播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

コットン球とワセリンで作る自作着火剤

山行の際、私は点火具としてアセチレンバーナーなどの点火に使う「ロックライター」を使用しています。

ピストル型なので、チャッカマンと同様に発火部と手の間に距離があり、揮発性の高いガソリンストーブの燃料への点火も安心(気化した燃料に火がついて予想以上の広範囲に熱風が吹き、手指の毛がちりぢりになることがあるので)。
 
100円ライターは発火部と手が近くて危ないし、オイルライターはオイルが蒸発し、使おうと思ったときに火がつかないことがあります(ちゃんと点検してればいいんですが)。
 
そんなわけで、火花しか出ませんが頑丈で安全、燃料切れの心配が無い(火花を出すためのフリントに寿命はありますが、フリントは小さいので予備を持っていても邪魔にならない。むしろ、小さすぎて紛失してしまう。)安全なロックライターを使っています。
 
ホワイトガソリンやガスストーブは火花で簡単に点火できますが、冬期にアルコールストーブを使用する場合や、エスビットの固形燃料は、火花では点火できません。

防水マッチが役に立ちそうですが、風に弱いし、案外短時間で燃え尽きてしまうので、炎の持続時間が長く、たとえ消えても再度点火できて携帯に便利な着火剤はないかな、と探していました。
 
海外のアウトドアショップのWebサイトを見ていると、そういう着火剤が色々と売られているのですが、ある本を読み、簡単に自作できることが分かったので、作ってみることにしました。
 
手作り着火剤について言及されていたのは、この本です。
 
書名:Build the Perfect Survival Kit
著者:John D. McCann。
出版社:krause publications
価格:$ 12.99 U.S.
ISBN 13:978-0-87349-967-5
ISBN 10:0-87349-967-0
 
愛読させていただいていた「装備部屋」というブログ(残念ながら2009年いっぱいで更新停止)でこの本が取り上げられていたのを見て面白そうだと思い、購入しました。

見ての通りアメリカで販売されている洋書ですので、全編英語です。しかし、平易な文章ばかりなので、英検2級以上程度の英語力で充分に読めそうな気がします。
 
この本に紹介されていた自作着火剤がこれ。コットンの球にワセリンを染みこませたものです。
 
 
▲左は未加工のコットン球、右がワセリンで処理したもの。下敷きの線は1cm間隔。
 
道具名:Cotton Balls Soaked with Petroleum Jelly(前述の書籍で使われていた名称)
メーカー:自作
 
材料はシンプル。下の写真に写っている2種類だけです。
どちらも薬局で普通に陳列されています。
 
 
▲左はワセリン。右は滅菌コットン球(コットン100%)。コットン100%でないと、うまく燃えないそうです。
 
作り方も簡単。原文を引用します。
 
Soak the cotton balls with the petroleum jelly, working the petroleum into the cotton balls with your fingers, untill they are saturated. Then squeeze out the cotton balls so they are not so wet and sticky.
John D. McCann (2005). Build the Perfect Survival Kit
krause publications
 
要するに、コットン球をワセリンに浸けて指でこねくり回し、最後に絞って余分なワセリンを取ればできあがり。
ただ、素手で作業をすると手がワセリンでベトベトになります。
 
ワセリンの量が多すぎると着火しにくくなりますし、少なすぎると燃え尽きるまでの時間が短くなるので、多少の試行錯誤は必要です。

海外のアウトドア好きが公開している動画を見ると、スプーンでコットン球を転がしたり、スプーンを押しつけて余分なワセリンを絞り出したりしています。これなら手が汚れません。
 
ワセリンを染みこませたコットン球と未処理のコットン球とで、どの程度の違いが出るのかを調べてみました。
下の動画の通り、どちらもロックライターの火花一発で点火できますが、燃焼時間と炎の大きさは全然違います。
 
 
▲ワセリンを染みこませた自作着火剤と、未処理のコットン球の燃え方の違い。時間がかかるので、10倍速にしています。
 
ワセリンを染みこませたコットン球は、小さめのチャック付きナイロン袋に入れて簡単に携帯できます。
 
使用時、コットン球を固形燃料の側に置いただけでは風やストーブの傾きで転がっていってしまうので、火が着いたコットン球をその場に留めるため、また任意の位置にコットン球を当てるためにピンセットのようなものが必要になります(私の場合は、マルチツールのペンチを使います)。
 
着火のしやすさは、気温に関係ありません(冷凍庫で72時間以上冷やした後に点火する実験をしましたが、問題なく着火した)が、水には弱いです。
 
本来はサバイバル時の火起こし用なので、ほとんどの方には必要のない道具だと思いますが、火花しか出ないロックライターを愛用している私にとっては、必需品になっています。
 
2015/2/8追記
 
エスビットの火付きの悪さの対策として、ワセリンをしみこませた脱脂綿で固形燃料を包むという方法がYoutubeで紹介されていました。
 
これなら上で紹介したコットン球のように風や傾斜で転がる心配がなく、確実に着火できますね。
 
追記ここまで