播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

パノラマ撮影雲台メーカーが作った三脚:Bushman Eben

このブログで時々掲載している全周パノラマですが、特に山の上等で撮影しているものは、小型軽量のパノラマ撮影用雲台「Bushman Gobi(ブッシュマン・ゴビ)」を使用しています。
 
その際、三脚はVelbon製のものを使っていましたが、Velbonの三脚のネジは1/4インチ、Bushman Gobiのネジ穴は3/8インチ。

そのままでは合わないためアダプタを使っていましたが、アダプタを使うと安定性が今ひとつで、パノラマ雲台がぐらつきます。
 
3/8インチの雄ねじを持つ三脚があれば良いのですが、手持ちの三脚の中に小型軽量で3/8インチネジを持つものはありません。
 
どうせ買うならパノラマ雲台を作っているBushmanの純正三脚がいいかなと思い、買ってみることにしました。
 
注文してから待つこと1週間。三脚はチェコからFedexで送られてきました。
 
 
▲Ebenでパノラマ撮影を行う時のセットアップ
 
 
▲付属のケース
 
 
▲付属のケースにEbenを入れた状態
 
製品名: Eben(エベン)
メーカー: Bushman Panoramic(チェコ)
重量: 1.28kg(カタログ値)
耐荷重: 12kg(カタログ値)
材質: アルミ合金
定価: 106.61ユーロ(VAT抜き)、129ユーロ(VAT込み)
購入価格: 106.61ユーロ
購入先: Bushman Panoramic(チェコ)
※VATは日本で言うところの消費税のこと。日本から買えば不要。
 
どのような三脚かは、世界中の全周パノラマを公開しているパノラマファン向けサイト「360cities.net」の主催者であるJeffrey Martin氏によるレビューを見て頂くと、短時間でよく分かると思います。
 
▲Jeffrey Martin氏によるレビュー(全編英語)
 
上の動画で機能は一通り紹介されていますので、動画では分かりづらい細かい部分をこのブログ記事では説明します。
 
まずはサイズ。
収納状態(雲台無し。三脚本体のみ)で3種類を比較してみました。
 
 
▲左からEben、VelbonのULTRA LUXi L、BenroのA2190T
 
Benroのものは大きくて重いため除外し、Ebenに近いサイズ、重量のULTRA LUXi LとEbenの展開状態でのサイズ比較をしたのが下の写真です。
 
 
▲伸ばし切った状態の三脚サイズ比較(左からEben、ULTRA LUXi L)
 
 
▲上の写真の状態からセンターポールを縮めた状態(普段使用する高さ)での比較(左からEben、ULTRA LUXi
L)
 
展開したときの高さは、EbenもULTRA LUXi Lもほぼ変わりません。
しかし、決定的に違う事があります。それは、脚の長さ。

ULTRA LUXi Lの方が脚が長く、設置面積が広いです。安定度を考えると当然ですが、これは地面まで写す全周パノラマの撮影時には不利なのです。
 
EbenとULTRA LUXi Lを使って全周パノラマを撮影したときの底面画像を比較してみましょう。
 
 
▲EbenにGobiを載せて撮影した底面画像
 
 
▲ULTRA LUXi LにGobiを載せて撮影した底面画像
 
三脚によって隠される範囲が、Ebenの方が少ないことがおわかり頂けると思います。
 
では、Ebenの安定度が低いかというとそんなことはありません。
Ebenの安定性については、上に紹介した動画の中でJeffrey Martin氏が体重をかけている様子でも判断できると思います。
 
動画の1:40頃に紹介しているのは、三脚の安定度をより高めるために錘を引っかけるためのフックです。
パノラマ撮影では使いませんが、普通に三脚として使われる方には便利なのかな。
 
 
▲三脚に標準装備されているフック(バネでポール内に引き込まれるようになっている)
 
動画の1:55頃に紹介されているのは、脚を開く角度を変える仕組みです。
 
Ebenは、上の展開状態の写真でお見せした角度からさらに大きく脚を開くことができます。
その角度を調整する仕組みは、ULTRA LUXi Lにも備わっていますが、Ebenの方が圧倒的に仕組みは単純です。
 
ULTRA LUXi Lと異なり、Ebenは機構が開放されているので、ゴミが詰まったり汚れたりしても簡単に手入れができます。
 
 
▲Ebenの脚を開く角度を決める機構
 
槍を投げようとしている人物のロゴのあるプレートを引き出し、脚を広げてプレートを押し込むと、より広い角度に脚を広げて固定できるという仕組み。
 
見ての通り、プレートを引っかける突起は3つあるので、脚を開く角度は3段階に変化させられます。
 
 
▲通常より1段階広くした状態
 
 
▲最大限の角度に広げた状態
 
Ebenは、脚を普通に開くだけで無く、動画の2:15頃から紹介されているように、脚を反転させることまでできます。
動画の中でJeffery Martin氏は「マクロ撮影に使える」と説明していますが、私はパノラマ撮影以外の普通の写真撮影の知識を持っていないため、今ひとつ便利さが分かりません。
 
動画の2:50頃からは、三脚上部のネジのサイズ切り替えについての説明があります。
 
カメラ用の三脚ネジには1/4インチと3/8インチの2種類の規格があり、3/8インチのネジ穴をもつ用具を1/4インチのネジに接続するには、サイズを変換するアダプタを噛ます必要があります。
 
そういった不便を解消する仕組みが搭載されていることもEbenの特徴の一つ。
雲台を接続する部分のネジを抜いて反転させると、もう一方の規格のネジが出てくるという仕組みを備えています。
 
 
▲Ebenの雲台を載せる台を分解したところ
 
 
▲内蔵されているネジ(一方が1/4インチネジ、もう一方が3/8インチネジ)
 
 
▲3/8インチネジを出した様子
 
 
▲1/4インチネジを出した様子
 
動画では紹介されていなかった機能を一つ紹介しておきます。
それは、3本ある脚の内、1本は取り外して一脚として使えるというもの。
 
 
▲1本だけ他より滑り止めゴムの多い脚が取り外せる
 
取り外した脚に、上で説明した雲台を載せる台を取り付けると、一脚になります。
 
面白い仕組みを持っていて、パノラマ撮影者の利便性を考えて作られた三脚ですが、品質や加工精度はVelbonやBenroの三脚に大きく劣ります。
 
チェコから届いた段階で表面には傷があるし、脚を伸ばしきって立てると、何故か若干傾いているという有様。
脚を伸ばすときも、ネジが固くて回りませんでした。

思い切り力を入れて初めて回ったときは「ジョリジョリ」っという金属粉がネジ溝に噛んでいるような音が鳴り、何度も繰り返しネジを締めたり緩めたりを繰り返し、何とかスムーズに回るようになりました。
 
三脚の脚の開き方を調整するためのプレートも、最初は固くてびくともしませんでした。
これも何度も繰り返し引っ張り出したり押し込んだりを繰り返す「慣らし」をしてようやく使えるようになったほど。
 
個体ごとに不具合の内容は違うと思いますが、「海外製品はこんなもんだ」という割り切りで、ある程度の覚悟を持って注文しないと、腹が立ってくると思います。
 
脚を反転させて収納状態の長さを抑える仕組みになってはいますが、普通に脚を閉じるだけのVelbonのULTRA LUXi Lの方が収納状態の長さは短いです。
 
これらの欠点はありますが、Bushman Gobiを搭載すると、GobiがEbenの一部に見えるほどのデザイン的な一体感、そして撮影時の安定感も素晴らしい(ULTRA LUXi Lで使っていた時は、ネジ径変換アダプタが出っ張る影響で、パノラマ雲台がぐらついていた。ワッシャーでぐらつきは抑えられたが、Ebenだとアダプタもワッシャーも不要で安定性が高い)。
 
 
▲Bushman GobiとEbenのデザイン的一体感は素晴らしい
 
コンパクトさではEbenの方が負けていますが、Gobiを使うときは、VelbonのULTRA LUXi LではなくEbenを持って行っています。