播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

ガス缶も液体燃料も使える:MSR Whisperlite Universal

私の山歩きの楽しみとしてもっとも大切なのは、景色の良い場所で食事をすることです。
 
といっても、いっさい料理が出来ないので、レトルトやフリーズドライの食品や缶詰、インスタントラーメン等を山では食べていますが、稀に多少の火加減の調節が要求される(焦がさないように水気だけ飛ばす)インスタント食品を食べることもあります。
 
そんなときは、ジェットボイル(拙ブログ:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2011/08/16/165503)やMSRのReactor(拙ブログ:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2008/01/06/150844)のような単なる湯沸かしマシンでは、水気を飛ばせはしますが、食材が焦げ付く(口が細いので水気を飛ばしにくく、火力は強い)ことがあり、役に立ちません。
 
火力調節が容易で、調理するモノに応じたクッカー(水気を飛ばしたい食品の場合は口が大きいクッカーやフライパン)が使えるガスストーブが便利。というわけで、MSRのWind Pro(拙ブログ:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2007/05/05/072401)を持っていました。
 
また、パックご飯を温めるとき等、長時間お湯を沸かし続ける場合や、寒さでガスストーブの火力が下がる時期には、燃料コストが安く、寒さに強いガソリンストーブが便利。というわけで、MSRのDragonfly(拙ブログ:https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2008/12/21/105210)も持っていました。
 
これら2種類のMSR製ストーブの置き換えが出来る便利な製品がMSRから出ていたので、2台をそれぞれ知り合いに譲り、今回紹介するストーブを購入。
 
 
▲パッケージ
 
 
 
 
▲パッケージ内容一式(左上から時計回りにストーブ本体、ガス缶倒置用台座、風防(アルミ板)、スタッフサックと小物類、液体燃料用ポンプ、説明書)
 
製品名: WhisperLite Universal(ウィスパーライト・ユニバーサル)
メーカー: Mountain Safety Research, Inc.(アメリカ合衆国)
最小重量: 326g
パッキング重量: 549g
燃焼時間: ホワイトガソリン600mlで約110分、灯油600mlで約155分、純正ガス缶(227g)で約75分
沸騰時間: 水1リットルの沸騰までにかかる時間がホワイトガソリンで3.5分、灯油で4.4分、ガス缶で3.75分
燃料使用量: ホワイトガソリン100mlで水4.4リットル、灯油100mlで水5.3リットル、227gガス缶で15リットルの水を沸騰可能
生産国: アメリカ合衆国
定価: $139.95 USD
購入価格: 失念
購入先: ネットオークション
以上、数値はすべてカタログ値です。
 
メーカー公式動画(全編英語
※Youtubeの機能で日本語字幕を表示出来ますが、自動書き起こし・自動翻訳なので、意味不明な文章になっています。
 
見た目はWhisperlite Internationalとほとんど同じです(私のWhisperlite Internationalのゴトクは棒を曲げたもの(第1世代)でしたが、最近のモノ(第2世代)は写真のような金属板)。ガソリン使用時の使い方もInternationalと全く同じです。
 
名前の通り(whisperは「ささやく」の意)、静かに燃えてくれます。
 
 
▲ストーブ本体
 
Internationalと違うのは、ガス缶が使えるようになっている点。
 
ガスストーブとガソリンストーブの2台を1台に置き換えられる製品と書きましたが、それは燃料取り付け部とノズルがガス缶用とガソリン・灯油(液体燃料)用の2種類使用できるから。
 
購入時はガス缶用のアダプタが付いていましたが、かなりきつく締め付けられていて、専用のレンチを使っても外すのに苦労しました。付属のレンチは薄いので、素手で握ると薄い断面が皮膚に食い込んで痛いんです。
 
 
▲ホースの先端の部品を付け替えることでガス缶と燃料ポンプの両方に対応(中央に横向きで置いてあるのが専用レンチ)左がガス缶用、右は液体燃料用アダプタ。
 
 
▲ガス缶用のアダプタ(火力調節つまみが付いている)
 
ただし、アダプタを付け替えるだけではガスと液体燃料を使い分けることは出来ません。
燃料噴出口(ノズル)の交換も必要です。
 
購入状態ではガス缶用のノズルが付いているので、ガソリンを使う場合は交換しないといけません。
まずはプレヒート用燃料の受け皿をねじって外します。続いて、燃料パイプの先端にある金色のノズルを専用工具で外し、ガソリン用のノズルを代わりに取り付けます(クリーニング用のパーツがノズル内にあるので、紛失したり針を曲げないように要注意)。
 
 
▲ノズル交換時の分解の様子
 
ノズルは3種類付属しています。
 
 
▲3種類のノズル
 
ノズルには2文字の刻印があり、それぞれ「UC」「UG」「UK」となっています。
これらの意味ですが、先頭の「U」はUniversalの頭文字、2文字目が燃料の種類を表しており、「C」はガス缶(Canister gas)、「G」はガソリン(Gasoline)、「K」は灯油(Kerosene)です。
 
ガソリンや灯油利用時の使い方はWhisperlite Internationalと変わらないので、ここでは省略します。
 
2016/11/24追記
Whisperlite Universalの私なりの操作方法を以下のURLで紹介しています。興味のある方はどうぞ。
追記ここまで
 
 
 
 
▲液体燃料利用時はWhisperlite Internationalと同じ
 
ガス缶利用時は、缶の置き方が2通りあります。
1つは、缶の底が地面に接する通常の置き方。もう一つは、缶の頭に台座を付けて、上下逆さに置く方法。
 
通常の置き方をすれば、ガス缶の中で液体のガスは蒸発し、気化したガスがホースを通って燃焼部へ届きます。

しかし、低温時は気化熱が確保できないためガスが蒸発しづらくなり、燃焼部へ送られるガスの量が減ってしまいます。その結果、火力が低下するわけです。
 
 
▲ガス缶の置き方(通常)(注:MSR純正ガス缶が手に入らないので、他社製品を接続しています。このような使い方は推奨されていません。)
 
その対策として、上下を逆さまにする方法が考え出されました。
逆さにすると、液体のままのガスが燃焼部へ送られますが、ガスが通るパイプは曲がりくねり、燃焼部の炎が当たる位置を通ってノズルにつながっているため、そこで十分に加熱されて気化し、ノズルから気化したガスが噴き出すことになります。そのため、気温に関係無く高い火力を生み出せます。
 
 
▲ガス缶の置き方(倒置)(注:MSR純正ガス缶が手に入らないので、他社製品を接続しています。このような使い方は推奨されていません。)
 
 
 
 
▲倒置用の台座をガス缶用アダプタに取り付けた様子
 
常に倒置で使えば良さそうですが、これには火力が調節しづらいという欠点があります。

ガス缶の口にはまっているアダプタに火力調節つまみがありますが、ここで火力を絞っても、つまみと燃焼部の間のホース内に液化ガスが残っている間は強い火力が続くのです。
 
消火しようと思っても、つまみを閉めてから実際に火が消えるまでに時差があります。
要するに、液体燃料使用時と同様の問題があるわけです。
 
気温やガスの残量、火力調整が必要かどうかなど、その時々の状況に応じてガス缶の置き方を適宜使い分ける必要があります。
 
ストーブ一式は、燃料ボトル(とポンプ)やガス缶を除いて一式すべてを付属のスタッフサックに収納出来ます。
購入当初、液体燃料用のアダプタやスペアのOリングが付属するはずなのにパッケージ内に見つからず、あわてました。しかし、よくよく調べると、このスタッフサック内のポケットに小物類は入っていました。
 
 
▲専用スタッフサック内にジッパー付きポケットがあり、その中に専用レンチや使用していないアダプタ、ノズルなどを入れておける
 
かさばりますが、状況に応じて最適な燃料を選べて(私はガス缶かホワイトガソリンしか使いませんが)、好きなクッカーが使用できる汎用性が素晴らしい製品だと思います。
 
(注)私が登るのは、高くてもせいぜい1,000m級の兵庫県内または近隣の山のみで、99%が日帰りです。長期の縦走や高地、極寒地で使用する際の使い心地、性能についてはまったく分かりませんので、あらかじめご了承下さい。