播磨の山々

兵庫県姫路市周辺の山歩きと山道具の紹介をしています。2019年5月、Yahoo!ブログから引っ越してきました。

山岳用気象計 ADC SUMMIT

山の上にいると、気温がどの程度なのかいつも気になっていました。分かったからといってどうにもなるわけではありませんが、やはり気になります。

 

そこで、いつも使っている腕時計(SUUNTOのAdvizor)の温度計を利用しようとしましたが、腕時計は体温で暖まっているため正確な気温を表示するまでに時間がかかります。
キーホルダータイプの温度計も試しましたが、どうも精度が低いようです。

 

腕時計の温度計は、腕時計を首からかけたり(SUUNTOはネックストラップがオプションで用意してあります)していれば、体温の影響を受けずに正確に温度を表示してくれそうですが、山の上は風が強い場合があり、実際の気温よりも体感温度が気になります。

 

山道具屋さんをうろついているとき、ショーケースの中に小さな風車のついた計器を見つけ、よく見てみると風速や温度(体感温度も含む)を測るための製品だと分かりました。
これは面白そうだと思い、家に帰って類似品を比較検討した結果、コンパスで有名なSilvaの「ADCシリーズ」が良さそうという結論に達しました。ところが、国内の値段を調べると、欲しい機能が入っている最低限度のランクの製品で3万円近くします。

 

ちょうどアメリカから購入したい製品が他にあったので、ついでに「ADC SUMMIT」という風速計をアメリカのアウトドアショップから購入しました。アメリカで買うと2万円もしません。
Silvaの製品だと思っていましたが、到着した製品のパッケージや本体には「Brunton」のロゴが入っていました。SilvaもBruntonも同じ製造業者からOEM供給を受けているのでしょうか。

 


製品名:ADC SUMMIT
重量:約55g
メーカー:Brunton(Silvaも同じ製品を売っています)
US価格:$149.00
参考国内価格:¥29,800

 

機能
・気温測定(現在気温、最低気温、体感温度
・風速測定(最大瞬間風速、平均風速)
・時計(日付、タイマー、ストップウォッチ)
・簡易コンパス
・高度測定(現在高度、最大高度、最低高度)
・気圧測定(現在気圧、過去24時間の気圧履歴
・簡易天気予報
・データログ(オプションパーツを使えば、PCへデータを取り込める)

 

メーカーの製品紹介ビデオ(英語)←クリックするとSilvaのページに飛びます。QuickTimeかWindows Media Playerが必要です。

 

気温モードにしておき、風車を利用すると体感温度が表示されます。
今の季節だと、風が強く吹くと気温と体感温度の差がかなり開きます。

 


▲気温モードの画面表示。上の大きな数字が現在の気温、左下が体感温度、右下が計測中に記録された最低気温。

 

風速の測定も面白いです。天気予報などでは、風速を木の揺れ方や人間が立っていられるかどうかなどで説明している場合が多いですが、風速計があると自分の思っている風速と実際の風速とのギャップに驚きます。人間の感覚なんていい加減なものです。

 

ところで、この風速測定用の風車が優れた構造になっています。

 

中が空洞の地球儀を想像してみて下さい。そして、北緯60度の緯線を通る平面が断面になるように地球儀の上を切り取り、同様に南緯60度の緯線を通る平面でも同じように地球儀の下端を切り取ってください。残った形がイメージできますか?この形のパーツの中にプロペラが入っています。このプロペラは、先ほどの地球儀にたとえると、(切り落とされていますが)北極と南極を結ぶ軸を支点に回転するように出来ています。

 

この球状のパーツが本体に埋め込んであって、球状のパーツを本体内で自由に回転させることが出来ます。
風速を測りたいときは、球状パーツを回転させてプロペラを露出させ(地球儀にたとえると、本体の穴に北極と南極を向ける)、使用しないときや携帯時にはプロペラを隠します(地球儀にたとえると赤道が本体の穴から見えるようにする)。

▲プロペラ使用時

 


▲プロペラ収納時

 

類似商品ではプロペラが常にむき出しになっていますが、軸受けにホコリが付いたり、プロペラに汚れが付いたりしたら正常に動作しないはずです。カバーを脱着する製品もありますが、ADCの方法が一番コンパクトで使い勝手がよいと思います。

 

風車の羽根は、簡易コンパスになっています。プロペラが1枚だけ赤く塗ってあり、ADC SUMMITを水平に保持すると赤い羽根が北を指すわけです。
精度は低いですが、キーホルダー型のコンパス程度には役に立ちます。

 

気圧や高度測定機能は私のSUUNTO Advizor(腕時計)とかぶってしまいますが、心拍数の測定機能があるAdvizorを手放す気にはなりませんし、ADC SUMMITも使っていて面白い。

 

ストップウォッチ機能は使いませんが、タイマー機能は食事の調理に便利。調理といっても、レトルトパックを温めたりラーメンを茹でるだけですが。
Advizorにもタイマー機能が付いていますが、何か理由があって使うのをやめました。どんな理由だったか思い出せませんが、風速や温度測定に飽きてもADC SUMMITはラーメンタイマーとして私の携行品の中に残りそうです。本体のみで50g程度ですし小型なので、邪魔にはなりません。(何より、高かったのでムダにしたくありません。)

 

天気予報機能も付いていますが、同じ標高に12時間以上とどまっていないと、正確な天気予報が出来ないとマニュアルに書かれています。
泊まりがけの山行なら、夕方から明け方までは同じ場所にとどまっているでしょうから、信頼できる天気予報結果が出るかも知れません。

 

問題点
私好みのおもちゃですが、欠点は操作のわかりにくさです。
本体には「MODE」「SET」「RESET」の3つのボタンがありますが(もう一つバックライトの点灯ボタンがありますが、ここでは機能の切り換えに関するボタンということで3つと書いています)、ボタンの名前と機能が一致しているとは思えません。

 

たとえばタイマーを使う場合、「MODE」ボタンを押して時刻表示に切り替え、「SET」ボタンを押します。すると、アラームの設定画面が表示されます。ここで「MODE」ボタンを押すとストップウォッチ、さらにもう一度「MODE」ボタンを押すとタイマーになります。
タイマーの時間をセットするのだから、次は「SET」かな?と思いますが、違います。「MODE」ボタンを長押しすると数字が点滅して設定画面に入れます。「SET」でも「RESET」でもなく、なぜかMODEの長押し・・・。数字の増減は「SET」と「RESET」で行います。

 

一事が万事。他のモードでも操作が分かりづらいです。メーカーサイトからマニュアルをダウンロードして印刷し、何度も読み返してなんとか覚えました。

 

ボタンが5つ以上あるとパニックになるという機械音痴の方々でも、この製品の写真を見ると「ボタンが3つしかないから簡単かも」と思われるかも知れません。しかし、ボタンが3つしかないのに操作が難しい。

 

値段の高さとクセのある操作性が欠点ですが、山行記録に気温や風速を書き加えることができるので、細かいことまで記録したいという方や、私のようにおもちゃ好きの方は是非どうぞ。