播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

アークテリクスの軍用バックパック:Charlie

高価ですが作りの良いアウトドア製品を出しているカナダのアークテリクス社が軍、警察用として販売しているデイパックです。これと同型の製品(色が海兵隊用のデジタルカモフラージュになったタイプ)がアメリカ海兵隊の正式装備として使用されています。(軍・警察向けなので、アークテリクスの一般向けWebサイトには掲載されていません)

 

すでにアークテリクス社の製品では「RT35」と「Q10」を愛用していますが、これら民間向けバックパックと軍・警察向けのバックパックの違いに興味があったのと、シンプルながら格好良いデザインに惹かれて購入しました。

 


▲下の方に付いているポーチ(無線機が入っている)は別に購入したポーチで、バックパックには付属しません。

 

製品名:Charlie Backpack
容量(カタログスペック):27リットル
重量(カタログスペック):1.17kg
メーカー:Arc'teryx(カナダ)
US実勢価格:$139.00

 

「デイジーチェーンがたくさんついてる」と思われるかも知れませんが、これはデイジーチェーンではなく、ポーチ類の取り付けのための、PALSウェビングと呼ばれる帯です。軍用、警察用のベスト(チョッキ)やバックパック類には何本もこれが付いており、好きなところに好きなポーチを取り付けることが出来るのです。
私の場合は、左側面下部に写真のように無線機用のポーチを取り付けています。



写真ではわかりにくいかも知れませんが、ショルダーストラップが少し薄めです。
同社製の民間向けバックパック「RT35」のショルダーストラップはもっと分厚いのですが、このCharlieは容量の少ないデイパックという理由からか、貧弱なショルダーストラップになっています。
容量が27リットルで収納する荷物がさほど重くならないのとコスト削減のため、これで十分と判断したのでしょう。しかし、十分に快適な背負い心地です。

 

ハイドレーションシステムを使うことが前提になっているため、ペットボトルを入れるようなサイドポケットはありません。また、設計目的が軍用なので、ストック等を取り付けるためのループもありません。そのため、このザックは普通のハイカーには使いづらいと思います。
私はハイドレーションシステムを愛用していますし、ストックも滅多に持って行かないので全く問題ありません。

 

ウェストストラップは、不要な時はバックパック背面パネル下部に収納出来ます。

 

このCharlieバックパックは、ボディーアーマーを着用した上から背負うことを前提に作られているため、ショルダーストラップもウェストストラップも長目に作られています。そのため、余ったストラップの処理には工夫が必要になります。(私の場合はエラスティック・キーパーを使っています)

 

フレームはなく、代わりにプラスチック製のプレートが背面に差し込まれています。これで型くずれを防ぎ、荷物が背中に当たるのを防いでいます。

 

アークテリクスと言えば止水ジッパーが有名ですが、止水ジッパーは極寒地や粉塵の多い環境(砂漠など)で動作不良を起こしやすいとのことで、このCharlieをはじめ信頼性が要求される軍用・警察用のパック類には使われていないようです。
(軍用の衣類でも止水ジッパーを使った製品がありましたが、不評だったのか改良版では通常のジッパーが使われています。)

 

荷物の収納用の空間は2つあります。
1つ目は主気室で、これはダブルジッパーで開閉可能。ジッパータブはチャラチャラと鬱陶しい音を立て、しかも簡単に壊れる金属タブではなく、(軍用では一般的な)ナイロンコードを使ったタイプです。これは開閉しやすいですし、チャラチャラと音が出ないのでありがたい。

 

主気室の中には、ハイドレーションシステムのリザーバを収納するための大きなポケットが付いています。
Camelbak社のハイドレーションシステム「Storm(3リットル)」がすっぽり収まるサイズです。これは3リットルサイズのハイドレーションを愛用している私には嬉しい機能です。
「RT35」にもハイドレーション用ポケットがありますが、あれは小さすぎて使い物になりません。

 


▲ハイドレーションシステムのホースは、パック天面から引き出す構造になっている

 

もう1つの収納用空間はフロントポケット。

 

「RT35」の場合、フロントポケットの中央にジッパーが着いていましたが、Charlieは右端にジッパーが着いています。これは、左肩をショルダーストラップから抜き、右肩だけにショルダーストラップがかかった状態でバックパックを体の正面に回したときに開閉しやすくするためです。

 



▲フロントポケットは、右側に縦に付けられたジッパーで開閉する

 

容量は公称27リットルですが、容量35リットルのRT35よりもたくさん入るような印象です。(もちろん、実際はRT35の方が多く入ると思いますが、Charlieの方がパッキングしやすい。)
大きさが手頃で背負い心地はある程度良く、デザインも良いし荷物も入れやすい。
ハイドレーションシステムとの相性もばっちり。
PALSウェビングにポーチを取り付けられるので、容量が不足してもポーチで容量を増加させることが出来ます。

 

唯一の欠点は、背面パネルの貧弱さ。
通常、バックパックといえば背中と接する部分にクッションがついているものですが、Charlieにはそれがありません。

 

下の写真のように、背面パネルは真っ平ら。中に入っているプラ板の感触がそのまま伝わってきます。
汗を吸収・分散する仕組みもないため、写真のように汗染みが出来てしまいます。

 


▲背面パネルには何の工夫もありません(汚い写真ですいません)

 

Charlieバックパックは、すでに書いたとおりボディーアーマーを着用した兵士が背負う(Charlieパックと背中の間に分厚いボディーアーマーが挟まれる)ことを前提に設計されているため、クッション製や吸汗性などは考慮されていないのです。
しかし、バックパックと背中の間に挟むためのメッシュパネルを山道具屋さんでたまに見かけるので、そういう製品を取り付ければ、背面パネルの問題は克服できそうです。

 


▲エバニューのメッシュパネルを追加。

 

軍用のバックパックは民間向けより耐久性と拡張性(各種ポーチ類の取り付けが可能)に優れており、民間向けのバックパックはデザインとコストパフォーマンス、軽さに優れています。
今回紹介したCharlieは、軍用と民間用の両方の良さを組み合わせた優秀なデイパックだと思います。