播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

MSRの放射型ガスストーブ:Reactor

アメリカのMSRが販売している、2008年時点で最新のガスストーブがReactorです。

 

何度も発売が延期になってようやく発売されたと思ったら、アメリカのオンラインショップはことごとく「国外発送不可」とのこと。「アメリカ国内にいったん送ったら、後はあなたの好きなようにしてもかまいません。」とのことだったので、アメリカに知人がいる人なら、その人に購入してもらい、日本へ送ってもらうと良いでしょう。
あるいは、eBayオークションのような海外のオークションサイトを利用するのも良いかも。Yahoo!オークションでもいくつか出品されていたようです。

 

MSRのガスカートリッジは輸入できませんので、他社のカートリッジを使う必要があります。当然のことながら、他社カートリッジと組み合わせて事故が起こった場合は、製造者に責任を問うことは出来ません。すべて使用者の責任です。




▲Reactorは写真のような紙箱に入って売られています。

 

製品名:Reactor
重量:612g(ガスカートリッジ除く)カタログ値
メーカー:MSR(アメリカ)
US価格:約$140.00
国内価格:2007年12月現在、正規の取り扱いなし

 

第一印象は「デカイ!」でした。
クッカーのサイズ(収納状態のサイズ)は直径約14cmx高さ約16cmもあります。

 

有名なジェットボイル(JetBoil)と同様に、クッカー内部にガスカートリッジ、ストーブ本体を収納して携帯することが出来るシステムになっています。
運んでいるときに蓋が開いては困りますから、写真のようなロック機構がついています。

 


▲金属ワイヤーの先端に金属球がついており、この球を取っ手の溝にひっかけて固定します。手がかじかんでいても手袋をはめていても、簡単に操作できます。

 

蓋をロックしている部品は、展開するとクッカーの取っ手になります。付け根に板バネがついており、そのテンションによって取っ手が定位置で固定されるようになっています。固すぎず柔らかすぎず、適度なテンションで使いやすい。

 


▲取っ手の付け根部分

 

この取っ手は2つのリベットでしっかり固定されているため、安心して扱えます。

 


▲取っ手の付け根をクッカー内部から見たところ

 

ありがたいことに、クッカー内部には500ccごとに目盛りが付いています。

 


▲クッカー内部の目盛り(中央が1リットルラインで、それ以上水を入れてはダメ)

 

このクッカー底面は、熱効率を上げるために特殊な形状をしています。ジェットボイルと同様に、放射状に広がった形の集熱パネルになっています。

 


▲クッカー底面の集熱パネル

 

Reactorの面白い所は、ストーブの燃焼部分です。
スチールウールのような素材が詰まっており、その上に凸面になるように金網が張られています。

 


▲燃焼部

 

火力調整は、他のMSRストーブと同じタイプの操作しやすいワイヤーハンドルで行います。
ちなみに、燃焼部の中で真鍮のパイプが左右に分かれていますが、それぞれの先端からスチールウール内を通っている太いパイプ内に向かってガスが吹き出す構造になっています。

 


▲火力調整部

 

燃焼部の裏面はこんな感じです。銀色の円形部品は、現在の形に落ち着く前の試作デザイン(燃焼部の下に火力調節レバーがあった)の名残でしょうか。
試作品のReactorと比べると、左右に振るタイプの火力調節レバーが通常の回転式になり、自動点火装置が取り外されています。左右に振るタイプのレバーだと、何かが当たって簡単に火力が変わってしまいますし、自動点火装置は大抵すぐに壊れて使い物にならなくなるので邪魔だしコスト的に不利、という判断を下したのでしょう。

 


▲黒い部分は樹脂製

 

実際に点火してみましょう。燃焼部のどこに点火しても良いわけではなく、金網に丸い穴が開いている箇所が2つあり、そこに火種を近づけるように、と説明書では指示されています。
火が点きにくいのでは、と心配しましたが、全くそんなことはありません。火花しか出ないロックライターでも問題なく一発で着火できました。
20秒ほど待つと、スチールウールのような物と金網が赤熱します。

 


▲燃焼中の様子

 

よく見ると、金網の下にMSRのロゴが浮かび上がっています。火が点いていないと見えないのですが、芸が細かい。MSRの製品で機能以外の部分(飾り)にこだわっているのは初めて見ました。

 

燃焼部とクッカーを固定する部品はありません。単にクッカーを載せるだけ。これは非常に便利です。ジェットボイルだと、位置を合わせないとクッカーを置けないので不便です。

 

クッカーの大きさを見てみましょう。
一般的な袋入りインスタントラーメンを入れてみました。ラーメンは通常500ccのお湯で調理しますが、そのまま麺を入れるとほんの一部しかお湯につからないため、結局、ラーメンは割って調理しないといけないようです。

 


▲大きさをイメージしやすくするために、クッカーに袋入り即席麺を入れた様子(もったいないので袋を開けずに撮影しています)

 

収納状態を見てみましょう。
Reactorを片付けるときは、まずストーブ本体が冷めるのを待ち(取説によると冷めるまで最低5分)、同梱のパックタオルをクッカー底部に敷いてからストーブを入れます。
パックタオルはクッカー内の保護だけでなく、片付け前にクッカー内を拭いて乾燥させるためにも使えます。ただ、その場合は家に帰ってからパックタオルを乾燥させないと、クッカー内にパックタオルの湿気がこもってストーブが錆びるかも知れません。

 


▲クッカー内が傷つかないようにパックタオルを敷いた上にストーブを置く

 

その上にガスカートリッジを載せます。燃焼部の凸面とガスカートリッジ底部の凹面がぴったり合うように出来ています。

 


▲110gのカートリッジでは小さすぎてスカスカ

 


▲250gのガスカートリッジ単体でちょうど良い大きさ。たまに見かけるネオプレン製のカートリッジカバーをかぶせていると、蓋が閉まりません。

 

最後に蓋を閉めて取っ手を閉じれば片付けは完了ですが、その蓋がちょっと変わっています。
他の山用クッカーの蓋とは異なり、透明なのです。

 


▲透明な樹脂製の蓋

 

透明な蓋なら水がわいている様子が簡単に確認できるように思えますが、すぐに曇ってしまってあまり中の様子は見えません。

 

各国語版のマニュアルが付属していますが、その中には日本語版もあります。なぜ日本で販売されないのか不思議で仕方ありません。

 


▲日本語マニュアル付

 

アウトドア用ストーブを販売しているメーカーのカタログスペックは、実験室レベルの環境で測定された数値ですから、実際に山で使うとカタログ通りの性能は発揮できません。
ところが、MSRは山でカタログスペック通りの性能を発揮できるストーブを目指してReactorを設計したそうです。

 

ちなみに、プリムスのノーマルガス(残量50%ほど)を気温2.5度C、風速2~3m、標高650mの環境で使ったところ、500ccのお湯が沸くのに5分以上かかりました。ノーマルガスの主成分である「nブタン」が多く残っていたようで、最初は燃焼部が赤熱していたのに、数分でカートリッジがキンキンに冷えて赤熱しなくなってしまいました。(nブタンの沸点は-0.5度Cなので、氷点下では気化しない。)このとき、燃焼部からはボッボッとかポポポポとか、チリチリと妙な音が鳴っていました。

 

別の機会にプリムスの寒冷地用ガス(ウルトラガス:ほぼ満タン)を気温9.5度C、風速1~2m、標高200mの環境で使ったところ、500ccの水を沸騰させるのにかかった時間はわずか1分15秒でした。最大火力ではなかったので、つまみをもっと「+」側に回していれば、さらに早く沸いたかも知れません。
(MSRのサイトでは、1リットルの水を3分で沸騰させると書かれています)



すばらしいストーブですが、欠点もあります。
まずはその大きさ。ある程度大きい方が何かと使いやすいのですが、持ち運びには不便です。クッカーの容量は1.7リットル(安全に沸騰させることが出来る水の量は1リットルまで)ですが、ストーブ全体の体積は2.5リットル近くあります。

 

もう一つは一酸化炭素の発生量。「弱火にすると一酸化炭素の発生量が他の製品に比べて多くなる」と警告文に書かれているため、基本的にテントやせまい室内では使えません。Reactorの発売が延期された原因の一つがこの一酸化炭素発生量の多さだったようです。

 

もうジェットボイルがいらなくなってしまいそうですが、Reactorは大きいし専用クッカーしか使えないので、フライパンも使えてコンパクトなジェットボイルは、まだ手放すことが出来そうにありません。