今度は「天守の庭」(大天守の礎石を並べた空間。現在の姫路城は、地中にコンクリートの地盤を造った上に建てられているため、礎石が使われていない)を左に見ながら東へ進みます。


▲天守の庭

天守の庭の先で少しだけ坂を登ると、黒田勘兵衛の時代に積まれたと推定される古い石垣(姫路城上山里下段石垣)があります。


▲姫路城上山里下段石垣

他にも姫路城には見るべき所はあるのでしょうが、今日は疲れたのでこれで帰ることにしました。

この記事に書いたルートを見学するのに要したのは、3時間。

動物園や美術館、博物館、好古園や文学館もついでに観光しようと思ったら、一日では無理かも知れません。

今日はとにかく人、人、人という状態でしたが、しばらくの間はこんな状態が続くのかも知れませさん。

おまけ
リニューアルオープンした姫路城を楽しむために、スマホ用のアプリ「姫路城大発見」が公開されています。
簡単に言うと、お城の各部を説明する動画を見るためのアプリです。


▲姫路城大発見アプリ(iPhone版)のアイコン

使えるのは、下の写真のようなARマーカーのある場所。


▲姫路城内の何カ所かに設置されているARマーカー

スマホでアプリを起動し、このARマーカーを画面に捉えると、瞬時に動画の再生ボタンが画面に表示されます。


▲上のARマーカーにアプリを起動したiPhoneをかざした時の画面

画面に表示される再生ボタンをタップすると、説明動画がYoutubeで再生されます。

単なるYoutube動画へのショートカットに過ぎないのですが、QRコードのようにピントや撮影時の距離に気を遣う必要がない点が優れています。
QRコードにしてしまうと、一人のユーザーが上手く読み取れるまで看板の前でゴソゴソと作業をすることになるため、次のユーザーは読み取りが出来ません。
城内は薄暗いので、スマホの機種によってはQRコードだと読み取るのが困難な場合もあります。

このアプリなら、大きな発光看板がARマーカーになっているので、暗い城内でも問題ありませんし、マーカーが大きいため、複数のユーザーが離れたところから一度に読み取ることが可能です。

ARマーカーを読み取って一度見た動画は、コレクションとしてアプリに登録されるため、後で簡単に見直すこともできます。

私はろくにアプリのことを調べずにお城へ行ってしまったため、ARマーカーは大半を見落とし、現地の古い写真を見る機能や、景色の中のおすすめスポットにマーカーが表示される機能も使えず、ほとんど何も出来ませんでした。


▲ARマーカーのある場所


▲古写真を見られるポイント


▲周辺のオススメポイント

姫路城へ行かれる方でスマホをお持ちの方は、是非使い方をしっかり調べ、アプリ内の地図画面でARマーカーなどの位置を把握してお出かけ下さい。

スマホで解説を見ながら歩けるように、QRコードが印刷されている看板もあります。QRコードリーダーが入っていないスマホのユーザーは、予めインストールしていくことをお勧めします。