播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

第41回 殿のグルメ対談(天晴水産×茨木酒造)

本日は、「第41回 殿のグルメ対談(天晴水産×茨木酒造)」に参加してきました。
 
「殿のグルメ対談」は、姫路市とその周辺の飲食店関係者と酒蔵関係者1名ずつ、計2名のゲストを迎え、殿(食べログでは「ハイパー殿」)とゲストがお店のこだわりやお酒について対談をするイベントです。
 
グルメ対談が行われるのは、姫路城を目の前に眺められる大手前第一ビル4階にある納屋工房(なやこうぼう)。
興味のある方は、納屋工房さんのWebサイトで予定等を確認してみてください。
 
参加費は一人¥1,580です。
 
19:38
殿による注意事項の説明で対談が始まりました。
 
1人目のゲストは、天晴(あっぱれ)水産株式会社の森 一成 社長です。
 

▲森社長(右)の対談の様子
 
天晴水産さんは、播磨灘に浮かぶ家島諸島の一つ、坊勢島に本社を置いていた水産加工会社で、平成23年に姫路市の妻鹿漁港に移転し、新鮮な海鮮料理を安価で提供する「みのり家」さんを同所にオープンされました。
 
もともとは坊勢島に本社と加工設備がありましたが、その設備が老朽化していたため、妻鹿漁港に新しく加工場を作られたとのことです。
 
森社長からは、魚に関するいろいろなお話を聞くことが出来ました。
 
例えば、姫路から神戸にかけての地域ではくぎ煮で有名なイカナゴ。
そもそも、イカナゴは他の魚に食べられるだけの存在、つまり魚のエサでした。

そのイカナゴをくぎ煮にして食べる習慣はそれほど古くからあったものではなく(※)、誰かが戦略的に売り出すことに成功したものだとか。
要するに、バレンタインのチョコレートみたいなものですね。
※帰宅後に調べてみると、イカナゴのくぎ煮発祥を謳う神戸市垂水区の魚屋さんが昭和になってから始めたと言われているようです。
 
そのイカナゴですが、最近は生息場所の海底の砂がセメント材料として使われてしまい、産卵場所が減ったためイカナゴ自体の数も減少気味なのだそうです。
 
私はしらすが好きなのですが、恥ずかしながらイカナゴはしらすが大きくなったものだと思い込んでいました。
 
森社長によると、イカナゴは大きくなるとフルセと呼ばれる魚になり、しらすは大きくなるとカエリとよばれ、最終的に鰯になるそうです。
鰯も出世魚だったとは知りませんでした。
 
しらす(稚魚)は鰯(成魚)に食べられてしまうことが多く、鰯が増えるとしらすが減ってしまうという驚きの豆知識も。
 
魚についてのお話の後は、漁師さんのテリトリーについての話題に変わりました。
 
殿からは単刀直入な質問「漁師同士の仲は悪い?」に対して「良くは無いでしょうね」とのお答え。
漁をして良い範囲は厳密に決められていて、取り締まりもしっかり行われているそうです。

入会(いりあい)と呼ばれるエリアでは、自分たち以外の漁師さんも漁ができるようになっていたり、相手方と協定を結んで、自分たちが相手方の漁場で漁をする代わりに、相手にも自分たちの漁場での漁を許可するといったこともあるとのこと。
 
森社長の時代は、高校を出た子の半分くらいが漁師になっていたそうですが、今ではその割合が激減しているそうです。
そもそも許可証の数に限りがあり、漁師になろうと思っても簡単にはなれないのだとか。
 
再び魚についての話題に戻りました。
 
殿が「スーパーの魚は鮮度が低い?」と尋ねると「獲れてから2~3日は経っていて当たり前」とのこと。
「鮮度が落ちた魚は、焼くくらいしか使い道がないと思いますね」とは森社長の談。
 
個人的には、関東の方が魚にうるさいというイメージがありましたが、「魚の味に対する感覚は、関東人より関西人の方が上です。寿司ネタは関西の方が良いものが使われています」と、仕事で関東方面へもよく行かれる森社長から意外なお話も聞けました。
 
続いて、天晴水産さんが運営されている海鮮料理のお店「みのり家」さんの話題へ。
 
殿から「みのり家さんは閉まるのが早いから、昼間に仕事をしている人は食べに行けない。どうして夜は開けない?」と質問が出ましたが、社長の回答はシンプルでした。
「夜の営業を出来るスタッフがいないからです。」
 
社長によると、本当は夜の8時や9時まで開けておきたいそうですが、人がいないためやむを得ないそうです。
 
そのみのり家さんですが、常に新鮮な旬の魚を提供されているため、殿のお勧めの楽しみ方は「食べるものを決めて行くのではなく、その時に旬を迎えているものを食べること」で、社長もうなずいておられました。
 
昔の人の食生活のようですが、結局それが一番美味しく食材を味わえる食べ方なんだと思います。
 
またここでも社長から意外な情報が。
「しらすの生はアクが強いので、お勧めしません。」
 
森社長の考えは、島の漁師が食べている美味しい海鮮料理を、島外の人にもっと食べてもらうこと。
天晴水産さんの製品は、姫路周辺だけでなく名古屋や東京にも出荷されているそうで、社長の夢は東京駅前にお店をオープンすることだそうです。
「余裕が出来れば、島で一日一組限定で美味しい魚料理を出す旅館もやってみたいです」とも。
 
天晴水産さんでは、周辺の飲食店にも鮮魚を配達されているそうです。
殿によると、飲食店は美味しい魚を提供したいけれど、早朝に市場へ行くのは厳しい。天晴水産さんは美味しい魚をもっとたくさんの人に食べてもらいたい。この2つの要望が見事にマッチして成り立っているサービスだそうです。
 


店名: みのり家(みのりや)
住所: 兵庫県姫路市白浜町甲912-18 天晴水産株式会社 2階
(この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)

営業時間: 11:00~16:00(L.O.15:00)
定休日: 水曜
駐車場: あり
備考: 全面禁煙
URL: http://www.apparesuisan.co.jp/
食べログ: http://tabelog.com/hyogo/A2805/A280501/28031952/


 
20:23
本日2人目のゲスト、茨木酒造のオーナー杜氏(とうじ)、茨木幹人さんが登場。
 

▲茨木さん(右)の対談の様子
 
明石の酒造会社さんですが、茨木さんによると明石には合計で6つの酒蔵があるそうです。
その中で、日本酒だけを造っているのは茨木酒造さんと西海酒造さんだけだとか。
 
通常、酒蔵の蔵元は経営者で、酒造りは蔵人に任せます。
茨木酒造さんでは、茨木幹人さんの代になって当時の杜氏さん(しゃれのつもりではありません)が高齢で引退を希望されていたこと、茨木さん自身が酒造りをやってみたかったという理由が重なり、蔵元自らが酒造りを始めることになりました。
 
酒造りは簡単なものではありませんが、姫路周辺の酒蔵では幸運な偶然が発生していました。
灘菊酒造さん等がグルメ対談に来られたときにも話題に出ましたが、姫路やその周辺のオーナー杜氏さんがほとんど同じような年齢で、同じようなタイミングで酒造りを始めるようになったのです。

皆さん酒造りの経験が浅く、苦労されていたため、どこかの蔵にみんなで集まって酒造りの勉強をし、お互いに情報交換をしたりして切磋琢磨されたそうです。
 
ここで殿からの質問「杜氏の給料は高い?」
茨木さんからの回答は「組合から指定されます。」
 
具体的な金額は出ませんでしたが、杜氏やその下で働く三役、蔵人の給料は、すべて組合から指定されるそうです。蔵元に主導権があると思っていましたが、これは意外でした。
 
茨木さんは酒造りをすべて一人でされています。
しかも、勉強のために米作りからされている(全量ではない)というハマリっぷり。
 
田植えには「みのる産業」のポット式田植機を使われているそうです。

普通の田植機はマット状になった苗を機械が引きちぎって田んぼに植えるため、苗の根がちぎれてしまいます。
それに対し、みのる産業の田植機では、苗が一つ一つ初めから分かれているため、根を傷めないのだとか。
 
そのため、一般的な田植機で植えられた苗は、まず根を張るところから生長が始まりますが、みのる式ではいきなり苗が大きくなり始めるそうで、生長速度が違うとのこと。

酒蔵の仕事は一般的に冬期がメインですが、茨木酒造さんの場合、夏期は米作り、冬期は酒造りと一年中忙しい日々が続きます。
 
ここで再び殿から質問「酒米はなぜ食用にしない?」
茨木さん曰く「酒米は粒が大きく、透明度が低く(白い)見た目が悪いため、食用としては売られません。しかし、食べる分には全く問題ありません。」
 
話題はがらりと変わり、酒造技術研究会の話になりました。
酒蔵の方々が集まって酒造技術の向上を目指す集まりですが、ここで銘柄を隠して様々な蔵の酒を並べ、どれがどこの蔵の酒かを当てるということがあったそうです。
 
私のような素人は「蔵ごとに何か特徴があるだろうから、杜氏さんや蔵元さんなら難なく分かるだろう」と思っていましたが、茨木さんによると「自分の酒蔵の酒以外はまともに当たらない」とのことでした。
 
蔵や銘柄にこだわらず、美味しいと思ったお酒を飲めば良いということかな。
 


会社: 茨木酒造合名会社
住所: 兵庫県明石市魚住町西岡1377
(この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)

営業時間: 9:00~18:00
定休日: なし
駐車場: あり
備考: 試飲あり。蔵見学は要予約。
URL: http://rairaku.jp/
電話: 078-946-0061


 
20:58
茨木さんの対談が終わり、試飲と試食が始まりました。
 
本日試飲させて頂くのは、茨木酒造さんが作られた純米大吟醸酒。しかも、まだ製品化前の原酒。
華やかな香りではなく、何杯でも飲めるよう味の綺麗さを重視して作られたお酒だそうです。
製品化されていないため、瓶にラベルはありません。
 
原酒なのでアルコール度数が17~18%ありますが、すっきり飲める味なのでついつい量を飲んでしまいます。

香りは重視されていないということでしたが、口の中は良い香りで満たされ、鼻から抜ける香りも心地良い。
 
そのアテになる試食メニューは、天晴水産さん提供のハモとイカナゴ。
 

▲試飲・試食メニュー
 
ハモは食べたことがないので他との比較は出来ませんが、魚が好物というわけではない私でも何の抵抗もなく食べられました。きっと非常に美味しいものだと思います。その証拠に、お皿はすぐに空になってましたから。
 
イカナゴは、美味しすぎて一人で大量に食べてしまいました。
 
21:21
対談の参加者(見学者)が、ゲストに自由に質問が出来るQ&Aコーナーが始まりました。
 
天晴水産さんへの質問
質問1 これからの季節におすすめの魚は何ですか?
回答1 ハモと穴子です。穴子は一年中同じ味だと言われていますが、実際は梅雨時の穴子が美味しいです。
 
質問2 役所が発行している鮮魚店を紹介するパンフレットを見ても、魚屋の数は減っています。これに関してどう思われますか?
回答2 魚屋さんを取り巻く状況は厳しく、数が減っているのは事実です。スーパーに行けば切り身で売られているので、丸ごとのままの魚が売れることが減ってしまいました。しかし、魚屋さんに行けばその時々の良い魚を勧めることができるし、一人一人のお客さんが買う魚を見て、どんな料理に向いているか等を説明できます。本当は魚屋さんで対面販売をするのがベストだと思います。
 
質問3 漁業と林業に密接は関わりがあるような話を聞いたことがありますか?
回答3 漁協が植林事業に関わっていることがあります。海に流れてくる水は山が作っていますから、山を守ることが最終的に海を守ることにつながります。
 
茨木酒造さんへの質問
質問1
 日本酒の原酒のアルコール度数は、高くても20%ほどです。それ以上は作れないのですか?
回答1 蒸留酒では簡単にアルコール度数を上げられますが、日本酒では難しいです。ちなみに、度数が22%を越えると日本酒ではなくリキュールとして扱われるため、アルコール度数を過度に上げることは出来ません。
 
質問2 杜氏さんを使っている酒蔵の場合、蔵の味を守るためのマニュアルはあるのですか?
回答2 その蔵の水の味、蔵の構造など、それぞれの蔵がもつ特徴が酒の味を作ることになるので、大まかには同じような味になると思います。
 
質問3 茨木酒造さんのお酒が飲めるお店はどこにありますか?
回答3 私もよく知らないのです。
 
質問4 生酛(きもと)造りという製法がありますが、どのようなものですか?
回答4 説明が大変なほど複雑で手間のかかる作業です。。。とにかく、手間がかかる作り方です(笑)
 
21:50
グルメ対談が終了しました。