播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

小型軽量パノラマ雲台:Bushman Gobi

注)今回は360度パノラマ撮影機材の記事です。興味のある方は少ないと思いますが、他にネタが無いので記事にしました。
 
山歩きの際や観光地を訪れる際には、360度パノラマを撮ってこのブログ等で公開していますが、パノラマ撮影用雲台はかさばるし重い。
 
そもそもパノラマ撮影になぜ専用雲台が必要なのかは、https://dfm92431.hatenablog.jp/entry/2009/01/24/101110(←クリック)をご覧ください。
 
360度パノラマ撮影という趣味のためなら、山歩きの時の荷物の重量が多少増えても仕方が無いという考えでしたが、それを転換するきっかけになったのは、フランスのパノラマ作成ソフトメーカーからのダイレクトメール(電子メール)。
 
その宣伝メールに紹介されていたのは、雲台部分のみ(回転台含む)で320gという軽さを誇るパノラマ雲台「Gobi」でした。
 
 
▲パッケージ内容(左端のポーチに右側のパーツがすべて収まる)
 
製品名: Gobi
メーカー: Bushman Panoramic(チェコ、フランス)
重量: 320g(カタログ値)
耐荷重: 1.9kg(カタログ値)
材質: アルミ合金
定価: 164.46ユーロ(VAT抜き)、199ユーロ(VAT込み)
購入価格: 166.39ユーロ(定価より微妙に高い理由は分かりません)
購入先: Kolor Store(フランス)
※VATは日本で言うところの消費税のこと。日本から買えば不要。
製品紹介ページ: http://bushman-panoramic.com/panoramic-heads/gobi.php (英語)
 
フランスから航空便で届いた箱は小さくて、「中身は入っているのか?」と思うほどの軽さには驚かされました。
 
止水ジッパーで開閉する専用ポーチが付属していて、パノラマ雲台一式がその中に収まります。
 
Gobiの構成部品は、いずれも見た目が華奢。
カメラを付けたらたわんだり、カメラを付けたまま乱暴に扱うとレールが曲がるんじゃないかと心配になってしまいます。
 
 
▲下部レール(右)と垂直アーム(左)
 
下部レールの端に円形の溝がありますが、これはGobiの売りの一つ。

パノラマ内の三脚を消すために、三脚がなるべく映らないようにして地面を撮影しますが、そのためには垂直アームを180度反転させる必要があります。
その反転を、NodalNinja製品のように別パーツを追加すること無く実現できるようになっています。
 
下の写真の通り、垂直アームを固定するネジを緩めて下部レールの端までスライドさせ、上の写真にある丸い溝に沿って垂直アームを180度回転させれば、三脚消し用画像が撮影できるようになります。
 
 
▲底面撮影時の様子
 
下部のローテータ(回転台)は、1周で12回クリックストップがかかる「QuickClick12」というものが付属していました。
Kolor Storeで購入したときは選択肢がありませんでしたが、メーカーサイトを見ると、クリックストップの回数を選べるようです。
 
安価なパノラマ雲台ですが、下部レールにはしっかり水準器が付いていますし、全体的な仕上げも丁寧で質感は良好。
 
嬉しいのは、回転軸に目印となる十字線が入っていること。
垂直アームの位置を調整する際に、レンズの中心がこの十字と重なるように位置決めをすれば良いので、楽です。
 
Nodal Ninja製のM1-Sでは、回転軸を示すマーキングがない(下部レール全体をスライドさせる仕組みなので、レール上に回転軸を示すマークを付けられない)ため、垂直アームの位置を決める作業が面倒でした。
 
 
▲Gobiの下部ローテータ(QuickClick12)と下部レール
 
360度÷12回=30度なので、60度ごとに周囲を撮影する一般的な全球パノラマ撮影方法であれば、クリックストップ2回分ずつ回せば良いことになります。
 
写真では赤いつまみの大きなネジが2つ写っていますが、左のネジはクリックストップの有効/無効を切り替えるもので、緩めるとスムーズにぐるぐる回り、締め込むとクリック感を感じるようになります。
 
右のネジはローテータの固定用で、締め込むとローテータがしっかり固定されて一切回らなくなります。
下部ローテータの三脚との連結用ネジ穴は太ネジタイプ。
私は太ネジ→細ネジ変換アダプタを使っています(Gobiには付属していませんでした)。
 
 
▲下部ローテータ底面(太ネジを細ネジに変換するアダプタをねじ込んでいます)
 
下部レールと垂直アームの連結時、毎回同じ位置に垂直アームを立てられるように、ストッパーが付属しています。
 
 
▲下部レールに取り付けたストッパー
 
ストッパーは片方の端が直線、もう一方が曲線になっています。

垂直アームの基部は直線なので、直線の方の端を垂直アームに接するように取り付けようとしましたが、そうするとストッパーのネジと垂直アーム固定用のネジが干渉してしまうため、写真のように曲線の方が垂直アームに当たるようにしています。
(メーカーサイトの動画を見てもそうなっているので、これが正しい取り付け方向のようです。)
 
上部ローテータは、15度ずつ目盛りが刻印され、15度毎にクリックストップがかかるようになっています。
 
 
▲上部ローテータと上部レール
 
回転は非常にスムーズで良いのですが、クリックストップはかなり弱め。
15度単位のクリックストップが不要な場合は、上部ローテータ内部のディスクを裏返すことで、クリック無しにも出来ます。
 
 
▲上部ローテータ内のディスク(15度毎にクリックがかかるようにくぼみがある。裏面は円形の溝があるだけなので、ディスクを裏返せばクリックストップがかからなくなる)
 
カメラとGobiをつなぐためのクイックシューは、楕円形のシンプルなもの。
手回しで締め付けられるように大きなつまみが付いているので、取り付け/取り外しとも容易です。
 
クイックシューは、重みでカメラが回ってしまわないように、滑り止めとしてゴムが貼られています。
しかし、フランジが付いているなど、その他の回転/ねじれ対策はありません。
 
 
▲手で容易に締め付けが出来るクイックシュー
 
クイックシューの取り付け位置を保つためのストッパーは、曲線部分がクイックシューの曲線部分にフィットするように取り付けが可能です。
 
 
▲クイックシューを上部レールに取り付けた様子
 
これらのパーツを組み上げると、以下のようになります。
 
 
 
▲組み立てて三脚に載せた状態(前)
 
 
▲組み立てて三脚に載せた状態(後ろ)
 
組み立てた状態で360度オブジェクトパノラマを撮影してみました。
 
 
▲オブジェクトパノラマ(ドラッグで回転を止めたり、自由に角度を選択出来ます。回転が止まると、3秒後に再び自動回転が始まります)
 
Gobiを三脚に連結するために、私は以下のような構成にしています。
 
 
▲三脚からGobiまでの部品の構成
 
Gobiの下部ローテータの下にアルカスイス互換クイックシューを取り付け、アルカスイス互換の自由雲台で挟み込みます。
自由雲台はVelbonの三脚に固定。
 
水平な場所でしか撮影しないという場合や、どんな傾きも三脚の脚の長さだけで調整出来るという方は、自由雲台を使わずGobiを直接三脚にねじ込めば良いですが、三脚の脚だけで傾きの調整をするのは難しいので、自由雲台を間に入れています。
 
私の場合、Gobiにねじ込んだ太ネジ→細ネジアダプタが少し出っ張ってしまい、出っ張ったアダプタの縁しか接地部分がなく、ぐらつくことが分かったため、その揺れを防ぐために大きめのワッシャーをクイックシューとGobiの間にかませています。
 
コンパクトで軽量なGobiですが、カメラ(Nikon D7100)に純正のワイヤレスリモコン受信機を挿したまま、天地の撮影が問題なく出来ます(カメラの向きを変えるとき、出っ張った受信機がパノラマ雲台と干渉しない)。
 
普段愛用しているM1-Sと比較してどれほど軽くなるのかを私の環境で比較してみました。
 
 
▲重量の比較
 
上段のカメラとレンズ、ワイヤレスシャッターはM1-SでもGobiでも使用する共通の構成。
下段はそれぞれのシステムで異なる部品です。
 
現状で単純にモノだけで比較すると1,518g、約1.5kgもGobiを使うと軽量化できます(※)。
※M1-Sは雲台が重いので、耐荷重が大きい替わりに重量もある三脚を使い、Gobiは軽いため、三脚も小型軽量のものを使っています。この三脚の重量の差も大きいです。
 
軽量化も嬉しいですが、荷物の体積が小さくなるのもありがたい。
Gobiの収納サイズは、下の写真の通り非常にコンパクト。

収納時、下部レールと回転台、上部レールと垂直アームという2つのグループを重ねることになりますが、そのままだと接触面が傷つきそうなので、細長く切ったプチプチを間にはさむことにしました。
 
 
▲Gobiの大きさ(サイズ比較のためにiPhone4Sを並べています)
 
 
▲Gobiの収納サイズ(サイズ比較のためにiPhone4Sを並べています)
 
 
▲参考までにGobiとM1-S(レール類のみ。下部ローテータ無し。)のサイズ比較。M1-SはレールだけでGobi一式よりもずっと大きい。
 
とにかく小型軽量で可搬性は非常に高いGobiですが、操作性はいまいち。
小型化のために、ネジのつまみが小さく薄く作られているため、力を入れにくいのです。

また、組立の際はスムーズに入るネジですが、使用後にばらそうと思うと、なかなかネジが緩みません。
カメラを付けて負荷がかかり、アームがたわんだりすると、ネジがネジ溝に食い込んでしまうのでしょうか。
 
底面撮影時、垂直アームを下部レールの端までスライドさせるときも、スムーズには動きません。
ガリガリという感触を感じながらの操作になります。
 
初めて使用する際、下部レールと上部レールの位置決めをする必要がありますが、その際も微調整が難しい。
カメラが付いて負荷がかかった状態だと、各部がスムーズに動いてくれないのです。
 
初めてGobiを使うときや、カメラ、レンズを買い換えたときにしか行わない作業ですが、パノラマ撮影の精度を決める大切な作業なので、この作業がしやすいかどうかは大切だと思います。
 
まだ数回しか使用していませんが、M1-Sと比べても精度については特に問題なさそうです。
 
多少の欠点はありますが、私にとっては重量と体積の大幅な削減が出来るGobiは、現時点では山歩きに最適なパノラマ撮影用雲台です。