播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

第36回 殿のグルメ対談(百太郎 飾磨店×富久錦)

本日は、第36回 殿のグルメ対談に行ってきました。
 
グルメ対談は、食べログで2000件以上(2014年1月末現在)の口コミを投稿している「ハイパー殿」が司会進行をつとめる対談イベントで、対談に呼ばれるのは姫路市内、または近隣の飲食店の店長さんや職人さんが毎回1組、そして酒蔵の蔵元さん1組の合計2組。
 
日 時: 2014年1月27日(月) 19:30~
場 所: 納屋工房(姫路市本町68 大手前第一ビル4階)
参加費: ¥1,580
 
今回のゲストは、姫路市北条にある居酒屋「百太郎」(第28回殿のグルメ対談に出演)の支店である百太郎 飾磨店の店長、英賀さん(34歳)と、加西市にある酒蔵「純米蔵 富久錦」の会長、稲岡さん。
 
19:34
殿の挨拶と注意事項(ネットに載せる場合のプライバシー等について)でグルメ対談が始まりました。
 
19:36
まずは百太郎(ひゃくたろう) 飾磨(しかま)店の店長、英賀(あが) さんから。
 
口数が少ない方で、殿によると当初は出演を拒否されたそうですが、英賀さん同様おしゃべりが苦手な私がもし同じ立場だったら、やっぱり断ると思います、はい。
 
英賀さんが店長を務める百太郎 飾磨店は、オープンからまだ3ヶ月(2014年1月末現在)。
 
英賀さんは20代半ばまでは工場や現場仕事をされていましたが、飲食業に興味を持ち、お好み焼き屋さんで働くようになったそうです。

その後は和食や洋食(イタリアン)のお店でも働きましたが、洋食が自分に合わず、和食の道に進みたいと思うようになったとのこと。
ちょうどその時働いていたお店のオーナーと百太郎(本店)のオーナーが知り合いで、百太郎さんが人を探しているという話を聞いて百太郎(本店。当時は一店舗しかなかったので本店とは呼びませんが)で働き始めました。
 
百太郎のオーナーである山口氏は、一見その筋の人に見えるほどイカツイですが、実際は激しく叱るようなことはなく、優しさと適度な厳しさで英賀さんを育ててくれたとのこと。
 
百太郎で働き始めたときは、即戦力と見なされていたため、様々なことを必死で覚え、百太郎の味を出せるように勉強をされたそうです。
そして、百太郎本店で2年以上の経験を積み、本店の店長であり百太郎のオーナーでもある山口 氏から「自分(山口氏)の思う味を作れるようになった」と認められて百太郎の2つめの店舗である飾磨店を任されることになりました。
 
本店の時は厨房での仕事が主だったのに、いざ店長になると接客が必要になりますし、何かあっても自力で解決しないといけないので不安でいっぱいだそうです。
 
本店のお客さんも飾磨店に足を運び、喜んでくれる方もいれば、お叱りを受けることもあるようですが、厳しい意見を聞かせてもらえるのはありがたいと英賀さんはおっしゃっていました。
 
殿から「本店にはない飾磨店ならではの売りは?」と尋ねられると、英賀さんは「うーん」と考え込んでしまいました。
 
本店には無いメニューを用意したり、当たり前のようでなかなか出来ているお店が少ない「毎日おすすめ料理を変える」ということをがんばっているそうですが、この「売りがぱっと出てこない」ということが、実は百太郎さんの売りであることが後半のQ&Aコーナーで明らかになります(Q&Aコーナーの百太郎 飾磨店さんへの質問3参照)。
 
ちなみに、百太郎 飾磨店の場合、お酒をよく飲まれるお客さんの場合で客単価が¥4,000~という具合。決して高いお店ではありませんが、料理が非常に美味しいため、本店はいつも大繁盛ですし、飾磨店もオープンからしばらく経ち、徐々に知名度も上がってきているとのこと。
 
殿によると、駐車場がなく、こぢんまりしたお店で場所も分かりにくいそうですが、それが逆に「隠れ家」的な雰囲気で非常に落ち着くそうです。
 
「将来の夢は?」との問いの答えは、「もっとお店を盛り上げて、リピーターを増やしたい」とのこと。
 
殿曰く「お店の人とおしゃべりをしたお店の方が記憶に残りやすく、また行きたいと思う。」
もっとおしゃべりの腕を磨くようにという、殿なりのアドバイスなのかも知れません。
 
最後に、本日の試食メニューの紹介がありました。
盛りだくさんの内容で、手作りチーズ、肉じゃがコロッケ、天然ヒラメのお造り、牡蠣の蒸し焼きが出てくるとのこと。これは楽しみです。

店名: 百太郎 飾磨店
住所: 兵庫県姫路市飾磨区清水124 (この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)
営業時間: 17:00~23:30(L.O)
定休日: 月曜
電話: 079-233-2303
駐車場: なし(近くにコインパーキングがある)
席数: 24席 (カウンター4席、テーブル20席)(出典:食べログ)
Web: http://tabelog.com/hyogo/A2805/A280501/28039385/(食べログ)
Twitter: なし
Facebook: なし


 
▲百太郎 飾磨店の英賀さん(左)と富久錦の会長 稲岡さん(最後のQ&Aコーナーで撮影)
 
19:51
続いて加西市にある純米蔵 富久錦(ふくにしき)の会長、稲岡(いなおか)氏が登場。
稲岡氏は3回目か4回目の登場ですが、会長としての出演は今回が初めて。それまでは社長でした。
 
富久錦さんは、殿が日本酒の革命と評価する低アルコール日本酒「Fu.」(「フ」と読む)や、炭酸を注入せず、発酵だけで出来る炭酸がスパークリングワインのような味わいを出す「Bucu」(「ブク」と読む)を製造・販売されている酒蔵です。
 
これを読んで「Bucu」に興味を持たれた方もいらっしゃるでしょうが残念ながらBucuは品質管理が難しく(温度管理などせずに店頭に並べると劣化してしまう)、製造量も少ないため、一般の酒屋さんでは市販されていません。酒蔵の直営店でのみ入手できます。
 
この富久錦さんの特徴は、稲岡氏曰く「加西のものしか使わない」という点です。
 
米も水も、加西のものしか使っていません。
その地域の気候風土に合わせたお酒を造るのがベストとの考えをお持ちだからです。
 
酒蔵に井戸が2本あり、そこからくみ上げた水が酒造りに使われていますが、それぞれの井戸は深さが異なっていて、使う井戸を変えただけでお酒の味が変わるほど、水がお酒に与える影響は大きいそうです。
 
殿が「加西には他に酒蔵はある?」と尋ねると「例えば菊日本を作る三宅酒造さんがある」とのお答え。
誰も聞いたことがない名前でしたが、稲岡氏によると主に静岡方面に出荷しているため、この辺りでは名前が売れていないそうです。
 
なんでそんな事になっているのかと気になりますが、他にも例えば神戸のお酒が北海道で売れている事例もあるそうで、様々な事情で販売ルートは私たちの想像を超えているようです。
 
今は加西の酒蔵は2つだけですが、稲岡氏が知る限りでも昔は7~8軒あったそうです。
加西のマックスバリュがある場所も、昔は酒蔵だったとか。
 
加西は良い酒米が手に入りやすく、水質も良く、酒造りには適した環境だったため、酒蔵が多かったそうですが、売り上げを考えると次の代に引き継ぐのが難しいとか、今土地を売れば綺麗に清算できるといったタイミングの問題などで次々に酒蔵が減っていったようです。
 
殿が「日本酒を飲む人が減っている」と言うと「日本酒を盛り上げようとはしているけれど、空回りしている印象」とのお答え。
 
若い人向けの日本酒が売られたりしていますが、あれらは酒蔵が「若い人はこういうお酒を好むだろう」というのを考えて作った製品。つまり、押しつけ。だから売れない。
酒米の値段が高いため、商品の値段にそれが反映されてしまい、日本酒が他のお酒に比べて手を出しにくくなっているのも理由だそうです。
 
近々新ブランドを立ち上げる予定があり、それは会員制にして、年会費を支払った人(人数制限あり)だけに、季節毎に特別なお酒を送るようにするそうです。
 
会員の人数分だけお酒を作るわけには行かないので、多少は多めに作るそうですが、会員向け以外は飲食店に卸し、市販はせず、会費を支払った会員の権利はしっかり守られるようです。
 
会費制で少数の人にだけ販売するのは、お酒に対するフィードバックが欲しいからとのことでした。

直営店での販売で、ある程度はお客さんの声を知ることは出来ますが、やはり年会費を払ってでも飲みたいという熱心な日本酒ファンからの意見は、酒蔵にとっては貴重な情報源になるようです。
 
「例えばワインみたいに色のあるお酒は売れない?」と殿が聞くと「すでに他社さんがやっています」とのこと。
例えば、紫黒米を使って赤ワインのような色になった日本酒もあったそうです。
 
しかし、稲岡氏曰く「奇をてらったことをしなくても、日本酒に挑戦してみようという若い方は、正統派の日本酒を買ってくれる。」
 
さらに殿の質問は続きます。「ブランド毎に味を守っている?」との問いには、「同じ材料、同じ製法で似た味になるようにはしていた」とのことでしたが、今後は「まず味を決めて、その味になるような製法で作るようにする」とのこと。
 
グルメ対談の会場である納屋工房の入口には、稲岡氏が別の対談イベントの際にある言葉をしたためた色紙が飾られていました。
その言葉は「損得より善悪」。
 
言葉通り、損得勘定では無く、自分たちのポリシーに従って商売をされていることが分かるお話もありました。それは、酒米の売り込みについて。
 
酒米を安く売りますという売り込みが多いそうですが、前述したとおり「加西の米しか使わない」という会社の方針を守るため、すべてお断りしているそうです。
 
パッケージやラベルの印刷や箱の製造も、地元の業者さんにお願いしているほどの徹底ぶり。
そこまで地元を愛して貢献しているのに、なかなかそれが伝わらないのが残念とのことでしたが、徐々に広まっているようです。

富久錦株式会社
創業: 天保10年(1839年)
住所: 兵庫県加西市三口町1048(この住所をクリックすると、Googleマップ上で位置が表示されます)
電話: 0790-48-2111
FAX: 0790-48-2288
資本金: 1,000万円
代表者: 稲岡 幸一郎

 
20:30
稲岡氏のインタビューが終了し、試食・試飲に移ります。
 
まずはテーブルに肉じゃがコロッケ、手作りチーズとクラッカーが並べられ、続いてヒラメの解体ショーが始まりました。
 
 
▲ヒラメを捌く様子を見物する様子(テーブルの上には手前から肉じゃがコロッケ、手作りチーズとクラッカー(カラメルソースバージョン)、ヒラメの造りを載せる皿、肉じゃがコロッケ、手作りチーズとクラッカー(塩昆布バージョン)が並んでいる)
 
ヒラメを捌く様子をパノラマ撮影してみました(RicohのThetaで撮影)

https://shimiken1206.sakura.ne.jp/panorama/gourmet20140127/virtualtour.html
 
大きなヒラメが見事な手さばきで骨だけになっていきます。
 
私は生の魚にあまり興味が無いのですが、新鮮なものだけは食べるので、まだ若干息のあるこのヒラメなら絶対美味しいはず。
 
出来上がったお造りはこちら。
ゴリゴリと言っても良いほどの歯ごたえで、私が苦手な魚の匂いもまったくせず、味も濃くて美味しい。
私のような魚嫌いの人は、是非新鮮な良いお魚を食べられるお店に行きましょう。
 
 
▲ヒラメのお造り
 
さらに、対談の時には紹介されませんでしたが、巻き寿司も登場。
何が入っているのか私の舌では分かりませんが、いろいろな具材が入っていてメチャメチャ美味しい。
 
 
▲百太郎 飾磨店の巻き寿司
 
土鍋で蒸し焼きにした牡蠣も出てきました。私は牡蠣の香りが苦手なので残念ながら食べられませんでしたが、他の参加者はクリーミーと大絶賛。
 
 
▲蒸し牡蠣
 
これらの絶品メニューに合わせて頂くお酒は、以下の三品。
左から生の原酒と、同じお酒に火入れをして1年置いたものと、Fu.です。
 
 
▲富久錦さんの日本酒3種
 
肉じゃがコロッケは冷めていても美味しいし、手作りチーズはクラッカーに載せてそのまま食べても美味しいのですが、カラメルソースをかけるとチーズケーキのような風味で最高。
塩昆布とチーズの組み合わせも不思議な感じですが、さっぱりしていて美味しい。
 
試食メニューが盛りだくさんだったので、お腹いっぱいです。
 
21:30
素晴らしい試食と試飲が終了し、参加者が対談ゲストに質問をするQ&Aコーナーが始まりました。
 
百太郎 飾磨店さんへの質問
 
質問1 本店の店長、山口さんと飾磨店の英賀さんは、目の動かし方や話し方、仕草がよく似ていますが、他にどのような共通点がありますか?
回答1 美味しいかそうでないか、味の基準も同じです。
殿のコメント「師匠と弟子が似ているのは素晴らしいこと。」
 
質問2 山口さんと意見が合わなかったことはありますか?
回答2 自分が満足したできばえの料理を見てもらうと「こうした方がええんちゃう?」とアドバイスを受け、その通りにするともっと美味しくなります。やはり師匠の方がすごい。喧嘩をしたことはありません。
 
質問3 飾磨店で「是非これを食べて欲しい」というものはありませんか?
回答3 チーズとアボカドのカルパッチョや、生魚、肉料理も美味しいです。特にこれが一番というのは選べません。
本店の店長 山口さんのコメント「特にこれとは言うのはありませんが、魚の煮付けには自信がありますし、(あれば)鯖の大名巻きもお勧めです。ただ、百太郎は幅広い客層のお客さんに喜んでもらえるように、肉も魚も洋食も用意しています。(補足:しかもどれも美味しい)だから、特にこれというお勧めはないんです。」
 
質問4 師匠の考え方や師匠から受けたアドバイスで、特に心に残っているものは?
回答4 「お客さんに喜んで帰ってもらいたい」という言葉と、「食べて優しくなれる味を目指す」という言葉です。
 
富久錦さんへの質問
 
質問1 近々新ブランドを立ち上げられるとのことですが、ブランド化にあたってのアドバイスはありますか?
回答1 そのブランドによって伝えたいメッセージをしっかり決めることが大切。それが決まれば、どうやってそれを伝えていくかという方法論になります。時間はかかるかもしれませんが、従業員にも考え方を浸透させていかないといけません。
 
質問2 今日の試飲で頂いたお酒は、飲んだときの味は違っても、後味あるいは根幹となる味が似ています。何かこだわりがあるのですか?
回答2 米と水にはこだわっています。ところで、米にも色々あって、山田錦のお酒はお肉には合いません。お肉に負けます。味がしっかりしたキヌヒカリで作ったお酒の方が良いと思います。
 
質問3 酒造好適米だけではなく、キヌヒカリも使われるのは何故ですか?
回答3 実は昔はそれほどこだわりがあったわけではなく、農協さんのすすめでキヌヒカリを使うようになりました。それで作ったお酒が肉料理に合うことが分かったということで、簡単に言うと結果論ということです。
 
質問4 近年、山田錦が品不足になっている理由は何ですか?
回答4 以前は兵庫県内でしか作っていなかった山田錦が、徐々に全国に広まっていきました。そこで、兵庫産の山田錦は粒の大きさを売りにしようと考えました。米粒が大きければ削っても割れにくいし、酒造りもしやすいからです。しかし、それが上手くいかず、粒の大きい米しか残さないフルイからことごとく米が落ちてしまい、等級が高い山田錦が品不足になってしまったというわけです。山田錦の栽培は非常に難しく、他の品種から乗り換えても、売り物になる米が作れるまでに3年はかかると言われています。
 
質問5 日本酒を飲んでいると、周囲から「体に悪い」などと言われることが増えました。何か良い切り返しはありませんか?
回答5 実は、一日に1~2合程度なら体に良いのです。長生きされる方の中には、毎日お酒を飲んでいる人も多い。体に悪い影響を与えるような飲み方をしなければ大丈夫。
 
22:15
グルメ対談が終了しました。