播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

兵庫県市川町の鶴居城山(433m)(南コース~北コース)

姫路方面から国道312号線を北上し、市川町に入ってしばらくすると、左前方に山頂が不自然に平坦で、木が数本だけ生えた山が目に付きます。
 
城跡だろうなとは思っていましたが、地形図を見ても城跡の記号がありません。
 
あれだけ目立つ山で、木がほとんどない山頂なら景色は良いはずだと思っていつものようにGoogle検索をしてみると、鶴居城という山城の跡だと分かりました。
しかも、近年になって登山道もしっかり整備された様子。
 
ということで、前から気になっていたあの山に登ることにしました。
 
この山にあったお城については、「都道府県別 日本の中世城館調査報告書集成 第15巻」には、「162 稲荷山城(神埼郡市川町鶴居)」として紹介されています。
 
【城史】『播磨鑑』には「城主は永良則縄、広瀬遠江守師範の子也」とあるに対し『日本城郭全集』には「城主は永良近江守雅親で広瀬孫四郎親茂の子、宍粟郡長水城主の末で、永禄3年(1560)10月13日卒した」とある。『神埼郡史』にはこの両方の記載を合せて「城主は赤松氏幕下永良則縄、広瀬遠江守師範の子遠江守雅親で甘地村谷城を兼有していた。広瀬氏はまた宍粟郡長水城主であったが移封されてこの地に来た。本城は又一名鶴居城とも呼び、永禄3年10月雅親卒して後絶えた」とある。
出典:都道府県別 日本の中世城館調査報告書集成 第15巻 P223
   兵庫県教育委員会・和歌山県教育委員会編 2003年4月30日発行 ISBN4-88721-446-4
 
登山口は地形図に記載されている墓地だと分かっていたので、Googleマップでルート検索をしようとすると、Googleマップでは集落内の道が表示されません。
 
分からなければ地元の方に聞けばいいやと考え、とりあえず出かけることにしました。
 
 
▲対応する地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図「寺前」
 
9:30
姫路市街の自宅を車で出発。
 
カーナビで登山口周辺を表示すると、目指す墓地周辺の道路もしっかり表示され、墓地を目的地にするとしっかりルート検索をしてくれました。
 
国道312号線を北上し、ナビに従って墓地へ向かいましたが、鶴居の集落内は道が狭い。軽四でも1回で曲がれないようなところへ誘導されましたが、無事に墓地にたどり着きました。
 
登山口への行き方は文章で説明するのが不可能なので、この山に登りたい方は、カーナビや地形図の力を借りたり、地元の方に尋ねるなど、どうにかしてたどり着いて下さい。
 
姫路市街から登山口までの道順をルートラボで作成してみました(私が通ったルートとは違います)
 
 
Googleマップの地図画面では墓地は分かりませんが、航空写真に切り替えると集落内の道や墓地がよく分かります。
 
10:30
登山口となる墓地に到着(地図中「P」)。
新しい立派な「鶴居城山ハイキングコース」の看板が立っていました。
 
 
▲登山者用駐車場入口(右上に山頂が写っている)
 
靴を履き替えたり、GPS受信機の衛星捕捉を待ったり、必要な準備を行います。
 
10:39
出発。
 
墓地の奥(西)へ入っていくと、手作りの木製「城山登山道入口」プレートが付けられた防獣ゲートに出会います(地図中南側の「防獣ゲート」)。
 
このゲートはおもりを使って自動的に閉まるように出来ているため、ヒモや針金をほどいたりする必要が無く、楽に通過できます。
 
 
▲防獣ゲート
 
尾根に乗るまでは丸太階段がありましたが、尾根に出てしまえば、後は気持ちよく歩ける雑木尾根です。
普通は手すり代わりにトラロープが張られていることが多いですが、ここでは鎖が張られていました。
 
 
▲鎖が張られた登山道の様子
 
(鶴居城山の)山頂までの残り距離を示すプレートが100mごとに設置されているため、「いつになったら山頂に着くんだ」等と考える必要はありません。
 
ありがたいことに、この登山道は振り返ると展望が得られるので、息が上がったら立ち止まって振り返り、景色を見ながら休憩できます。
 
 
▲振り返ると景色を楽しめる
 
285.6m三角点ピークの手前では見上げるような急斜面もありますが、総じて歩きやすい登山道です。
 
11:00
285.6m四等三角点ピークに到着(地図中「点名:鶴居」)。
 
ベンチが置かれ、(今までの登山道で見たのと同じ景色ですが)展望も楽しめる場所です。
暑くて汗だくだったので、ここで上着を脱ぎました。
 
 
▲三角点ピークの様子
 
三角点ピークから先では、左側に七種山塊を大きく見ることが出来ます。
 
 
▲登山道上の展望がよい場所から見た西方面の展望
 
標高350m付近で登山道は尾根の中央から一旦離れて東へ振りますが、すぐに折り返して西へ尾根を横断します。
 
尾根の西側に道が回った頃から、右側の尾根上に削平地が現れます。
つまり、この付近より上が城の縄張りだったようです。
 
 
▲山頂まで200mのプレートがある付近から削平地が現れる
 
最初に出会う削平地は数十メートルの長さがあるものでしたが、ユンボで切り開かれた太い遊歩道が右下へ分岐する場所(地図中「新道分岐」)より後に出会う削平地はいずれも小規模。
 
 
▲分岐の様子
 
小さな曲輪が何段も細い尾根に並んでおり、分岐のすぐ上にある少しくぼんだ場所(堀切?土塁?)の上には石積みが残っていました。
 
 
▲不自然な地形に立って見上げると石積みがあった
 
この石積みのある付近から、左側に青い鹿よけネットが設置されているのに出会います。
登山道は数多く並ぶ曲輪跡を縫うようにつけられ、左へ行ったり右へいったり。
 
 
▲小さな削平地が何段もある
 
山頂のすぐ手前でも、右上に石積みが残っているのが見られました。
 
 
▲登山道沿いにも残る石積み
 
登山道から右へ少し外れた所にブルーシートが張られていましたが、トイレでしょうか。
 
11:27
ブルーシートのある場所のすぐ上が山頂です。
お正月なので、日の丸が掲揚されていました。
 
 
▲鶴居城山山頂の様子
 
360度の大展望ですが、山頂が広いため、一カ所に立って全方位を眺めることは出来ません。
あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら、しばらくの間景色を楽しみ、汗だくの体を冷ましました。
 
山頂は本丸跡でしょうか。
南北に細長く、展望の良い南側はテーブルなどがありますが、北は植物が伐採されただけの状態。
 
北側は鹿の糞だらけでしたが、鹿の糞に混じって、土師器の破片のようなモノもありました。
 
ここから大中山(662.3m)へ行くための道も付けられているようで、道標が立っています。
その道標の場所から北を見下ろすと、削平地が何段か北側にも作られているのが見えます。
 
景色を楽しんでいると、単独の男性ハイカーが登ってこられました。
地元の方で、大晦日に掲揚した日の丸を回収するために来られたとのこと。
 
昔はこの山頂を掘ると米が出てきたそうです。
お城に兵糧として蓄えられていたものでしょうか。
 
登ってくる時に見た新しい道のことも聞きましたが、登山口からそう離れていない場所に下りられるとのこと。
 
他にも、東側の飯盛山に日の丸が掲げられたので対抗してこちらも立てたとか、亀が壺に行くのは市川町側から林道を車で進んで林道終点から歩けば簡単だとか、亀が壺の上は炭焼き窯がたくさんあって、昔は炭焼きに通っている人がいた等々、いろんなお話を伺いました。
 
その後、山頂のテーブルに座って昼食。

本日のメニューはいなばの缶詰「かつおたけのこ」とアマノフーズのフリーズドライ「豚汁」をおかずに、アルファ米の白飯を食べるという、私にしては珍しい和食。
 
ご飯が多く(260g)、おかずが足りなくなったので「おとなのふりかけ」でご飯を美味しく最後まで頂きました。
 
 
▲本日の昼食
 
南側の展望を見ながらご飯を楽しんでいたのですが、後ろを見ると男性ハイカーの姿がありません。国旗は片付いていますが、荷物はそのまま。
 
国旗がなくなって展望がよくなったので、パノラマを撮ることにしました。
 
鶴居城山山頂で撮影した全天球パノラマ(撮影日:2014年1月5日)
 
13:00
パノラマ撮影を終えて機材の片付けも完了。
 
山頂に1時間半もいたことになりますが、私の山歩きは展望と食事、パノラマ撮影が目的なので、これが私にとっては普通の時間の過ごし方です。
 
山頂に来て景色を見てすぐ下山するハイカーさんをよく見かけますが、(いろんな事情があるんでしょうが)もったいないなぁと思ってしまいます。
 
さて、下山開始と思ったら、姿を消していた男性ハイカーがどこからともなく現れ、同時に賑やかな家族連れのハイカーが登ってきました。
 
家族連れに山頂を譲るように、私と男性ハイカーは一緒に下山を開始。
 
山頂直下のブルーシートの向こうに道があるように見えたので男性ハイカーに尋ねると、「石積みがあるだけで行き止まり」との回答。石積みを見てみたかったので、男性ハイカーと別れて私はブルーシートの先の道へ入ってみました。
 
そこは本丸跡のすぐ下にあたる東側斜面。犬走りのような道で、ある程度の長さに渡って石積みが残っています。
 
 
▲犬走りと石積み
 
登山道に戻り、新道分岐を目指します。
 
13:10
新道分岐まで戻ってきました。
ここからユンボで切り開かれた新しい遊歩道を下ります。
 
 
▲ユンボで作られた道の様子
 
写真では歩きやすそうに見えますが、実際は削られた尖った小石が散乱していて歩きにくい。斜度はゆるいんですが。
 
しかし、この遊歩道は周囲の雰囲気に変化があって、飽きずに歩けます。
前半は上の写真のような道ですが、標高230+mのなだらかな尾根上は下の写真のような明るい道。
 
 
▲明るい尾根道
 
尾根から南向きに下る区間は、路面が砂地になり、目の前の展望が開けて気分良く歩けます。
 
 
▲展望の良い区間の様子
 
等高線の間隔が広がる標高100~150m付近は植林のなかです。
 
 
▲植林の中の様子
 
13:34
地形図にない林道の終点に出てきました(地図中「林道終点」)。

林道を東へ進むと防獣ゲートがあり(地図中北側の「防獣ゲート」)、それを抜けて細い道を下ると車道に出てきます(地形図126m標高点)。
 
13:41
そこには、登山口の墓地にあったのと同じハイキングコースの看板が立っていました。
 
 
▲下山地点の様子
 
車を置くためのスペースはほとんどないので、こちらから登る場合でも、墓地に車を置くことをお勧めします。
 
集落の中を南へ進み、駐車場へ戻りました。
 
13:50
駐車場に到着。
 
私は下山口の畑で作業をされていた地元の方と少しおしゃべりをしたため、下山口から駐車場まで9分かかっていますが、実際はもっと短い時間で戻れます。
 
14:55
自宅に到着。